どうもこんにちは。これまで使ったスマホは300台以上。生まれはギリギリZ世代のライター はやぽんです。さて、結局買ってしまったGoogle Pixel 9 Proのレビューといきましょう。
- 高級感もアップ!小さくても”プロ”なGoogle Pixel 9 Pro
- 小さくても高い望遠性能。AI補正で綺麗に撮れるPixel 9 Proのカメラ
- 独自SoCはTensor G4になってAI性能が進化。肝心のパフォーマンスは微妙
- 使い勝手よし!スペック微妙!サポート長し!コンパクトでもカメラ性能が高い点がアピールポイント
高級感もアップ!小さくても”プロ”なGoogle Pixel 9 Pro
8月に最新モデルのPixel 9シリーズが発売となった。日本市場では円安の影響をモロに受けてしまい、価格は大きく高騰してしまった。今回は遅れて9月3日に発売となったPixel 9 Proが魅力的な製品なのかチェックしていきたい。
今回筆者はPixel 9 Proをチョイス。望遠カメラを備えるコンパクトな上位モデルだ。スペックは以下の通り
SoC:Google Tensor G4
メモリ:16GB
ストレージ:128/256/512GB
画面:6.3型 FHD+ OLED
LTPO技術を用いた可変リフレッシュレート
カメラ
メイン:5000万画素 f1.68
超広角:4800万画素 f1.7
望遠:4800万画素 f2.8
フロントカメラ 4200万画素
バッテリー:4700mAh
ワイヤレス充電、リバース充電に対応
Pixel 9 ProはPixel 9 Pro XLの小型版という立ち位置で、iPhoneでいう「Pro」に相当するポジションだ。特徴として後述する強化されたカメラ性能が挙げられる。Tensor G4という独自チップを使ったAI 処理をはじめ、高度な画像処理を駆使したまさに本気で作ったスマートフォンと感じる。
上位モデルのPixel 9 Proは、6.3型のOLEDパネルを採用。Super Actuaディスプレイと呼ばれるもので、最大輝度が2000ニト、ピーク輝度は3000ニトと画面がかなり明るい高品質なディスプレイが採用されている。スムーズディスプレイと称する1〜120Hzの可変リフレッシュレートにも対応しており、消費電力も抑えられたとしている。
ディスプレイはフラットディスプレイになり、トレンドに沿った形だ
Pixel 9 Proでは 6.3インチの画面となっており、持った時のサイズはiPhone 16 Proなどに近い。
指紋センサーは従来までの光学式から超音波式へ変更された。この方式によって認識速度や精度が従来よりも上がり、以前よりも快適に利用できるようになった。その一方でガラスフィルムとは相性が悪いことが多く、フィルムを選ぶ際には「指紋認証対応」といった表記のあるものを選ぼう。
OSにはAndroid 14を採用。今回は端末の発売が早かったことでAndroid 15をプリインストールしての登場ではなかった。ローンチデバイスという特成上、最新OSはアプリによってはうまく動作しないものもあるが、この辺りは時間が経つに連れて改善されていくと考える。
小さくても高い望遠性能。AI補正で綺麗に撮れるPixel 9 Proのカメラ
今回も引き続き印象深い点はカメラ性能だ。筆者も近年のスマホを買うなら、まずカメラ性能からというくらいには注視している。
Pixel 9 ProはPixel 9 Pro XL同様の3眼構成だ。イメージセンサーが新型のものとなり、レンズ構成などが一部変更されている。超広角カメラを含めた全カメラでオートフォーカスが利用できるなど、この辺りの仕様は共通だ。コンパクトモデルだからと言ってケチった部分はないのだ。
Pixel 9 Proでは3眼カメラを採用する。カメラ部の意匠はGoogleの検索バーをイメージしているという
何枚か撮ってみたが、AI処理が入るので必ずしも「見たまま」には映らないが、非常にきれいに撮影できる。
もともとPixelは高度なAI処理を得意とすることもあり、Pixel 8aなどの安価な機種でもそこそこ写ることで知られている。今回のPixel 9 Proでは他社のハイエンドスマホでも採用される大型センサーを採用しているため、ハードウェアの基本性能の高さも関係している。
Pixel 9 Proでは超広角カメラのスペックが向上している。これによって撮影できる幅が広がることはありがたい
ズーム性能が高いだけでも今までのスマホとはまた違った写真が撮れる。ここに関してはXiaomiやvivoが海外で販売しているような製品と比較しても高いレベルで追従している。特に6.3インチクラスのスマートフォンで”10倍望遠がきれいに撮影できる機種”はかなり少なく、世界的に見ても本機種とvivo X200 Pro miniくらいなものだ。日本では販路も広く、比較的高い知名度をもつPixelでこのような商品が展開されることは嬉しい限りだ。
Pixel 9 Proでは光学5倍相当のペリスコープ望遠レンズを搭載。最大30倍望遠まで可能だ
10倍望遠も見事だ
最大望遠の30倍でもある程度ディテールを残せる
