はやぽんログ!

毎月スマホを買う普通の人がスマホの事とか書いてます。

近年のスマートフォンが"急速充電の速度"を競う理由。背景にあるアフリカ市場の電力事情とは

 近年のスマートフォンでは性能向上と共に、充電速度の向上もすごいものだ。特に中国メーカーは投資も積極的に行い、昨年には10分未満でフル充電可能な200Wクラスのものまで現れた。

 スマートフォンにおいて、ここまで充電速度を競うのはなぜなのか。その訳を考察してみた。

 

加熱する充電速度。ついには10分切り、電力は240Wまで到達

 

 スマートフォンの性能向上もさることながら、充電速度の向上も著しい。2019年ごろは45Wクラス(1時間ほどでフル充電)だったものが、近年では210W充電対応機種も現れており、こちらは4300mAhのバッテリーをものの9分で充電できる。

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Redmi Note 12探索版は210W充電を採用し、最速9分でバッテリーをフル充電可能だ。

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Realmeではスマートフォン向けの240W充電技術を発表している。

 

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スマートフォンの高性能化と共にバッテリー容量も大型化し、現在の機種では10年前の倍となる5000mAhクラスの容量を持つものになっている。

従来の充電方式では時間もかかって仕方ないものになっているのだ。

 

 もちろん、ただ充電速度を競っているわけではない。劣化しにくいバッテリーの開発、端末側に数十個のセンサーを配置するなど、発火等の事故を防ぎつつ長期間利用できるものが求められている。

 

 さて、スマートフォンを10分でフル充電する用途が日本であるのだろうか。そう聞かれるとニーズは少ないのかもしれない。せいぜい朝食を食べている間にフル充電できると言ったところだ。

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Xiaomi 12T Proは120Wの充電に対応したスマートフォンだ。19分でフル充電可能な「神ジューデン」にも対応している。

 

20分未満でフル充電可能な急速充電技術。求められるのはアフリカ市場


 一方で、このような超高速充電を求める市場がインドやアフリカ市場だ。

 

 筆者も以前タンザニアの田舎町に派遣され、文化交流の一環で「初音ミクのライブ」を行った方に現地の電力事情を深く伺ったことがある。

 電力事情が不安定な環境でも「電子の歌姫 初音ミク」を召喚する。そのための設備を再考しなければならなかった。

 筆者は初音ミクのライブプロデュースを行った経験があり、アフリカにミクさんを立たせる"Miku Africa 実行委員会"の一員として設備の基本設計に関わった。

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初音ミクのライブにはファンが有志で行う「ファンメイドライブ」と呼ばれるものがある。画像は過去に主催したイベントより

タンザニアに教師として派遣されたmakotoさん。文化交流の一環でアフリカの片田舎に「初音ミク」を召喚したらどうなるのだろうか。そんな疑問をカタチにしてしまった方だ。この記録はSNS投稿と同人誌として残されている。

nlab.itmedia.co.jp

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 さて、話が脱線したが、アフリカ地域では経済成長の著しさに対して、電力インフラが追い付いていない地域も多いのだという。

 話を伺ったタンザニアでは首都のダルエスサラーム周辺でも停電する時があり、地域によっては日に数回停電する。1日のうち電気が利用できない時間の方が長いなんてこともザラだという。

 また、田舎では発電設備をディーゼル発電機に頼った電力供給、正規の送電網から無理矢理引っ張ってきた"盗電"によるものもあるという。

 これらのものでは周波数が不安定だったり、保護設備が無い等の“電気の質”も良くなく、精密機器との相性は最悪とも言える環境だ。

 

 そんな電力が不安定な地域では、バッテリーで動く携帯電話の需要がはかなり大きいものだ。

 これらの地域では先進国と異なり、有線の電話やネット回線が整備されるよりも先に携帯電話の基地局が整備されている。

 基地局さえ電力供給ができていれば通信できる携帯電話は、電力事情の厳しい環境にはある意味うってつけのシステムなのだ。


 アフリカでも携帯電話の普及率が高い地域もある。例えば南アフリカ共和国やモロッコ、エジプトではかなり普及しており、人口比では1人1台は保有しているような計算だ。
 高速な3G、4G回線の普及率も南アフリカやエジプト、チュニジア、ルワンダなどでは人口比で80%を超える普及率となっている。

 先進国の我々が考える以上に、アフリカ諸国の人たちもインターネットに触れているのだ。

 

 電力供給が不安定な地域ながら、連絡用だけでなく「情報収集手段」としての携帯電話の需要は高まっている。

 そうなると「電気が使えるうちに早くスマートフォンを充電しておこう」という要望が生まれるのだ。

 そしてこの需要はiPhoneやGalaxyでは拾いきれない需要となっている。最もこれらの高額な機種たちを持つ人々は、アフリカの中でも電力供給も比較的安定している地域に在住していることが多い。

