今年1月に発表された折りたたみスマホのHuawei P50 Pocket。ライカとの提携解消や米国制裁下でありながらも、世に放った機種だ。
今回実際に手にすることができたので、簡単に紹介していきたい。
- 画面が完全に閉じられる!NMカードで本体容量も増やせる!ファーウェイが展開する縦折の折りたたみスマホ
- ファーウェイらしい高いカメラ性能。スペクトルカメラを使った新しさも
- 5G非対応、Googleは利用不可。それでも存在感を見せつけるスマートフォン
画面が完全に閉じられる!NMカードで本体容量も増やせる!ファーウェイが展開する縦折の折りたたみスマホ
P50 Pocketはファーウェイの折りたたみスマートフォンだ。Motorola RAZR、Galaxy Z Filpに次ぐ形で展開されるので、3機種目の縦折りタイプのものになっている。
商品としては通常版のほか、特徴的な装飾をあしらった「芸術家版」も展開される。基本的なスペックは以下の通りだ。
SoC:Snapdragon 888 4G mobile Platform
メモリ:8GB
ストレージ:256/512GB画面:6.9インチ/サブディスプレイ:1.04インチ
120Hz OLED
カメラ
標準:4000万画素
超広角:1300万画素
ウルトラスペクトルカメラ:3200万画素フロントカメラ:1000万画素
バッテリー:4000mHh
OS:Harmony OS 2.0(3.0アップデート配信済み)
Huawei P50 PocketではSoCにQualcomm Snapdragon 888 4G mobile Platformを採用している。
制裁強化でKirinチップセットが利用できなくなって以降、P50に続くSnapdragonを採用したハイエンド端末と呼べる商品だ。
クアルコムのフラッグシップSoCではあるが、米国の制裁の関係で5G通信には非対応となっている。ある意味ファーウェイ専用のレア仕様だ。
搭載メモリは8GB、ストレージは256または512GBとなり、独自規格にあたるNMカードによるストレージ容量の拡張にも対応している。
P50 Pocketは独自規格ではあるものの、ストレージの容量拡張が可能だ。
NMカードはファーウェイ独自のものだが、nano SIMサイズのSDカードのようなものと思ってもらって良い。
折りたためるフォルダブルスマートフォンでは、ファーウェイのみの独自機能で、唯一無二と言える存在となっている
画面は展開時で6.9インチ。フルHD+解像度のOLEDパネルを採用しており、展開時の画面比率は21:9となる。
そのため、感覚的にはXperia 1シリーズに近いものとなっている。リフレッシュレートも120Hzに対応しており、この辺りもトレンドをしっかり押さえている。
本体はゼロキャップ構造と呼ばれるものを採用。画面を閉じた際に隙間が見えないものとなっている。
構造的には画面を内側に畳み込むようなものになっており、Galaxy Z Flipと比較しても隙間がないものがわかるうえ、本体も薄型化できている。
加えて、画面を90度付近で保持できるようになっており、Galaxy Z Flipのような使い方も可能だ。その関係か、若干ながら折り目が目立つものとなっている。
サブディスプレイは円形のものが採用されており、同社がP50シリーズでアピールする「Dual MATRIX」デザインに沿っている。
うまく溶け込んでいるので、デザイン的な意匠にもなっている。
サブディスプレイの用途はセルフィーモニター、予定やタスクの表示、決済におけるカードの選択が可能になっている。この辺りはすでに出ている同様のスマートフォンとあまり大きく変わらない。
一方でサブディスプレイの自由度は低く、テーマという形で時計のデザインを変えることでができる程度だ。
それ以外はカバーディスプレイウィジェットという扱いになるのだが、ここについても対応している。アプリケーションがかなり少なく、中国国内以外では使いにくいものになっている。
それでも通知領域として割り切って使うのであれば、スマートウォッチに近い感覚で表示され、視認性は決して悪くない。階層に関しても同社のHuawei Watch 3などに近く、直感的な操作が可能だ。
カメラ性能については後述するが、P50 PocketはHarmony OS 2.0も大きなアピールポイントとなっている。OSはHarmony OS 2.0を採用し、3.0へのアップデートも予定されている。
同社が提唱する「シームレスな接続」を売りにしており、連携機能がより強化されているようだ。中国では家電商品のみならず、自動車との連携も含まれており、スマートフォンがデジタルデバイスを制御するハブのような存在になっている。
ファーウェイらしい高いカメラ性能。スペクトルカメラを使った新しさも
ファーウェイのスマートフォンといえば、カメラ性能の高さがある。P50 Pocketのデザインを見て、まず目が行く点は特徴的な背面カメラだ。
近年のカメラ性能強化には驚きを隠せないが、この手の折りたたみスマホの中ではP50 Pocketはトップとも言えるカメラ性能になっている。
メインカメラは4000万画素に加えて、1300万画素の超広角カメラ、3200万画素のスペクトルカメラが搭載されている。
