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MOONDROP MIAD01 レビュー DAPなら120点、スマホなら60点 刺さる人には強烈に刺さる高音質スマートフォン

 どうもこんにちは。今回はSIMのささる音楽プレイヤーこと、話題沸騰の「MOONDROP MIAD01」をレビューしたい。

 なお、本レビューは海外で実施しているため、SIMカードを入れた状態で利用している。日本国内では電波法第103条の6の解釈並びに所轄総通の回答に基づき、電波を発した状態で利用する。

 

 

 

4.4mmバランス端子搭載の高音質ゲテモノスマホ。MOONDROP MIAD01

 

 MIAD01はMOONDROP(水月雨)が発売したスマートフォンだ。特徴として高品質かつ、音質に特化したサウンドハードウェア、大画面かつAndroid OS採用による操作性の向上、各種ストリーミングサービスを利用できる点をアピールした。基本的な性能は以下の通り

 

プロセッサ:Dimensity 7050(1080のリネーム版)

メモリ:12GB

ストレージ:256GB UFS3.1

 

ディスプレイ

6.7インチ FHD+解像度 OLED

120Hzリフレッシュレート、HDR10 1920Hz PWM調光

 

カメラ

メインカメラ:6400万画素

超広角カメラ:800万画素

フロントカメラ:3200万画素

 

バッテリー:5000mAh

33W 急速充電

 

 まず、パッケージから衝撃的だ。 なんと描かれているのは可愛い美少女だ。コラボモデルでもない製品でここまで描かれるのは珍しい。

 ちなみにこのメーカーが展開する製品は日本の萌え文化をインスパイヤしており、過去に販売したイヤホンなどの製品にも美少女が描かれている。まさかスマホまで…と思いつつ、実にMOONDROPらしさを感じるかわいいパッケージだ。

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MOONDROPといったら可愛い女の子は外せないようだ

 

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本体画面は6.7インチ、画面解像度はフルHD解像度で普通にスマホだ。樹脂筐体にエッジディスプレイという今までないデザインだ

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操作ボタン系は本体右側に備わる。オレンジ色のボタンがアクセントになっている

 

 当然サウンドハードウェアにも抜かりはない。DACにはシーラスロジック製のものを各チャンネルごとに採用し、シールド機構でノイズをブロックしている。サウンドハードウェアを専用ハードウェアに任せたことで132dbのダイナミックレンジを確保している。


 アンプ部はバランスで4Vrms、アンバランスで2Vrmsとスマートフォンとしては破格の高出力。ボリュームも有線イヤホン接続時は100段階になるなど、オーディオスマホとして「余裕」を感じさせる構成だ。

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出力端子は3.5mmアンバランスと4.4mmバランス。4.4mm端子部はメッキ加工が施され、高音質に寄与している。

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筐体は樹脂製だ。

 

 本来は音質優先なら共振の少ない金属筐体にしたかったのだろうが、コストや電波の関係からこの素材にしたのでは無いかと考えられる。3Dプリンターで作ったのでは?という安っぽさはあるが、このおかげで本体は207gと軽量に抑えている。

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iPhone 15と比較するとMIAD01は大柄だ

 

 

 

スマホとしてはパワフルかつ、圧巻の高品質サウンド。ストリーミングアプリとの相性もヨシ!
 

 サウンドに関しては「スマートフォン」として考えた場合は思った以上の仕上がりだ。チューニングとしては女性ボーカルがやや前に出る印象で、MOONDROPらしさを感じさせるサウンドだ。

 そして何よりも出力レベルが並のスマートフォンとは段違いだ。基本的にこのスマートフォンで「音量が取れない」というイヤホンはよほどでなければ無いはずだ。マルチBA構成はもちろん、トライブリット構成と言った「鳴らしにくい」イヤホンでも悠々と鳴らしてくれる頼もしさがある。


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突き詰めたハードウェアによるサウンドはさすがと言わざるを得ない

 

 そして、バランス接続に切り替えるとサウンドステージがグッと広がり、低域がよりソリッドになる。バランスド・アーマチュア型のイヤホンやハイブリッド型と呼ばれるイヤホンであれば、こちらの方が相性の良い機種も多い。これについては、音源や使うイヤホンやヘッドホンに合わせて使い分けると良いだろう。

