様々な商品が乱立するワイヤレスイヤホンだが、中国深センにはAppleのAirPodsのパチモノ。いわゆる偽物も多くある。
そんなパチモノも今では第5世代まで進化を遂げ、ついにケースにディスプレイが搭載されるなど、本家が備えていない機能まで備えるようになった。今回は深セン 華強北名物のPods Pro(第5世代)をレビューしたい。
- 中国で謎の進化を遂げたAirPodsのパチモノのようなイヤホン
- ディスプレイの操作感や音をチェック。3000円ならアリと思えてしまう製品
- AirPodsのパチモノも進化を続ける。ギリギリのグレーラインを攻めつつ激安価格で出せることに脱帽
中国で謎の進化を遂げたAirPodsのパチモノのようなイヤホン
元来、あらゆる商品のパチモノが多く流通する中国深センの華強北市場。ここで今年になってホットな話題となっている機種がAirPods Proをも凌駕する多機能なイヤホンの存在だ。それが「Pods Pro」なる商品だ。
深センの人気商品で価格も149元(約3000円)とアホみたいに安い
本体のパッケージは本家AirPods Proを連想させるものだ。深センでは「AirPods Proよりも先進的な商品」だと説明を受けた。なお価格は149元(約3000円)だ。
デザインはまんまアップルの AirPods Pro にディスプレイがついた商品だ。第2世代の商品を意識しているのか、ストラップホールやスピーカーの穴(デザイン)なども備えている。
AirPodsに画面がついた製品だ
ディスプレイの関係か、本家よりもケースは大型化している
イヤホン本体のデザインはまんまアップルのそれだ。イヤーピースは本家と互換性があるため、予備も比較的容易に購入できる。ちなみに、このPods Proも本家AirPods Proのケースに収めることができたが、充電はできなかった
イヤホンはまんまAirPodsのアレだ。ここまで来ると怒られろレベルである
イヤーピースはAirPods Proと互換性あり。今回購入したものはなぜかXSサイズのイヤーピースが2セット付属しており、Sサイズが同梱されていなかった。並び順もずれており、さすが中華クオリティだ。
ディスプレイの操作感や音をチェック。3000円ならアリと思えてしまう製品
肝心の画面操作は意外と多機能だ。1.5型のスマートバンド的なディスプレイはタッチ操作に対応。音楽の再生停止に加え、音量調整、イコライザーの調整が可能だ。このほかノイズキャンセリング、外音取り込みの切り替えもこの画面からできる。
それ以外にはタイマーの設定、イヤホンを探す機能、時刻表示、スマートフォンのリモートシャッター、YouTube ShortやTikTokなどの動画に「いいね」を押せる機能が実装されている。
また、言語は日本語に設定することができる。フォントにはやや違和感があるものの、明らかにおかしい日本語はない。楽曲もひらがな、カタカナのものはうまく表示できないが、漢字の楽曲は表示できた。
カタカナは文字化けして表示できなかったが、漢字の楽曲は表示できるものもあった
深セン名物の画面付きAirPods Proのような何か(3000円)の動作はこんな感じ。普通にイヤホンケースの画面で各種操作ができる。色々アレだけど音や機能面を含めてこの値段ならアリと思わせる謎技術に感服ですわ。
— はやぽん (@Hayaponlog) 2024年9月28日
あと、なぜか日本語表記に対応している。 https://t.co/z1MqcOMtmH pic.twitter.com/KLd3Tl3Mku
動作感は動画の通り。タッチパネルの反応の悪さは感じるが、動作には問題なさそうだ。
YouTube Shortなどの縦動画にイヤホンから「いいね」を押せる機能まで備える
ちなみに一部画面は説明書のものと異なっており、モード切替画面にはなぜか外音取り込みのアイコンが2つある。恐らくウェアネスを実装しようとした跡だろう。試してみたところ、どちらも同じ機能として働いた。この辺りの爪の甘さがいかにも中華ガジェットという形だ。
ANCの項目がやたら多いが、右2つは同じ機能だ
ここからは音について見ていこう。Pods Pro(第5世代)のコーデックは SBC並びにAAC に対応しており、3000円前後のイヤホンとしてはまあ納得だ。
ドライバーユニットは13mm 系のダイナミックドライバが採用されており、振動板はチタニウムコーティングがされているという。正直信憑性はかなり微妙だ。
サウンドを聴いてみた。限りは極端な尖りやピークなどは感じない。少々低域が量感多めで高域がスポイルされる感覚はあるが、聞き流すという意味では大多数の方が「これでいいじゃん」と思えるようなチューニングだ。
普通に聴けるサウンドだ。流石に本家には負けるようだ
ノイズキャンセリング機能も備えており、オンにすると確かにノイズが低減されることを確認できた。外音取り込み機能もちゃんと動作しており、通話マイクのノイズ低減機能も機能しているようだ。激安中華謎ガジェットあるあるの名前ばかりな「詐欺商品」ではなさそうだ。
加えてイヤホンには装着検知機能も備わっており、イヤホンを耳から取り外すと自動で再生が停止する。廉価な機種にはあまりない機能だが、この手のイヤホンにしっかり備わっていることに驚いた。
ここで本家のAirPods Pro 第2世代と比較してみた。サウンド、ノイズキャンセリングや外音取り込み精度、各種操作感…何を取っても本家に勝るものはなかった。まあ、ここは価格差を考えたら納得といったところだ
利点としてはケースにディスプレイを備えたことによる操作性の向上。ディスプレイから基本的な制御が全てできるため、接続する対象機器を選ばないところが大きな差別化ポイントだ。パソコンに接続し、ケースからノイズキャンセリングの切り替えができるのは割と便利だ。
AirPodsのパチモノも進化を続ける。ギリギリのグレーラインを攻めつつ激安価格で出せることに脱帽
今回の中華謎イヤホンだが、AirPods のパチモノという目に見えてグレーな商品から、本家すら備えていない機能を備えた「進化版」である点にはもはや感心させられる。名前だけのパクリ商品はよく見たが、ここまで来たらパチモノという言葉を使っていいのかすらわからなくなる。キメラみたいな機種だが、独自の製品と言われても納得だ。
ワイヤレスイヤホンにディスプレイを備える機種で有名なものはJBL TOUR PROだ。筆者もこの機種を触った際は意外にも便利だと感じた。今回のイヤホンと画面でできることはほぼ同じなので、これで十分と思ってしまう方もいることだろう。
ディスプレイを備えたイヤホンと言えば、JBLのTOUR PROが思い浮かぶ
ちなみにPods Proの最新モデルでは、この小さい画面でゲームが遊べ、WeChat Payなどのバーコードを表示して電子決済が利用できる商品も存在する。イヤホンのケースで屋台で買い物ができ、電車やタクシーに乗れると考えれば、割とめちゃくちゃな商品だ。
イヤホンのディスプレイでできることすら、参考にしたであろうJBLの機種の上を行く製品であり、もはや中国で謎の進化を遂げた商品という評価が適切なのかもしれない。
もはや中国で謎の進化を遂げたイヤホンだ
そんないろんな方面から怒られろ的なイヤホン「Pods Pro(第5世代)」だが、AliExpress等の中華通販で簡単に購入できる。その他、秋葉原に店舗を構えるCCコネクト等でも購入できるようだ。
デザインは色々アレな商品だが、使ってみると思った以上に便利な商品だった。興味がある方はチェックしてみてもいいかもしれない。