どうも今回は、今更ながら手にした面白いスマートウォッチのレビューをしてみようと思う。
nubia Alphaというスマートウォッチ
2018年のMWCにて参考展示されたフレキシブルOLEDパネルを積んだ参考モデルは、当時ネットメディアで見たときに驚いたものだ。それから1年。一般向けに登場したのがこのZTE nubia Alphaとなる。
nubiaと聞いてピーんと来ない方も多いかと思うが、日本ではゲーミングスマホのREDMAGICシリーズが展開されているZTEのブランド名だ。
nubia Alphaの特徴は本体を見て分かる通り、スマートウォッチとは思えないごつい筐体と手首を覆いつくさんとするフレキシブルディスプレイが特徴のスマートウォッチだ。画面が曲がるのです。フレキシブルに…
圧倒的に画面の存在感がすごい。これは時計を巻くと言うより、ディスプレイを巻くと表現すべきでしょうか。
なにより、普通のスマートウォッチの2倍以上の情報を表示可能なロマンあふれるデバイスだ。横に並べたApple Watch 44mmが小さく見える。
プロセッサはSnapdragon Wear 2100を搭載。ひと世代前のプロセッサなので、登場した時期的には後継の3100あたりを積んで欲しいところではあった。
スマートウォッチながらカメラが付いているのも面白く、サクッと自撮りできる。スパイカメラのようでワクワクさせられる。
本体はWi-Fi接続が可能で、中国版にはeSIMのオプションもあるようだ。こんな見た目だが、IP54(防滴)となっている。
バンドは本体仕様の関係でメタルバンドのみ。
これはこれでかっこいいが好みは分かれるだろう。
実はAndroidアプリも入れられるnubia Alpha アプリ導入の手順も解説
実はこのnubia AlphaはスマートウォッチでよくあるWear by OSではなく、Android 7.1をベースとした「普通のAndroid OS」が入っている。つまるところ、理論上はAndroidアプリを動かすことが可能だ。
通常のスマートウォッチと挙動が異なり、上ボタンがホーム、下ボタンが戻るに割り当てられている。スクリーンショットも撮れるらしいが、撮影方法はよく分からない。
もちろん、公式ストアなどはないので、アプリはサイドロードで入れるしかないのだが、なぜかこんなデバイスでも海外の方が簡単にアプリを入れられるパッチファイルが配布されているのです。
とりあえず、アプリを入れてみた手順でも書いていこうかと思う。まずはXDAフォーラムで有志の方が用意したパッチファイルをダウンロードしましょう。
このリンク先にあるファイルをダウンロード。
未書名の怪しいファイルなのでブラウザのデフォルト設定で弾かれるが、気にしないぜ!と言う方はダウンロード。一応筆者の環境では問題なく利用できた。リンク先にも手順も書いてあるが、ざっくりこちらでも説明する。
手順
1. nubia Alphaをパソコンに接続
自動的にadbドライバがインストールされます。とってもありがたい。
2.ダウンロードしたファイルを開き、TWRP(カスタムリカバリー)を動かすパッチをクリック
3. しばらくするとTWRPが起動します。起動したらファイルの項目から全項目をマウントさせます。
4. マウントするとPCでnubia Alphaのストレージが認識されるので、一番上の階層にダウンロードしたファイルにあった「nubia Calender apk」をコピーします。
5. TWRPを時計側で操作。先ほどのnubia Calender apkはSDCardの階層に入っていますので、その階層まで行き該当ファイルをコピーします。
6.nubia Calender apkをSystem/app/nubiacalenderの階層に張り付け
7. nubia Alphaを再起動します。
8. スケジュールアプリが謎のランチャーになればとりあえず成功。引き続きNAIというアプリをパソコン上で起動します。
9. NAI上で端末が認識されれば、入れたいアプリをドラッグアンドドロップしてInstallを押しましょう。
10.しばらくしてsuccessと表示が出ればアプリがインストールされてます。
お疲れ様でした。
Androidアプリの手順は上に書いた通り。 何をしてるかというと、デフォルトのスケジュールアプリを偽装してホーム画面を表示する「アプリランチャー」に置き換えてしまうというもの。かなり強引なやり方ではある。
何度か試してうまくいかない場合は、本体を初期化すると良いはずだ。
謎のランチャーはこんな感じのものだ。これがまたUIが最適化されておらず、被りで使いにくいのなんの。
さて、問題はこの小さい画面でTWRPを操作するという苦行を強いられることだ。誤操作必須だ。
アプリによっては辛うじて文字が判別できる程度なので、間違って別の階層にファイルをコピーしないように注意が必要だ。
そもそもnubia Alphaもブートローダーがアンロックされてるのもおかしいし、こんなゲテモノ用のカスタムリカバリーがある時点でも驚くばかりだ。
注意点は以下の通り
・あほみたいに小さいUIのTWRPでの操作は慎重に
・Snapdragon Wear 2100は32bit SoCであること(64bit ARM-v8ビルドのアプリは動かない)
・NAIで転送する場合、apk名にスペースや全角文字が入っているとインストールできない
なお、廉価モデルのnubia Watchでこの方法が使えるかは不明だ。
