シャープから最新スマートフォン「AQUOS R9 pro」が12月5日より発売されている。さらなる進化を遂げたカメラ、妥協のないエンタメ性能が売りのフラッグシップスマホだが、今回はカメラを中心に使ってみたレビューといきましょう。
待望の望遠カメラと光学式手振れ補正。さらに進化したカメラを試す!
AQUOS R9 proはシャープのフラッグシップらしくカメラ性能を高めた。メインカメラには有効画素数が5030万画素、センサーには大型の1/0.98型のイメージセンサーを採用した。
また、1型センサーを採用する同社の機種では、メインカメラに初の光学式の手ぶれ補正機構を備えた。従来よりも手振れを抑え、夜景などがより撮影しやすくなった。
ハードウェア情報を確認できるアプリでチェックしてみたところ、ソニー製のLYTIA LYT-900の採用が確認できた。Xiaomi 14 Ultraやvivo X100 Ultra、OPPO Find X7 Ultraといった名だたるカメラフラグシップにも採用される最新の1型センサーであり、AQUOS R8 proのIMX989から1世代進化した。
そして、大きな進化点が超広角カメラと望遠カメラの採用だ。近年のAQUOSの上位モデルは単眼仕様のカメラにこだわっていたため、マルチカメラ化を見送っていた。ここに超広角と望遠を備えたことで、晴れて「カメラフラッグシップ」と呼べる存在になった。
フラグシップらしい佇まいになった
望遠カメラには5030万画素、1/1.56型の大型イメージセンサーを採用。潜望鏡方式の望遠カメラではかなり大型のセンサーで、AQUOS R9のメインカメラとほぼ同じ大きさと言えば分かりが良い。望遠カメラのレンズはf2.6と比較的明るく、光学式手振れ補正機構も採用している。
超広角カメラは5030万画素のものを採用。レンズはf2.2するなど、従来機種よりアップデートされている。イメージセンサーは1/2.5型としている。
カメラのチューニングはAQUOS R8 proに引き続き、独ライカカメラ社が監修している。ズームレンズを示す「VARIO」の表記が初めてついた
レンズは35mm換算23mm f1.8の標準カメラと、換算13mm f2.2の超広角カメラ、換算65mm f2.6の望遠カメラを備える。従来の1型センサー採用機とは異なり、超広角カメラと望遠カメラを備えるので普通のスマホと同じような感覚で利用できる。
また、正確な色表現を可能にする14chのスペクトルセンサーを前作に引き続き採用。レンズはライカの「ズミクロン」を冠し、コーティングが一新されるなど着実に改善されている。そんなAQUOS R9 proの作例は以下の通り。
AQUOS R9 proはライカ監修スマホなだけあって、非常に良い質感の絵が出るスマホの印象だ。スペクトルセンサーを採用している関係か、チューニングはライカのナチュラルフィルターに近い印象だ。
一方でAQUOS R9 proでは「画質設定」の項目でチューニングを選択できる。標準では「ナチュラル」の設定だが、彩度を高めた鮮やかなチューニングの「ダイナミック」に変更できる。ダイナミックの設定はAQUOS R9のチューニングに近く、他社モデルではXiaomiの「Leica Authentic」やHuaweiの「Leica VIVID」に近い。
画質設定「ダイナミック」彩度が上がり、鮮やかな写りに
画質設定「ナチュラル」目で見た印象に近い仕上がりだ
解像感なども昨年のAQUOS R8 proに比べ、大きく進化したことがうかがえる。より広くなった超広角、望遠カメラ採用による撮影の幅が広がったことはもちろん、ProPix Proの画像処理もアップデートされて、より解像感が増した。
正直、「この写真をシャープのスマホで撮りました!」と言ったところで数年前の筆者はまず信じないことだろう。思った以上の出来で驚くばかりだ。
AQUOS R9 proの夜景モードは、手持ちモードではだいたいシャッタースピードが1秒ほど、三脚モードでは4〜32秒をシーンに応じてオートで切り替わる。また、三脚モードは自動で切り替わるものになっており、これはGoogle Pixelなどと同じ挙動だ。夜景モードに「花火モード」に加え「星空モード」を備えている。
