総務省は本日、携帯電話を短期解約した顧客との再契約を拒否することは、電気通信事業法に違反する(要約)という見解を示した。
また、販売代理店が短期解約によっていわゆる「ブラックリスト入りする。」「最低何日かは維持してほしい」といったことを顧客に告げることも、不実告知(ウソの告知)と呼ばれるものに当たると指摘している。
この見解は本日行われた「消費者保護や競争ルールに関する有識者会議」内で示されたものだ。
短期解約における契約拒否。いわゆるブラックリストは存在する
短期解約を行うといわゆる「ブラックリスト」に入るという事は昨年頃から多く言われていたが、このリストは事実存在する。
なぜなら筆者自身があるキャリアで契約できないからだ。
思い当たる原因はサブブランドの解約だ。あまりに対応が悪く、使いにくいことから、同社のメインプランにアップグレードしたところ。以降一定期間契約ができないものになってしまった。
この際アップグレードに関しては、実質的な乗り換えになることが知らされず、転出元のサブブランドを短期解約した扱いとなってしまった。
また「特価ブラックリスト」と呼ばれるものも存在する。これは大きな値引きが行われているスマートフォンを何度も購入した場合にリスト入りされるとしている。
いわゆる転売目的の購入者が多く、これを防ぐための措置と言える。
短期解約の横行で携帯業界は無法地帯になるのでは?
さて、これは総務省が短期解約した客をブラックリスト入りすることを禁じたと言ってもいいものだ。
もちろん、事業者によっては最低利用期間といったものが示されているものはあるが、所定の解約金を払えば解約ができないわけではない。
ブラックリストというある種の縛りが無くなることによって、携帯電話市場では過度なホッピングが起こるはずだ。
ホッピングとは、携帯電話を1円などと安価に購入することを目的として、1週間に1回などのペースで4つのキャリアを乗り換えるようなものだ。
短期解約した客をブラックリスト入りできないのであれば、このようなことが横行してもおかしくないはずだ。
事実、過度なホッピングは2年縛りが撤廃され、解約金も上限1000円となったタイミングでかなり横行した。それこそ有識者会議でも問題提起されたものだ。
電通事業法の規制もあり、のりかえで実質的に1円で買える安価な端末は存在する。
まさに一部のユーザーが過度に得をする状態となる。一部のユーザーが過度な利益の供与を受けることは以前から問題視され、それが現在の改正電気通信事業法を制定するきっかけにもなった。
これが半分無意味になってしまう可能性があるのだ。
ただ、その一方で短期解約によるブラックリスト入りを理由に、消費者庁等に相談が寄せられている事も事実だ。
契約者本人がやむを得ず携帯電話を短期解約した際にブラックリスト入りとなれば、その名義を使っての契約はもうできなくなる。
例えば、お子様の携帯電話を親名義で契約するといったことができないのだ。
総務省がこのような見解を示した以上、携帯キャリアや販売代理店は転売目的のユーザーと、やむを得ず短期解約しなければならなかったユーザーを見分ける仕組みが必要となる。
これに関しては、他のキャリアとも連携が必要になってくると思うが、この辺りの指導は総務省からは何もないのだろうか。
総務省としては、法に対し誤ったことをしている業者を指導するのはとても大切なことだと思う。その一方、市場実態を把握していないかのような見解を示すのは、いかがなものかと思う。
ただでさえ、規制といたちごっこの無法地帯とも言える携帯市場。総務省はこれをさらに焼け野原にしたいのか、疑問を呈するところだ。
国民から「総無能」とは言われてほしくないものだ。