ファーウェイが8月に発売した新型のTWSイヤホン。最新技術を惜しみなく投入したFreeBuds Pro 2を今回レビューしてみる。
- スマホ屋が本気で作ったイヤホンをチェックしてみる
- 高音質に仕上げたハードウェアとサウンドチューニング
- スマホ屋のイヤホンとは思えない高音質サウンドに心を打たれる
- 強力なノイズキャンセリングが売りのFreeBuds Pro 2
- マルチポイント接続やHuawei端末との高い連携も売りのFreeBuds Pro 2
- 高音質、高性能ノイズキャンセリングを備えながらも2万円台は破格?
スマホ屋が本気で作ったイヤホンをチェックしてみる
市場競争が過熱する完全左右独立型イヤホンの市場。Apple AirPods Proの新型が発表されるなど、ますます注目度が高まっていくセグメントだ。そんな中でスマホメーカーとしてお馴染みのファーウェイが、満を持して発売したフラッグシップイヤホンがこのFreeBuds Pro 2になる。
箱はスマホメーカーのイヤホンでよく見かけるタイプのものだ
ケースは艶消しの加工がされている。サイズはやや大きいものになる。Qi規格の無接点充電にも対応だ。
本体の収まり悪くない。いわゆるAirPods Proのようなもので、特段取り出しにくいといったこともなく使いやすいものだ。
本体は比較的小型と言えるものだ。
高音質に仕上げたハードウェアとサウンドチューニング
FreeBuds Pro 2の対応コーデックとしては、SBC/AAC/LDACに対応している。LDACではハイレゾ相当となる24bit/96kHz再生も可能な一方で、低遅延が特徴のaptX系には非対応だ。
コーデック面ではトレンディなところを押さえるが、核となるオーディオ面についても妥協はない。
ドライバーユニットは11mm経のものを採用している。マグネットを4つ配列しており、高い駆動力を持たせることで14Hzからの低域を再現できるという。
これに加えて、独自開発のマイクロ平面振動板ドライバーを搭載。伸びやかな高域といった部分も再現できるとしている。ネットワークについては、デジタルクロスオーバーを採用した2Wayのものとなる。
独自の構成を採用する
平面駆動は通常のダイナミック型に比べて、構造的に位相ズレや損失が起こりにくい点が利点だ。一方で、並のポータブル環境では鳴らしにくいという難点がある。よくもまぁ小型化、高感度化してあの筐体に収めたなと感心しかない。もちろん、TWSイヤホンに平面駆動ドライバー採用は世界初とのことだ。
加えて、AEM(Adaptive Ear Maching)が可能だ。これはイヤホンを装着している際に内部のセンサーを使用して、外耳道の構造や装着時の密閉度を検出し、常に最良の音質に最適化するものだ。
人間において全く同じ形状の耳道はない。そのため、イヤホンの左右で音に違和感を覚えたりすることがある。一方で、このイヤホンの場合は本体側で、違和感の元になる部分を補正して出力することが可能だ。
この機能は究極のパーソナライズと言えるもので、理論上はどんな耳道の形状であろうと、理想的な音響環境を提供することが可能になっている。まさに次世代のイヤホンだ。
サウンドチューニングはフランスの音響メーカーであるDevlaletと共同で行っている。ファーウェイ自体も2012年から音響ラボを設立して研究しており、音響技術の賜物とも言えるものだ。もちろんグラフィックイコライザーも備えるので、ユーザー好みの調整も可能だ。
スマホ屋のイヤホンとは思えない高音質サウンドに心を打たれる
音にも妥協はないと触れ込みのFreeBuds Pro 2を早速聴いてみることにする。今回の試聴曲はこちら
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会より Eutopia 鐘嵐珠
ここは音圧高めの低域が楽しめるEDMをチョイス。インターナショナルな歌詞にも注目してほしいところだ。
機動戦士ガンダムUCより A LETTER/Cyua&澤野弘之
ガンダムUCのサントラからチョイス。ゆったりと流れる壮大なメロディからCuya淡いヴォーカルが映えるナンバー。実はAimerの歌ったバージョンもある。
スロウリグレット/田所あずさ
いつものです。
今回の試聴環境はスマートフォンにソニーのXperia 1IVを採用し、LDACの環境で使用する。ストリーミング環境もスマホ単独で24bit/96kHzの再生が可能で、LDACにある意味適したハードウェアを備える機種だ。
実際に聴いてみると、所詮はスマホ屋のイヤホンじゃん。と下に見ていた自分を殴りたくなる。抜けの良い高域、滑らかで解像感の高いボーカル、厚みのある低域。何を取ってもApple AirPods Proなどからは2つ以上抜けたところにいる。一言で傾向を示すのであれば、やや低音よりの質のいいドンシャリだ。
高域はかなり自然だ。いわゆるハイブリッド型ながら変なクセはなく、BA型のような金属的な固さもない。平面ドライバーを使っているからか、抜けの良さと兼ね備えている。
この抜けの良さはかコーデックに大きく依存する。伸びやかな高域を体験したいのであれば、LDAC環境での利用を強くオススメする。ボーカルの滑らかさや低域の量感、レスポンス共に高いレベルだと感じた次第だ。TWSイヤホンでここまで上手く鳴らせるのであれば上出来だ。
