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「普通じゃない」iPhone 14 ProがMNP実質1円!関係者に聞いた無茶な値引きの背景にある"キャリアショップの販売ノルマと店舗ランク"の存在

 話題となっている iPhone 14 Proの実質1円販売。これを業界関係者に聞いてみたところ「普通はできない」という回答が返ってきた。

 こういう売り方をしなければならない理由は何なのか。以前にもインタビュー応じてくれたAさんに、iPhone 14 Proの値引きから見える実情を聞いてみることにした。

 

 


ドコモのiPhone 14 Proの大幅値引き。背景にある厳しい販売ノルマと店舗ランク


筆者
ネット上で話題となっていますが、ドコモショップでiPhone 14 Pro やiPhone 14 Plusの一括1円なんてすごいものが出てきましたね。すごいものです。ストアで定価で買った私がバカみたいですね(笑)


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iPhone 14 Proは昨年発売の上位モデルだ。価格はキャリア版で17万台からと高価だ

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特徴的なDynamic Islandなどを備えている。

 

Aさん

 確かに安すぎますよね(笑)。ただ、同じスマートフォンを売る立場の目線から見ると、あんな施策を打つ時点で"ノルマもランク的にもかなり厳しいお店"なんだなと感じます。
 この機種の場合は、キャリアからの値引き施策といったものがほとんどない。規制範囲内に収めれば値引きは可能ですが、値引いてしまうと大幅なマイナスになりますね。

 

筆者
なるほど。それでは ネット上に出ているiPhone 14 Proは相当の赤字というわけなんですね。

 

Aさん

 今の制度であの割引をするのであれば、大赤字のはずです。大容量モデルも同じように値引くことがありますが、これも赤字となることが多いです。

 それでも売らなければならない理由は、「iPhone の販売ノルマ」もしくは「回線契約」が目標値に足りてないことが影響しているのでしょう。
 過去に報道されていましたが、我々の業界ではiPhoneは販売台数ノルマがあり、これが未達成だとショップは大きなペナルティを受けます。

 回線の契約数が取れなければ、ショップの「ランク」が下がってしまい、取扱いに制限が出てきたりします。
 具体的な数はお話できませんが、本当に厳しくなったら"ああいう手"を使わなければならない気持ちもわかります。

 

筆者

 確かにこの手の"ノルマ"や"ランク"については以前から報道されていて、問題視されていましたね。この"ノルマやランク"について、もう少し教えてください。

 

Aさん

 iPhone の場合は数が足りないと、最終的に「販売ができなくなる」という形になります。仮にもキャリアショップで「iPhoneを取り扱えない」と言ったら廃業を考えるほどの死活問題です。

 ショップのランクは下がるほど、販売奨励金の減少、取り扱いできる機種の制約、販促品の供給減、ブースの大きさなどが制限されるような形ですね。

 

 iPhoneについてはもちろんですが、ショップのランクはかなり重要です。奨励金にも関わりますし、一般のお客さんが見てもわかるようなものなので、重視しているお店も多いのではないでしょうか。

 

筆者

ショップのランク。これをお客さんが見てわかるというか、見分ける方法があるのですか。

 

Aさん

 

 わかる人が見たらすぐわかります。店舗のランクが下がるとホットモック(展示用の端末)の数が異様に少なくなる、販売ブースが小さくなる、体験販促品が減るといった形で売り場に現れてきます。

 他には、目玉以外の機種になるとコールドモック(模型)がないといったものですね。本当に低いと、ハイエンド機種は案内すらなくなります。

 iPhoneだけで見ても、「Proシリーズのホットモックがない」で、なんとなく上か下かは見えてきますね。

 

 これは量販店でも言えます。例えば、同じ量販店でもあるお店はドコモの売り場が広いが、系列の別のお店ではすごく小さい事があります。

 これも量販店内におけるランクが見えてくる形ですね。もちろん例外も一部ありますが、おおむねあってると思います。

 

筆者

はえー。都市部の量販店に行くと、どこのキャリアも売り場が広くてホットモックが多い印象です。これも利用者が多い=ランクが高いということなんですよね。

 

Aさん

 そうなりますね。どれだけお客さんを集められるかはとても重要です。仮に利用者が少なくとも、キャリアの定めるノルマを達成できれば、高ランクに位置することも可能と思います。

 

 

iPhoneが安く使えることは消費者的には嬉しいが、改めて市場の歪みを感じる

 

筆者

今回のようなiPhone の大幅値引き。消費者としては嬉しい限りですけども、販売してる状況を思うと素直に喜べないですね。

 

Aさん

ごもっともです(笑)

 

 特に今回のような無茶をしてまで、ノルマ獲得やランクに喘ぐ厳しいタイプの店は、東京や大阪といった大都市圏のショップになるのかなと思います。

 大型量販店や大規模なキャリアショップに挟まれる中で、わざわざ来てもらって数を稼ぐのは本当に難しいです。

 

筆者

確かにそうですね。以前に比べて携帯の乗り換え頻度も下がっている。ドコモがショップを減らすと公言したことも含め、各社今のショップ数は過剰なのかもしれませんね。

 

Aさん

 都市部になればショップの数が飽和しているのは否定できないと思います。ただ、我々はキャリアの職員ではないので、ノルマ未達が原因で閉店に追い込まれたとしても、キャリアからは何の補償もありません。だからこそ生き残りに必死なのです。

