今まで聴いてきたイヤホンは300本以上!ライターはやぽんです。今回は、株式会社伊藤屋国際様より取り扱いのブランド NF Audioの新型モデル「RA15」を提供いただきましたので、レビューしてみよう。
- NF Audioの新作ダイナミック型イヤホン。メタルシェルが美しい本体
- ノズル交換でガラッと「音変」好みに合わせてチューニングを変えられる二刀流イヤホン
- 1本で2度美味しい。クールとウォームサウンドの二刀流イヤホン
NF Audioの新作ダイナミック型イヤホン。メタルシェルが美しい本体
NF Audioは中国のイヤホンメーカーで、当初はカスタムIEMを手掛けていた。現在はユニバーサルモデルの低価格な製品も展開しており、多くの価格帯で意欲的な製品展開を行っている。
人気ゲーム「荒野行動」とコラボしたゲーム向けイヤホン「RG05」や、ネットワーク回路内蔵のフェイスプレートを変更して音を変えられる「NE4 Evolution」といったイヤホンが日本でも注目を集めた。今回レビューのRA15はノズルの交換で「音変」ができるイヤホンだ。
パッケージは一般的なイヤホンのサイズだ。開封体験も1万円前後のイヤホンとしては標準的だ
本体は金属筐体となる。比較的小型なので耳への収まりは良い。
付属品はイヤホン本体のほか、4サイズのイヤーピース、キャリングポーチと充実している。
ノズル交換でガラッと「音変」好みに合わせてチューニングを変えられる二刀流イヤホン
NF Audio RA15は、MC2L-10Mというダブルキャビティダイナミックドライバーを採用している。これによって空気の流れを調整し、振動版の駆動を最適化している、マグネットは1テスラに迫る高い磁束密度を持つ。
振動板は5Uハイポリマー・コンポジットダイヤフラムを採用。剛性を高めたことで、ゆがみの少ないサウンドの再生を可能にした。本体は共振を抑えるために金属製の筐体を採用し、本体内部の空気の流れを最適化させるベントが備わっている。
また、イヤホンは人間工学に基づいた形状としており、良好なフィット感と-25dbの高いノイズアイソレーション性能を両立した。
本体背面は空気孔が見える
このイヤホン最大のアピールポイントが「音変」機構こと、ノズル交換によるサウンドチューニングだ。ノズルは「ブライト」「ウォーム」の2つが同梱され、それぞれ全く異なるサウンドになるという。
ブライトノズルはステンレス製、ウォームノズルは真鍮製と材質が異なり、チューニングではウォームノズルがブライトノズルと比較して2~4kHzまでの帯域のピークを滑らかにし、それ以上の高域をやや減衰させているという。
ふたつのノズルが付属し、楽曲や気分に合わせて「音変」を楽しめる。デフォルトでは銀色のブランドが装着されている
イヤホンのコネクタは0.78mmの2Pin規格(UE、qdcタイプ)となる。付属ケーブルは5Nグレードの銀コートOFC(純度99.999%の無酸素銅)が採用されており、音質面でも優位な線材が採用されている。
ケーブルはしなやかだ
そんなイヤホンを早速聴いてみることにする。今回のレビューにて使用するプレイヤーはHiby R8SSだ。デフォルトのブライトノズルを使用。基本的にロスレス音源を用いる。試聴曲は以下の通りだ。
Holiday∞Holiday/スリーズブーケ
BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜/TM NETWORK
不確定性☆COSMIC MOVEMENT/ランカ・リー=中島愛
スロウリグレット/田所あずさ
今回はHiby R8SSを用いて聴いてみる
さて、RA15のサウンドは音場(サウンドステージ)が広く、ボーカルが一歩前に出てくるような感覚のサウンドというのが適切だ。ダイナミック型らしい音圧のある低域に加えて、適度な柔らかさのあるボーカル域、伸びのある高域の構成となり、閉塞感などを感じさせないチューニングだ。
スペック上はインピーダンスが32Ω、音圧感度が108db/mwのため、音量は比較的取れるイヤホンだ。欲を言えば出力のあるプレイヤーが欲しいが、エントリー向けのスティックDACやスマートフォンなどでも十分楽しめる。
最初に聴いたのは「スロウリグレット」だったが、筋をしっかり捉えるボーカルの表現に納得させられる。艶やかと言った表現で示す「聴かせるタイプ」ではないが、解像感は高いので複数人で歌唱する楽曲でも対象を聞き分けやすい印象だ。
ここでは「Holiday∞Holiday」「 不確定性☆COSMIC MOVEMENT」を続けて聴いてみる。解像感の高い心地の良い低域、ボーカル域が一歩前に出る定位感が特徴的だ。ボリュームを上げるとボーカル域が少々うるさくなる印象はあるが、総じて楽しく聴けるチューニングだ。
