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Huawei P60 Pro レビュー 5GやGoogleは使えないけど、次世代のトレンドとなるカメラ性能を備えたスマートフォン

 ファーウェイが2年ぶりに発売した「カメラフラグシップ」のスマートフォンである「P60シリーズ」。

 制裁の関係で発売が危ぶまれもしたが、同シリーズは実に2年ぶりの発売にこぎつけている。今回は実機を入手できたので、レビューしていきましょう。

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筆者も無事に入手できた

 

 

可変絞りに明るい望遠カメラ。次世代のトレンドを備えるHuaweiのフラッグシップスマホ

 P60 Proのデザインを見て、まず目が行く点は特徴的な背面カメラだ。海外ではこの配列から「コアラ」などと評されていた。

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確かにコアラに見えなくもない

 

 メインカメラには特許を取得した6枚羽の可変絞りを備え、物理的な絞り羽となっている。スマートフォンとしては過去に例の少ない構成で、絞りが6枚羽になっている点が大きなポイントだ。

 ステップ幅も大きく、柔軟に光量を調整できる。また、絞り羽なので光芒を演出することが可能となっている。

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可変絞りの動作。真ん中のメインセンサーの絞りが変化している

 

 Huawei P60 Proはメインカメラに4800万画素のソニー製イメージセンサーを採用。従来とは異なる仕様となる新型のセンサーとなっており、Mate 50シリーズ同様にRYYB配列のものが採用されている。このP60 Proでは加えて1300万画素の超広角カメラ、4800万画素の3.5倍望遠カメラが搭載されている。

 

 P60 Proの特徴として挙げられるものが、望遠カメラだ。光学3.5倍の構成は近年のフラグシップで見かけるが、レンズがf2.1とこの手のものとして極めて明るいのだ。

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望遠カメラの有効画素は4800万画素となっている

 

 これに加え、最短撮影距離が10cmと潜望鏡方式の望遠カメラとしては極めて被写体に寄れる点もポイントだ。カメラ性能重視のスマートフォンでは、近年「マクロ撮影」も各社意識しており、ファーウェイも存在感を示すメーカーのひとつだ。

 直近では歪みが少ないテレマクロ撮影に各社シフトしており、Xiaomi 13 Proなど評価の高い機種もある。P60 Proについても、構成的にはこれに並ぶかなり高い評価を持つ機種となっているのだ。

 

 このテレマクロを可能にしているもうひとつの要素が「センサーシフト式の手ぶれ補正機構」だ。スマートフォンにおけるペリスコープ方式の望遠カメラにて、同機構の採用は世界初となるようだ。この強力な手ぶれ補正のおかげで、風になびく花などもブレを抑えて撮影できる。

 

 この可変絞りを備えるメインカメラ、明るい上に、テレマクロ撮影可能な望遠カメラは間違いなく次年以降のトレンドとなってくる部分だ。P50 Proの際に3.5倍の倍率で高画素センサーを採用したが、これも今ではvivoやZTEで採用されるなど他社の機種にも大きな影響を与えている。これと同じことが来年発売のスマートフォンにも起こるのではないかと考えると、非常にワクワクさせられるものがある。

 

 そして、P60シリーズの注目する点として、Huawei image XMAGEの存在が挙げられる。ライカとの提携が終了したファーウェイにおいて、技術革新、撮影体験の革新を目的に新たな画像処理技術のブランディングとして展開される。

 

 XMAGEの基盤となる部分は、レンズ機構をはじめとした光学機構、RYYBセンサーやといったイメージングハードウェア、マスターAIやXD Fusion Proに代表される画像処理技術の3つに代表される。ファーウェイはこれらの分野には、継続的に技術開発投資を行っている。

 

 写真の温かみやリアリティといったところも注力しており、これらの要素がファーウェイのイメージングトレンドに大きく関わってくる。これらを継続的に進化させることで、次の時代の撮影体験を切り開こうとしている。ライカの恩恵はあれど、モバイルイメージングの分野におけるファーウェイの自信を感じられるものだ。

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カメラ部の刻印は初の「XMAGE」となった

 

写りに文句なし。Huaweiスマホのカメラはやっぱり最高だった
 

 そんな可変絞りと新機構の望遠カメラ。XMAGEのノウハウが満載となったP60 Proでの作例は以下のようになる。作例は全て撮って出しの無編集の状態だ。

 

 P60 Proの写りを見て感じるものは、HDR補正が大きく入り、白飛びがかなり抑えられていることが分かる。

 

 前作のMate 50と比較してもとディテールの表現や、暗所でのカラーバランスがより適切なものに進化した。カメラフラグシップなだけあって、このあたりは優秀だ。

 フィルターにはXMAGEオプションがある点も特徴となっている。「VIVID」と「BRIGHT」が用意されており、従来のライカフィルターに準ずるものになる。

 