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本体右側の端子に切り替えると、より上質な体験ができる

 

 今のところ3.5mmアンバランスで「ノイズが乗る」という意見を見かけるが、確かに画面をロック解除した時やストリーミングアプリの曲の変わり目に時折「ジッ」って音が乗ることがあった。

 一方で、この音はある程度ボリュームを上げて聞いていたりする場合はあまり気にならない。筆者の体感的には100段階あるうちのボリュームのうち、25以下で聞いてるユーザは多少気になるかもしれない。

 また、4.4mmバランスではそのような事は一切ないため、おそらく3.5mm4極ジャックのマイク端子が何かしら影響与えているのではないかと考える。このほか、ワイヤレスオーディオはSBC/AACのほか、LDACに対応していることを確認できた。

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ストリーミングはApple Musicを試したが、動作のもっさり感などは感じない。この辺が専用機の弱みだったので、MIAD01はこの部分のハードルをしっかり超えてきた印象だ。

 

 また、MIAD01はストリーミング対応の高音質プレイヤーらしく、ハイレゾファイルもダウンコンバートなしのSRC回避に対応する。いわゆる「ビットパーフェクト再生」が可能だ。外で数十万の楽曲を、いつでも高音質で聴ける究極のストリーミングマシンなのだ。

 

MIAD01をスマホとしてチェック。各所作り込みの甘さは目立つ


 スマートフォンとしての操作性は悪くない。ディスプレイは6.7インチのフルHD解像度のものを採用し、OSにはAndroid 13を採用する。そのため、基本的な操作はスマートフォンの感覚で利用できる。Google Playストアはデフォルトでは利用できないが、別途apkをダウンロードすれば問題なく利用できる。

 ディスプレイはOLEDパネルだが、今時珍しいエッジディスプレイだ。120HzのリフレッシュレートやHDR10に対応。加えて1920HzのPWM調光に対応することから、2021年ごろのアッパーミドル機などで採用されていたものを安価に仕入れた形とみる。光学式とはいえ、画面内指紋認証に対応する点はありがたい。

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エッジディスプレイを採用する。画面輝度もそれなりに出せるため、屋外での視認性は悪くない


 プロセッサはMediaTek製のDimensity 7050を採用。1年落ちくらいのミッドレンジスマートフォン向けのチップセットだが、今でもSnapdragon 665が主流の音楽プレイヤーのカテゴリーで見ると、特筆して高性能な機種に分類される。メモリは12GB、ストレージは256GBを採用し、最大2TBのSDカードが利用できる。

 

 一応、スマートフォンとしての動作をチェックしてみると、ミッドレンジ機らしい動作はしてくれる。Xperia 10シリーズやAQUOS sense7くらいの動作感というイメージで良いだろう。ゲームなどでは性能不足を感じるが、性能を抜きにして音楽に特化したスマートフォンとして考えるなら満足できるはずだ。

 また、本体スピーカーはステレオであり、こちらのサウンドもそこまで悪くない。一方で、本体スピーカーやBluetoothオーディオ、USBオーディオでは前述の100段階ボリュームは利用できない。NFCにも対応するが、決済系はうまく利用できなかった。

 

 バッテリーは5000mAhとスマホとしてみても一般的。MIAD01のオーディオハードウェア部はスティック式DACなどで利用されるものなので、AK4497などに比べるとかなり低消費電力だ。

 音楽再生だけに限れば意外と電池持ちが良く、特筆するほど悪いと言った印象は無い。この手のプレイヤーに多いオーディオボード部の発熱といったところも感じられない。

 

 発表時に「そこまできれいに撮れない」と言われたカメラについては、案の定そこまできれいに撮れない。確認した限りメインカメラはソニー製のIMX686が採用されており、基本性能そのものはそこまで低いわけでは無い。夜景モードやポートレートモードこそあるが、ソフトウェアのチューニングを追い込むことができなかったのだろう。

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公式も「あまり綺麗じゃない」と言ったカメラは6400万画素のメインカメラと800万画素の超広角カメラだ


