はやぽんログ!

使ったスマホは300台以上。スマホネイティブ世代のライターが独自の視点でレビューやニュース、コラムを発信中!

今、あえて3年落ちの初代AirPods Proを選ぶのはアリなのか。比較レビューしてみた

 第2世代が発売されて年末となった今でと話題沸騰のAirPods Pro。価格が249ドルと据え置かれたものの、日本では為替の関係で3万9800円と高価になったことで購入をためらう声も多い。一方で初代のAirPods Proであれば多少なりとも安価に購入することができる。
 改めて発売から3年が経過した初代AirPods Proについて、今なお戦える性能かどうか?今更ながら買うのはアリなのか。改めてチェックしてみる。

 

初代AirPods Proを振り返る


 AirPods Proは2019年に iPhone 11シリーズと共に発表されたTWS(完全左右独立型ワイヤレス)イヤホンだ。Apple H1チップを搭載したことで、イヤホンながらも非常に高度な処理を行うことが可能になっている。
 機能としては毎秒200回分析してノイズを処理するANC(アクティブノイズキャンセリング)、強力な外音取り組み機能、空間オーディオ、Apple製品とのシームレスな連携を備えるなど、発表当時から話題性の高いものだった。



f:id:hayaponlog:20221109212407j:image

 一方価格としては249米ドル。日本では約2万7800円と、当時のTWSイヤホンの中ではかなり高価な部類となり、本当にその価値があるのか議論されていた。

 今となってはこの3万円近いイヤホンが飛ぶように売れ、各社フラグシップの価格帯が向上したくらいだ。少なからず近年の高音質、高性能なTWSイヤホンが発売できる背景には、AirPods Proの価格設定においての商業的な成功がある。


 飛ぶように売れただけあって、その性能はすごいものであった。AirPods Proは他社のように音質云々ではなく、機能性の高さに重点が置かれていた。

 ノイズキャンセリングに関しても、当時のソニーの新型イヤホンであったWF-1000XM3とほぼ同等かそれ以上の性能を持っていた。
 外音取り込みも当時としてはかなり自然に再現されるものであった。閉塞感も少なく、装着したまま普通に第三者と会話ができるレベルであった。

 加えて、イヤホン本体にジャイロセンサを備えることで、空間オーディオに対応したといった点でも非常に新しいものであった。今となっては標準装備の無接点充電対応の充電ケースも備えた。

 ここまでの高機能を備えていたので「耳につけるコンピューター」と言わしめるくらいのものであった。
 コーデックはApple製品のため、AAC/SBCのみとなる。iPhoneなどの製品がaptXやLDACに対応していないので、妥当な設定と言える。

 イヤホン本体に感覚フィードバックもあったので、比較的に操作しやすい点でも面白いものであった。アップル製品との連携性はH1チップ搭載によるシームレスな切り替えといった場面等含めてさすがと言えるものだ。

 

 

 

今、あえて初代AirPods Proを選ぶのはアリなのか

 


f:id:hayaponlog:20221109211503j:image

 発売から3年経った今、改めてAirPods Proを聴いてみると、3年前に発売された商品ながら、この機種を超えられるものはかなり少ないと感じる。実際に初代AirPods Proと第2世代と比べてみて分かった差は以下のようになる。

 

音質

初代より低域が出るようになった。いわゆるピラミッドバランスに近いものとなったが、特筆するほど向上したわけではない。

MOMENTUM Ture Wireless 3などをはじめ、音質面に優れた機種に比べると劣る印象だ。

 

ノイズキャンセリング性能

大きく向上している。さらに強力な処理となり、電車のブレーキ音などのやや甲高いノイズや人の声など広い周波数にも対応。一方で、初代でもかなり強力なものなので悩ましい。

 

外音取り込み性能

より自然に聞こえるようになった。第2世代ではイヤホンを装着している閉塞感を感じさせない点がすごい。ここは初代よりも明らかに向上しているポイントだ。

 

空間オーディオ

処理精度が向上。より広がりのある音が楽しめるが、初代との差ははっきりわかるほどではない。

 

操作感

大きく変わらず。第二世代ではイヤホン本体からの音量調整が可能になった。iPhone本体で調整するのであれば、初代との体感的な差は少ない。

 

電池持ち

初代より大きく向上。ノイズキャンセリング利用時でも公称値6時間となったので明らかに長く利用できる。初代は3年使ってバッテリーが劣化していたこともあり、この部分については体感差があった。

 

コネクティビティ

初代と大きく変わらず。Apple製品とは無敵の組み合わせだ。第2世代ではケース側にスピーカーが搭載されたので、充電時や部屋の中で探す際に音が鳴る仕組みだ。AirTagと同じチップが使われているので、紛失時も位置情報の把握がより正確に行える。