ちなみにグローバル版でもnubia Alphaのハードウェアは中国版と同等らしく、eSIMの開放もできるそうだ。そんな肝心のアプリの動作だが、びっくりするほどもっさりしている。具体的な挙動は以下の通りだ。
Twitterの起動に10秒
ブラウザー(Firefox)の起動に15秒
デレステの起動(ホーム画面まで)に2分
こんな感じでまぁ…アプリを起動してる間にカップラーメンでもできてしまうのか?と言うくらい時間かかるのだ。これを実用的に使うのは少々無理があるだろう。
また、Snapdragon Wear 2100は古い世代のプロセッサなので32bit環境だ。近年リリースのAndroid向けアプリにはそもそも32bit版がないので、それらの動作は素直にあきらめましょう。プロセカもミリシタも原神も動かないのだ。
一部アプリを軽量なサードパーティーのものにすれば使えそうな印象だ。まともに動く保証はできない。
デレステはユニット編成画面までたどり着けたが、楽曲のロード中に処理落ちしてしまう感じだ。
コミュは読めたが、ガチャを引くと処理落ちして端末が再起動した。そもそも画面が小さく、仮に動いてもプレイするのは至難の業と言えるでしょう。
まぁ、これに関してはスペックがSnapdragon Wear 2100(Snapdragon 400みたいなもの)でメモリは1GBしかないのですから「それはそう」という感想だ。ちなみにストレージは8GB(実容量4.2GB)となる。
そして、印象的な縦長の画面は41:9のアスペクト比だ。こんな画面に最適化されてるAndroidアプリなどありません。
Twitterのタイムラインはこの有様である。
こんなゲテモノに多くのアプリが最適化されていないため、せっかくの縦長ディスプレイを全く活かせないのだ。adbコマンドでスケーリングやテキストサイズを変更すれば使いやすくなると思われるが、そもそも今度は画面解像度の関係で文字が潰れて読めなくなる。
小さすぎて文字が読めねぇ。
— はやぽん (@Hayaponlog) 2022年3月27日
参考までにlightning端子置いておきます。 pic.twitter.com/SYjjq28Smq
決済アプリのPayPayも起動できたが、バーコードの幅が狭く、QRコードはあほみたいに小さく表示されるためスマホでは読みとり不可だった。恐らく店頭でも使用できないだろう。
デフォルトのキーボードは死ぬほど打ちにくいが、打てないことは無いという仕様。割り切って打てなければ考えたのだが、打ててしまう。なんかこう…もどかしい。
実用面で厳しいnubia Alphaは「腕に巻くロマン」だった。
nubia Alphaを一言で言うならまさに「腕に巻くロマン」だろう。筆者はこれ以上の言葉が思いつかない。
もちろんスマートウォッチなので接続用のアプリもある。ただ、ウォッチフェイスの追加転送をするとフリーズしたり、音楽の転送もうまくいかないなど完成度はお世辞にも良いとは言えない。
今ではソフトウェアアップデートもされてないので、どうしてみようやらというところ。アプリは上記のゲテモノのような方法で別途入れられるが、これらアプリの通信はWi-FIが必須で電池持ちは致命的に悪くなる。電池持ちは通常使用で1.5日 アプリをがっつり使用して半日くらいだ。
そして、通知類はスマートフォン本体から来る始末なので、もはやスマートウォッチなのかスマホなのか分からなくなるのだ。なお、アプリ使用時(Wi-FI接続時)はスマートフォンとのBuletooth通信が切れる仕様となる。この場合はスマホの通知を受け取れなくなるので注意が必要だ。
つまるところ、画面が曲がる高級スマートバンドとして使うか、腕に巻くスマホのようなサブディスプレイとして使うのがいいでしょう。
また、スマートウォッチでありながらフレキシブルディスプレイなこともあり、外圧に弱いと予想できる。Royole FlexPai2と同じものを感じるもので、耐久性は未知数だ。
果たしてNubia Alphaは買いか?
はっきり言います。買いじゃないです。初心者お断りです。
これを読んでいただいたあなたが近未来系変態ガジェット愛好家でもない限りお勧めしません。以下の要素を含めてこのガジェットに対して愛を注げる逸般人向けだ。
フレキシブルディスプレイの未知数な耐久性
接続アプリのポンコツ具合
信頼性のおけない電池持ち
やる気のないメーカーサポート
無駄すぎる拡張機能
日本語はない
この辺から鑑みても、初心者お断りのガジェットだ。デザインも時計というよりはガジェットだ。普通の人には「手首に謎の装置」が付いているように見えるそうで、少なからず言われなければ時計には見えないようだ。
こんなスマートウォッチを普通の人に与えて使いこなせる気がしません。後継機でカメラ機能を省いたコストダウン機でnubia Watchがありますが、こちらも発売以降後継機が出ていない。
一言でいえば「ありえたかもしれない近未来を体験する。」そんなガジェットだ。
スマホが折りたためる時代なのに、なぜスマートウォッチはフル画面で手に巻けないのか?という思想をお持ちの方には"はまる端末"だと感じる。興味がある方はチェックしてみて欲しい
このゲテモノはロマンを求める方、変態ガジェット愛好家の皆様。逸般人の方意外の眼中にないことは言うまでもありません。
それにしても、この端末はeSIMが利用できて通話もできるので扱いは「スマートフォン」にもなるような気もする。その場合フォルダブルに分類されるのかどうか、微妙な所だ。