ファーウェイが2022年8月に発売した完全ワイヤレスイヤホン。マイクロ平面ドライバーに音質最適化機能といった最新技術を惜しみなく投入したFreeBuds Pro 2を今回レビューしよう。
- スマホ屋が本気で作ったワイヤレスイヤホンをチェック。
- スマホ屋のイヤホンとは思えない高音質サウンドにビビる
- 強力なノイズキャンセリングが売りのFreeBuds Pro 2
- 高音質、高性能ノイズキャンセリングを備えながらも2万円台は破格?
スマホ屋が本気で作ったワイヤレスイヤホンをチェック。
市場競争が過熱する完全ワイヤレスイヤホンの市場。Apple AirPods Proの新型が発表されるなど、ますます注目度が高まっていくセグメントだ。そんな中でスマホメーカーとしてお馴染みのファーウェイが、満を持して発売したフラッグシップイヤホンがこのFreeBuds Pro 2だ。
箱はスマホメーカーのイヤホンでよく見かけるタイプの
ケースは艶消しの加工がされている。サイズはやや大きいが、Qi規格の無接点充電にも対応
本体の収まり悪くない。AirPods Proのような形状で、特段取り出しにくい場面もなかった
本体は比較的小型
FreeBuds Pro 2の対応コーデックは、SBC/AACに加えLDACとL2HC 2.0に対応している。LDACではハイレゾ相当となる24bit/96kHz再生も可能な一方で、低遅延が特徴のaptX系には非対応。
L2HC 2.0はファーウェイのHWAに付随するコーデックで、こちらも高ビットレートでの伝送が可能。なお、ファーウェイの上位モデルのスマートフォンやタブレットのみ対応している。
コーデックはトレンディなところを押さえるが、核となるオーディオ面についても妥協はない。主に低域を担当するドライバーユニットは11mm経のものを採用。マグネットを4つ配列して高い駆動力を持たせることで、14Hzからの低域を再現できるという。
これに加えて、独自開発のマイクロ平面振動板ドライバーを高域用に搭載。伸びやかな高域といった部分も再現できるとしている。ネットワークは、デジタルクロスオーバーを採用した2Wayの仕様となる。
他社にはない独自の構成を採用する
平面駆動は通常のダイナミック型に比べて、構造的に位相ズレや損失が起こりにくいことが利点。一方で、並のポータブル環境では鳴らしにくいという難点がある。
よくもまぁ小型化、高感度化してあの筐体に収めたなと感心しかない。もちろん、完全ワイヤレスイヤホンに平面駆動ドライバーの採用は世界初とのことだ。
加えて、AEM(Adaptive Ear Maching)にも対応。これはイヤホンを装着している際に内部のセンサーを使用して、外耳道の構造や装着時の密閉度を検出し、常に最良の音質に最適化する機能。
人間は左右で全く同じ形状の耳道はなく、イヤホンの左右で聞こえ方が異なることがある。一方、FreeBuds Pro 2は本体側で聞こえ具合の差を補正することが可能だ。
この機能は究極のパーソナライズと評せるもので、理論上はどんな耳道の形状であろうと、メーカーは理想的な音響環境を提供することが可能。まさに次世代のイヤホンだ。
サウンドチューニングはフランスの音響メーカーであるDevlaletと共同で行った。ファーウェイも2012年から音響ラボを設立して「音の研究」をしており、ここでの音響技術の賜物と評価したい。
スマホ屋のイヤホンとは思えない高音質サウンドにビビる
音にも妥協はないと触れ込みのFreeBuds Pro 2を早速聴いてみることにする。今回の試聴曲はこちら
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会より Eutopia 鐘嵐珠
機動戦士ガンダムUCより A LETTER/Cyua&澤野弘之
スロウリグレット/田所あずさ
いつものです。
今回の試聴環境はソニーのXperia 1IVを使用し、LDACの環境で使用する。本機種はストリーミング環境もスマホ単独で24bit/96kHzの再生が可能で、LDACに適したハードウェアを備える機種だ。
実際に聴いてみると、所詮はスマホ屋のイヤホンじゃん。と下に見ていた自分を殴りたくなるくらいの高音質に驚く。
抜けの良い高域、滑らかで解像感の高いボーカル、厚みのある低域。何を取ってもApple AirPods Proなどとは大きく差が開いたところにいる。一言で音の傾向を示すのであれば、やや低音よりの質のいいドンシャリだ。
高域は思った以上にナチュラルな傾向。いわゆるハイブリッド型の構成ながら変なクセもなく、BA型のような金属的な音の固さもない。平面ドライバーを使っているからか、抜けの良さも兼ね備えている。
最初にスロウリグレットを聴いてみる。透き通るヴォーカルに対して、高域の伸びやかさ、ボーカルの艶やかさとも取れるものが伝わるサウンドであることがわかる。塞ぎ込まれたような窮屈さや過度な濃密さと表現されるものはない。
曲をEutopiaに変えてみる。低域のレスポンスの良さ沈み込み、窮屈さを感じさせない空間表現に関しては高く評価したい。この曲自体かなり低域が入る物になるが、低音がしっかり効きながらも解像感を持ちつつボーカルなどには被らない。