 

 振り返ってみるとノイズキャンセリングや空間オーディオ再生については、旧モデルにあたる初代AirPods Proでも、現在市場に出ている中でもトップレベルの性能を誇るものだ。

 新しく登場した第2世代と比べるとやや劣るような場面も見られるが、日常利用においては十分すぎる性能だ。

 

 一方で他社製品を見渡してもAirPods Proに対して音質だけ、ノイズキャンセリングだけといった部分ごとでの上位互換は多く生まれてきた。高価なこともあって同等機能ながら価格面で差別化を図った機種も多くみられた。

 AirPods Proの登場から3年経つが機能性の高さ、ペアリングのしやすさ、他端末との連携のしやすさといった部分はなかなか上位と呼べるものは現れなかった。

 

 ライバルと評されることが多いソニーを比較に出しても、空間オーディオにあたる360 Realty Audioは対応コンテンツの少なさに喘いでいる。

 LDAC対応によって高音質化を図ったWF-1000XM4でAirPods Proとの差別化はできたものの、マルチペアリング(アップデートで対応)、低遅延性といった部分は外注チップセットのため対応には制約があるという。

 それ以外を見渡しても、サムスンのGalaxy Buds ProやファーウェイのFreebuds Pro 2といったAirPods Proに近いコンセプトながら、近年では部分的な性能は凌ぐものが出てきた。

 2021年後半から今年にかけてやっと「AirPods Proを超えた」と評されるイヤホンが登場したくらいなので、いかに先見性のあった商品かわかる。

f:id:hayaponlog:20221227141439j:image

高いノイズキャンセリング性能や機器との連携性をもちながらも、音質まで向上させたHuawei Freebuds Pro2は初代AirPods Proを超えたと名高い商品だ。

www.hayaponlog.site

 

 それらを踏まえると筆者的には、今でも初代AirPods Proを選ぶことは十分アリな選択だと考える。店頭値下げもあって新品も2万円台で購入できることから、明確な差別化はされているようだ。その上で、基本的な機能については第2世代と大きな差はなく、両者の違いはその性能差になってくる。

 

 初代AirPods Proはストア販売が終了しているため、流通在庫および中古での購入となる。新品では2万9000ほど、中古であれば2万円を切るものも珍しくない。新品で約4万円の第2世代には手が届かなくても、中古ながらその半額以下で機能面では80%ほど楽しめる初代AirPods Proの存在は大きいはずだ。

 もちろん中古商品はバッテリーの劣化、イヤーピースを利用することへのためらいといった懸念事項もある。イヤーピースは第2世代のものが利用できるほか、サードパーティも多く半販売されている。こちらを利用するとよいはずだ。

f:id:hayaponlog:20221227141225j:image

 初代AirPods ProはMagsafeに対応したケースが同梱されているものとそうでないものがある。中古における価格差は主にこの部分とコンディションになるはずだ。

 

Apple H1チップの高性能を武器に3年先を見越したAirPods Pro

 

 Apple AirPods Proを今評価するのなら、3年先を見越したイヤホンだったと評価するべきだろう。それは高音質といった部分だけではなく、遅延の少なさや他機種との連携性の高さといったコネクティビティ。現在でも通用する高性能なノイズキャンセリング、外音取り込み性能。空間オーディオコンテンツの再生といった部分は今もなお第一線で使える商品だ。

 3年後のトレンド、求められる当たり前を作ってしまった。そう考えれば市場に与えた影響はかなり大きいイヤホンだった。


f:id:hayaponlog:20221109211949j:image

 さて、AirPods Pro第2世代についても、まだまだ隠されていることが多くあるはずだ。現にAirPods Proは加速度センサーを搭載しているだけでなく、イヤホンの座標位置を外部に出力することもできる。この情報を利用することで、イヤホンを3Dアバターのフェイストラッカーとしても利用できてしまうのだ。

 

 サウンドのパーソナライズチューニングはもちろん、充電ケースのスピーカー機能といったところは近いうちにトレンドになりそうだ。

 第2世代で印象的だった高度すぎる外音取り込み機能は、XR分野で大いに威力を発揮しそうなもの。視覚はARによる拡張現実、聴覚はリアルの喧騒と混ぜ合わせて異世界感を演出するコンテンツも出てきそうだ。

 

 AppleがiPhone等に対してaptXやLDACといった高音質コーデックに対応しないのは、ライセンスの絡みやLE Audioを見越しているのではないか、はたまた音声以外の通信にビットレートを割いているのではないかという憶測が飛び交う。

 

 AirPods Pro第2世代は初代のように3年後のトレンドを創り出せるのか。今後も期待して注目していきたい。