低域も量感で押してくるタイプではないため、低価格機にあるような芯のなさは感じられない。剛性のある振動板を採用したことによる「音色の硬さ」は感じるが、打ち込み系の楽曲であればこれを感じる場面は少ない。
続いて「 BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜」を聴いてみる。楽器にトゲや刺さりの少ない聴きやすいチューニングではあるが、男性ボーカルの場合は前述のキツさは感じられない。ブライトノズルが生きるのはこのような楽曲だろう。筆者としてはこの楽曲はこちらのノズルが相性が良いように感じた。
これをウォームノズルに変えてみるとサウンドの雰囲気が豹変する。音のトゲが抑えられてエネルギッシュなサウンドへと変化する。あまりの変わりようは別のイヤホンを連想させ、もはやクールとウォームの二刀流と評せるイヤホンだ。
印象的なのはボーカル域のキツさが無くなり、より聴きやすいバランスへ変化する。これは女性ボーカルの「Holiday∞Holiday」にて顕著に感じた。筆者としては、ウォームノズルの方が月火水木金土日と毎日聴きたくなるバランスだ。
ここまで聴いて感じたことは、ブライトノズルの場合は低域のビートの表現が気持ちよく、解像感のあるサウンドと感じる製品だった。特に打ち込み系のジャンルや、低域表現を多用する楽曲との相性がいいように感じた。それゆえに苦手なジャンルは少なく、強いて言えば、楽器の音色や自然な空間表現を重視するクラシック音源などは苦手な部類になると思われる。
ノズルの交換についてはデフォルトの「シルバー」はステンレス製、「金」は真鍮製となっており、後者はウォームなサウンドに変貌する。筆者もこの手のノズルによる音変ができる機種はAKG K3003をはじめ保有しているが、ここまで音のニュアンスが変わる機種は初めてだ。低域のスピーディーさ、解像感を求めるなら前者を、楽器の響きや刺さりをおさえた温かみのある表現を求めるなら後者のノズルを使っていこう。
1本で2度美味しい。クールとウォームサウンドの二刀流イヤホン
ここからまとめになるが、NF Audlo RA15はデフォルトでは「王道ドンシャリの発展形」と評価したい。低域の表現はもちろん、ヴォーカルが一歩前に出る定位とシャリシャリしない程度の高域は聴き心地が良い。
ウォームノズルに換装すると抜けの良さが抑えられるが、その分ヴォーカルのキツさも抑えられて聴きやすくなる。あまりにガラッと印象が変わるため、本機種はブライトノイズのまま「音を丸くした」という表現で表すイヤホンではない。別の機種を聴いているような感覚だ。
正直なところ、このイヤホンはクールとウォームサウンドの二刀流なだけあって「人を選ぶ」製品にと感じた。 サウンドが両極端でブライトノズルは好みだが、ウォームノズルは苦手。あるいはその逆という意見も出るレベルの音変っぷりだ。可能であれば、購入前に両方のノズルで試聴して欲しい機種だ。
それでも、サウンドクオリティが価格帯から劣るということは一切なく、楽しく音楽を聴くという意味では非常にいい選択肢となる。
特にブライトノズルは「打楽器をリズミカルに浴びたい」「歩み寄るボーカルを楽しみたい」というリスナーに。ウォームノズルは「ゆったり聴きたい」「刺さりのない音で聴きたい」というリスナーと相性が良いはずだ。
また、ノズルの交換要素やリケーブルによって様々なオーディオらしい応用が効く点がプラスになるはずだ。特にノズル交換でサウンドがガラッと変わる点はまるで二刀流と評したい。ある意味で「欲張りなイヤホン」なんて表現も適切だ。
そんなNF Audio RA15は日本向け価格は1万3800円の設定で、8月23日より発売だ。一般に見れば高価な製品だが、ノズル交換ギミックなどを考えれば「飽き」も少なく、今後の再生環境のアップデートにも応えてくれる製品だ。もちろん、ワイヤレスイヤホンのサウンドに満足できなくなったユーザーが乗り換えるにはいい機種だと考える。日本ではe☆イヤホンなどの専門店で試聴機が用意されている。
せっかくの有線イヤホンを買うならいい音で聴きたい。でも、時には気分に合わせて「音変」して全く違う音を楽しみたい。NF Audio RA15はそんな声に応えてくれる製品だ。
提供:株式会社伊藤屋国際
購入先
伊藤屋国際オンラインストア
https://www.itohya.jp/products/ra15
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