みなさんは憧れのものってありますか?アクセサリーや車などなど、何かひとつはあるかと思います。
私は中学生の頃にでたとんでもないイヤホンに憧れていました。当時137,000円!当時はとても買えるものではなかったのですが…あれから10年近く経ちましてついに買うことができました。
AKG K3003を!!!!
ご報告
— はやぽん! (@H8P0NP) 2020年7月31日
わたしのなつのぼーなすはがくせいのころにとてもてがでなかった
AKG K3003にきえました。
ありがとうございました
これは何?
オーストリアの名門 AKGが生み出した世界初の3wayハイブリッド構成のイヤホンです。
※世界初のハイブリッド構成はUltimate Ears UE5 EBですね。ご指摘いただきありがとうございます。
今でこそKzなどの中華メーカーからも安価なものが多く出るようになったBAユニットとダイナミックドライバーのハイブリッド構成。その構成を世界で初めて実現したのがこのK3003というわけです。
しかも、これも数が少なかったフィルターチューニングが可能なモデルでした。音響フィルターを3種類から選んで好みの音にできるのも魅力でした。実質イヤホンを3本持ってるようなものです。ちなみに、iPhoneなどで使えるリモコン付きのK3003iも存在します。
まず箱がでかい!
当時はスーパーハイエンドなだけあって箱自体もかなりの高級感があります。
本革のケースが付属、本体にはシリアルNo.まで振ってあります。カスタムIEMを除いたらこの機種が初めてだったかもしれません。
本体はオーソドックスな形状。
ブッシングの上にケーブルがループしており、万一の負荷を抑えられるようになっています。
AKG K3003を聴いてみて
今回の試聴曲はこちら
機動戦士ガンダムSEEDより
FIND THE WAY/中島美嘉
ガンダムSEEDの最終話のエンディングを飾った曲となります。そのラストを彩った挿入歌となります。
特にSEEDは暁の車やMeteorと言い挿入歌も名曲揃いで、今聴いても素晴らしい曲が多いものです。
Spending/i☆Ris
i☆Ris 4thアルバムに収録の楽曲より1曲。筆者もi☆RisはWake Up Girls.ほど追えてなかったのであれですが、一聴して明らかに今までのi☆Risにない曲だなと感じました。カッコいいのです。歌詞がめちゃくちゃオトナなのです。
同アルバム収録の「One Kiss」もそうですが、こちらもまたオトナな歌詞なんですよ。合わせて聴いて欲しい。
ライブが楽しいというi☆Ris。筆者もライブに関してはi☆RisとWUGの合同ライブ。いわゆる「わぐりす」でしかi☆Ris現地に行ってないので、単独公演の空気感とかは円盤でしか見たことがないです。新参者です。
そもそもi☆Risをまともに聴くようになったのはラブライブ!の虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーにi☆Risに所属してる久保田未夢さんがCV.を担当してる朝香果林さんという子がいまして…その子のソロ曲であるStarlightを「いいね」とか言ったら、虹会のオタクからi☆Risのアルバムが3枚も送られてきたので本当に昨年からというレベルで最近です。
アイドルマスターミリオンライブより
Parade d'amour/オペラセリア・煌輝座
先週まで行われていたイベントの楽曲です。テーマ的にはレヴュー・スタァライトとかぶるようなところはありますが、今までアイマスには少なかった歌劇という点ではとても好感が持てます。環境によっては「僕と結構してください」のパートで死にかけるので非常によろしくない。
何もない私には/田所あずさ
いつものです。
プレイヤーはAstell&Kern AK300を使用します。
ハイブリッド型の原点にして頂点
このイヤホンを一言で言えば「上質な3Wayスピーカー」です。特性の違うユニットを組み合わせたハイブリッド型で起こる「音域によって音の固さが違う」「極端に言えば音色が変わる」というものがK3003では全く感じないのです。
本来理想的なマルチウェイスピーカーはこの材質特性の差によって生まれる音色の差を無くして「1本のスピーカーのように聴かせる」ものになります。正にその理論に沿って開発されたかのような音を鳴らすのです。
登場から9年たった現在のハイエンドクラスのハイブリッド機ですらこの「ユニット特性による音色の差」を解決した機種は少なく、これがこの機種が「原点にして頂点」と言われる所以かと思います。
高域は伸びるのはもちろんですが、BAユニットにありがちな「音の固さ」「金属的な冷たさ」というのをほとんど感じません。それでいて分解能の高さもしっかり備えていて、BAユニットの良さもしっかり残しているのです。絶妙すぎるチューニングです。
ボーカルは「1歩前に出て艶やか」という表現が良いでしょうか。ここに少しBAらしい固さがありますが、他のハイブリッド機などに比べるとかなりクセが抑えられております。
同価格帯のイヤモニなどに比べると消え際の表現などのリアルさには一歩劣りますが、それを上回る艶やかさがこの機種にはあります。現にSpendingやFIND THE WAYを聴きながらニヤついています。
低域はまさにダイナミックを積んでいるだけある!と言えるでしょう。驚くのはこの筐体サイズながらグワーッと沈んでいく低域が出てきます。これはPerfumeの「宝石の雨」とかを聴いてもらえると分かりますね。BAユニットには出せない沈み込みのある低域が出てきます。これはハイブリッド型の強みです。
