Googleが5月11日に発表した折りたたみスマートフォン「Pixel Fold」とタブレット端末となる「Pixel Tablet」。
どちらも日本で販売が予定され、Pixel Foldはドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアでも販売される。
今回はGoogleがこのタイミングでこのような端末を出す点を考えてみる。
- "開発用リファレンス"が今まで存在しなかった折りたたみスマホ
- 賞味期限切れとなったリファレンスタブレットの置き換えが「Pixel Tablet」
- Googleの折りたたみスマホとタブレットの登場で、アプリの最適化がより一層進むきっかけに
"開発用リファレンス"が今まで存在しなかった折りたたみスマホ
折りたたみスマホ(以下:フォルダブル端末)と言えば、2018年に発売されたRoyoleの"FlexPai"に始まり、翌年の"Galaxy Fold"の登場で世間にその名を知らしめたジャンルの商品だ。
その一方で、この"画面サイズが可変する"デバイスのソフトウェアは開発が難しいところがあり、今なおGalaxyやHuaweiくらいしか「ソフトを含めて完成度が高い機種がない」と言われる所以だ。
そんな中、Android OSを束ねるGoogleも黙っているわけではなかった。世界的なフォルダブル端末の需要の高まりから、大画面への最適化を行なった「Android 12L」をリリースした。
これ以降は大画面に最適化され、フォルダブル端末も使いやすく、ソフトウェア面のハードルが下がったことで参入障壁も下がったのだ。
これに伴い、OPPOやVIVO、HONORなども本格的に参入し、多くのメーカーから製品が登場することになった。
ペンも利用できるHONOR Magic Vs
意外かもしれないが「開発用リファレンス」と呼べる端末がこのジャンルにはなかったのだ。実質的なリファレンスとなっていたGalaxy Foldでも、最新OS対応には時間がかかり、オンタイムでの最適化は難しいものがあった。
今後、このような端末は多くのメーカーから発売されることが考えられ、フォルダブル端末の"折りたためる機構"を生かしたコンテンツの登場や各種最適化も考えられる。
そのような中で、最新OSがアルファ版からオンタイムで利用できる「Pixel」がフォルダブル端末を出したことはかなり大きな意味を持つ。
各種アプリといったコンテンツの最適化などが早まり、市場全体でのフォルダブル端末のユーザー体験が向上するのではないかとも考えられる。
Googleがこのような商品を出すことはある意味、次世代の端末における「ひとつの答え」が出たと捉えてもいいところまで来たのだ。
Google Pixel Foldはカバー画面が5.8インチ、メイン画面が7.6インチとなるフォルダブル端末だ。どちらの画面も120Hzのリフレッシュレートに対応している。
プロセッサはTensor G2を採用し、メモリは12GB、ストレージは256GBとなる。4800万画素のメインカメラ、1080万画素の超広角カメラと5倍望遠のカメラを備える。
本体は防水に対応し、畳んだ時の厚みは12.1mmと抑えた点が特徴だ。重さは283gとなる。
賞味期限切れとなったリファレンスタブレットの置き換えが「Pixel Tablet」
Googleがタブレット端末を出すことは初めてではない。かつての「nexus」の頃は"nexus 7"(2012〜13)、"nexus 10"(2013)、"nexus 9"(2014)と言った形でリファレンスタブレット端末が登場していた。
Pixelにブランディングされてからは"Pixel C"が2015年に登場したが、それ以降GoogleはChromebook端末に注力したこともあり、同社からAndroidタブレットは現れなかった。
2015年に発売されたPixel Cを最後に、Googleから長らくAndroidタブレットは出ていなかった。
2016年以降はGoogle PixelBookなどの"Chromebook"に力を入れていたGoogle。2016年にはPlay StoreのAndroidアプリがChromebookで動かせるようになるなど、外的要因もあったことだ。
そんな中で流れを変えたものが「Android 12L」の存在だ。世界的なフォルダブル端末の需要の高まりから、大画面への最適化を行なったものになるが、この中にはタブレット端末への最適化も含まれている。
このAndroid 12Lの登場以降、中国メーカーを中心にAndroidタブレット端末が多く登場している。
フォルダブル端末とはコスト面などとも異なるジャンルとなり、Windows PCなどとも被らない部分でユーザーのニーズに応えている。
Xiaomi Pad6は中国でも人気のタブレット端末となっている
需要が増してくると、アプリ側の対応も急務になってくる。そうなると、Googleとしてもリファレンス端末が必要になってくる。先に述べた"Pixel C"はAndroid 9.0でサポートは終了しており完全に賞味期限切れだ。
Pixel Tabletはスマートホームハブやスマホの拡張という意味はもちろん、これからのAndroidタブレット端末の最適化の布石として出す意味が強いのかもしれない。
Pixel Tabletは11インチのディスプレイを備えるタブレット端末だ。プロセッサはTensor G2を採用し、メモリは8GB、ストレージは128または256GBとなる。
Chromecast built inに対応し、タブレット本体にChromecastで映像をスマートフォン等から送ることが可能だ。
Googleの折りたたみスマホとタブレットの登場で、アプリの最適化がより一層進むきっかけに
さて、フォルダブル端末もタブレット端末も「Googleの出すリファレンス端末」がなかったことが、今回の発売につながったものと考える。
このリファレンス端末の存在はユーザーよりも端末メーカー。はたまた「アプリ開発者」にとって大きな追い風になる。特に日本ではGoogleの力は強く、Pixel Foldはフォルダブル端末として初の「大手3キャリア展開」を勝ち取った商品となる。
開発者としても最新の物理環境で動かせる点はもちろん、Googleのマルチタスク等の考えに沿って実装させれば、仕様に準拠した他社の端末でも概ね動作できる保証にもなる。
特にタブウィンドウの挙動、フォルダブル端末のカバー画面の挙動など、現時点ではメーカー独自実装となっている部分もある。これがOSレベルである程度共通化されれば、アプリ開発者が無理やりこれに合わせる必要もなくなるのだ。
Pixel Foldで示した「カバー画面に翻訳画面を表示する」と言ったメイン画面とカバー画面を同時に利用する提案は、スマートフォンの新たな利用方法を模索するきっかけにもなる。
このようなことは純正アプリでもできるものは少ない
タブレットに関しても大画面UIとスマホUIをうまく最適化させる基本的な部分を作れば、動画視聴アプリなどは簡単な最適化だけで、かなり快適になるはずだ。
他社では先行実装されているものでも、Googleが示しをつけるというだけで意味は大きく変わる。
最後になるが、このタイミングでGoogleがフォルダブルとタブレット端末のリファレンスを出してくることの意味として、メーカーの独自実装だった部分をある程度共通化させてより良い体験とすることだろう。
これによってスマホを便利に利用するアプリの開発も「フォルダブル端末向け」「タブレット端末向け」にもっと注力して行われるのではないかと考える。
Googleが発売したフォルダブルスマホとタブレット。これらの登場によって更なる市場の発展を期待したい。