バルミューダは本日、公式サイトにて同社が携帯電話事業から撤退することを明らかにした。
これにより同社が展開した携帯電話は「BALMUDA Phone」の1機種のみとなった。
なお、販売した端末のサポートは継続するとし、継続的なセキュリティアップデートも2023年11月まで行うとしている。また、脆弱性などが発覚した場合は随時修正パッチの配布を行うとした。
同社では携帯電話事業からの撤退理由を以下のように説明している。
「現在の事業環境において総合的に検討した結果、携帯端末事業を終了し、ほかの事業に注力するべきと判断したためです。」
また、バルミューダは携帯電話事業からの撤退に際し、固定資産の減損2億9300万円を含めた撤退費用として、5億3600万円を特別損失として計上している。
BALMUDA Phoneは2021年11月に発表、発売された。取り扱いキャリアのソフトバンクは事前予告を行うなど、大きな期待を背負って発売された。本体の製造は京セラが担当していた。
基本スペックはSoCにSnapdragon 765、メモリ6GB、ストレージは128GBを採用。
4.9インチ フルHD解像度の液晶ディスプレイを採用し、4800万画素のアウトカメラを備えていた。OSはAndroid 11を搭載していた。
指紋認証やIP54の防水、おサイフケータイ、Qi規格の無接点充電にも対応していた。
デザインは「直線のない」曲面デザインとなっている。「河原の石」をイメージした独特の質感もあって異端的なものとなっていた。
価格は直販モデルで10万4800円(後に7万8000円に値下げ)、ソフトバンク版で14万3280円となった。
売れ行きという点でも厳しいところが見受けられ、取り扱いキャリアのソフトバンクでは投げ売りに近い状態となった。
発売半年経たずに実に13万円引きのMNP一括9800円、1年経たずにMNP一括1円となるなど、苦戦を強いられた。
そんなBALMUDA Phoneだが、スペックに対する価格や当時の社長の対応なども含め、多くのメディアから取り上げられた。
初期のソフトウェアでは料理モードでうまく撮影できない、不具合が多いといった点、上記の過度な値下げもあって変な意味で注目された。
確かに4.9インチのコンパクトデバイスは、iPhone 12 miniなどの登場もあり、リリース時点でニッチなところでもあった。
端末の完成度の高さでは、スマートフォンを初めて出したメーカーとしては良かったものの、価格を考えると比較対象はiPhoneやサムスン、ソニーのハイエンド端末となるなど苦戦を強いられた。
それでも手に馴染む独特なデザインや、各種アプリの完成度は高く、この辺りは筆者も実際に使って感じた次第だ。
筆者は「バルミューダスケジューラー」アプリは他のスマートフォンでも愛用している。
どちらかといえば、BALMUDA Phoneは「記憶に残るスマートフォン」という形にはなっただろうか。
記録よりも記憶に残るスマートフォンだ。世に出てきたことに敬意を表したい。
同社はこのリリースの最後にこう記している。
「携帯端末の開発中に得た数々の発見と知見は、私たちがこれから提供する製品に、新たな価値をもたらすことになると信じています。バルミューダは、今後もインターネットテクノロジー関連の研究開発を積極的に進めてまいります。」
バルミューダのこれからにも注目していきたい。
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120230502558349.pdf
バルミューダ 携帯電話事業からの撤退に伴う特別損失について