この解像感とレスポンスの良さは、低域用ドライバーに強力なマグネットを採用した点が生きていると感じられる部分だ。デビアレによるチューニングも大きいことだろう。
ここで曲をA LETTERに変えてみる。冒頭の静けさの中のボーカル表現も悪くない。サビのドラムスとベースが入ってくる低域は、11mmダイナミックとこの手のイヤホンでは大口径のもののおかげか、重厚感も備える。
サウンドステージも比較的広い機種となるので、このような曲でも窮屈さを感じさせずに気持ちよく聴ける。
ここまで聴いてきて、サウンドクオリティはかなり高いことが分かる。所詮はスマホ屋のイヤホンと馬鹿にしていたのは申し訳ない限りだ。さすがに有線のイヤホンには劣るが、LDAC環境であれば有線環境に近いところまで来ている。
特に高域の抜けの良さはコーデックに大きく依存する。伸びやかな高域を体験したいのであれば、LDAC環境での利用を強くオススメする。
ボーカルの滑らかさや低域の量感、レスポンス共に高いレベルだと感じた次第。ワイヤレスイヤホンでここまで上手く鳴らせるのであれば上出来だ。
強力なノイズキャンセリングが売りのFreeBuds Pro 2
さて、音質についてはこの辺りにして、ここからはノイズキャンセリングやマイクの品質について書いてみる。
今回このイヤホンを利用して、すごいと感じた点はノイズキャンセリングの効き具合。筆者も多くのイヤホンを利用してきたが、ここまで効きの良い機種はそう多くない。AirPodsを超えたのではないかという高い次元に持ってきている。
ノイズキャンセリングの精度はかなり強力。3つのマイクを使って最大47dbの騒音をカットすることができる。モードは「くつろぎ」「標準」「ウルトラ」の3つを備え、これらを周囲のノイズ量に合わせてインテリジェントに切り替えることも可能。
スペックの通り-47dbの騒音カットはすごいもので、電車の走行ノイズから街の喧騒。はたまた工事現場の脇というかなりの騒音下でも音楽を再生していればしっかりカットしてくれる。ウルトラの設定であれば、Apple AirPods Proを凌駕するレベルと評価したい。
通話音質も良好。通話時は3つのマイクに加えて、骨伝導センサー、1億以上のサンプルを学習させたAIアルゴリズムも用いて高音質な通話を可能にしている。
音以外の部分もしっかり評価したい。この機種の特徴としてはIPX4相当の防滴対応、マルチポイント接続がある。
マルチポイント接続は2つの端末との同時接続が可能。例えば、プライベートと仕事用で携帯電話を分けて2台利用している場合、前者から音楽を再生し、後者の着信待ち受けを常時を行うことが可能だ。
高音質再生を売りにする機種でマルチポイント接続できるものはかなり少ないため、そのような意味でも貴重な存在となる。
FreeBuds Pro 2では接続した両方の機種で対応していればLDACコーデックが利用できる。ファーウェイの端末間であれば、L2HC接続によって、よりシームレスな接続が可能。スーパーデバイスからワンタップで接続したい端末に切り替えて利用できる。ちなみにイヤホンのOSはHarmony OS 3.0となっていた。
公式サイトでもHarmonyOSのコネクティビィティが紹介される。日本向けサイトでもP50 Pro(日本未発売)が使われている
唯一の惜しい点は、接続端末による相性問題があること。具体的にはAndroid 13を搭載した端末と接続した際にLDAC接続できない点や、マルチペアリング時に着信した音声がうまく再生できない点。PixelなどでAndroid 13環境で使う際は気に留めておくと良いだろう。
追記:現在はこの不具合は解消されています。
本体はよく見るあの形状。やはりこの形状は人間工学的にもよくできているのか、ワイヤレスイヤホンの中でも上位に入る装着感だ。
ケースは無接点充電も対応
高音質、高性能ノイズキャンセリングを備えながらも2万円台は破格?
さて、次世代のイヤホンとはなんだろうか。Appleやサムスンが次の時代のイヤホンを模索する中、音質のパーソナライズという面でアプローチしてきたものがHuawei FreeBuds Pro 2だ。
正直、耳の穴を常時スキャンしてそれを元に音質の最適化を図るイヤホンなど耳にしたことがない。かなり先進的なことをやっている。
音響のパーソナルイコライジング、世界初の平面ドライバー搭載ハイブリッド構成、LDAC/L2HC対応でDevlaletチューニングの卓越した音質。
もちろんスマホ屋らしく強力なノイズキャンセリングと高品質なマイク性能と備える。これだけの機能を備えながら、実売2万7000円の価格は破格といえる。
ワイヤレスイヤホンの場合、出荷数が多い分パーツコストを圧縮できる。それ以上に、処理のアルゴリズムや一部ハードウェアを自社開発している点も、この値段に抑えることができた点だと改めて感じる。
研究開発に惜しみなくコストを投入し、グローバル展開できる販路とブランド力を持ったファーウェイだからこそできるものだ。
事実、米国の制裁でスマートフォンの展開は難しくなったものの、ウェアラブル端末やワイヤレスイヤホンについては好調であり、日本でも比較的売れ筋の商品という。
スマホ屋のファーウェイが本気で作ってきたワイヤレスイヤホン。そのサウンドクオリティはなかなか素晴らしいものであった。興味がある方はぜひ店頭で試聴してみてはいかがだろうか。