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ソニーのモバイルモーションキャプチャ「mocopi」をガチで2ヶ月使って分かったメリットとデメリット。誰でも楽しめるモーションキャプチャが現れた!

 ソニーが発売しているモバイルモーションキャプチャのmocopi今回、おおむね2か月使ってみて感じたメリット、デメリット、広がる可能性についてまとめてみよう

 

モバイルモーションキャプチャ「mocopi」とは

 

 これはソニーが発売しているモバイルモーションキャプチャという商品だ。価格も4万円台とこの手の商品としては比較的安価な点も特徴だ。
 軽量コンパクトであること、スマートフォンを制御ハブと、して利用する点がこの商品の特徴だ。

 

 今回の記事では多く触れられているモデルについてではなく、あくまで動作感を中心にお伝えする。使用した外部インポートモデルは「まりえる」となる。筆者の推しなので興味がある方は記事最後のリンクからチェックしてみてほしい。

 

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小型モーションキャプチャなのが売りの商品だ。
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VR向けイベントの「Vket 2022 Winter」でも公式ブースが設けられ、VRSNSユーザー向けにも大いに告知された。

 

軽量でコンパクト、簡単な接続設定。装着や充電に苦もないところがmocopi最大のメリット

 

 Mocopiの最大の利点は本体が軽量でコンパクトな点だ。トラッカーも腕時計並みに小型化されており、軽量となっている。

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センサー類はスマートウォッチよりも小型だ


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取り付けバンドもコンパクトに収められている

 

 光学式のモーションキャプチャーと異なり、特別な設備や服装を必要としないことは大きく評価したい。

 

 何より簡単なのは接続手順だ。6個のセンサーをペアリングし、スマートフォンに表示される手順通りに接続、装着。キャリブレーションを行うだけですぐに利用できる。


 この手の商品は初回設定が面倒なものも多く、取扱説明書を見ても「?」が浮かぶものある。その点、直感的に扱えるこの機械はすごいものだ。

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アプリの指示に従って簡単にセットアップできる。


 センサーも色分けされており、どこのセンサーを体のどこに付けるかも簡単に分かるようになっている。装着位置も概ね示されるので、センサーの向きなども合わせやすい。

 

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本体の収容ケースは充電器も兼ねる構造だ。
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本体はかなりコンパクトな仕上がりだ。スマートフォンなどと比較しても大型ではない。

 

肝心の精度はおおむね良好。4万円という価格と軽い装着感が何よりも最大の利点


 肝心のトラッキング精度については、すでに多くのメディアで触れられているが、概ね良好と言ったところだ。

 

 

 

 基本的にmocopiはアプリを「スタジオ」として利用するものになっており、このスタジオで動画収録したものを別途編集アプリ等で合わせていくものとなる。

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デフォルトはこのような背景だ。

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クロマキーも標準で備わっているので、基本的には透過素材として利用することになる。

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 また、配信画面は縦と横をそれぞれ選べるので、共有したいプラットフォームに合わせることも可能だ。

 


 そして、もう一つの機能がモーションの送信機能だ。これはモーションを同一ネットワーク内の端末に送信するものとなり、これを利用してVRChat等でも利用ができるものとなっている。

 一般的なプロトコル以外にもVRChat向けのOCSにも対応しているので、面倒な変換やアバター側での対応は不要だ。

 

 無線接続のリレーのようになる構成のため、この使い方ではモーションに若干のラグが現れる形となる。日常的な動きであれば問題ないが、音楽とのリアルタイム同期が必須の場面では違和感を感じることもあるはずだ。

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日常利用では問題なさそうだ。

 

 また、Meta Quest 2などのVRゴーグルに接続することで、PC不要のスタンドアローンVRでもフルトラッキングが可能だ。極端な話、ゴーグルとmocopiさえあればどこでもフルトラでダイブできるのだ。

 

 意外かもしれないが、mocopiはIP68の防水に対応している。なんと、装着したままシャワーはもちろん、お風呂やスイミング、滝行も理論上は可能だ。

 

デメリットはスマートフォンを選ぶこと、ソフトウェアの甘さか

 

 mocopiのデメリットはスマートフォンの性能が求められる点と、仕組み故のソフトウェアチューニングがまだ甘い点にある。

 スマートフォンの性能に関しては基本的な性能が高いものが求められる。これはスマートフォン側で6個のトラッカーの座標距離をリアルタイムで算出し、肘や膝の動きはAI処理で補正を行う仕組みとなるためだ。

 

 そのため。母艦になるスマートフォンの性能が求められてしまう。筆者のほうではたったの30台前後しか検証できなかったので、推奨スペックの算出までには至れていない状態だ。

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基本的にはハイエンド機との組み合わせが好ましい。


 そして何より、トラッカーの小型軽量化のためか通信はBluetoothで行っている。これがPCで直接使う上ではネックで、一般的なPCのBluetoothコントローラーでは6つのトラッカーを同期させるにはチップセットやアダプタの要求ギリギリで、接続が不安定になることが想定される。


 ソニーが純正でドングルを出してない以上、PCへの対応は難しいものだろう。(そもそもARM環境で動くようにしか設計していないのであれば無理だが…)

