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【前編】Zenfone 11 Ultraの発表からASUSのスマートフォンの今後を考える。

 ASUSの最新スマートフォン「Zenfone 11 Ultra」がいよいよ発売だが、その外観やスペックは先に発売されたROG Phone 8に似た通っていた。

 また、発表されなかった「コンパクト」なZenfoneについて、特に支持の大きい日本では今後の動向が気になる形だ。今後のASUSのスマートフォンの展開がどうなるのか。二回に分けて考察してみたい。

 

昨年報道されたZenfone終焉のウワサ。今改めて振り返ると…

 

 さて、まず思い出してほしいものは昨年飛び込んできた「Zenfoneがなくなるかもしれない」という報道だ。台湾メディアを発端に報じられたが、後にASUS公式が撤回する形をとった。

 その内容は「ZenfoneがROG Phoneの部門に吸収される可能性がある」「スマートフォンを担当している人員が業績不振を理由にレイオフされている」とし、Zenfoneが終焉するのではないかとした。

 

 当時は考えにくいとしたが、Zenfone 11 Ultraの発表を見ると「ZenfoneがROG Phoneと統合される」という点はほぼ現実になった。実際、Zenfone 11 UltraはROG Phone 8からAirTriggerと側面USB-C端子を廃し、日常使いに特化したAI機能を搭載した「別チューニング」の機種と捉えることができる。

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Zenfone 11UltraはROG Phone 8と外観やスペックが似通っている

 

 そのため、 Zenfoneはグローバル市場で求められる画面サイズのスマートフォンに変更して、パソコンを展開しているヨーロッパやアメリカなどでのシェア獲得にシフトしたと考えられる。

 ROG Phoneとプラットフォームをある程度共通化することで開発やパーツコスト削減も行えているはずだ。外観もROG Phoneに寄せることでZenfoneの知名度が低い地域では「同じメーカーのシリーズ」という認識を与えることもできる。

 また、少数生産ながらヨーロッパ向け価格を をGalaxy S24+相当に抑えていることから、ライバルはGalaxyやOPPOのフラグシップライン、シェアの強い台湾や日本ではイヤホンジャックの存在からXperiaやAQUOSになると考えられる。

 

 一方で、世界的に見れば小型スマホは概ね不振になる。サムスンやAppleも小型ラインナップを展開したが、いずれも1~2年程度で販売を終了し、後継機は存在しない。これも踏まえると、現在展開されている小型のZenfoneが終焉、または大幅な縮小になるのではないかと考えられる。

 

 事実、ASUSはZenfoneの開発を続けるとしたが、それがどのような規模になるのか。小型端末として継続するのか明言を避けている。

 
海外で不振の理由。競合の存在と知名度不足、不透明なサポート

 

 ASUSのスマートフォンが不振というイメージがピンとこない方も少なくない。これは日本だとASUSのスマートフォンはオープンマーケットシェアで6位につけ、同社のグローバル出荷台数のうち21%(2021年度)を占める。日本のMVNOに10年以上端末を供給していることで認知度が高いこと、ローカライズされている点も理由だ。

 

 一方で海外ではその限りではない。今のZenfoneは小型化して、一般に世界シェアの大きい6.5インチ以上のパイではなく、ひとまわり小さく、日本などで支持の強い6インチクラスで勝負に出たのだ。

 中華端末というコスト面のライバルが減る市場とは言え、競合は最強クラスのiPhoneやGalaxyと近いサイズ。差別化を図っているとは言え、競合が多いセグメントで優位になれず不振になっていると考えられる。

 

 コンパクトになったZenfoneは意外にも競合の多いサイズだ。Zenfone 10は高さが146.5mm、幅68.1mmだ。一方で競合のiPhone 15やGalaxy S23、Xiaomi 13などは高さ146mm、幅70mm前後の値だ。実はZenfone 10のサイズ、スペックはコストに優る中華勢の勢いこそ弱いが、世界シェア1~3位の全社が製品を投入するスマートフォン界屈指の激戦区なのだ。

 ここで価格を振り返ると、Zenfone 10 は128GBモデルで香港価格が5698香港ドル(約10万5000円)だったのだが、Galaxy S23が6398香港ドル、Xiaomi 13が5698香港ドル(両者は256GB)と考えると厳しいと言わざるを得ない。

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同じ構成の日本版が税込9万9800円だったことを考えると税抜価格の香港は少々高価だ。

 

 地域によっては知名度不足も理由だ。これは香港をみると、Zenfoneよりも主力はROG Phoneというのが伝わってくる。お膝元の台湾でもシェア1%前後と海外市場で苦戦気味のソニーにも引けを取る。

 筆者は幾度か海外の家電量販店をチェックしたが、多くの店舗でASUSのスマートフォンはROG Phoneをメインにディスプレイされている。コンパクトなZenfoneはあまり注目されていないようなのだ。香港の店舗のスタッフに「どちらが売れているのか?」と聞くとROG Phoneだと答えてくれた。

 この理由としては、ROG Phoneはパソコンの「ROG」ブランドの関係で、その関連製品として認知される一方、Zenfoneはそこまでパッとしないのだ。地域によっては「ASUSがスマートフォンを作っている」という事実があまり知られていないと考えられる。

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香港だとメインはROG Phoneで古い世代も併売されている


 サポートについても他社に比べて優れているとは言えない。直近のZenfone 11 UltraでもOSアップデートは2回、セキュリティパッチは4年と他社製品よりも短い。それでいて価格は7499香港ドルと競合他社並みに高価だ。

 これ以外では、サポートセンターの対応があまり良くない、修理対応が不透明といった声も耳にした。OSアップデート期間が短いことも選ばれにくい理由なのかも知れない。


 裏付けは中古市場での流通の少なさだ。香港では「スマホならなんでもある」と言われるくらいの品ぞろえを誇る先達広場や深水歩でもZenfoneはほとんど見かけない。

 体感的にはMEIZU(香港発売なし)並みに少なく、なんなら日本からやってきたであろうAQUOSやGoogle Pixel(どちらも香港発売なし)の方が目にする。正規販売されている地域でこれなので、いかに厳しいか分かるはずだ。


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スマホなら古今東西なんでも集まる先達廣場でもZenfoneはよくて片手で数えられるくらいしか見つけられない

 

 さて、今後のZenfoneはどうなるのか。次回記事にて現状を踏まえ考察していきたい。

 

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