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【コラム】ピントが合わせにくい。カメラ性能特化のスマホが持つ弊害を考える。


 ここ半年ほどスマートフォンでQRコードの読み取りや、eKYC認証がやりにくくなったという声を聞く。多くはスマートフォンを新しくしたら使いにくくなったと口にする。

 その理由はなぜなのか?思い当たる節を当たりながら、簡単に解説してみることにする。

 

 

急速な進化を遂げるスマートフォンのカメラ


 スマートフォンのカメラ性能はここ数年で大きく向上している。ハードウェアとしては高画素化に始まり、複眼化、イメージセンサーの大型化といった流れを経て、日を追うごとに性能が向上している。

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大型のイメージセンサーを持つスマートフォンも多くなってきている。


 実は近年のスマートフォンでは「意外と寄れないもの」が増えている。従来の感覚で撮影すると思った以上にピントが合わず、写真がボケてしまうことが増えているのだ。一番大きな要因はイメージセンサーが大型化し、最短撮影距離が長くなっていることだ。

 

 最短撮影距離とは「ピントが合う最も短い距離」のことであり、近年のスマートフォンではこの距離が長くなっているのだ。レンズの最短焦点距離が伸びていると示すこともできる。

 ここ2〜3年ほどでAndroidスマートフォンのカメラ性能が向上し始め、iPhoneもそれに続いている形だ。この距離について意識しなければ「寄れなくなった」と感じることも理解できる。

 

スマートフォンのカメラ性能が上がった弊害が見えてくる


 スマートフォンのカメラが寄れなくなったことで「使いにくい」と声を頂いたものにフリマアプリがある。商品を出品する際に、傷や詳細表示を撮影しにくくなったというものだ。

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メルカリのアプリ内カメラで試してみた。確かにiPhone 14 Proでは寄れなくなっている

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iPhone 12 Proでは問題なく撮影できる


 このようにアプリに備わっているカメラではズーム機能が使えないため、必然的に寄って撮影する必要がある。

    これに関しては標準のカメラアプリを利用することである程度解消できるはずだ。いわゆるテレマクロと言われる方法で、ズーム機能を利用して撮影するとこの問題は解決する。

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標準カメラを使ってズームすれば、スマートフォンを近づけなくても細かい描写を撮影できる


 意外なところでは、近年のスマートフォンのカメラはボケすぎるという点も指摘される。専用機のようなボケ表現を可能にした機種も出てくる中では、なんとも言えないようなところだ。
 これに関してもSNS上で「超広角カメラを使うと背景がボケない」趣旨の投稿が注目を集めている。確かに超広角カメラであれば、イメージセンサーのサイズも一回り小さいものが採用していることが多い。

    加えてレンズの明るさもやや暗いものになっている。超広角マクロという撮影モードを備える機種もあるくらいで、最短焦点距離も近いものが多い。

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広角カメラで撮影。確かに背景がボケる

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超広角カメラで撮影。確かに背景はボケない


 結果として被写体と背景にピントがあった状態で撮影できる。画質面については、メインカメラで撮ったものに比べると劣る。

 

 そして、意外と声が多かったものとして、各種クレジットカード等の登録だ。近年ではeKYCを使ってマイナンバーカード等の身分証明書を読み込ませるものあり、この際にうまくピントが合わないのだ。
 これは身分証明書を読み込むアプリやサイト側が、基本的にメインカメラを利用する仕組みになっているからだ。近年のカメラ性能が高いスマートフォンでは、前述の通り必然的にピントの合う距離が伸びてしまうのだ。
 加えて、このようなアプリでは従来の機種で撮影することを前提にして、身分証明書のガイド枠が設定されている。近年のスマートフォンではガイド枠に合わせようと撮影すると、身分証明書そのものがぼやけてしまい情報を確認できなくなる。
 その一方、ガイド枠からやや離して撮影しようとする。今度は身分証明書が小さく表示されるため、アプリ側で認識されない事態にもなる。特に厚みの撮影ではかなり難易度が上がるように感じた。

 

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iPhone 14 Proで身分証を読み取ろうとすると、確かに文字がぼやけてしまう

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iPhone 12 Proではボケることもなく、文字がはっきりと読み取れる


 スマートフォンのカメラ性能の向上が大きく取り上げられる一方、このような不利益が発生している点も知っておいてほしいところだ。

 

 一方、Android スマートフォンでは外部のサービスを利用していても、自動的にレンズが切り替わって撮影できるものもある。現時点ではiPhoneのiOSにおける制約とも呼べる状態だ。

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こちらはPixel 7 Proで撮影したものだ。確かにマクロに近い状況で撮影できるため、ブラウザ上でもカメラが切り替わることが確認できた。

 

※読者の方から外部アプリでカメラが切り替わらずピントが合わない問題は、iOSのカメラAPIに起因するもので、Android OSでは関係ないとご指摘いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

 

スマートフォンのカメラは写真を撮るためだけではない。選ぶ際にもう少し考えてみると良いかも


 近年のスマートフォンは優秀だ。最短焦点距離の関係でメインカメラではうまくピントが合わない場合でも、自動的に超広角カメラに切り替わるようなものも増えてきている。
 そのようなスマートフォンを使っている場合、ピント等は特別意識しなくてもうまく撮影できる。今後は物理絞りを搭載する機種も予想されることから、ボケずに撮る事についてもある程度改善されるのではないかと感じる。

 

 一方で身分証明書の認証アプリや、各種決済アプリのバーコード認識画面では、ハードウェアの進化に伴って、以前と比べて寄れなくなっていることが多い。

 物理絞りについても現時点のOS上では「カメラを切り替えた」挙動として認識されるため、外部アプリではうまく機能しないことが多い。光量が確保できなければ、超広角カメラを使った方がうまく撮影できる関係もあるだろう。


 加えてこれらのサービスは従来のスマートフォンを基準に作られているため、身分証やバーコードをうまく認証できないと言った場面も見られる。


 近年のスマートフォンの売り文句である高度な画像処理の多くは、標準カメラアプリのみとなり、フリマアプリやSNS備え付けのカメラでは機能しないことがほとんどだ。


 Android スマートフォンに限らず iPhoneですらイメージセンサーが大型化された今、アプリベンダーもこのカメラの使い勝手の部分にも改善しなければならないと感じた次第だ。


 カメラが大きく強化されたスマートフォンが市場で高く評価される中、決済アプリやeKYEの使いにくいさについてはあまり評価されない。お手持ちのスマートフォンを色々吟味するにあたって、是非このあたりの使い勝手についても考えてみてほしいところだ。