京セラが昨日発表した今年3月期の営業利益予想。昨年4月時点の1740億円から、540億円引き下げの1200億円の予想に下方修正すると発表した。原材料費用高騰やスマートフォンなどの携帯電話、端末の販売不振が大きく影響した。
販売不振が響く京セラのスマートフォン。供給先に在庫の山も…
京セラのスマートフォンの販売不振が続いている。今回の発表を受けて、同社の谷本社長は「一番大きいのは携帯電話事業の赤字拡大だ」と説明している。
一部報道では「供給先には在庫が山になっている」などの記述もあり、状況は芳しくないようだ。
確かに公表されている3月期上期 事業セグメント別売上高の表を見てみると、携帯電話にあたるソリューション部門の"コミュニケーション"の項目がマイナスになっている。
最終予想もコミュニケーションの項目だけ大きく減となっている。これでは「携帯電話事業の赤字拡大」と言われても仕方はない。
同社の携帯電話事業について、今後は「つくる機種を絞るなど、"縮小方向"にいく。」という方向性を説明した。
携帯電話市場からの撤退については「ユーザーがいるので難しい」としたものの、「軸足を違う方向に向けることは第4四半期中に決めたい」と発言し、改めて既存の方向性から変えていく方向になりそうだ。
縮小方向となる京セラのスマートフォン。今後はどうなる
京セラといえば、au独自供給のTORQUEを始め、長きに渡ってユーザーに愛されるブランドを持つスマートフォンメーカーである。
シャワーをかけたくらいでは水没知らずのTORQUEシリーズはファンに愛されている。
古くから続くDIGNOシリーズの他、ワイモバイル向けのAndroid One端末の製造も手がけるなど、キャリアと密着した関係でスマートフォンを製造している。過去にはSIMフリーの機種も展開していた。
ただ、現在主力の端末はどちらかというと、エントリー機種や子供や高齢者向けの携帯電話、スマートフォンといった形になっている。
エントリー機種はシャープやソニーも展開しており激戦区となっているほか、近年ではOPPOやXiaomi、MOTOROLAなどの存在感も大きい。
そうなると「らくらくフォン」などの高齢者向け端末や、「キッズケータイ」といった子供向けのスマートフォンが主力となる。こちらについても、従来ほど売り上げを確保できていないような状態だ。
海外もどうかと言われると、以前に比べると厳しくなっているようだ。かつてはアメリカでDURA FORCEの名前で展開しているスマートフォンが好調であったが、今ではほとんど耳にしなくなった。
さて、縮小方向に行きつつ「軸足を移す」というものは、ラインナップを絞るのが先決だろう。
TORQUEシリーズはニッチな携帯電話ではあるが、タフネスさゆえに個人法人問わず一定の支持を持つ層が多い。生産数減などによるコスト高になる可能性はあるが、今後も展開することは可能だろう。
子供向け端末や高齢者向け端末については、キャリアから安定した需要があり、これについても縮小傾向になりつつも展開は可能だろう。
そうなると怪しいのは、ワイモバイル向けに展開しているAndroid Oneシリーズの動向だろう。この種類のスマートフォンは、Google Pixelと同じような UIを採用し、安価ながらも2年間のアップデートが保証される点が強みであった。
近年ではシャープのAQUOSが廉価機種でもアップデートに力を入れており、加えてソフトバンクでもGoogle Pixel 6aといった廉価モデルが好調な点もある。
このような中で、あえてAndroid Oneシリーズを選ぶユーザーはあまり多くないと感じる。キャリアの自由化が進み、以前に比べて固執する理由もないからこそ、魅力的な端末を出さなければ生き残っていくことはできないのだ。
これ以外にキャリア依存の体制から脱却することも、生き残る上では必須なのではないかと感じる。
筆者としては、Android One端末を3万円程度の価格でオープンマーケットで展開したら、一定の支持を得られるのではないかと思っている。難しいものなのだろうか。
直近ではBALMUDA Phoneの製造を担当。過去にはauのinfobarシリーズの製造も担当するなど、他社の企画を形にするような方向性も感じる。
業績不振が続けば、最終的には携帯電話事業からの撤退というのも考えられる。数少ない日本メーカーの撤退は、市場としても寂しいものになる。
筆者としては、今後登場する端末の動向をしっかりチェックしていきたい。
参考にした決済報告会の資料はこちらになる。
https://www.kyocera.co.jp/ir/news/pdf/FY23_3Q_p.pdfet0WG7xHoT2gb0