公正取引委員会が指摘したスマートフォンの廉価販売。
これに関わる緊急調査の取りまとめには、キャリアの端末値引きの背景も取りまとめられている。
代理店はMNP等による販売奨励金に、収入を依存してしまう構造になっていることが取りまとめられている。
携帯電話の過度な値引きには、代理店側の理由だけでなく、キャリア側からの「営業」によるものもあるようだ。
加えて、以前から言われるキャリアから代理店に課せられる契約数のノルマが厳しいこと、アクセサリーや端末単体販売での粗利がほぼないことなどが挙げられている。
そのため、MNP契約と合わせて携帯電話を廉価に販売する理由は、契約獲得による販売奨励金に収益を依存している部分がある。端末単体で利益が出ないこともあって"在庫隠し"と言った問題行為などにも繋がっている。
赤字の値引きで販売されるスマートフォン。穴埋めには、我々が支払った通信料金が使われている
さて、普通に考えれば高額なiPhoneが格安で購入、利用できるとなれば、どこかで値引いた分を穴埋めしなければならなくなる。
キャリアのiPhoneでは価格を直販よりも上乗せしていることから、メーカーからほとんど利益が出ないような金額で仕入れていると思われる。
そのようなことも調査では触れており、キャリアで販売されるスマートフォンの多くは単体収支では赤字のものが多い。
このため、通信料や付加サービス、オンライン(直営)販売での利益等で穴埋めする方法が取られているという。
スライドを見ると、多くの機種が赤字での提供となっている。意外にも定価より高価な価格設定のiPhoneですら赤字なのだ。
そのため、一括1円や24円維持といった破格で販売されるスマートフォンで作った赤字分の穴埋めには、我々が支払っている通信料金も大いに含まれている。
これは通信料金を支払うユーザーが、間接的ながら値引きされた端末分の料金を補填していることになる。
キャリアのスマートフォンが値上げされる理由は一括1円などの廉価販売も影響している
さて、多くの端末が赤字となっている状況をみると、キャリアでの端末価格が上がることも理解できる。
特に数が出ないハイエンド端末の価格は高騰し、ものによっては20万円を超える高価な設定になることも納得だ。
20万円近い価格設定となったAQUOS R7
これについては、安価なサブブランドやオンラインのプランが充実したこともあり、携帯料金の値下げが進んだ。その結果として、回線収入が減ったことも理由になりそうだ。
黒字の端末から赤字分を補填していると回答したキャリアもあることから、iPhoneやハイエンドAndroid端末などを高価な価格設定して、値引き販売する機種の穴埋めに回しているという見方ができる。
ここまでスマートフォンが高価では、多くの場合は分割購入となる。端末を分割払いしている以上、ほぼ確実に通信料も合わせて回収できる。
最終的にキャリアが回収する「お返しプログラム」を推すことも、端末の売却で確実に利益を確保できるといった狙いがありそうだ。
公正取引委員会が携帯業界にどう影響していくのか
さて、回線値引きが規制されてから、一部の端末の価格がやたらと値上げされた。その背景には、1円端末などの廉売によって生まれた赤字の存在も大きいと感じる。
確かに1円などの廉価で買える端末の存在は消費者にとってもプラスになった。
その一方で、この価格で提供できる背景には、我々が支払った通信料金、高価な端末料金から捻出した利益で端末販売の赤字を埋めている実態がある。
ある意味で不平等とも言えるような構図になっているが、これについても散々指摘された規制前から何も変わっていないのだ。
独占禁止法に絡むものについていくつか指摘をあげる公正取引委員会。今後キャリアに対してどのような対応、指導していくのか気になるところだ。