中国には独自のジャンルにカテゴライズされる「ミッドレンジゲーミングスマートフォン」というものがある。今回はその中でも、コストパフォーマンスに優れる「vivo iQOO Z9 Turbo」をレビューしていきたい。
- iQOOシリーズのミッドレンジスマホ「iQOO Z9 Turbo」をチェック
- vivo iQOO Z9 Turboのスペックをチェック。4万円で学マス、原神が快適に動く高いゲーム性能に驚く
- AI処理でキレイに撮れるカメラ。4万円ではトップクラスのカメラ性能
- 背伸びしたミッドレンジ。安くても超高性能な玄人向けスマホが欲しい方にオススメ
iQOOシリーズのミッドレンジスマホ「iQOO Z9 Turbo」をチェック
vivo iQOO Z9 Turboはミッドレンジながら高い性能を備えるスマートフォンだ。本機種はプロセッサにSnapdragon 8s Gen 3を採用し、高速なメモリとストレージを採用するなど、廉価機種の中でもモバイルゲームに特化した仕様だ。スペックは以下の通り
SoC:Qualcomm Snapdragon 8s Gen 3
メモリ:12GB
ストレージ:256GB
画面:6.78型 FHD+解像度
144Hz対応 OLEDパネル
カメラ
標準:5000万画素超広角:800万画素
フロント:1600万画素
バッテリー:6000mAh
80W充電対応(約30分でフル充電可能)
防水、防塵:IP64
OS:Android 14(Origin OS 4)
カラー
山野青(グリーン)
曜夜黒(ブラック)
星芒白(ホワイト)
価格
1999RMB(約3万9800円)〜
パッケージはiQOO仕様準拠のデザインだ。同社のXシリーズなどとは異なる
iQOO Z9 Turboの基本的なデザインは、同社のiQOOブランドのフラグシップ「iQOO 12」に準拠している。同じデザインの延長線にいる機種だ。本体カラーはブラック、グリーン、ホワイトの3色展開。今回はグリーンを使用する。
本体は樹脂製だが、見た目以上に質感は良い。
本体は7.98mmと比較的薄い。防水はIP64等級を取得しており、一般には「防滴」に近い仕様だ
vivo iQOO Z9 Turboのスペックをチェック。4万円で学マス、原神が快適に動く高いゲーム性能に驚く
vivo iQOO Z9 Turboは高性能なスマートフォンだ。立ち位置的にはナンバリング(今期は12)、Neoシリーズに次ぐ廉価な機種だ。毎年4万円以下で展開してくる製品で、コストパフォーマンスに優れた商品であることをアピールしている。今回は末尾に「Turbo」の名前を冠しており、通常のZ9よりも高性能なプロセッサを採用して他社との差別化を図っている。
プロセッサにはSnapdragon 8s Gen 3を採用し、LPDDR5X規格のメモリ、UFS4.0規格の高速なストレージを備える。メモリは12または16GB、ストレージは256または512GBの仕様が選択できる。micro SDカードは利用できない。
また、 本機種では仮想メモリを最大12GBまで割り当てできるため、最大24GB相当で利用できる。複数のタスクも快適に動作させることができる。
プロセッサはSnapdragon 8s Gen 3を採用する
仮想メモリは最大で12GBまで割当できる
本機種に採用されるSnapdragon 8s Gen 3はクアルコム製のハイエンドプロセッサだ。TSMC 4nmで製造され、高いAI性能などを備える上位のプロセッサだ。
基本的にはGalaxy S24やXperia 1 VIなどのフラグシップスマートフォンに採用されている「Snapdragon 8 Gen 3」に近い仕様となり、実質的な下位商品に当たる。
大きく異なる点はCPUのコア構成、メモリの動作速度、通信モデムの性能になる。(細かいところでは4K120fps撮影、グローバルイルミネーションによるレイトレーシング処理に非対応といった部分がある。)
Snapdragon 8s Gen 3はベンチマークの結果で2023年のSnapdragon 8 Gen 2クラスに相当する。ミッドレンジの中ではグラフィック性能が高く、高画質なゲームにもしっかり対応できる。
基本性能は最新のハイエンド機と比較すると劣るが、高負荷なゲームでもある程度負荷をかけない限りは大きな差を感じられなかった。多くの場合はパフォーマンスに不満なく利用できると感じた。
また、iQOO Z9 Turboには大型のベイパーチャンバーという冷却機構が搭載されている。これによって高い性能を長時間持続させることが可能だ。
また、中国向けの一部ゲームコンテンツであれば フレーム補完による120FPSでの動作も可能だ。中国のゲーミングスマートフォンはゲームコンテンツへ最適化されたものも多く、「ただ性能が高いだけ」でない機種も多いのだ。
いくつかゲームを試してみる。原神などの高いハードウェア要件を必要とするコンテンツでも、最高画質で55fps前後とこの価格の製品としてはかなり快適だった。
原神は画質「高」が推奨だ。さらに上の最高画質でも十分楽しめる高い性能を持つ
GPUをゴリゴリ使う崩壊スターレイルも、最高画質設定でかなり快適に遊べる
高負荷な学マスは最高画質の設定にできる。MVは55fps前後を出せるが、プロデュース画面や温泉撮影のモードでは50fps割り込む場面も見られた。長時間遊ぶ場合はこちらも高画質設定に落とすことをお勧めする
最高画質はリアルタイムで見てもかなり高い負荷だ。それでも、4万円のスマホでここまで動くと感動を覚える
ディスプレイには6.78型 FHD+解像度のAMOLEDパネルを採用。最大144Hzのリフレッシュレート、瞬間的に2000Hzのタッチサンプリングレートにも対応するゲーミング仕様だ。