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カメラ性能はお世辞にも褒められない。チューニングの甘いDimensity搭載スマホという感じで、あくまで記録用がメインと思ってもらえば良さそうだ。

 

 ソフトウェアチューニングの甘さはUIなどにも出ている。日本語は設定から変更できるものの翻訳はまだ甘く、一部で不思議日本語が見られる。例えば、画面のリフレッシュレートレートの120Hzの項目は「120Hz シルキー ハイ ブラシ 没入型体験」となっていたり、カメラには「縦向き」モードが存在する。

 海外スマホを日常的に買っていた方からしたら特段驚きもしないが、初めてこのようなスマホを手にした方からするとこの不思議な日本語に驚くかもしれない。

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カメラモードには「縦向き」なる誤訳がある。少し前のvivoがこの表記だった

 

 また、デフォルトの通知音や着信音がいくつか入っているが、通知音はレトロゲームでいうところのゲームオーバー音のような音である。着信音はゲームのメニュー画面のBGMという表現が適切だ。

 


ハイレゾストリーミング全盛期に生まれた風雲児。無制限プランやpovo 2.0などと組み合わせよう
 

 さて、筆者がMOONDROP MIAD01に心が動いた最大の理由がスマートフォンであること。すなわち、SIMカードが刺さってセルラー通信を利用できることだ。もっとも、このような無線的な付加機能はピュアオーディオを求めるDAPでは、ノイズ対策の観点から避けられる傾向にある。

 筐体も金属削り出しなどとするため、アンテナ設計はスマートフォン以上に難しいという意見もメーカーから伺ったことがある。ましてや音質特化スマートフォンというカテゴリーではONKYOのGRANBEATを最後に存在しないジャンルだ。

 加えて、DAPというカテゴリーでみても5G通信対応は初めてだ。ロスレスやハイレゾフォーマットの音源でも高速通信のおかげで外で快適に利用できるだろう。

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MIAD01最大の魅力は高音質な音源もいつでもどこでもストリーミングで聴けるところだ
 

 MOONDROP MIAD01のSIMカードはnanoSIM×2のデュアル構成。対応バンドは5GがN1/N3/N5/N7/N8/N20/N28/N41/N77/N78に。4GのB1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B17/B20/B28/B38/B40/B41/B66に対応する。日本ではソフトバンク系が快適に使えそうだ。

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気になるVoLTEにはちゃんと対応している

 

 筆者としては、今こそセルラー通信のできる高音質DAPという選択肢があっても良いと考えている。大容量の音楽ファイルで通信量を圧迫するという意見には、5G通信の普及によって容量無制限や100GBといった数年前には考えられなかったプランも登場した。5Gでは4G回線に比べて高速で通信できることもプラスに作用する。


 また、ストリーミングサービス側もハイレゾフォーマットに対応し、24bit/96kHz音源での配信も行っている。以前よりも高音質で聴ける環境が整いつつある。環境としては「SIMカードの利用できるDAP」という存在に味方していると感じている。

 

 

DAPとして120点、スマホとして60点。刺さる人には強烈に刺さる「ある種の同人スマホ」

 

 MOONDROP MIAD01は高いサウンドクオリティに加えて、ある程度の性能をしっかり備えたスマートフォンとして評価したい。スマートフォンなので当然だが「SIMカードが利用できる」という飛び道具的な側面も備えたDAPという見方もできる。

 

 筆者としてはエポックメイキングなスマホと感じたが、 香港で試した際に一緒に体験した携帯電話研究家の山根さんが発した「数年後にコミケで売ってそうな同人スマホ」という言葉がいちばんしっくり来た。これには筆者も納得だ。

 

 誤解を恐れず書くなら同人誌のスマホ版だ。作り手が作りたいものを作った結果がこれだ!と言わんばかりのものを見せつけられる。もはやある種の性癖であり、刺さる人に刺さればそれで良い。MIAD01はそんな商品…いやある種の作品だと思ってもらえばいい。

 

 筆者も投稿した通り、ストリーミングDAPとして考えれば、この製品には100点以上の評価をつけられる一方、スマートフォンとしては、まだまだ作り込みが甘く実質60点程度の評価をせざる得ない。

 