Huawei P50 Pocketのメインカメラは4000万画素のものを採用している。実際にはP50シリーズで採用している5000万画素のものが使用されているのだが、筐体機構の関係かクロップしての採用になっている。それでも1/1.7型クラスとなることから、この手の端末としては大型だ。
加えて、他のスマートフォンではあまり見られない"ウルトラスペクトルカメラ"を搭載している。
これは一般的なスペクトルカメラに分類されるとは思われるが、光を波長ごとに分光して撮影するカメラになる。
この波長情報を分析することで、目視に近いRGBのカメラよりも多くの情報を持つ画像データを得ることができる。
この画像データには、撮影対象固有の特性(材質や物体特有の波長)が含まれており、より精度の高い被写体検出や画像処理に生かすことが可能となっている。
スペクトルカメラはHONOR Magic 4 Ultimateでも採用されている。
スマートフォンで採用されるスペクトルカメラなので、大がかりなものは使いにくい。一般には「スナップショット方式」と呼ばれる、受光素子の各画素に分光フィルターが取り付けられているものが採用されていると考える。
この方式ならドローン等の搭載も見込めるほど小型であるが、波長バンド数の制約がある難点を持つ。
なお、スペクトルセンサー(分光計測器)を搭載するスマートフォンは過去にも存在し、色表現の向上を目的に使用されていた。
P50 Pocketのスペクトルカメラでは色情報の補完のみならず、物体検出や解析といったところでも用いられている。従来のセンサーに比べて大きな優位性を持つ。
そんなP50 Pocketの作例は以下のようになる
Huawei P50 Pocketの写りを見て感じるものは、HDR補正が大きく入り、白飛びがかなり抑えられていることが分かる。
近年のトレンドでありがちな、HDR 補正を過剰に効かせたものにはならず、比較的見た様子に近いもので撮影できる。
ここはファーウェイらしく、XDR Fusion Proと呼ばれる高度な画像処理を駆使して、通常カメラで撮影したものに波長情報を合成してくるものと考えられる。
標準画角とデジタル5倍ズーム。専用の望遠カメラを備えていないのでこのくらいが限界となる。
超広角カメラは13mm相当になっており、一般的なスマートフォンと同様に撮影できる。
夜景も綺麗に撮影することができる。少々色味が暴れる場面もある点は玉にキズと言える。
P50 Pocketでは、蛍光写真の撮影が可能になっている。本体から紫外線補助光を発光しての写真撮影が可能だ。スペクトルカメラを用いているからこそ、スマートフォンでもある程度撮影が可能になっている。
5G非対応、Googleは利用不可。それでも存在感を見せつけるスマートフォン
世界では3番目の投入となった縦折のスマートフォン。ファーウェイのアプローチは、Galaxy Z Flipよりも高級感を持たせて上位機種的な扱いとしたものだった。
実はこのP50 Pocketは今年中国にて最も売れた折りたたみのスマートフォンになっており、民衆からの評価も高いものになっている。
5Gにも非対応ながら、中国におけるファーウェイのブランドイメージの高さを思い知らされる。
Galaxy Z Flip3と比較すると、画面サイズは一回り大きいものになり、ゼロキャップ構造で完全に隙間なく閉じれる点は大きな差別ポイントとなっている。
Z Flip3に劣る点としては、画面のパンチホールカメラの大きさ、防水機能を持たない点になる。
確かに円形のサブディスプレイはデザイン的な意匠になっており、画面を完全に閉じることのできるゼロキャップ構造も差別化されている。
そしてファーウェイらしく、この手のスマホとしては強化されたカメラ性能やHarmony OSとの連携性など他社にはない独自の機能も多く備えている。
筆者的によく研究されているなと感じた点は電源ボタンの位置だ。Galaxy Z Flipなどに比べるとよりヒンジ側によっており、展開した際に違和感は他社製品に比べると少ない。
P50 PocketとGalaxy Z Flip3を比較すると、P50 Pocketのほうがひと回り大きいことがわかる。このサイズ感の差もGalaxyに対する差別化として成立している。
それでも米国の制裁の関係でP50 Pocketは5GサービスとGoogleサービスが利用できない点は惜しい。ハードウェアの完成度はかなり高いのだが、このような制約がある以上、一般のユーザーにはなかなか勧めることはできない。
また、Snapdragonを採用したファーウェイのスマートフォンではVoLTEに非対応のものも存在する。このP50 Pocketも非対応となっており、少々使いにくいものになっている。
そんなファーウェイからはP50 Pocketをベースに価格を抑えたHuawei Pocket Sが発売されている。スペックを一部変更し、価格を12万円と比較的安価に抑えた点が特徴だ。
中国ではGalaxy Z Flip 4も安い価格設定ではなく、比較的戦略的な設定となっている。近い価格設定のrazr 2022と比較すると基本スペックは劣るが、6色展開としてファッショナブルさをアピールしていることから、比較的注目された存在となっている。
そんなP50 PocketやPocket Sの存在は、今後の業界トレンドにも大きく影響してくるはずだ。この機種に対して、各メーカーがどのようなアプローチを仕掛けてくるのか。ファーウェイの今後も展開も含め、折りたたみスマートフォンの進化にもまだまだ目が離せない。