 望遠性能も見事だ。P60 Proでも3.5倍の望遠カメラを備えるので、構成的にはMate 50 Proなどに近いものとなっている。そして、暗いところでも明るく、手ブレも抑えて撮影できる。f2.1の明るいレンズに加え、センサーシフト式の手ぶれ補正機構を採用しているだけはある。

 

そして、寄れる望遠カメラを用いたテレマクロ撮影も見事だ。

 

 この部分に関しては「Xiaomi 13 Pro」評価が高いが、体感的にはこの機種よりもP60 Proの方が撮影しやすいものであった。

 

 

 作例を比較すると、Huawei P60 Proのほうが背景ボケも大きく、より"ふんわり"とした仕上がりになる。明るい望遠カメラなので、暗い場面でもしっかり撮影できる点は評価したい。

 

 

超広角カメラも優秀だ。スペックはそれほど高くは無いが、ソフトウェアの補正がガッツリ入るため多くの場面で利用できる。この部分の性能は、上位機種の「P60 Art」にてより強化されている。

 

P60 Pro XMAGE VIVID f1.4

P60 Pro XMAGE VIVID f4.0

 

 可変絞りの効果も大きい。センサーサイズやや小さいこともあり、f4.0ではかなりシャープな描写も可能だ。オート撮影の場合、十分に光量を確保できる昼間では基本的に絞って撮影するような挙動を見せ、開放で撮影する場面は少なかった。

 

 

 P60 Proで撮影していて、最も特徴的なものは料理の写真だ。AIが料理を認識すると、f3.5やf4に絞って撮影するので、変にボケたり流れる描画が少なく綺麗に撮影できる。これは可変絞りを生かした表現となり、柔軟に絞れる点では現時点で唯一無二の存在となる。

 

 

 

 「アパチャーモード」を仕様して、絞りを自由に調整して撮影できる点も面白い。環境が揃えば、手持ちながら光芒も撮影できる。

 物理的な可変絞りと高度な画像処理の組み合わせは、スマートフォンのカメラにもまだまだ技術革新が起こるものと感じさせる。

 

 

 夜景モードもファーウェイのスマートフォンらしく、白飛びを抑えて綺麗に撮影することができる。標準カメラはもちろん、望遠カメラも明るいレンズと強力な手ブレ補正によって、従来よりも撮影しやすくなっている。

 


10倍望遠の夜景モードでも、手持ちで綺麗に撮影できる。暗いところでも撮影の幅が広がるものだ。

 

高性能カメラ以外もしっかり進化。Snapdragon 8+ Gen 1 4G搭載のハイエンドスマホ

 

 Huawei P60 Proに関しては可変絞り搭載のメインカメラ、明るい望遠カメラなどに注目が行きがちだが、画面や基本性能なども評価したい。ざっとスペックを書くとこんなところだ

 

SoC:Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1 4G Mobile Platform
メモリ:8GB
ストレージ:256/512GB

画面:6.67インチ FHD+ OLED 120Hz対応

 

カメラ


リアカメラ
メイン:5000万画素 1/1.43型センサー 27mm相当 f1.4-4.0
超広角:1300万画素 15mm相当 f2.2
望遠 :4800万画素 95mm相当 f2.1

フロント:1300万画素

 

バッテリー:4460mA/h
88W急速充電
50W無接点充電対応

衛星通信対応(中国版のみ)

 

 核となるプロセッサはSnapdragon 8+ Gen 1 4Gを搭載している。ファーウェイのPシリーズは前年のMateシリーズと同じプロセッサを採用するので、この辺りは例年通りとなる。今年のハイエンド機としては少々物足りなさもあるが、高いスペックを持つ点はしっかり押さえている。

 

 スマホとして使ってみると、基本スペックはハイエンド機なのもあって動作にストレスは感じない。Snapdragon 8+ Gen 1搭載なので、よほどのことをしない限り発熱で「熱い」と感じることは少ない印象だ。搭載メモリは8GBとなっている。

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高性能なだけあり、原神も比較的快適に動作する

 

 ディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応するOLEDディスプレイを採用する。LTPO制御にも対応しており、1〜120Hzまで柔軟に駆動できるので、よりシームレスに動作させることが可能だ。

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本体ディスプレイも進化した。ガラスは独自開発のKunlun grassを採用し、落下等の物理的衝撃に耐えられるとしている。


 カメラ以外の大きな売りとしては、衛星通信対応と同社の端末とのシームレスな接続を売りにしたHarmonyOS 3.1になる。この衛星通信機能は北斗を用いたものとなっており、緊急時にショートメールやSOS信号の発信が可能だ。

 

 これは中国版のみ利用できる形となっており、グローバル展開される機種では利用できない。理由として北斗(中国版GPS)の機能に依存しているからとしている。

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 OSはHarmonyOS 3.1を採用。同社が提唱する「シームレスな接続」を売りにしており、連携機能がより強化されている。システムとしてはAndroid 12に近いものになっているようだ。

 

 P60 Proでは88Wの急速充電にも対応している。20V/4.4Aという中々見ない規格だが、従来の66Wよりも高速で充電できるようになっている。また、ワイヤレス充電は50Wのものに対応している。

