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AKG K3003 レビュー 今だからこそ聴いてほしい12年前の名器的なイヤホン

 こんにちは。みなさんは憧れのものってありますか?アクセサリーや車などなど、何かひとつはあるかと思います。

 筆者は中学生の頃に発売されたとんでもないイヤホンに憧れていた。当時の定価は13万7000円と買えるものではなかったのですが…あれから10年ほど経ちましてついに買うことができた。


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AKG K3003を!!!!

 

 

 

 

AKG K3003を軽くおさらい

 

 K3003はオーストリアの名門AKGが生み出した世界初の3wayハイブリッド構成のイヤホンです。今でこそ、KZなどの中華メーカーからも安価なものが多く出るようになったBAユニットとダイナミックドライバーのハイブリッド構成。

 その構成を早くから取り入れたのがK3003というわけです。加えて、これも数が少なかったフィルターチューニングが可能で、音響フィルターを3種類から選んで好みの音にできるのも魅力だ。

 これは実質イヤホンを3本持ってるようなものだと錯覚させることができた。ちなみに、iPhoneなどで利用できるリモコン付きのK3003i、香港などの一部地域で販売されたK3003 Limited Edition(本体カラーが金、ケーブルが白)も存在する。

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まず箱がでかい!当時はスーパーハイエンドなだけあって箱自体もかなりの高級感があります。


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本革のケースが付属、本体にはシリアルNo.まで振ってあります。カスタムIEMを除いたらこの機種が初めてだったかもしれません。


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本体はオーソドックスな形状


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ブッシングの上にケーブルがループしており、万一の負荷を抑えられるようになっています。

 

 

AKG K3003を聴いてみる。ハイブリッド型の原点にして、ひとつの頂点たるサウンド

 

 

今回の試聴曲はこちら

 

機動戦士ガンダムSEEDより

FIND THE WAY/中島美嘉

 

FIND THE WAY

FIND THE WAY

  • 中島 美嘉
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

Spending/i☆Ris

 

Spending

Spending

  • i☆Ris
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

アイドルマスターミリオンライブより

Parade d'amour/オペラセリア・煌輝座

 

Parade d'amour

Parade d'amour

  • オペラセリア・煌輝座 [北沢志保 (CV.雨宮 天)、桜守歌織 (CV.香里有佐)、徳川まつり (CV.諏訪彩花)、田中琴葉 (CV.種田梨沙)]
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

何もない私には/田所あずさ

 

何もない私には

何もない私には

  • 田所あずさ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

 このイヤホンを一言で言えば「上質な3Wayスピーカー」のようなもの。特性の違うユニットを組み合わせたハイブリッド型で起こる「音域によって音の固さが違う」「極端に言えば音色が変わる」というものがK3003では全く感じないのです。

 

 本来、理想的なマルチウェイスピーカーはこの材質特性の差によって生まれる音色の差を無くして「1本のスピーカーのように聴かせる」もの。正にその理論に沿って開発されたかのような音を鳴らすのです。

 

 K3003が登場してから12年経過した現在のハイエンドクラスのハイブリッド機ですら、「ユニット特性による音色の差」を解決した機種は少なく、これがこの機種が「原点にして頂点」と評される理由かと思います。

 

 高域は伸びるのはもちろんですが、BAユニットにありがちな「音の固さ」「金属的な冷たさ」というのをほとんど感じません。それでいて分解能の高さもしっかり備えていて、BAユニットの良さもしっかり残しているのです。絶妙すぎるチューニングです。

 

 ボーカルは「1歩前に出て艶やか」という表現が良いでしょうか。ここに少しBAらしい固さがありますが、他のハイブリッド機などに比べるとかなりクセが抑えられております。

 同価格帯のイヤモニなどに比べると消え際の表現などのリアルさには一歩劣りますが、それを上回る艶やかさがこの機種にはあります。現にSpendingやFIND THE WAYを聴きながらニヤついています。

 もちろんBAらしい硬さなども多少は感じられるが、サ行の刺さりなどはかなり抑えられており、長時間のリスニングでも聴き疲れしにくいチューニングだ。

 

 低域はまさにダイナミックドライバを積んでいるだけある!と言わんばかりの表現だ。驚くのはこの筐体サイズながらグワーッと沈んでいく低域が出てくる。これはPerfumeの「宝石の雨」とかを聴いてもらえると理解が早く、BAユニットには出せない沈み込みのある低域が出てくるのだ。これはハイブリッド型の強みを存分に発揮できている。

宝石の雨

宝石の雨

  • Perfume
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

 フィルターは言わゆる高域ブーストと低域ブーストがオプションで付いています。個人的には前者がより抜けの良い音になり、後者はより低域がブーストされるように感じました。正直リファレンスが好みです。

