アフターコロナと呼ばれる時代になり、行動制限も随時緩和されてきている。それでも中国のように日本向けの短期滞在ビザ免除措置を一時停止している地域もあり、簡単にはいかないようだ。
そんな中、深圳特区に限り予約や事前ビザなしで陸路入境できると聞いて、筆者もこの度試してみた。今回は香港から深圳に入境するにあたっての注意点をまとめていく。日本向けには山根さんなどをはじめ、複数の方が書いているので内容は重ねてとなる。
山根さんの記事は参考になりました。電脳フリマの際の入境レクチャーも助かりました。
なお、ここに記すものは2023年5月1日に入境した際の情報となる。あらかじめご了承いただきたい。
今回筆者が入境したのは羅湖だ。入境としては王道ルートとも言えるものだ。
現在、深圳へは事前取得なしの場合、外国人向けに5日間の滞在ビザを取得可能だ。このビザは深圳区域のみの限定となるため、広州などに行くことはできない。あらかじめ注意してほしい。
日本人が、深圳に行くにあたって必要なものは?
日本から香港経由で陸路から深圳に入境するにあたり、必要なものは以下になる。
・中国税関アプリ(WeChat)
・パスポート
・クレジットカード
・香港入境カード
・抗原検査キット
・中国税関→駅のゲートを抜けるのに必要
このアプリはゲートを通過するのに必要だ。国籍や香港入境日、列車などの必要事項を記入する。列車はMTR、座席は3Bなど適当に書いておけばよい(そこまで聞かれない)これはWeChatのミニアプリで起動するので、WeChatがあればOK)だ。駅にコードが多く貼られているが、事前に必要項目を入力するとスムーズだ。
・パスポート→言わずもがな
これがなきゃそもそも香港に来れない
・クレジットカード→入境手数料の支払いに必要
入境手数料は人民元、香港ドル共に現金は使えないため、AliPayやWeChat Payと言った電子決済かクレジットカードが必須となる。日本発行のカードで支払いは可能だが、VISA、Master、AMEX、UnionPay以外は利用できない。JCBカードしか持ってない方は注意が必要だ。
・香港の入境カード→空港でもらえるやつです。
香港空港で入国検査を受けるともらえるやつです。これを忘れた場合は香港に来た際に使った航空便がわかるもの(航空券の半券等)の提示が必要となる。筆者は見事に忘れたが、たまたま航空券の半券があったのでこれで対応してもらった。
・抗原検査キット
4月29日以降の入境からは、以前まで必要だった新型コロナウイルスの"PCR検査"の結果(陰性証明)の提示が不要となった。その代わり、抗原検査に基づいた"自己申告制"となり、提示を求められた場合は入境の48時間以内に行った検査結果を提示する必要がある。
今回、筆者の場合は提示を求められなかったが、一部提示を求めらている場面もあった。これは日本で買うほかに、現地のコンビニ等で買うのもありだ。現地では大体ひとつ100〜200円程度で買える。
深圳に行く時は朝早くに羅湖に行け
これがとにかくマストとなりそうだ。深圳へのビザ発行時間は朝9時から夜19時30分までとなっているが、実際は朝イチから10時までの受付で"ほぼなくなる"と思ってもらって良い。
過去に入国した方の話を聞いたところ、ビザの受付人数もかなり絞っており、1日あたり70人が目安となっている。実際、筆者のタイミングでも70人(午前35人、午後35人)となり、この枠は朝9時に窓口が開いた直後に並ばなければ、すぐに埋まってしまう。
筆者は8時30分に入境検査場に並んだが、既に30名以上の列があった。列番は36番目で受付はなんと13時を回ってからとなった。実に4時間以上も待ちぼうけを食らった形となる。これについても直近で深圳に行かれたフォロワーさんも4時間ほどかかったと言っており、時間によってはかなり厳しいものになる。
なお、1番早い方は始発列車で来たという気合の入れっぷりだった。様々な目的で深圳に訪れたいという方が、外国人でも多いようだ。それでも、 1番早いこの方ですら深圳入りできたのは10時30分を回ってからだった。
そのため、確実に深圳に入るためには、九龍地区からは遅くても朝7時ごろに出るのがベストとなる。多少早いかもしれないが、この時間に出ないと当日の入場は難しいものとなる。前泊を前提として動くことが望ましい。
さて、ここからは大まかな手順となる。羅湖に向かう電車はMTRのEast Rail Lineとなる。香港島の金鐘から出発列車で運行されるので、座席には概ね座れるはずだ。