 前回のインタビューでもお答えした通り、厳しいノルマ故に「転売ヤー」にすがる思いで売ってるわけですから。この時点で需要と供給がかみ合ってないように思いますね。

 

筆者

一部のお店ではiPhoneに限らず大幅値引きで売っている例もありますが、これも契約の関係なんでしょうか。

 

 恐らく契約を取るため…あとは宣伝でしょうかね。量販店ではめっきり見なくなった機種も、ショップであれば在庫もまだ残っていることがありますから。

 もしくは在庫処分の考えもあると思いますね。あれにも税金かかってきますので…

 

 宣伝というのは、今のご時世ではキャリアショップが大幅値引きをすることを、 SNSや自前のサイトで大々的に出すのは難しくなっています。

 

 そのため、店頭ポップを出して利用者がネット上に拡散。それをインフルエンサーが「ニュース記事」にしてバズらせるところまで目論んでいる気はしますね。店舗の情報は伏せていても、意外と特定されたりしますから。

 現にはやぽんさんもiPhone 14 Proの情報ネタにして私にインタビューしてるわけですから(笑)

 

筆者

たしかに(笑)

客引きのためにも、メディアの力を使おうとしてるわけですね。

 

Aさん

 客引きだけとは言いませんが、現状を知ってほしいという意味合いもあるかと思います。

 現にあのような売り方をしなければいけない時点で、お店としてはかなり問題があるはずですから。

 「iPhone 14 Proを実1で売ります!すごいでしょ!」というよりも、「iPhone 14 Proを実1で出さなきゃいけないくらいピンチです。お客様助けてください!」という状態です。ただ、この状況から"お店がピンチ"だと理解してくれる一般の方は少ないと思います。

 

筆者

やっぱりこういう無茶も今の携帯代理店の評価制度から来てるようなものですよね。
 

Aさん

 やはり評価制度から来る弊害ですね。消費者はスマートフォンを安く購入できていいのかもしれませんが、ああいう売り方に手を染めたらお店としては赤字です。

 こうでもしなければランクが下がって、奨励金が少なくなる。さらに商品を販売しにくくなったり、最大の売れ筋商品であるiPhone を取扱なくなったりするのです。

 こうなったらキャリアの言う台数制限もクソもないですね。生き残りのためにも手段を選んでいられませんから。

 

 正直スマートフォンは多くの人に届いていて、以前から飽和状態と言われています。加えて端末の寿命も長期化しているので、以前に比べて乗り換える頻度も減っている。

 

 だからこそ自由化の波に乗って、意地でも他社のシェアを奪い取りに行く形でしょうかね。生み出せるパイがないなら他社から奪いに行くわけです。

 ちなみに回線数は微増なのに対して、携帯電話の出荷台数は年間3000万台以上あります。

 

筆者

昨年度の携帯電話の総出荷台数が約3300万台で、そのうち iPhone が約1600万台ですね。出典:MMD研究所

 

Aさん

 様々な理由はあると思いますが、出荷台数、お客様の端末利用期間を考慮した各種評価制度やノルマの見直しが行われない限り、この歪んだ市場はいつまでも続くと思います。

 この手のノルマの話が出るたびに「もうやっていられない」と嘆く業界関係者の声も分からなくないですね。私も頭で管理する立場だったら「キツイ!やってられない!」と嘆いたことでしょうから。

 

筆者

ありがとうございました。

 

 

まとめ、iPhoneを無茶な値引きする背景は厳しいノルマ。評価制度と値引き規制は再度議論すべき

 

 

 iPhone 14 Proを一部店舗で大幅値引きする裏にはキャリアが化している厳しいノルマが背景にあるようだ。

 前回のインタビューでも回線契約ノルマのしわ寄せは末端のショップになり、最終的には転売ヤーに頼らなきゃいけない状態だと言っていたが、この問題も同じく根深いものだと思う。

 

 特にiPhone が売れないと iPhone を取り扱えなくなるという。このペナルティはお店にとっても確かに失活問題だ。

 それを避けるために、端末に無茶な値引きをしてまで売らなければいけない現状は、問題視すべきだと思う。

 

 携帯電話の購入者は「携帯電話」を買うのであって回線を買うのではない。規制の網をくぐるように端末が大幅に値引かれている現状は、総務省の2万円の回線値引き規制はもはや形骸化していることを意味する。

 

 さて、問題はそのペナルティを課す代理店の評価制度だ。回線について、現在は他社のシェアをを奪い合うような状態が続いている。なんとしても、自キャリアのエコシステムに引き込みたいため、MNPの評価部分が大きくなっている。

 これに加えて、売れ筋のiPhoneは販売台数のノルマもあるので、回線契約と二重のノルマを課せられている。

 

 この辺りの数字が厳しいと問題視されている。この数字を守るために無茶な値引きをしたり、転売ヤーに頼らざるを得なくなっている。これが果たして健全な市場とと言えるのか甚だ疑問である。

 

 改めて、現状をしっかり把握し、市場バランスの最適化措置、代理店を適切に評価する仕組みが必要だ。

 これは総務省含めた有識者会議等の場で、再度しっかり検討しなければならないと筆者は思う。

 

 

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