 

 サウンドステージはかなり広いですね。今聴いてもそう感じるレベルですので、あの当時としては化け物ですよ。

 

10万円以上のイヤホン市場を作ったK3003
 

 K3003の功績として、10万円以上のイヤホンの市場を開拓したというものがある。12年前の当時、イヤホンに5万円といったらウルトラハイエンドで、10万円を超えるイヤホンなんて片手で数えるほどしかなかった。特にコンシューマー向けのユニバーサルモデルは皆無。

 K3003以外に存在したのは、Final Audio DesignのPiano Forte X-CC(現:Final 20万オーバー)やFitEar TOGO334(同社イヤモニのユニバーサル版)くらいだろうか。

 

 このK3003は前述のクセありモデルや、イヤモニではない「万人受けする純粋な音の良さ」で勝負しに来た。当時から評判はよいものの価格の高さから「いつかはK3003」なんて言葉が某掲示板で見られるなど、高嶺の花として君臨した。

 これ以降、10万円以上のイヤホンでもサウンドクオリティが高ければある程度売れるということが分かると、各社このハイクラスに投入してくる。

 Shure SE846、Westone W60と言った新規モデルはもちろん、Ultimate Earsのようなイヤモニのユニバーサルモデルを投入する例も出てきた。JH AudioのLayla Universal Fitのように約40万円のお化けの登場まで時間はかからなかった。

 

 現在ではソニーのIER-Z1RやビクターのHA-FW10000などの日本の大手メーカーを含めたフラッグシップがこのハイクラスに位置する。そのような市場開拓のイノベーターとしてもK3003は名を馳せたイヤホンだ。

 

 

K3003は今だからこそ聴いてほしい名器的なイヤホン

 

 K3003を久しぶりに聴いてみて最初に感じたのは「あれ?こんなに音良かったっけ?」という感想でした。

 流石に私もK3003を聴いたことがないわけではなく、幾度か某専門店などで試聴したりしていました。音の良さは理解していましたが、ここまで良かったか?という印象。

 

 30分ほど考えた結果、プレイヤーの性能が明らかにあの頃より上がってることに気づきました。今のメインはHiby R8SSとなっており、3年前より確かにプレイヤーがランクアップしてるのです。

 

 そのため、このハイレゾ対応プレイヤーが多く出ている今の方が登場時よりもポテンシャルを発揮できる環境なのだ。音に関しては最初にも書いた通りで、ここまでBAらしさを感じさせないハイブリッド機は他には無い。

 

 とにかく滑らかで「ひとつのドライバーから鳴っている」ような感覚になります。かと言ってBAユニットの特性を殺してる訳ではなく、生かすところはしっかり生かすチューニングだ。

 そしてなにより、ボーカルがとても艶やかかつ、刺さりもほぼ皆無な聞き心地の良さは特筆ものだ。同じ構成のソニー XBA-Z5という機種では高域にBAの音の硬さを感じる。聴いていて楽しい機種なのだが、K3003のような滑らかさや心地の良さはない。

 

 さて、K3003はリケーブルできなかったりと遊びの要素は無いですが、これだけで完成されたチューニングとなっているので不要かと。近年のこの価格帯はだいたいリケーブル可能な機種が多いので残念といえば残念ですかね…

 

K3003は最初期にして至高のハイブリッド機

 

まさにその言葉がぴったりかと思います。

 

「憧れたイヤホンを手に入れた」とあの頃の筆者に伝えたいですね。現在こそ生産終了となってしまいましたが、「今だからこそ聴いて欲しい」と言えるイヤホンでしょうかね。

 

 12年前に13万円という当時のイヤホンとしてはぶっ飛び過ぎてる価格で発売されましたが、確かにその価値はあったと思います。

 Dune DN1000やAstrotec AX60などのK3003の構成をリスペクトしたモデルも多く登場し、市場やトレンドに影響を与えたモデルです。そして、後継機が存在しないのもK3003が孤高の存在と言えるでしょう。

 

 同社の後継モデルと言われたN5005は正直なところ方向性としては別方向です。そしてそのAKGもハーマン・インターナショナルに買収された後に、そのハーマンが買収されたので今では韓国サムスン電子傘下となっています。 

 GalaxyがAKGのネーミングがついたイヤホンを付属できるのはこういう背景がある。それもあってか、K3003/N5005の後継モデルは絶望的とも評されている。

 

 筆者からこれを「買え」「買ってくれ」とは言いません。生産終了から時間も経ち、中古と言えどフィルターなどの欠品がなければ5万円台にはなるモデルです。

 

保証面でも長期は厳しく、なによりリケーブルができない機種です。

 

それでも気になった方…もし良質な中古個体がありましたらぜひ手に取ってみてください。

 

それでは