MWCバルセロナなどにて話題を呼んでいた、3D表示に対応したZTEの「nubia Pad 3D」というタブレット端末がある。今回、携帯電話研究家の山根さんより実機を見せていただくことができたので、簡易レポートといく。
nubia Pad 3DはZTEが展開するタブレット端末だ。名前の通り、3D表現に対応することが売りながら、3Dメガネを必要としないものが特徴だ。
本体は金属ボディとなる
本体は4つのスピーカーを備える。本体の厚みもある関係で低域もしっかり出るサウンドだった。一方で、イヤホンジャックは非搭載となる
スペックとしては、SoCにSnapdragon 888を採用しており、タブレット端末としては高性能な仕上がりとなっている。
メモリは8GB、ストレージは128GBとなる。ストレージは少なめだが、SDカードも利用できるようだ。
そして何よりも特徴は3D表現に対応した12.4インチのディスプレイだ。解像度は2560×1600となり、解像感も悪いものでは無い。アメリカの「Leia社」が開発した3D表示技術を使用することで、この大画面でも3D表現を可能にしている。
画像では分かりにくいが、実機を見るとたしかに立体感が表現されており、奥行きのある表示が可能となっていた。
その一方で3D表示については「コンテンツ」の不足が考えられる。nubia Pad 3Dでは本体のカメラを用いて簡単に3D表示可能な写真を撮影できる。
本体のリアカメラも2眼となる。意図的に視差をつけて撮影することで、立体表示が可能となる。
本体上部に2つあるフロントカメラ。写真や動画の撮影はもちろん、顔認識を行うことで左右にズレた映像を表示できる。従来よりも追従性が高く、酔いにくい3D表現が可能となるのだ。
加えて、画像のほかYouTubeなどの動画を擬似的に3D視聴用に変換して閲覧することも可能だ。既存の動画や写真もある程度変換することで3D表現を楽しめる。過度なコンテンツ不足に喘ぐ必要は無さそうだ。
YouTubeに投稿されているミリシタのMVも3D表示できた。
実はnubia Pad 3Dにおける3D表現の仕組みは「裸眼立体視」と呼ばれるものを使用する。仕組み的には任天堂3DSと同じようなものとなるが、視野角や解像度を大幅に向上させた発展型と言えるものとなっている。
さて、今回は短時間だけ触ることができたが、個性的で面白い商品であることは認識できた。その一方で荒削り感のある部分は否めなかった。
例えばバッテリー持ちだ。本体には9070mA/hの大型バッテリーが搭載されているが、これでも少ないと感じる場面があった。
特にYoutubeの動画を変換して利用する際には特に電池を消費し、15分ほどの視聴で10%ほど消費した。
あわせて3D表示中は本体も発熱が目立った印象だ。Snapdragon 888を搭載しているとはいえ、スペック不足気味であることは否めなかった。
原理的には2画面の表示(左右の目用)をしているものに近く、これをリアルタイムで変換し、カメラで顔認識しながら使用するとなればかなりの負荷がかかるものとなる。3D表示を可能とするには高い性能が求められるのだ。
加えて、全てのアプリが3D表示できるわけでない点も注意点だ。あくまで動画投稿サイトなどのものを変換してから表示するものとなるので、ゲームなどでは利用できないようだ。
そのような意味では、既存のコンテンツを変換して数を補うことはできるとしながらも、3D表示によるコンテンツの消費に重点を置いたタブレット端末だと考えるべきだろう。
ただこれも、展示会や常設展示ブース等の用途で割り切るのであれば、前述のバッテリー持ちの悪さは台数や電源接続でカバーできそうな印象だ。
現時点のnubia Pad 3Dのすごさは、正直なところ実機に触れてもらわないと実感するのは難しいものだ。感覚的なイメージは3DSと同じなのだが、それをより高解像度かつ、「3D酔い」を抑えるように更に発展させたものと考えると伝わるかもしれない。
ZTEとしてもまずは商品に触れてもらって、本格的な展開はこれからという試作機的な側面も多いのだ。
筆者としては、3Dモデルやコンテンツの表示に大きな威力を発するものになっていると感じた。
これからはVRChatをはじめとしたメタバース空間内での体験を、現実世界に持ち込むとと言ったソリューションも展開されるはずだ。
そのような用途では3D表示のできるフォトフレームのように利用できる。まさにバーチャル空間のオブジェクトを持ち帰り、タブレット端末で擬似的に3D表示させることが可能なのだ。
VRChatのような「空間を共有できるSNS」があるのなら、空間の中のものを切り取って表示できる端末の需要も決してない訳では無いのだ。
また、3Dキャラクターのライブやアバターを用いた公演等のイベントを表示するのも面白い。適度な立体感も得られ、SF作品のような「画面の上でキャラクターが舞う」といった表現もできる。
現実世界のものを表示させるよりも、かえって現実離れしたものの方が認識的な観点で見ても相性は良さそうだ。
例えばデレステのMVを再生すると箱庭感はあるものの、紙吹雪のエフェクトとあわせてステージの距離感が感じられ、立体感も得られるものとなった。
そんなnubia Pad 3Dだが、ZTEの公式サイトにて1199米ドルから購入できる。一般向けにはやや高価な設定となるが、この商品のターゲットは主に法人向けとなるようだ。
さて、このような端末が受け入れられるかどうかは、まだ判断しきれないところもある。かつてシャープが「裸眼立体視表示可能なスマートフォン」を出した頃に比べると、民衆の理解も追いついたものとなっている。
この仕組みを用いた3DSの登場から10年以上が経過し、多くの方が体験したと言っていいくらいのものだ。
nubia Pad 3Dはコモディティ化してきたタブレット端末の市場に「3D表示」という新しい視聴体験を持ち込んだ機種となった。
端末自体も技適を取得してることから、日本でもイベント等での使用のほか、少数の販売も考えられる形となる。日本での正規展開を期待したいところだ。