 まず、本体は生産性重視なのか同じ樹脂でも価格の割に安っぽい。廉価なXiaomiやOPPOのスマートフォンとは異なり、3Dプリンターで使ったのではないか?とも感じさせるボディだ。そのため、傷がつきやすく、日常利用で落下でもさせれば打痕のみならず、本体にヒビ等が入る可能性を否定できないのだ。

 

 加えて、本体に描かれているかっこいいロゴはプリントの印象だ。そのため日常利用で容易に禿げる可能性を否定できない。ケース等が付属していれば良いものの、残念ながらこの機種は付属していない。ニッチな存在のため、サードパーティーのケースが出るのももう少し時間がかかるだろう。

 この辺は仮に日本でも発売された際に、「ロゴがすぐに禿げた」などといったクレームが上がるのではないかと考えられる。

 

 加えてSIMトレーも特徴的だ。このスマートフォンはデュアルSIM対応モデルなのだが、SIM1とSDカードが排他仕様になっており、通常のスマートフォンとは逆になっている。確かに、音楽プレイヤーとして考えるならSDカードがメイン、SIMカードはおまけと言う形で理解はできる。

 それでも、数百台のスマートフォンを見てきた人間の視点で見ると、この構成は今までに出会ったことがない。SIMよりもSDカードを優先するこのSIMトレーはものすごく気持ちが悪い。

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過去に数百台のスマホのSIMトレーをみてきたが、この仕様なかなかの衝撃だった

 

 SIMトレーも本体と同じ材質で強度は期待できない。加えてトレー部の作り込みがやや甘く、SIMを収めるにはちょっと強めに押してあげる必要がある。少々上級者向け感は否めない。

 

 ソフトウェアに関しても爪が甘い。不安になる誤訳などはさておき、音声周りにクセがありそうだ。例えば音楽再生中にカメラを起動して写真を撮ると、問答無用でクソでかい音量のシャッター音がイヤホンから聞こえた後、何故か本体スピーカーからも鳴る。海外版はシャッター音を消せるので解消できるが、音楽再生中に割り込みで音声が入るとおかしな挙動をするようだ。

 

 また、安定性重視なのか、OSには一世代前のAndroid 13が採用されている。音楽プレイヤーとして考えた場合は、安定性重視でOSのバージョンアップなどはあまり重視されないが、スマートフォンではこの辺も求められる。

 特にセキュリティパッチは仮にも頻度が3ヶ月に1回としても、最低2から3年は行っていただきたいところだ。「そんなものを求めるな」といった意見もあると思うが、スマートフォンとして売り出す以上、この辺もしっかり対応していかなければならないと感じる。

 

 これらを鑑みるに、品質面で日本のキャリアやMVNOなどが今のMIAD01を扱ってくれるとは正直考えにくい。誰でも安心して使えるスマートフォンとしての製品クオリティがあるか?と問われると残念ながらそこまでには至っていない。

 

 また、オーディオよりに軸足を取ったとしても、今のイヤホンなどを担当する日本の代理店側もこのようなスマートフォンを扱った経験がない。このため、日本で展開する場合はセルラー通信周りをどこまで面倒見てくれるかが鍵だ。

 

 それでも現時点では、唯一ONKYOのGRANBEATの後継と言えるスマートフォンだと筆者は感じた。スマートフォンとしての作り込みが幾分か甘くても、それをあり余って補えるハードウェア的な魅力がある。それでいてGRANBEATよりも本体重量は軽くなっているため、利用者によっては使い勝手が向上すると考える方もいるだろう。

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 最後になるが、MOONDROP MIAD01はHiFiGOなどで399ドル(約6万2000円)で購入できる。DAPとして見ても、スマートフォンとしてみても絶妙なところを突いている。

 今のところメインスマホとしてはお勧めできないが、サブのスマホとして、画面の大きい音楽プレイヤーとして手にとってみてほしい。皆様もより良い音に触れて、生活の質をグッと上げてみるのはいかがだろうか。

 

※初稿時に「LHDC」にも対応と記載していたが、こちらは接続していたイヤホンのアプリ側でLHDCの表記になっていただけで、実際はLDAC接続でした。重ねてお詫びいたします。