今回はOPPO Find X5を今更ながら入手する機会があったので、レビューしてみたい。
- MariSilicon X搭載で差別化を図るOPPO Find X5
- MariSilicon XとHasselbladチューニングでどんなアプリでもきれいに撮れるFind X5
- 本体スペックや画面性能をチェック
- MariSilcon Xのようなサブプロセッサ搭載スマホ。今後の当たり前になるかもしれない
MariSilicon X搭載で差別化を図るOPPO Find X5
OPPO Find X5を一言で示すのであれば、とても性能の高いスマートフォンだ。スペックは以下のようになる
SoC:Qualcomm Snapdragon 888
メモリ:8/12GBストレージ:128/256GB
画面:6.55インチ FHD+解像度
120Hz対応 AMOLEDパネル
カメラ
標準:5000万画素 f1.7
超広角:5000万画素 f2.2
望遠:1300万画素 f2.4フロント:3200万画素
MariSilicon X Imaging NPU 搭載
バッテリー:4800mAh
80W充電対応30Wワイヤレス充電、10Wリバースチャージ対応
OPPO Find X5は2022年初頭に登場したフラッグシップモデルだ。今回レビューのFind X5は標準グレードとして扱われる。
日本においては上位モデルにあたるFind X5 Proが大手メディアで紹介されていることから、比較的注目度が高いものの、標準モデルのFind X5は影に隠れがちなものとなっている。
Find X5の特徴としては、Hasselbladチューニングのカメラ、10bitの色表現で撮影、表示可能な点がある。その中でも、独自のサブプロセッサにあたるMariSilicon Xを搭載している点が大きな特徴だ。
MariSilicon XはTSMC 6nmプロセスで製造される独自のプロセッサだ。Qualcomm Snapdragonと共存する形になり、主にISP、NPU、メモリアーキテクチャが内包されている。このことから、画像、映像処理に特化したものだとわかる。
特徴として18TOPSのAI処理性能を誇り、Apple A15を凌ぐ高性能さをアピール。追加帯域のメモリを使用することで、ナイトモードを動画撮影時にも利用可能となっている。
ハードウェアとしても20bit RAWにも対応。低照度環境ではAI処理でノイズを抑え、従来よりも明るく適切なカラーリングでの撮影が可能だ。加えて、イメージング処理時の消費電力を大きく抑えることも可能にしている。
MariSilicon XとHasselbladチューニングでどんなアプリでもきれいに撮れるFind X5
OPPO Find X5のカメラについては、5000万画素の標準カメラ、5000万画素の超広角カメラ、1300万画素の2倍望遠カメラとなる。
上位のFind X5 Proとの差は標準カメラの手ブレ補正機構だ。Find X5では3軸に対し、上位のFind X5 Proでは5軸の補正に対応する。また、Find X3 Proにあった顕微鏡カメラは廃されている。
Find X3シリーズ同様に超広角カメラにも5000万画素のセンサーを採用しており、他社よりも力を入れていることがわかる。イメージセンサーもソニーのIMX766(1/1.56型)が採用されているなど、超広角カメラもメインカメラ級のハードウェアを持つ仕上がりだ。以下作例となる。
何枚か撮ってみたが、ハッセルブラッドチューニングのおかげか、極端にビビッドにならない点が印象的だ。塗り絵感のあったFind X2 ProやX3 Proに比べると落ち着いたものとなる。
超広角カメラのクオリティが高く、この部分は高性能なハードウェアを持つだけあってさすがと言える。これに関しては他社のスマートフォンと比較しても優位だ。
夜景モードも綺麗に撮れる。MariSilicon Xのおかげか瞬時に処理される点は特筆したい。
他社の特化した製品に比べると、ハードウェア的に劣る部分もあるため、必ずしも上位とはいかない。それでも今期のフラッグシップらしい堅実なチューニングと言えるものだ。
Hasslebladチューニングに関しては、他社で見るライカチューニングのような「目に見えるような味」というものは感じない。10bit撮影と合わせて、派手過ぎず丁寧な描写をしている印象を受けた。近年増えつつあるナチュラルカラーに沿ったものと評価するべきだ。
Find X5はドライブレコーダーとしても大活躍。白飛びしている空をリアルタイムで補正していくのが面白い。 pic.twitter.com/QFDqko2Dyb
— はやぽん (@Hayaponlog) 2022年11月17日
カメラに関してはMariSilicon Xがハードウェアアクセラレーターとなっている関係で、標準カメラアプリに限らず各種SNSアプリ内カメラでも効果を発揮できる。動画撮影性能も強化されているので、TikTokなどの動画SNSにおいても強力なHDR補正などの効果をアプリ内カメラで発揮できる。カメラアプリを選ばないハードウェア実装は大きなアピールポイントだ。
本体スペックや画面性能をチェック
OPPO Find X5はMariSilicon X搭載が売りだけのスマホではない。10bitの色表現にも対応したAMOLED画面などにも注目したい。
画面についてはかなり綺麗なものだ。10bitの色表現に対応し、サイズは6.55インチと近年のこの手のスマホとしては一般的になりつつあるものだ。120Hzのリフレッシュレートにも対応し、タッチサンプリングレートも240Hzとなっている。画面内に指紋センサーを備えており、感度はかなり良好だ。
画面についてもかなりきれいだ。6.55インチのサイズはフラッグシップラインとしては標準的なサイズと言える。なお、120Hzのリフレッシュレートには対応するが、可変式ではないものとなっており上位機種と差別化されている。