香港空港からは空港線を終点の香港まで乗り、中環まで連絡通路を歩き、Island Lineを乗り継いで金鐘まで行けば良い。場合によってはバス等を利用するのもありだ。日本からの0日香港であれば、香港行きの深夜便を利用し、空港発の始発列車で羅湖に向けて動き始めれば7時半ごろには到着できる。これなら確実に深圳へ入れることだろう。
羅湖まではこんな電車に乗る
駅を降りたら深圳方面へ。オレンジ色の「訪港旅客」の表示にそって進もう
ここから先は入管施設のため写真NG。流れとしてはパスポートチェック→深圳アプリの提示→ビザ発行→入国審査→手荷物検査となる。
深圳アプリの提示は境界の橋を渡った辺りとなる。QRコードは至る所に提示があるのでそれを読み込む。全て入力するとバーコードが表示される。これをスクリーンショットで撮っておくと、現地のローミング等で表示できないといった問題を少なくできる。
そのあとは深圳方面へ進み、免税店が並ぶ付近を見ると上の階層に上がれるエスカレーターがある。ここで、ビザの発行をしてもらう形となる。ビザの発行の手順としては、写真撮影→書類記入→受付→手数料支払い→ビザ発行となる。
どちらも現地にて記入、撮影するものだ。ビザの写真撮影は、撮影後に顔写真が記載されたチケットが出るので回収を忘れずに。ビザの申請書は現地に記入例があるのでそれを参考に記入すれば良い。宿泊の予定がない場合は、適当なホテルを書いておけば問題ない。
それ以降は受付番号を発券し、呼ばれるまで待つ。その後は待合室内の2番のカウンターで受付、4番のカウンターで支払いし、5番のカウンターでビザを発行したパスポートの受け取りとなる。カウンターでの受付までが大体45分〜4時間。ここからパスポートの受け取りまで概ね45分ほどかかる。
全て完了するとビザが出てくる。特区とある通り深圳区域でしか利用できない
このあとは入国審査と手荷物検査になる。筆者のようにスマホを多く持ち歩く人は、手荷物検査で弾かれることになる。
筆者も案の定引っかかってしまったが、ライターという出自と全て自分のスマホ(転売目的でないこと)だと検査官の前で証明した事でことなきを得た。なお、没収品には新品の「Galaxy S23 Ultra」が2台ほどあったことから、密輸を企てる人間も後を経たないようだ。
中国では高価なGalaxy S23 Ultraだが、香港から安価に仕入れて販売すれば利益になることが知られている。無申告や虚偽申告を行ったものと考えられる。
深圳も行けるようになったが、まだまだ手軽ではない
事前のビザ取得なしで外国人でも香港から陸路で深圳に行けるようになった点は、素直にありがたいものだ。それでも、ビザを取得する関係で面倒なことも多く、時間もかかる。基本的に半日待ちは覚悟したほうが良いだろう。そのため、今回の深セン訪問で感じた「あった方が良いもの」をまとめる。
・本土で利用できるSIMカード
・モバイルバッテリー
・軽食、お菓子、飲み物
・クッション等
まず、本土で利用できるSIMカードは、羅湖のエリアが中国本土となり、香港の基地局の電波がかなり弱くなるからだ。そのため、待合室にいた方の中でも「スマホが圏外で使えない」といった事態に陥った方もいた。
モバイルバッテリーも同じくで、スマホで時間潰しをするとバッテリーはみるみる減っていく。保険という意味でも持っていたほうが確実だ。
軽食については、間違いなくあったほうが良い。このビザ発行については、12時〜13時は担当官が昼休憩に入るため、全く処理が行われないのだ。そのため、10時くらいに整理券を受け取った場合は間違いなく昼を跨ぐことになる。
その上、待機場所が狭いイミグレエリア内となるため、飲食店がないのだ。空港も保安検査場内に飯屋はないのと同様となる。
そして、頼みの綱の免税店は酒、たばこ、コスメくらいしか無く、まともな食べ物は取り扱っていない。自動販売機すらないのだ。そのため、軽いお菓子くらいは持って行ったほうが保険になりそうだ。これが良か否かは不明だが、待合室でお弁当を食べる方もいた。これについて、指摘はされなかったので問題にはならないと考える。
クッションについては、待合室の椅子が固いので、長時間の待機で気になる方はあったほうが良い。
さて、まとめると深圳への入境は正直なところ現行制度ではビザ取得が鬼門となっており、ここに大きく時間を取られてしまう形となる。
この時間を短くすることはかなり難しく、少しでも早く深圳に行くなら「朝早くから羅湖に行く」が鉄則となりそうだ。正直、体も心の負担もある程度大きいので、なかなか気が進まないものがあるが、筆者のようなガジェット好きであれば入境して5秒で疲れなど吹き飛ぶはずだ。
日本未発売のわけわからんガジェットにはワクワクが止まらない
筆者としては、以前のようなノンビザで深圳に入れるようになることを願いたい。