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Huawei Mate 60 Pro 突如発表!5G対応と中国製造のプロセッサは判明!制裁回避を達成した謎多きスマートフォン

 ファーウェイは8月29日。中国にて最新スマートフォンである「Mate 60」シリーズを突如発表、発売した。発表イベントもなければ、詳細スペックが公表されないまま発売される異例の端末となった。

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ファーウェイの新フラグシップだ

 

突如発表、発売されたHuawei Mate 60シリーズ


電撃的にMate 60 Proが発表、発売されたが、公式サイト等で公表されたスペックは以下のものだ。

 

メモリ:12GB
ストレージ:256/512GB/1TB

 

画面

6.82インチ 2K+解像度

120Hzリフレッシュレート対応


カメラ
5000万画素f1.4-4.0
1300万画素 f2.2 超広角
4800万画素 f3 3.5倍望遠

テレマクロ撮影機能対応

 

バッテリー

5000mAh

 

衛星通信対応、88W急速充電対応

50Wワイヤレス充電対応

IP68防水対応

 

カラー

ブラック、ホワイト、グリーン、パープル

 

価格:6999元〜(Mate 60 Pro)

 

 端末としては独創的なカラーリングやMate 40シリーズを彷彿とさせるデザイン、トリプルパンチホールが目立つディスプレイが特徴的だ。

 実は核となるプロセッサや通信周りについてほとんど言及がなく、発表直後はまさに「謎の製品」というものであった。

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ディスプレイはトリプルパンチホールだ

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本体はMate 40 Proを思い起こすデザインだ

 

 
Mate 60シリーズは5G対応か?プロセッサも中国製造で制裁を回避

 

 ファーウェイのスマートフォンは既知のとおり、アメリカからの制裁の関係で5Gをはじめとした先端通信機器の販売や、先端半導体そのもや製造設備の供給に大きな制約のある形だ。その一方で、これらのものを自国内で設計、製造できてしまえば制裁そのものは回避できるのだ。

 

 香港メディア「ezone.ulifestyle.com.hk」がMate 60 Proを香港でテストした結果、Mate 60 ProにはHiSilicon Kirin 9000sと呼ばれるチップセットが採用されており、5nmプロセスで製造されていることが判明している。


 Geekbench 6でパフォーマンス測定したところ、数値的にはSnapdragon 8 Gen.1とSnapdragon 888の中間となるスコアを計測できたという。また、GPUには「Maleoon 910」が採用されているが、新規設計のため正常に計測できないベンチマークアプリがあるという。このため、Mate 40シリーズに採用されたKirin 9000 5Gよりは多少なりとも性能は向上していると考えられる。

 

 5G通信への対応可否についても端末側では4G/3Gなどの表記しかなく、画面上のアンテナピクトでも同様に表示されるため、画面表示を見ただけで確認することは難しいという。同誌では香港4キャリアのSIMカードで試したそうだが、いずれも同じような表記だったという。


 その一方で、画面ピクトに4Gなどの表記が出なくなると、屋内でも500Mbps以上の高速で通信できることを確認している。これは4Gと比較すると明らかに高速場所のため、同誌では「中国で噂されるピクト表示がなくなれば5G通信ができる」件について同意するとしている。

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500Mbps以上の速度を確認した例。確かにアンテナピクトには4Gなどの表記は見られない 画像:ezone.ulifestyle.com.hk

 

 これについては香港キャリアで可能だったことを踏まえると、他国の5Gもある程度利用できるものと推察される。韓国の明洞等に持ち込んで1Gbps以上の速度で通信できるのであれば、対応はほぼ確実と考えられる。


 また、チップセットが中国製かについては、実際に本体を分解した画像や動画がいくつか出回っている。そこにはチップセットには中国SMICの刻印があり、メモリなども内製している関係で「制裁を完全に回避した」と中国国内でも話題となっている。
 その一方で、SMICの5nmプロセスは開発こそ報じられているものの、これを製造する上で必要な極端紫外線露光装置も輸出規制の関係で中国国内に入ってこないことから、製造も極めて困難であると指摘される。

 一部では、システム情報表示アプリでは5nmプロセスと表示されるが、実際はSMICの製造実績がある7nmプロセスなのでは?という憶測も飛び交っている。


 どちらにしろ、同社は先端半導体を性能の劣る既存設備で製造しているものと考えられるが、これには製造歩留まりがかなり悪いことも加えて指摘されている。見かけない名前のGPUなども含め、いまだ謎の多いチップセットとなる。

 

「5G対応の自国製チップ」をアピールできないことが、今回の発表の理由か


 ここで気になるものは、ファーウェイが仮にも5Gチップセットを自国内で製造し、米国の制裁を回避できたのであれば、もっと高らかに発表してもおかしくないはずだ。Mateシリーズは仮にも同社のフラグシップに当たる製品となるため、例年かなり力を入れての発表となるが、Mate 60シリーズがここまで「しれっと」発売されたことに何か理由があるものと考える。


 理由として考えられるものは、対外的な世間の目を考慮した可能性だ。ファーウェイが中国製造のチップセットで制裁を回避できることを示した今、これを大ぴっらにしてしまうと制裁が他社に波及する可能性も否定できない。これは中国メーカーのスマートフォン業界にとって大きなブレーキがかかってしまい、対外輸出や各種市場戦略にも影響を及ぼす。

 

 また、米国の制裁がさらに強まるという報道もあり、これが可決されるとSnapdragonプロセッサですら採用できなくなる。そのような追加制裁からの回避という意味では、自前で再びプロセッサを製造できることが急務となる。
 そうなると、Mate 60シリーズを製造するにあたって使われた技術の中に、不正な手段で入ってきたものを使用している可能性がある点も考えられる。今回のKirin 9000sは名前の通り、先代のKirin 9000をベースにしていると思われるが、これをそっくりそのまま作ったり大部分を流用していたらTSMCの技術盗用やARM社のライセンス盗用の可能性がある。

 このようなものには輸出規制に抵触するものもあり、正規の方法以外で技術供与を受けた。または、リバースエンジニアリングにて技術を不正に入手した可能性を否定できない。仮にこのような後めたい部分があるのなら、「独自開発」と堂々発表できない点も理解できる。

 

 これ以外の指摘として、今回のファーウェイのスマートフォンを外交交渉に利用するのでは?という意見もある。自国で先端半導体を製造できることで「制裁が無意味で無価値」であることを示し、緩和させることが目的と考えられるが、米国などがこれを脅威と見る可能性は高く、半導体製造機器や絶縁体といった製造に不可欠な部品の供給にさらなる制裁をかけることだろう。

 

 さて、そんな謎多きファーウェイのフラグシップスマートフォンとなったMate 60シリーズ。5G対応や自国製プロセッサも十分にアピールできないなどの制約も垣間見える。


 その一方で「復活のファーウェイ」と現地では評価されている。この端末の存在がどのように転ぶかは不明だが、従来のような世界のトレンドをけん引するファーウェイスマートフォンとして市場に戻ってきてほしいものだ。

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