本日発表されたテクニクスのワイヤレスイヤホン「EAH-AZ100」ワイヤレスでは初の磁性流体ドライバー搭載するなど、大きく進化した。さて、この機種を語る上で外せないイヤホンがある。それが2019年に発売された有線イヤホン「EAH-TZ700」だ。
今回は改めてEAH-TZ700を振り返りつつ、EAH-AZ100がバーゲンプライスなイヤホンなのか語っていきたい。
磁性流体イヤホンの衝撃!実売13万円も納得のサウンドを聴く
EAH-TZ700はパナソニックがテクニクスブランドを復興させた後に発表した有線のイヤホンだ。2019年9月のIFA2019にてお披露目し、欧州向け価格は1199ユーロ(当時)でアナウンスされた。日本向けは同年11月に発売され、13万2000円(直販ストア)だった。
10万円以上なのでいわゆる「高級イヤホン」のジャンルに入ってくる本機種だが、特徴として当時世界初の磁性流体ドライバーこと「プレシジョンモーションドライバー」を採用している。本機種が磁性流体イヤホンと言われる所以だ。
EAH-TZ700は10mm径のドライバーユニットを採用。振動版(ドーム部)にはアルミニウムを採用し、超高周波の再現性を高めた。フリーエッジ方式を採用し、エッジには柔らかいPEEK製(プラスチックの一種)を採用している。
そして本機種では、磁性流体をボイスコイルとマグネットの間に加えた。これによってボイスコイルを安定させることができ、歪みを抑えて再生できるという。
また、柔らかいエッジの振動版を安定してリニアに駆動できるようになったことで、低域再生能力が向上した。
本体はコンパクト
本体はチタンとマグネシウム合金の複合ハウジングとなっており、剛性を高めている。MMCX規格でのリケーブルも可能だ
レスポンスの高い低域に驚く。唯一無二の刺激的な低音
そんなテクニクスの名機こと、EAH-TZ700を改めて聴いてみる。今回はスマートフォンにFiio Q7を通して使用する。
まず驚かされるのは驚異的とも評される低域のレスポンスだ。筆者も最初に視聴した時はレスポンスの良さに驚いたもの。レスポンスはもちろん低域の表現は特筆するものがあり、数多くのイヤホンを聴いてきた中でもトップと評したい。
真髄を味わえるのはレディー・ガガの「BORN THIS WAY」Perfumeの「Spending all my time」といったスピーディーな低域が映える楽曲だ。これに限らずヒップホップやEDMをはじめ、幅広いジャンルの楽曲を楽しめる。
電音部の「Hyper Bass」は地鳴りのような50Hz以下の深く沈む重低音を体験できるが、これがまるでBAドライバーのようなレスポンスの良さとダイナミック型の量感ある低域をうまく両立している。この低域は刺激的と評価したい。
低域がメインと思われがちだが、中高音域の表現も非常に豊かだ。スピーディーな低域もあって小編成のクラシック、ジャズ音源との相性も良い。ボーカルのサ行の刺さりもかなり抑えたチューニングとなっており、聴いていて非常に耳あたりが良い。
定価が13万2000円とのことだが、その価値はしかと感じ取れた。現時点でも磁性流体を用いたプレシジョンモーションドライバーを採用した機種は本日発表されたEAH-AZ100の他にない。
万能タイプでありながら、高レスポンスな低域という特徴があるので、他のイヤホンとの使い分けもできてしまう。そして、スピーディーかつ高レスポンスな低域に慣れてしまうと、他では物足りなくなる。ある意味で「刺激的」と表現すべき存在だ。
EAH-TZ700は刺激的な低域を楽しめるイヤホンだ
磁性流体ドライバーを採用するワイヤレス「EAH-AZ100」がバーゲンプライス!?
さて、そんなEAH-TZ700の発売から5年が経過したが、後継機の話は入ってこない。そんな中、完全ワイヤレスイヤホンの新機種「EAH-AZ100」がCES2025でお披露目された。この機種に採用されているドライバーユニットがなんと磁性流体を採用した「プレシジョンモーションドライバー」なのだ。
EAH-AZ100ではTZ700で採用された10mm径を意識したものになっているようで、CESで試聴した方の中には「ワイヤレスTZ700」という意見も出るくらい完成度が高いようだ。
もちろん、高精度なノイズキャンセリング機能や高感度マイク、トリプルペアリング機能を備える。本体はEAH-AZ80比較で小型化しながらバッテリー持ちは向上した。コーデックは高音質なLDACに加え、新たにLC3(LE Audio)にも対応した。
EAH-AZ100は既存のEAH-AZ80の上位モデルという位置付けのフラグシップ。日本では税込3万9600円(直販ストア)の設定で1月23日に発売、既に予約を開始している。CESで公開された北米向け価格が299ドルを考えると、日本向けは比較的安価な設定だ。
機能面の強化はもちろんのこと、13万円のイヤホンに採用されたドライバーユニットが4万円のワイヤレスイヤホンに搭載されていると考えると、これはものすごいバーゲンプライスだ。既に出ているレビューからも音について否定的な意見は少なく、かなり期待できるはず。筆者も予約したので発売まで待ちたいものだ。