最初にスロウリグレットを聴いてみる。透き通るヴォーカルに対して、高域の伸びやかさ、ボーカルの艶やかさとも取れるものが伝わるサウンドであることがわかる。塞ぎ込まれたような窮屈さや過度な濃密さと表現されるものはない。
曲をEutopiaに変えてみる。低域のレスポンスの良さ沈み込み、窮屈さを感じさせない空間表現に関しては高く評価したい。この曲自体かなり低域が効く物になるが、低音がしっかり効きながらも解像感を持ちつつボーカルなどには被らない。
この解像感とレスポンスの良さは、低域用ドライバーに強力なマグネットを採用した点が生きていると感じられる部分だ。デビアレによるチューニングも大きいことだろう。
ここで曲をA LETTERに変えてみる。冒頭の静けさの中のボーカル表現も悪くない。サビのドラムスとベースが入ってくる低域は、11mmダイナミックとこの手のイヤホンでは大口径のもののおかげか、重厚感のあるものだ。
サウンドステージも比較的広い機種となるので、このような曲でも窮屈さを感じさせずに気持ちよく聴ける。
ここまで聴いてきて、サウンドクオリティはかなり高いことが分かる。所詮はスマホ屋のイヤホンと馬鹿にしていたのは申し訳ない限りだ。さすがに有線のイヤホンには劣るが、LDAC環境であれば有線環境に近いところまで来ている。
強力なノイズキャンセリングが売りのFreeBuds Pro 2
さて、音質についてはこの辺りにして、ここからはノイズキャンセリングやマイクの品質について書いてみる。今回このイヤホンを利用して、すごいと感じた点はノイズキャンセリングの効き目だ。
筆者も多くのイヤホンを利用してきたが、ここまで効きの良い機種はそう多くない。かなり高い次元に持ってきている。
ノイズキャンセリングの感度はかなり強力な部類だ。3つのマイクを使って最大-47dbの騒音をカットすることができる。モードは「くつろぎ」、「標準」、「ウルトラ」の3つとなり、これらをインテリジェントに切り替えることも可能だ。
スペックの通り-47dbの騒音カットはすごいもので、電車の走行ノイズから街の喧騒。はたまた工事現場の脇というかなりの騒音下でも音楽を再生していればほとんどわからないものであった。ウルトラの設定であればAirPods Proを凌駕するレベルと言えるものだ。
通話音質も良好だ。通話時は3つのマイクに加えて、骨伝導センサー、1億以上のサンプルを学習させたAIアルゴリズムも用いて高音質な通話を可能にしている。
マルチポイント接続やHuawei端末との高い連携も売りのFreeBuds Pro 2
音以外の部分もしっかり評価したい。この機種の特徴としてはIPX4相当の防滴対応にマルチポイント接続がある。マルチポイント接続は2つの端末との同時接続が可能はものだ。
例えば、プライベートと仕事用で携帯電話を分けて2台利用している場合、前者から音楽を再生し、後者の着信待ち受けを常時を行うことが可能だ。高音質再生を売りにする機種でマルチポイント接続できるものはかなり少ないため、そのような意味でも貴重な存在となる。
FreeBuds Pro 2では接続した両方の機種で対応していればLDACコーデックが利用できる。ファーウェイの端末間であれば、よりシームレスな接続が可能だ。スーパーデバイスからワンタップで接続したい端末に切り替えて利用できる。ちなみにイヤホンのOSはHarmony OS 3.0となっていた。
公式サイトでも紹介される。日本向けサイトでもP50 Pro(日本未発売)が使われている。
唯一とも言える惜しい点は、接続端末による相性問題があることだ。具体的にはAndroid 13を搭載した端末と接続した際にLDAC接続できない点や、マルチペアリング時に着信した音声がうまく再生できない点だ。PixelなどのAndroid 13環境で使う際は気に留めておくと良いだろう。
追記:現在はこの不具合は解消されています。
フィット感についてはよく見るあの形状だ。やはりこの形状は人間工学的にもよくできているのか、TWSイヤホンの中でも上位に入る装着感だ。
ケースは無接点充電も対応するものだ。
高音質、高性能ノイズキャンセリングを備えながらも2万円台は破格?
さて、次世代のイヤホンとはなんだろうか。Appleやサムスンが次の時代のイヤホンを模索する中、音質のパーソナライズという面でアプローチしてきたものがHuawei FreeBuds Pro 2だ。
正直、耳の穴を常時スキャンしてそれを元に音質の最適化を図るイヤホンなど耳にしたことがない。そのくらい先進的なことをやっているのだ。
音響のパーソナルイコライジング、世界初の平面ドライバー搭載ハイブリッド構成、LDAC対応でDevlaletチューニングの卓越した音質、強力なノイズキャンセリング、高品質なマイク性能。これだけの機能を備えながら、実売2万7000円の価格は破格といえる。
TWSイヤホンの場合は出荷数が多い分、パーツコストを圧縮できる。それ以上に、処理のアルゴリズムや一部ハードウェアを自社開発している点も、この値段に抑えることができた点だと改めて感じる。
研究開発に惜しみなくコストを投入し、グローバル展開できる販路とブランド力を持ったファーウェイだからこそできるものだ。
事実、米国の制裁でスマートフォンの展開は難しくなったものの、ウェアラブル端末やTWSイヤホンについては好調であり、日本でも比較的売れ筋となっている。
スマホ屋のファーウェイが本気で作ってきたTWSイヤホン。サウンドクオリティはなかなか素晴らしいものであった。興味がある方はぜひ店頭で試聴してみてはいかがだろうか。