 

 一方でスマートフォンのBluetoothチップはかなり高性能かつ、ある程度均一な性能を持つものが採用されている。

 mocopiの場合はBluetooth通信で消費電力を抑えつつ、ハブユニットを外付けのスマートフォンに任せるものになっている。あの構成的には、そうせざるを得なかったというべきだ。

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 VIVE トラッカーは専用ドングルの2.4GHz帯の通信となるので、接続安定性ではまだ良いと思われる。こちらはトラッカーの数だけUSBポートが必要なのでまぁその。

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 廉価なHaritoraXはBluetooth接続だが、ハブユニットに各種センサーを有線接続しているため接続台数的には1台だ。こちらもBTO PCなどではBluetooth機能を備えていないこともあるため、別途ドングルが必要だ。

 また、セットアップも慣れている人間でないと難しいものがある。筆者も利用したことがあるが、安価とは言え手軽とは言いにくいものだった。

 

 そして現時点ではMocopiのモーションはAI補正などもあって「細かい動き」や床に座る系の挙動が苦手なものとなっている。

 例えば足をほんの少しだけ動かすような動作をつづけると、座標位置が揺らぐ関係で浮いたり沈んだりしてしまう。5分もするとこのようになるので、必要に応じてトラッカーのリセットが必要だ。

 

ただ、10分ほど使用すると、足が床に沈み始めるようだ。他のトラッカーに比べると高頻度でキャリブレーションが必要になる印象だ。

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このようなところでストレッチをすると挙動が怪しくなる。

 

 なお、このトラッカーのリセットはスマートフォン側でしかできず、装着状態単独ではできないものだ。「モバイル」のモーションキャプチャーでは便利だが、HMDを装着するVRSNS用途では使いにくいものになっている。


 スマホの画面をPCにミラーリングしてHMD側から操作することも不可能ではないが、機種がかなり限られるなど使いにくい。

 

 現時点ではアーリーアダプター層やVtuberの所属事務所などからフィードバックを得て、欠点の洗い出しなどをしている段階だ。言い方はあれだが、野生のVRChaterを使ったオープンデバッグみたいなものだろう。


 mocopiユーザーが意見交換を行えるDiscordサーバーもあり、様々なフィードバックが寄せられている。メーカーの担当者もユーザーコミュニティがあることは周知しているようだ。


モバイルモーションキャプチャーから見える「VRSNSの民主化」「アバターの表現力向上」


 このモバイルモーションキャプチャーから見える未来は意外と面白いものかもしれない。既にTikTokなどでは3Dアバターを使ったコンテンツも多くある。

 Mocopiがあればこのような動画のアップロードが、実質的にスマートフォンだけでも可能になる点は大きく評価したいものだ。


 最も、近年では物理的なトラッカー用いなくても、スマートフォンのカメラを利用したAI補正でできるものも開発が続いている。

 それでも手を体の後ろに回すと言った処理は苦手で、このような場面では確実に座標位置を算出できるトラッカーが優位となる。より自由度と精度の高いキャプチャーデバイスが求められる場面は少なくない

 

 mocopiはにじさんじのライバーに提供されており、実際にこれを用いた配信もいくつか行われている。

 個人勢と言われる事務所等に所属しないフリーのライバーでも、この商品は利用者が多い。

 筆者の元にも動作端末についていくつかご相談をいただいた。手軽かつ比較的安価な点が受けているようだ。

 

 本体がコンパクトなこと、屋外での利用も考慮されているため、従来では難しかったバーチャルタレントの「外ロケ」も容易に行えるようになった。身バレができないので、コンパクトな本体はありがたいのだ。

 筆者もこれを装着して街に出てみたことがあるが、不審な目では見られなかった。

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ゲーム機用のポーチにバンドや充電ケーブルも全て収まるmocopi

 

 外ロケと言うところでは、小さいポーチに必要なものが全て入る可搬性の良さも機材としては強いメリットだ。

 

 また、mocopiについても開発用のSDKが公開されており、これを用いたアプリケーションの展開も比較的容易なものとなっている。今後は対応したモバイルアプリなども登場してくることになるはずだ。


 誰もがアバターを持つ時代になりつつある今、このアバターに表現力が求められることは動画SNS時代において必須となるはずだ。

 そのために、ソニーとしては先行しているTof ARの技術とmocopiを組み合わせて、誰でも簡単に3Dアバターを用いて「個が持つ高度な表現」を可能にしようとしている。

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 VRChatなどのVRSNSにおいては「動き」は個の個性そのものになる。何気ない仕草などは、ユーザーを個性を構成する大切な要素だ

 

 メタバースで大切なものは、きな臭いビジネスチャンスでも、華やかすぎるピカピカキラキラなものではない。

 

 あくまで我々が生きる上での生活のプラットフォームの一つに過ぎない。その中では「バーチャル空間における個の表現」というものは個を識別する大切な要素だと感じる。

 

 mocopiはそれを手軽かつ簡単に拡張できる。バーチャル空間で体を動かせるのはとても面白い体験だ。ある意味、ちょっぴり未来のを感じられるデバイスなのかもしれない。

 

 

www.hayaponlog.site

 

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