本体はセラミックのような質感だ。カメラ部まで一体感があり、指紋等も目立ちにくいものとなっている。上位モデルとは異なり、カメラ部が黒い点がアクセントとなっている。
Hasselbladのロゴも合わせて表記。高級感も漂う。
核となるプロセッサーにはSnapdragon 888を採用。昨年のハイエンド端末に使用されていたものであるが、性能は高く今でも利用するにあたって困らないものだ。
直近ではXiaomi 12XがSnapdragon 870(865のリネーム版)を、iPhone 14がApple A15を採用している。どちら最新のものではなく、フラッグシップラインでもハイエンドチップセットを必ず採用する流れではなくなっている。
最新チップセットではないため単純性能はもとより、カメラ性能なども劣ってしまうところがある。Find X5はその部分をMariSilicon Xでカバーしてるような形だ。
バッテリーは4800mAhとこのクラスとしては標準的なものだ。電池持ちはあまりよろしくないが、80Wの高速充電でカバーできる。Find X5では30Wのワイヤレス充電と10Wのリバースチャージにも対応する。
6.55インチという画面サイズなどもあって、本体重量は196gとなっている。ハイエンドでは200gオーバーが増えている中では、Find X5は軽量な部類となる。
比較的手に馴染むボディも好感が持てる
MariSilcon Xのようなサブプロセッサ搭載スマホ。今後の当たり前になるかもしれない
今回、MariSilicon Xという画像処理を行うチップセットを別途搭載したFind X5。これが意味することは、Qualcommなどのチップセットベンダーに過度に依存することなく、メーカーのコンセプトに近いものを作り上げることができるのだ。
加えて、上位モデルの体験を下位モデルに持ってくる事もできる。自社でプロセッサーを設計できたAppleやHuaweiはハイエンドに限らず、ミッドレンジでも各々が目指す方向性を如実に示していた。その考え方を受け継いだiPhone SEやHuawei P30 Liteなどもユーザーから高い評価を受けていた。
OPPOもMariSilicon XをフラッグシップのFindシリーズに限らず、Reno 8シリーズにも採用している。Reno 8 Pro+はDimensity 8100を、Reno 8 ProではSnapdragon 7 Gen 1と異なるSoCを採用している。
かつてはスマートフォンの差別化において、パーツによる差別化が多く見られた。サムスンのAMOLED画面を採用する、ソニーのイメージセンサーを使用する、Qualcommの最新プロセッサを採用すると言ったところだ。
それが進んだ今、パーツだけの差別化だけでは大きな差別はできなくなっている。ハードウェア的なメーカーの独自性と呼べるようなものは、他社が追従したりした結果コモディティ化が進み、ほとんど出すことができなくなった。
Appleが早くからプロセッサの独自設計を進める中、Androidスマートフォンではいち早くファーウェイが、Kirinチップセットによる独自性を持った高度な処理を可能にした。加えて、サプライヤーとの共同開発によって、高性能で自社製品に最適化された部品の開発を行うことができた。
パーツサプライヤーとの共同開発や出資などで独自性のあるハードウェアを搭載することに加え、大手メーカーのSoCに依存しない機能、省電力化や拡張機能といった独自性を持つサブプロセッサの搭載。これを発展させた独自SoCの設計ができるかどうか。この部分がAndroidスマートフォンにおける今後の大きなトレンドと考える。
最後になるが、OPPO Find X5は独自のサブプロセッサという今後のトレンドと言える部分をしっかり押さえ、ユーザー体験の強化を図ったスマートフォンだ。
Find X5は上位機種に比べたら値段もお手頃で、ハイエンドに求められる機能はしっかり載せている。加えて、MariSilicon Xによるカメラアプリを選ばない高度な処理、10bitの色表現で収録、閲覧可能な高品質なハードウェアは特筆できるものだ。
Find X5シリーズは上位モデルを含めて、ハードウェア性能を極度に強化させるよりは、iPhone 14やPixel 7のコンセプトに近い堅実ながらユーザー体験を重視した設計と感じた次第だ。
そのため、Find X5 Proも同時期発売のフラッグシップに比べると、強力なハードウェアを用いたスペック的なパンチはMariSilicon Xを除いてあまり強くない。中国向けにはDimensity 9000を搭載したモデルもあるが、なぜかこの機種だけMariSilicon Xが搭載されていないなど存在が迷子になっている。
その一方で、物理的なサブプロセッサを搭載したこともあって、本体価格は高価な設定となった。ヨーロッパ向けの価格はFind X5で999ユーロ(約12万8000円)、Find X5 Proは1299ユーロ(約16万6000円)とかなり高価だ。最近発表されたXiaomi 12T Proのヨーロッパ向け価格が749ユーロ(約10万8000円)ということを考えると、コストパフォーマンスで劣る点は否定できない。
OPPO Find X5のようなサブプロセッサを搭載するスマートフォンは、市場においても大きな刺激を与えるはずだ。Huawei やGoogleのスマートフォンが自社の目指す方向に最適化した独自のSoCを搭載したことに対して、OPPOやVIVOのように強力なSnapdragonと自社プロセッサを共存させることで、差別化を図るものも存在感を示している。
コモディティ化が進むスマートフォンにおいて、自社プロセッサとまでは行かなくても、特定の機能に特化したハードウェアアクセラレータを搭載することはミッドレンジにも広がっている。新たなトレンドになるサブプロセッサなども含めて、今後も目が離せない。