フィルターは言わゆる高域ブーストと低域ブーストがオプションで付いています。個人的には前者がより抜けの良い音になり、後者はより低域がブーストされるように感じました。正直リファレンスが好みです。
サウンドステージはかなり広いですね。今聴いてもそう感じるレベルですので、あの当時としては化け物ですよ。
装着感も非常に良いですね。昨今の機種のように極端に大きくならず、あのサイズに抑えたのが本当にすごい。意外と傾向が似てるのがオーディオテクニカさんのATH-CKM1000だったり…
総評
久しぶりに聴いてみて最初に感じたのは「あれ?こんなに音良かったっけ?」という感想でした。
流石に私もK3003を聴いたことがないわけではなく、幾度かe☆イヤホンさんなどで試聴したりしていました。音の良さは分かりますが、ここまで良かったか?という印象。
30分ほど考えた結果、プレイヤーの性能が明らかにあの頃より上がってることに気づきました。今のメインはNW-WM1AにFiio M11にAK300となっており、3年前より確かにプレイヤーがランクアップしてるのです。
そのため、このハイレゾ対応プレイヤーが多く出ている今の方が登場時よりもポテンシャルを発揮できると言えますね。
音に関しては最初にも書いた通りで、ここまでBAらしさを感じさせないハイブリッド機は他には無いと思います。
とにかく滑らかで「ひとつのドライバーから鳴っている」ような感覚になります。かと言ってBAユニットの特性を殺してる訳ではなく、生かすところはしっかり生かすチューニングになっています。
そしてなにより、ボーカルがとても艶やかでかつ刺さりもほぼ皆無な聞き心地の良さでしょうかね。私としてもXBA-Z5というハイブリッド機を持っていますが、こちらはやはり高域に音の硬さを感じるモデルになりますね。
聴いていて楽しいのは間違いないのですが、K3003のような滑らかさや聞き心地の良さはないです。
本体はリケーブルできなかったりと遊びの要素は無いですが、これだけで完成されたチューニングとなっているので不要かなと思っています。ただ、このクラスはだいたいリケーブル可能な機種が多いので残念といえば残念ですかね…
最初にして最高のハイブリッド機
まさにその言葉がぴったりかと思います。
今の環境になってから改めてじっくりK3003を聴く
— はやぽん! (@H8P0NP) 2020年8月1日
やはり化け物だ…「なんてものをAKGは作ってしまったんだろう」という感想しかない。
約10年前に「イヤホンに13万とか馬鹿げてる」なんて言われていたイヤホンは、ハイレゾ全盛の時代になっても魅力を放ち続ける名器であることに変わりなかった。 pic.twitter.com/BJHxiHFcQi
10万円以上のイヤホン市場を作った機種
9年前の当時、10万円を超えるイヤホンなんて数えるほどしかありませんでした。特にコンシューマー向けのユニバーサルモデルは皆無と言った所でしたね。
K3003以外にあったのは、Final Audio DesignのPiano Forte X-CC(20万オーバー)やFitEar TOGO334(同社CIEMのユニバーサル版)くらいだろうか。
特にPiano Forte Xは装着感や楽曲相性のクセが強すぎて「ハマる人にはハマるが、それ以外には酷評されかねない」と筆者も評するくらいクセが強いモデル。後継モデルが出てることからも「ハマるファン」にはこれ以上のものは無いのだろうと想像できます。
TOGO334は同社のCIEMをユニバーサル化したもの。筆者も愛用しており、ユニバーサルモデルとしての完成度はかなり高いのです。
そしてこのK3003が出たことで「万人受けする純粋な音の良さ」で10万円以上のイヤホンを出してもある程度売れるということが分かると各社このハイクラスに投入するようになります。
Shure SE846と言った新規モデルはもちろん、Ultimate EarsのようなCIEMのユニバーサルモデルを投入する例も出てきました。
現在ではSONYなどの日本の大手メーカーを含めたフラッグシップがこのハイクラスに位置しています。そのような市場開拓のイノベーターとしてもK3003は名を馳せたイヤホンだと思います。
最後に
「憧れたイヤホンを手に入れた」とあの頃の私に伝えたいですね。現在こそ生産終了となってしまいましたが、「今だからこそ聴いて欲しい」と言えるイヤホンでしょうかね。
9年前に13万円という当時のイヤホンとしてはぶっ飛び過ぎてる価格でリリースされましたが、確かにその価値はあったと思います。
Dune DN1000やAstrotec AX60と言ったK3003の構成をリスペクトしたモデルも多く出ました。間違いなく市場やトレンドに影響を与えたモデルです。そして、後継機が存在しないのもK3003が孤高の存在と言えるでしょう。
同社の後継モデルと言われたN5005は正直なところ方向性としては別方向です。そしてそのAKGもハーマン・インターナショナルに買収された後に、そのハーマンが買収されたので今では韓国サムスン電子傘下となっています。
GalaxyがAKGのネーミングがついたイヤホンを付属できるのはこういうことなのです。それもあってか後継モデルの登場は絶望的とも言われてます。ここまで繋がりのいいハイブリッドが出てこないのもあってか、K3003はまるでオーパーツなのかもしれませんね。
私からこれを「買え」「買ってくれ」とは言いません。生産終了から時間も経ち、中古と言えどフィルターなどの欠品がなければ5万円台にはなるモデルです。
保証面でも長期は厳しいですし、なによりリケーブルができないモデルです。
それでも気になった方…もし良質な中古個体がありましたらぜひ手に取ってみてください。
それでは