Pixelシリーズらしく夜景モードもしっかりと備えている。一部シーンで夜空にノイズが乗る場面が見られたが、多くのシーンできれいに撮影できる。三脚検知で自動的に切り替わる星空撮影モードもあるので、興味があるようなら使ってみると新たな発見もありそうだ。
夜間の撮影性能もかなり高い。国内で販売されている機種ではXiaomi 14 Ultraに匹敵するレベルだ
独自SoCはTensor G4になってAI性能が進化。肝心のパフォーマンスは微妙
Pixel 9シリーズに採用されるTensor G4ではAI処理の高さを売りにしており、恩恵として高精度な文字の書き起こしやリアルタイムで出力される翻訳機能、写真の画像処理エフェクトなどが挙げられている。
リアルタイムの文字起こし、翻訳と言った機能は、取材や海外渡航時に大いに役立っている。精度も前作より向上しており、多少早口でしゃべった内容もうまく読み取れるようになっていた。
新機能の「音声消しゴムマジック」は喧噪下でも特定の人間の声を強調し、それ以外をカットする機能だ。名前もさることながら、ボイスレコーダーとしてはとても有用すぎる機能だ。取材のお供にはもってこいだ。
写真撮影についても、前述の通り高度なAI処理によって綺麗な写真を撮影できるようにしている。もちろん、ただの撮影体験に留まらない点がPixel 9シリーズの強みと考える。
イチオシ機能の「一緒に写る」機能は複数人で撮影した際に、撮影者も集合写真に加えることができる。手順としては一方が撮影し、もう一方の人が構図を合わせて合成するというもの。これによって3人で旅行に行っても”3人写った集合写真”が撮影できるのだ。従来なら撮影者が欠けてしまうので、第三者に撮影してもらう等の対応が必要だった。
引き続き大きくアピールしている「ベストテイク機能」「編集マジック機能」「動画ブースト機能」といった新機能も機能面のすごさ以上に「何ができるか」にフォーカスされて、利用者にとって分かりやすくなっている。この辺りの機能はPixel 9 Pro XLと同様なので、そちらのレビューと合わせてチェックしてみてほしい。
Pixel 9 Proシリーズは放射温度計を備えており、簡易的ながら温度の測定が可能だ。これはコンパクトなPixel 9 Proも同様だ
さて、従来から指摘されるパフォーマンスの低さは、Pixel 8世代からは幾分か改善している。 これはチップセットの改善、ベイパーチャンバーと呼ばれる冷却機構を搭載したことがプラスに作用している。
Pixel 9 ProにはGoogle が設計したTensor G4プロセッサが採用される。サムスンの4nmプロセスで製造されるこのチップはGoogleの意向が強く反映されている。プロセッサのコア構成は以下の通り。
Cortex-X4コア×1 @3.10GHz
Cortex-A720コア×3 @2.60GHz
Cortex-A520コア×4@1.95GHz
Tensor G4は近年のハイエンド向けプロセッサでよく見かける3クラスター構成だ。一方で、従来の物理9コアから8コアというよく見る構成に戻った。全体的に動作コアの周波数が低いことから、省電力を狙ったものと考える。
GPUはARM Mali-G715を採用。前作のTensor G3と同じGPUを採用するものの、動作クロックが微増しているので性能自体は向上している。
Tensor G4は独特構成のプロセッサ
一方で同じ価格帯のスマートフォンと比較すると、パフォーマンス不足であることに疑いはなかった。実際にいくつかゲームをプレイしてみたが、特に3D表現を多用するゲームは苦手と感じた。
ゲームでは原神が最高画質だと概ね45fps。崩壊スターレイルでは50fps前後まで出たものの、5分ほどで動作が不安定になった。高負荷なアイドルマスターシャイニーカラーズSONG for PRISMでは、最高画質のリズムゲームで25fps前後とかなり厳しい様子を見せた。
最高画質の最低要求が「Snapdragon 8 Gen 3」という超高負荷コンテンツの「学園アイドルマスター」では1220p描写で平均35fps前後、MV再生時で40fpsとかなり厳しい様相を見せた。
Pixel 9 Proもベイパーチャンバーを搭載したことで比較的高い性能を維持できるが、本体が熱を持ちやすいことが印象的だった。筆者も学園アイドルマスターを10分ほど遊んだところ、表面温度が46℃と高温になったのでやはり設定を落とす等の対策は必要だ。
原神は画質を落とす等の対応が必要だ
既出のベンチマークでは、Snapdragon 8+ Gen 1より少し下程度の結果が出ている。最新ハイエンド機に対してベンチマークスコアが劣る理由をGoogleは「アンビエントコンピューティングに力を入れているため」とした。
これはベンチマークスコアだけで判断するのではなく、写真撮影の体験をより良いものにしたり、動画視聴やウェブ閲覧時の快適な動作やバッテリー消費を抑えるといった「日常的な動作を快適にするもの」とした。
同社としてはベンチマークアプリのスコアだけでは数値化できない体験も、より良いものにしていく考え方の設計のようだ。
