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スマホの値引き規制 新ルールは上限は4万円だが、端末価格によって変動する方式へ。総務省示す

 総務省は競争ルールの検証に関するWG(第47回)にて、先行して出ていたスマートフォン等の値引き規制案に対して、関係各所への意見を踏まえた「競争ルールの検証に関する報告書 2023」が提案された。

 内容には、当初通りスマートフォンの値引き規制を最大4万円へ緩和する方向となることが明らかとなった。これにより、2万円上限だった従来よりも高額な端末をより購入しやすくなる方向だ。

 

 その一方で「潜脱行為」「転売ヤー」を防ぐ観点から4万円未満の端末は2万円、4〜8万円の端末は販売価格の50%まで、8万円以上の端末は上限となる4万円までの段階方式の値引きとする方針となるようだ。

 50%という数字のの根拠としては、在庫処分等で適応される端末値引きの特例(最終調達日から24ヶ月)に沿ったものとなる。

 

 この規定は白ロム販売(回線契約を伴わない購入)には適応されないため、いわゆる「店舗独自割引」はできない方向となる。また、回線契約に係る機種購入(機種変更や量販店等で端末を購入)では、上限金額内に収まる形での値引きが妥当としている。

 

 また、これらの値引き規制にも関わらず、端末の過度な値引きや上記以外の利益供与等の過去に風習に沿った販売方法が横行する場合は、通信契約と端末のあり方の見直しも検討が必要としている。

 

2万円の値引きから緩和して最大4万円へ。その値引き額の根拠とは

 

 さて、上限2万円の値引き根拠とは何だったのだろうか。過去に2万円の数値設定の根拠として、検討資料にて以下のように記されている。

 

『具体的には、2018年度における、各社のARPU(1ユーザー辺りの売上)の平均✕ 各社の営業利益率の平均✕端末の平均使用年数で算出した額に、将来的なARPUの減少を考慮した額とすることで、2万円としたところである』


 算出方法はさておき、検討当時「将来的なARPU減少を考慮した1段階低い設定」が2万円という金額だったのだろう。これは検討当時の有識者会議でも物議をかもしたが、深く検討されることは無かった。今回、この算出方法にについては踏襲される見込みとし、各データは法改正後の最新のものを使用することとなった。


 消費者の利用期間については、回線と端末の分離化が進んだことで契約=端末購入とならないことから「内閣府の消費者動向調査」の値を利用することが適当としている。これらの事象を考慮し、平均的な利用者1人の通信料収入から得られることが期待される利益を算出すると、約4.1万円になるとした。


 内訳は各社のARPUの直近3年平均(4,137円)✕各社の営業利益率の過去3年平均(18.9%)✕端末の過去3年平均使用年数(53.2ヵ月)=41,597円となる。これを根拠に値引き上限額については、算出した額に収まる4万円とすることが適当というものだ。

 以前は予測という"あいまい"だった値引き上限額の設定が、明確な数字を基に算出されている。これをもとに法改正で見直しが図られる見込みのようだ。

 
値引き規制が最大4万円に緩和されることで、市場では何が変わるのか

 

 従来から2万円の設定では規制が厳しすぎる。このような指摘はメーカーを中心に有識者会議等でも意見が寄せられていた。「最新のイノベーションを提供する障壁になる」(A社)、「ミリ波等の次世代通信規格普及が遅くなる」(Q社)と言った意見のほか、「自社の商品展開に影響を与えかねない」(複数社)という指摘もあった。

 基本的にメーカーのポジショントーク的なところもあるが、規制を緩和することを望んでいたメーカーが多いように感じた。

 

 さて、このように規制緩和が行われれば、展開される端末のラインナップは従来通りという見方になりそうだ。廉価端末では上限が2万円に定められたことで、過度な利益供与や転売ヤーの買い占め等が行われる可能性を極力排除した形となりそうだ。

 

 もちろん、4万円の端末よりも8万円の端末のほうが値引き率が強いため、この辺の割引を含めて端末を検討するユーザが増えてくることだろう。そのため、キャリアとしても値引きの大きい8万円前後の価格設定にする端末を増やしてくるのではないかと考えられる。

 既に返却プログラム等の販売方法によって一般にミッドレンジと呼ばれる端末も6〜8万円の設定になる例も少なくない。

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ソニーのXperia 10 Vなどキャリアでは8万円に迫る設定のミッドレンジ端末もある

 

 高額なハイエンド端末については、4万円と割引が大きい分購入しやすくなる。基本的な物価高によって本体価格が高価になりつつあるので、効果は薄いかもしれないがないよりマシだ。

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高価なGalaxyの折りたたみスマートフォンも多少なりは買いやすくなる

 

 まだ確定となったわけではないが、各種検討が重ねられた後に法改正が行われる方向となるはずだ。今後の動向もチェックしていきたい。

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