5月15日、京セラは一般向けの携帯電話事業から撤退する方針を明らかにした。数多くの端末が世に出たが、その中でも一際ファンから愛されたスマートフォンがタフネス端末の「TORQUE」だ。
TORQUEを製造販売していた京セラが撤退したことで、このニッチなタフネススマホの後継機種の存在はかなり絶望的になってしまった。
今回は後継機種が存在するのかチェックしていきたい。
- 海に沈めても大丈夫なら最強のタフネススマホ TORQUE
- TORQUEの代わりになるスマホを探す。日本にはあるのか?
- 海外を見てみる。近いものは存在する
- もうTORQUEのようなタフネススマホは発売されないのか
海に沈めても大丈夫なら最強のタフネススマホ TORQUE
製品のルーツはau向けにNECカシオが販売していた「G'zOneシリーズ」の流れを汲む製品となる。
2011年には同ブランドを冠する初のスマートフォン「IS11CA」が発売され、翌年に出た後継機の「CAL21」が発売。
ただ、NECカシオが2013年に携帯電話事業から撤退したことで、これが時代最後の機種となった。
特徴的なデザインだったCAL21
そして、このタフネススマホのノウハウを京セラが引き継ぎ、auで販売されるタフネスモデルのDNAを受け継いだ機種が「TORQUE G01」となる。これが2014年発売の初代モデルだ。
京セラ自体、タフネスAndroidスマホの製造ノウハウがあり、2013年にはアメリカで「Torque E6710」(日本向け:SKT01)を販売していた。auでシェアを集めたG'zOneの後継としても適任だったのだ。
TORQUE G01はG'zOneのコンセプトをかなり色濃く受け継いだ機種となった
その後、海水対応や耐衝撃、低温下での耐久性を強化した後継機が概ね2年おきに登場した。
今回の京セラの撤退に伴い、TORQUEの現時点での最新モデルは2021年発売の「TORQUE 5G」となった。
防水防塵、耐衝撃はもちろんのこと、海水に浸したり、凍り漬けにした低温環境でも動作する。
振動試験もクリアするなど、世界的に見ても類を見ないタフネススペックのスマートフォンだ。それゆえに、後継モデルの存在がかなり狭まるものとなる。
TORQUE 5Gはauから販売されている
TORQUEの代わりになるスマホを探す。日本にはあるのか?
日本発売のスマートフォンを見てみるが、これに匹敵するタフネススペックを備えたスマートフォンは存在しない。
ミルスペックと呼ばれるMIL-STD810に準拠した機種はシャープなどから一部存在するが、TORQUEのように海水に沈めたり、2トントラックに轢かれても動作保証はできない。
また、Unihertzなどのメーカーからタフネスを謳う機種も出てはいるが、TORQUEはどの耐久性は期待できない。
BlackviweやOUKITEL、UlefoneなどのECサイトにて展開される中国メーカーの機種もあるが、これも海水に沈めたり、高所から落とした際に動作するか否かの保証はできない。
そのような意味でTORQUEに最も近いものは、パナソニックのTOUGHBOOKだろうか。
パナソニックのFZ-N1はSnapdragon 660に4GBのメモリ、64GBのストレージを備える。スマートフォンとして利用する場合は、バーコードリーダを備えない「フラット」のモデルがおすすめだ
ただ、販売チャネルが法人向けになるなど、購入にはかなりハードルの高い商品となる。重量も軽量と言いつつ255gとTORQUE 5Gより重たい。
海外を見てみる。近いものは存在する
ここからは海の向こうに目を向けてみる。タフネススマホと言えばサムスンの「Galaxy X Cover 6 Pro」やCatの「S62 Pro」、AGMの「G2」などが著名ところだ。
Galaxy Xcover 6 ProはSnapdragon 778G、128GBのストレージを採用するなど、タフネススマホとしてはかなりスペックは高い。
TORQUE 5Gの後継機と呼べるだけのスペックを備えているが、耐久面ではやや劣るようだ。
5000万画素のカメラを備え、専用クレードルで充電可能など、基本性能はかなり高いGalaxyのタフネススマホだ
TORQUEのタフネスさに最も近いものはAGM G2だろうか。こちらはIP68の防水防塵に加えIP69Kにも対応。耐衝撃もMIL-STD810Hに準拠している。
-40℃の環境でも動作し、砂地に埋めたり、川に落としても動作するとしている。
IP69Kは高圧洗浄機やスチームクリーナー等で本体に水流を吹きかけても破損しないで正常に動作することを示している。
スペックもSnapdragon 782Gに1億画像のカメラを採用するなど、基本性能も高い。
もうTORQUEのようなタフネススマホは発売されないのか
最後になるが、TORQUEの後継機と呼べるようなタフネススマホはかなり少ないものであった。数値上は並ぶものがあっても、海水対応なんてイかれたスマホはそう多くなく、今回例に挙げた機種も海水はNGだ。
京セラも法人向けには事業を展開するとしているが、TORQUEのサポートや販売は続けても新機種が出る可能性はなんとも言えないところだ。
仮に出ても法人向けという理由から、後継機を望むユーザーには届かない可能性が高い。
そのため、TORQUEの後釜と言える存在をau主導でどこかのメーカーが作ることは考えられないだろうか。
auとしても20年にわたって展開を続けたタフネス端末なだけに、今さら後継機を出さない訳にはいかない。
G'zOneの遺伝子がNECカシオから京セラに引き継がれたように、TORQUEの遺伝子をどこかに引き継ぐ手引きをすることは十分に考えられる。
そのようになると、対応するメーカー…いや、対応できるメーカーはシャープかFCNTくらいになってくる。
どちらも端末のアッセンブリーについてはクオリティも高く、auやかつてのTORQUEチームが監修すれば、ファンも納得の製品に仕上げてくることだろう。
ただ、京セラのスマホ事業を撤退に追いやった要因のひとつでもあるTORQUE。
あまりの頑丈さに物理的に壊れず、バッテリーや外装も交換できるなど、わざわざ新機種に乗り換える必要がないのだ。
これによって乗り換え頻度が少なくなり、売り上げが減少したことは事実だ。
日本でもとてもニッチな部分で大きな支持を集めたTORQUE。これの後継機が出ることを切に望みたいものだ。
5月16日追記:
携帯電話については、一般向けの通常商品(Android One製品など)からの撤退としている。
TORQUEをはじめとしたタフネス商品などの一部商品については、開発及び販売を継続するとした。
また、auも「TORQUEの次世代機」の開発を既存ユーザー向けにメールにて公表しており、近いうちに皆さんにお知らせできるとしている。
TORQUEについては、当面の間は後継機種については出てくれそうだ。