画面のピーク輝度も4500ニトと明るいため、屋内のみならず直射日光の当たる屋外での視認性も良い。3840HzのPWM調光にも対応しており、画面ちらつきを押さえている。ブルーライトも抑えた目に優しいディスプレイだ。
その一方で LTPO(可変リフレッシュレート)には対応しておらず 消費電力面ではやや不利なものが採用されている。この辺は、コストを切り詰めた部分だ。
ディスプレイはエッジのないフラットディスプレイ。FHD+解像度の綺麗な画面を備える
本機種では画面内に指紋センサーを備える。
vivo iQOO Z9 Turboのバッテリーは6000mAhと大容量なものを採用している。実際に使ってみると、大容量バッテリーを積んでいるだけあってやはり電池持ちは良い。
しかも、これだけのバッテリーが入っていながら本体は194.8gとかなり軽量だ。これはvivo X Fold3をはじめとした機種に採用された高密度バッテリー「Blue Ocean Battery」が採用されており、薄型軽量化を可能にしている。
バッテリーの容量が多いため、充電には時間がかかる。この難点は80Wの急速充電でカバーしようというのが本機種のコンセプトだ。コストを抑えるためなのか、ワイヤレス充電には対応しない。
また 大容量バッテリーを生かした有線によるリバース充電に対応している。7.5Wの出力ができるため、ワイヤレスイヤホンのみならずスマートフォンなども充電が可能だ。
UIにはvivoの独自UI「Origin OS 4」が採用されている。Android 14ベースのこのUIは一応日本語にも対応しており、中国メーカーの機種としてはクセがあるものの、比較的使いやすく仕上がっているように感じる。
独自UIの「Origin OS」を採用する
AI処理でキレイに撮れるカメラ。4万円ではトップクラスのカメラ性能
vivo iQOO Z9 Turboはメインカメラに5000万画素、ソニー製のLITYA LYT-600というセンサーを採用している。f1.79と明るいレンズを採用し、光学式の手ぶれ補正も備える。 廉価な製品でもかなりを力入れている。
この他に800万画素の超広角カメラ、1600万画素のフロントカメラを備える。以下に作例を示していく。
カメラ配置はvivo iQOO 12シリーズと同じような配置
いくつか撮影してみたが、思ったよりも綺麗に撮れている。10万円クラスの高価な機種には劣るが、この価格帯の機種としてはかなり綺麗な写真が撮れる。
高性能なプロセッサを採用したことで画像処理性能が高いことに加え、上位機種ゆずりの機能もいくつか利用できる。筆者が今まで使ってきたミッドレンジスマホの中でも撮影できる写真のクオリティはかなり上の方だ。
超広角カメラはスペックが落ちるので、明暗差のある場面ではメインカメラと大きな差が出てしまう。それでもきれいに撮影できる
夜景モードの写りもミッドレンジとしてはきれいだ。メインカメラには光学式手ブレ補正も備えるため、撮影もしやすい
vivoのスマートフォンらしく夜景モードは充実している。筆者がよく使う「サイバーパンクモード」もしっかり備えている
背伸びしたミッドレンジ。安くても超高性能な玄人向けスマホが欲しい方にオススメ
vivo iQOO Z9 Turboを評価するのであれば、ハイエンドのゲーム体験を比較的廉価に体感できる高いコスパを持つスマートフォンだ。
約4万円というコスト制約の中、画面性能とプロセッサ性能の高さ、大容量バッテリーを備えたゲーム性能に特化した構成だ。一方で他の機能は価格相応に抑えたアンバランスな構成だが、スマートフォンに「パフォーマンス」を求める方には嬉しい構成だ。
価格は1999元(約4万円)からと一般にミッドレンジスマホに該当する価格帯だ。それでも、基本的な性能は10万円を超えるフラグシップに迫るところもあり、ミッドレンジの中でも「ワンランク上」のスペックを持つスマートフォンがほしい方にはアリな機種だ。
最後になるが、この手のスマートフォンは、ゲーム機市場が国の政策で規制されていた中国市場というかなり特殊な事情の関係で存在する機種だ。
規制の関係で任天堂のDSをはじめとした携帯ゲーム機が根付かなかったことから、携帯電話やスマートフォンが携帯ゲーム機の代替えを担うような環境が出来上がった。
今回レビューしたスマートフォンは「ミッドレンジゲーミングスマホ」というカテゴリーで若い層を中心にターゲットとしている。端末価格も日本円で3〜5万円という「携帯ゲーム機らしい価格」で激しいシェア争いが行われている。
さて、日本でこのようなスマホが広く受け入れられるかと問われると微妙なところだ。この手の機種の場合「ゲーム性能」以外をかなり削ぎ落としている。日本では広く求められるおサイフケータイ(FeliCa)を備えなかったり、防水性能が低いといった難点がある。
どちらかといえば、ゲームが遊べる「2台目スマホ」という認識で購入すると良さそうだ。中国でも本機種はゲーム機に近いポジションで売られているため、ある意味スマホゲームを遊ぶための「ゲーム機」として買うのもありだ。
そんなvivo iQOO Z9 TurboはAliExpressなどの中華通販で購入できる。セールのタイミングによっては3万5000円前後で購入できるなど、コストパフォーマンスの良さはさすがと評価したい。
もちろん海外スマホという特性上、使う上では多少の知識やセットアップのノウハウが求められる。仮に何かあってもサポートの望みは薄いことも踏まえ、どちらかといえば玄人向けだ。
いくら高性能でも、初心者にはあまりオススメできないスマートフォンだ。
そんな海の向こうの特殊な事情のもと存在するコストパフォーマンスに優れたスマートフォン。興味のある方はチェックしてみてほしい。
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