確かにこのような体験は「ベンチマークアプリ」では数値化しにくいものであり、Google のアピールする「アンビエントコンピューティング」も理解できなくはない。
このようなスペック不足な点は廉価な機種であれば多少目をつぶれるが、このスマートフォンは128GBモデルでも16万円に迫る機種であることを忘れてはいけない。この価格であればAndroidスマホだけでなく、iPhone 16 Proも視野に入ってくる。これらの機種からするとPixel 9 Proは大きくパフォーマンスが劣ることになってしまう。
使い勝手よし!スペック微妙!サポート長し!コンパクトでもカメラ性能が高い点がアピールポイント
まとめになるが、Pixel 9 Proは単独でみれば非常によくまとまったスマートフォンだ。高いカメラ性能やAIを用いた高度な画像処理、リアルタイム翻訳や文字起こしをはじめとした強みを持ちながら、分かりやすさを重視した構成となっている点は評価できる。
今のPixelシリーズは日本でのマーケティングに特に注力しており、テレビコマーシャルにおいても「編集マジック」をはじめとした機能面をかなりアピールしている。
消費者に対して「この機能が使えるスマホ」での知名度アップを狙っており、ここまでの部分は筆者としても非常に高く評価したい部分。
これ以外に強みと呼べる部分は、7年間というOSアップデート期間の長さだ。Pixel 9シリーズでは7年間のOS アップデート、セキュリティパッチ提供を明言しており、製品寿命はさておき「7年間は安心して利用できる」としている。これは中古市場での価値向上などにも影響してくる。
日本向けにもiCreackedが正規代理店としてバッテリー交換等の修理サービスを展開するなど、長く安心して利用できるような仕組みを整えている。このような意味で選ぶ価値は大いにある。
IP68の防水防塵にもしっかり対応し、日本で需要の高いFeliCaにも対応する。販路についても、直販以外に大手3キャリアが取り扱う。家電量販店やキャリアショップで実機を触って検討しやすいスマートフォンのひとつだ。
ただ、価格上昇は大きなな話題となった。Pixelのブランディングの変化もあり、コストパフォーマンスの高いスマートフォンから「iPhoneやGalaxyにも引けを取らないスマートフォン」へ変化した。
Pixel 9 Proの価格は128GBモデルで15万9800円〜と高価になった。安価なイメージが付いていたところに現実を突きつける形だが、円安の為替に加えてメーカーのブランディング変更となれば仕方ない。
Google公式ストアでは購入特典で3万2100円分のストアクレジットを付与するため、実質的に13万円台で購入できる。実質値引きとはいえ、このやり方で納得のいく方は少数だろう。
これに加えて、前述のスペック不足な点が不満点として挙げられる。確かに16万円のスマートフォンを購入するとなれば、iPhoneに匹敵する程度のスペックを求めてくる方も少なくない。
Pixel 9 Proは競合他社の製品に比べると体感性能で明らかに劣る。スマートフォンに対して基本的な性能の高さを求めるのであれば「Pixelはあまり選ばない方がいい」という結論に至る。
よく有識者は「最適化されていない。」「最新OS だからアプリ相性は仕方がない」と評価することもあるが、消費者からしたらそんなことは関係ない。特に前項の最適化について、Googleはハードウェア、ソフトウェア共に荒削り感ある状態で製品を出していることは否めない。
今回はハードウェアこそ高級感のある仕上がりとしたが、ソフトウェアには不安が残る。品質向上や荒削り感を抑え、全体的な完成度を高めていけば、より多くの消費者にとってプラスの方向に進化していくはずだ。
筆者としては今のPixel 9 Proに15万9800円の価値があるのか?と問われたら「否」と答える。正直なところ、iPhone 16 Proのような「この価格でも欲しいスマホ」には至れていない。
最後になるが、価格にさえ目をつぶればPixel 9 Proは長期のOSサポートと高度なAI 処理を売りにした体験重視の「Google にしかできないスマートフォン」に仕上がったと感じる。筆者も過去に色々なスマートフォンを使ってきたが、Pixel はかつての「アプリ開発者向けのリファレンスデバイス」から「AI性能を駆使した新たな体験を提供するGoogle のスマートフォン」に変わった。
単純な基本性能では他社のハイエンドスマートフォンに劣るところも多いが、それを超える音声文字起こしの精度や「音声消しゴムマジック」といった付加価値がある。動画ブースト機能も場面によっては魅力的だ。
また、iPhone 16とほぼ同じサイズで高い望遠カメラ性能を備えるスマートフォンは世界的に見てもかなり少ない。これは上位モデルの Pixel 9 Pro XL にはない特徴であり、これらの機能に価値を見出せるのであれば、買いだと思えるスマートフォンだ。
長く愛着を持って使いたいスマートフォン。その1台としてPixel 9 Proを検討してみてはいかがだろうか。