AQUOS R9 proのズーム性能はデジタルで最大20倍。補正は弱めで実用域は明るい場面で10倍前後、暗い場面では6倍前後の印象。3倍望遠カメラは大型センサーを採用したことで背景ボケも大きく、被写体を引き立てることもできる。また、暗い場面でもくっきりと写すことができる。
望遠カメラもきれいに撮影できる。ペリスコープ型の望遠カメラで目にする「不自然な形の玉ボケ」をソフトウェア処理で円形に近づけるような処理も見受けられる。
AQUOS R9 6倍望遠。デジタルズームの補正は弱め
スペクトルセンサーのおかげで料理は綺麗に。望遠カメラのおかげでゆがみを抑えて撮影できる
物撮りにも使えるが、背景ボケが大きくフォーカスはシビア。テレマクロが使えないので、気合で被写体を狙い撃つ必要がある
超広角カメラも綺麗に撮影できる。AQUOS R9と同じセンサーだが、レンズ構成が違うという
シャッターボタンはうれしいが、ソフトは「改善してほしい」ところも
AQUOS R9 proでは撮影体験を高める目的で、物理的なシャッターボタンが採用された。撮影体験を高めるパーツとしては確かなもので、カメラのようなフィーリングで撮影できる。
シャッターボタンには実際のデジタルカメラと同じ部品を採用した。感覚はXperiaよりもしっかり押し込む必要はあるものの、体験としては良好だ。半押し操作もしっかりできるため、この部分の使い勝手は良い。
シャッターボタンを備える。位置やサイズ感も悪くない
一方で、Xperiaのような挙動を想像して使うと「思ったものと違う」と感じてしまう。速写のXperiaに対してAQUOSは「構図を決めて最高のワンショットを狙う」ような方向性だ。
ある意味かつてのAQUOS R6のようなピーキーな部分もあり、使っていく上で慣れが必要な部分と感じた。この辺りは店頭で試してほしいところ。
AQUOS R9 proには超高速なオートフォーカスなどはないため、近いイメージのXperia PRO-Iの後継機だと思って購入すると後悔するかもしれない。
最後にカメラ周りの惜しい点だが、筆者としてはいくつか感じられた。ひとつはズーム操作の挙動が通常のスマートフォンと逆な点。通常の機種ではタッチ操作でのズームはズーム倍率を長押しして”下スワイプ操作”でズームするのだが、AQUOSでは逆の操作が割り当てられている。これが操作しにくいのだ。
また、ワンタップでの28mm/35mm切替はおろか、2倍望遠のワンタップ項目すらない。これは競合他社の機種にはほぼ全て備わっているので、やはり使いにくいと感じてしまう。
ズーム操作にはもう一工夫ほしいところだ
いままでのAQUOSには「ズーム性能」を求める場面が少なかったので、これらの操作性が気になる場面は少なかった。ただ、高性能な望遠カメラを持つAQUOS R9 proでは望遠カメラをよく使うだけあって気になるところ。今後のアップデートに期待したい。
もうひとつは、撮影後の処理レスポンスがあまり良くない点だ。AQUOS R9のような「処理中」と表示される時間が長いことはないのだが、いかんせんズーム時の挙動(カメラの切り替え)があまり良くない。のだ。特に夜景撮影時や連写した際は顕著に現れる。
プロセッサはSnapdragon 8s Gen 3とグレードはひとつ下でも、最上位のSnapdragon 8シリーズのひとつ。ISP性能などは大きく変わらず高性能であることは変わりないため、現時点ではチューニング不足と評価したい。
ここまでAQUOS R9 proのカメラ機能を中心にファーストインプレッションをお届けした。正直あのAQUOSがここまでのカメラスマホになるとは思わなかったくらいの進化に驚いており、「やればできる子」なんだと感じた次第。
Xiaomi 14 Ultraなどと勝負しても引けを取らない高いクオリティに加え、FeliCa採用をはじめとした日本で使う上でほしい機能もしっかり載せている。この冬注目のカメラスマホの一角にふさわしい商品だ。
ソフトウェア面はまだまだ追い込みが甘い部分があるが、AQUOSシリーズは例年カメラ周りの大きなアップデートを幾度か配信している。ここでの改善とさらなる伸びしろに期待したい。
AQUOS R9 proのスマートフォンとしての基本機能などの使い勝手をまとめたレビューは別途掲載予定だ。