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アフリカで強いシェアをもつ伝音のスマートフォン。上位モデルはinfinixのブランドで販売されており、「稲妻チャージ」や「ミサイル充電」と銘打つ急速充電、バッテリー持ち重視の機種をリーズナブルに展開するローカライズで支持を得ている。

 

 充電機能はもちろん、黒い肌に最適化された「チョコレート美色セルフィ」などの機能を備えるなど、細やかなローカライズも特徴だ。

 

 

急速充電速度の競争は"最後のフロンティア"での前哨戦


 インドと肩を並べる携帯電話の最後のフロンティアと呼ばれるアフリカ市場。10億人を超える大きなマーケットを前にして、中国のスマートフォンメーカーが目を付かないわけがないのだ。

 

 そのために、現在は多くのメーカーが基礎研究と技術投資を行い、高速かつ安全に充電できる技術を各社研究している。
 アフリカでスマートフォンが今以上に爆発的に普及してから、追いつかない現地の電力事情のために最適化を図るようでは遅いのだ。

 「うちのスマホなら10分でフル充電できます!」と言わんばかりの攻めの姿勢で、着実なブランディングでシェアを取りにいかなければならないのだ。

 

 そしてもうひとつは、アフリカ地域でトップシェアを誇る「伝音」の弱いところを突くためでもある。

 アフリカ地域では無類の強さを誇る伝音だが、その弱い部分が「500ドルを超えるスマートフォン」である。アフリカ地域でも経済成長によって、より高い性能を持つスマートフォンを求めるユーザーが出てきている。

 伝音もinfinixブランドで上位機種を展開しているが、ブランディングを確立しているとは言えない状態だ。

 グローバル展開を目指す他の中国メーカーはこの価格帯に切り込み、高速充電を武器に伝音のシェア切り崩しを狙っている。

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もちろん伝音も負けっぱなしではなく、180W充電の技術開発などを含め高速充電をアピールしている。


 中国国内でも「急速充電」のイメージ付けや世界最速を目指す点と同じくして、インドやアフリカのひっ迫した電力事情から生まれる「新たな需要」を拾い上げることができる。

 そのためにも、インドやアフリカでのシェア拡大を狙う中国メーカーの"充電速度競争"は過熱している。

 

日本では思ったほど流行らない急速充電

 

 最後になるが、日本でもXiaomiの120W充電対応のスマートフォンが出ているが、市場の評判はいまいちだ。

 これについてはリチウムイオンに限らず、充電式バッテリーを急速充電するとバッテリーが過熱し、劣化を速めてしまう点が指摘されているからだ。
 Xiaomiとしても2年間毎日充電しても80%以上の劣化はしないこと、各種センサーで厳格な管理をしていると公表している。これは実際に使ってみると、充電技術の進歩を感じさせてくれる。

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筆者もPOCO F4 GTなどの機種で鬼のような高速充電を体感している。


 一方で「無理をしている」「精神衛生的に怖い」という意見も多い。極端だが「スマホが火を噴きそう」「中国製だから信用ならない」と言った"食わず嫌い"的な意見もある。ある意味消費者のマインドがこの急速充電を受け付けない状態だ。

 そのような声もあってか、日本メーカーのスマートフォンでは5~6時間かけてフル充電するモードが備えてある。

 就寝前に充電を開始し、一晩かけてゆっくり充電することで、バッテリーの劣化を抑えようというものだ。

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Xperiaにはこれに即した「いたわり充電」という機能が備えてある。記事の題材となる"急速充電"とは全く異なるアプローチだ。


 この話をXiaomi Japanの執行役員であるSteven Wang氏にしたら「どうしてだい?」驚いていた様子で聞き返してきた。バッテリーの急速充電に対する不信感がある旨を伝えると「私たちは早いだけじゃなくて、安全なことも示さなければならない」としていた。

 

 驚きについては極端な話、日本メーカーは「確実に伸びるインドやアフリカを取りにいかないのか?」くらいに映ってもおかしくはないだろう。

 

 まぁ、実際のところ、そこに売り込めるだけの体力のある会社がもう残ってないのが現実で、シェアをかろうじて取れる日本でのローカライズを重視した考えだろう。

 

 熾烈さを増していく充電速度競争。最後のフロンティアでのシェアを確実なものとするため、安全かつ高速に充電できる技術は今後も進化していくことだ。

 最後になるが、筆者が過去にレビューした100W以上の充電機能を備える機種を紹介する。お時間ある時に見ていってほしい。

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