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専用のACアダプタとケーブルは同梱される。ACアダプタは別途Type-Cケーブルも利用できる2つ口となっている。

 

カメラ性能が高くても、Googleと5Gが利用できない点が大きな足かせ
 

 2023年を迎えたが、米国のファーウェイ対する制裁は今もなお続いている。5G通信についてはサードパーティーから「5G対応ケース」なるゲテモノがP60シリーズ向けにも販売されている。専用のeSIMを用いる仕様のため、中国以外で利用するのは難しいとのことだ。

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販売されていた5G対応化ケース

 

 それでも、中国市場においても5G非対応のハイエンドスマートフォンは、販売に先立って大きな足かせとなっている。そして、グローバル展開する上では、Google サービスが利用できない点が大きなネックだ。HMS内のストアに当たるApp Galleryは明らかにアプリ数が少なく、日本においての実用は極めて難しい。

 

 この件については、グローバル向けにLighthouse(Googleのアプリを利用するアプリ)をHuawei公式が「便利なサードパーティーのアプリ」として紹介している。通知や同期周りにかなり難があるが、主要サービスは7割くらい利用できる感覚だ。

 

 

次世代トレンドを多く備えるP60シリーズ。スマホカメラの進化は止まらない

 

 P50シリーズから2年越しの「カメラフラグシップ」となったP60シリーズ。2021年のP50 Proの発売時に「最後のHuaweiハイエンドになるかもしれない」と書いた。あれから2年経ち、今となってはその時の考えは杞憂だったようだ。

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P50 Proと比較するとデザインは大きく変わった

 

 P60 Proを使ってみて、改めてファーウェイが持つ画像処理のノウハウの高さと、スマートフォンのカメラにおける「次の時代のカタチ」を見せつけられた。一方で、ファーウェイでは制裁の関係で、他社のように高性能な部品を搭載することが難しくなっている。それでもP60向けの部品の一部は専用設計となるなど、同社の力が制裁下でも大きいことを示している。

 

 また、P60シリーズでは大型のイメージセンサーを採用できない分、より多くの光を取り込めるRYYB配列のセンサー採用し、f1.4という明るいレンズを採用している。制裁というハンディキャップを背負いながらも、カメラ性能向上のために様々な工夫を凝らしていることを感じ取れる。レンズが明るいと昼間では露出オーバーになりやすい点も、可変絞りでカバーする考えはスマートフォンとしてはかなりユニークだ。 

 

 これに加えてXD Fusion Proと言った高度な画像処理もあわせて行っている。手持ち夜景撮影で光芒を出しながら、HDR処理まで同時に行なってしまうカメラは世界中探してもそうないはずだ。


 さて、ライカとの提携を解消して以降、Huawei image XMAGEを本格採用したP60シリーズ。2016年発売のP9から始まったライカとの提携は同社のスマートフォンのカメラ性能を世界最先端まで引き上げ、今ではカメラの高性能化は世界的なトレンドとなった。

 P60 Proでもライカ提携のノウハウは生きており、XMAGEではそれを次のレベルに高めようとしているように感じることができた。


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中国でのファーウェイは今でも「カメラ性能の高いスマートフォン」として認知され、制裁を感じさせないほど注目されている。筆者が行った深センの店舗も多くのお客さんで賑わっていた。

 

 その一方で、制裁が加わり、5GやGoogleにも対応しなくなったことで、日本では販売すらされなくなったファーウェイのスマートフォン。「制裁受けているのにまだスマホを出せるのか?」と思った読者の方もいるかもしれない。日本メディアの注目度も以前より下がっている点も否定できない。

 

 理由としては、Google サービスが利用できない、5G通信に非対応といった日本では使いにくいと言った「足かせ」があることだ。どれだけカメラ性能が高くても、個性的で面白くても、HarmonyOSが魅力的でも、この「足かせ」のためだけに"選んでもらえない"ことは事実だ。これらについては率直に言って「惜しい」と言わざるを得ない。

 

 その一方で高性能なカメラ性能、衛星通信やシームレスな機器との接続を売りとするHarmonyOS 3.1の存在は大きい。制裁下と言えど。しっかり作り込まれたスマートフォンであることは変わりない。これらの要素は、今後のスマートフォンのトレンドにおいて、各社に大きな影響を与えるものとなる。今後の当たり前となる分野を先取りしていると考えれば、これだけでもP60シリーズを選ぶ価値はあると思う。

 

 

 そんなP60シリーズの価格はベースグレードのP60で4999元~(10万5000円前後)、P60 Proで6899元~(13万2000円前後)、P60 Artで8999元(中国のみ 19万1000円前後)の設定となる。

 

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 P60 Proは「あえて買うか」と言われると微妙な選択とはなるが、ファーウェイのスマートフォンをずっと追いかけ続けたファンを決して後悔させない仕上がりだ。制裁の中でも次の世代を見据えるファーウェイ。P60 Proはその片鱗を見せてくれるスマートフォンだ。

 

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