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技適のないスマートフォンを日本で「電波法に違反することなく使う」方法とは?

 前回、現地で個人調達してきたHuawei Mate 60 Proを用いて各種検証を行ってきたが、技適マークのないスマートフォンを日本で利用することは基本的にできない。

 

 日本では実験等を目的とした「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の申請(免許不要項目のみ)を行うことで、Wi-FiとBluetoothの通信に限って最大180日間利用できる。これについては、多くの制約があるものとなり、用途から鑑みても「一般的」とは言えないものだ。

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 今回は、特例申請ではなく、電波法103条の6の解釈のもと「海外から持ち込んだ携帯電話」という扱いで利用しているが、その内容を説明しよう。

 

日本で技適のないスマホを合法的に使う。モバイル通信だけなら法的にも可能

 

 今回のテスト実施にあたり、電波法第103条の6(特定無線局と通信の相手方を同じくする外国の無線局等)のもと通信を行なった。文面は以下のものとなる。

 

第1号包括免許人は、第2章、第3章及び第4章の規定にかかわらず、総務大臣の許可を受けて、本邦内においてその包括免許に係る特定無線局と通信の相手方を同じくし、当該通信の相手方である無線局からの電波を受けることによつて自動的に選択される周波数の電波のみを発射する外国の無線局(当該許可に係る外国の無線局の無線設備を使用して開設する無線局を含む。)を運用することができる。

 

 ここでいう「第1号包括免許人」は通信キャリアを指し、キャリアは包括免許に係る特定無線局(スマートフォン)が同じ規格、周波数の電波を受けて利用(国際ローミング)できる外国の無線局(技適のないスマートフォン)を運用できる。

※当該許可に係る外国の無線設備を使用して開設する無線局→ここでは日本のSIMカードを入れて利用する技適のない携帯電話を指す。

 

 日本における携帯電話は「包括免許に係る特定無線局」となるので、こちらを要約すると『海外から持ちこまれたスマートフォンを日本で利用するにあたり「外国ですでに利用しているスマートフォンを日本に持ち込み、日本のSIMカードで通信が利用できる」』ものとなる。

 また、この際に技適マークの有無は求められていないが、技適に準ずる各国の認証を持つものであれば利用できるものとなっている。

 

 文面の内容から、主に訪日する外国人に向けたものとなっている。従来の法律では「国際ローミング」のみ利用できたが、法改正によって日本で販売されているプリペイドSIMカードやドコモ等のSIMを契約して利用できるようになった。

 

 また、法的文面では国際ローミングに近い扱いとなることから、Wi-FiやBluetooth通信と異なり、90日等の利用期間が明示されていないてもポイントだ。これを踏まえた総務省のQ&Aサイトには以下の質問に対する答えが掲載されている。

 

質問

他国から持ち込んだ携帯電話端末・BWA端末のうち、どのようなものが日本国内で使用してよいでしょうか。

 

回答
日本国内で利用される無線機器は日本の技術基準を満たしている必要があります。そのため、海外から持ち込んだ携帯電話端末・BWA端末を利用する場合は「技術基準適合マーク」が付されている必要があります。
ただし、以下の場合は「技術基準適合マーク」が付されていない場合でも、使用することができます。

 

①日本国内の携帯電話事業者又はBWA事業者による国際ローミングサービスにより使用する場合。


②国際ローミング可能な端末において、海外から持ち込んだ者が日本国内の携帯電話事業者又はBWA事業者のSIMカードにより使用する場合。

 

 今回の場合は②の「国際ローミングが可能な機種において、携帯電話事業者のSIMカードにより使用する場合」に該当するものとなる。ここには海外で開設後に持ち込んだか?が重要となり、使用者の国籍や通信プラン等、利用期間は問われない形となる。
 また、②を適用する場合は使用者が海外で開設した無線機器である必要があり、使用者が日本に持ち込むことが重要となる。

 

 例えば、海外から技適のない端末を取り寄せて日本で開設した(SIMカードを入れた)もの、海外で開設されたものの、利用者以外の第三者が日本に持ち込んだもの(中古端末)については該当しないものとなる。

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今回筆者は海外にてこちらの端末を購入、現地で利用した後に国内に持ち込んだので「使用者が海外から持ち込んだ」が成立する

 

 またこれに対し、お役所と筆者の解釈が異なる可能性も考えられる。念のため、所轄の総合通信局に問い合わせたところ、以下のような回答をもらった。

 

お問い合わせ頂いた電波法百三条の六の解釈に関する件につきまして、海外で開設した携帯電話を本邦入国者が国際ローミング又は、前項が可能な端末で日本国内の携帯電話事業者、又はBWA事業者のSIMカード等により使用することは可能です。

 

また、日本国籍保有者でも電波法の解釈上では確かにこの項を適用できますが、利用できるものは携帯電話事業者の提供する移動体通信のみとなります。

一般的なWi-Fi通信やBluetooth通信については入国後90日の利用期間、端末についてもITU-R勧告M.1450-5等に定める技術基準に準拠しているものと定められています。

 

入国から90日経過以降は、Wi-Fi通信やBluetooth通信は利用できなくなりますので、利用期間にご注意していただき、本邦に長期滞在される場合は技術適合証明のある端末をご検討ください。

 

 これを見るに、訪日する方が滞在先で購入並びに利用していたスマートフォンを日本に持ち込む場合、特定の条件を満たした端末なら利用できるとしている。

 

 その一方、Wi-FiやBluetoothについては、別途明確な基準(電波法第四条)がある。いわゆる90日ルールと呼ばれるこの規定は、入国から一定の期間が経過した場合は、失効して利用できなくなる点が注意点となる。

 もっとも、この条項自体は「本邦入国から90日」という期間のみの指定となる。言い換えれば3ヶ月に1度以上海外に行く方であれば、特例も失効することなく端末を利用できる。(ちなみに、マニアの間ではこれを「技適ラン」と呼ぶそうだ)

 

 そのため、技適のないスマートフォンを日本で合法的に利用するには「海外で利用した端末を使用者が日本に持ち込んで、Wi-FiやBluetoothを一切使用しない」という方法で可能な方がわかった。近年なら無制限プランもあるため、このような運用方法でも利用自体に不便を感じる例も少ないかもしれない。

 この利用用途は、訪日外国人を対象にしたもので、法令を遵守したとしても一般的な利用にはそぐわないものとなっている。誤ってWi-FiやBluetoothを使った時点で厳密には「90日ルール」が適用され、その期間以降の通信はNGとなるのだ。

 

 海外によく行き来して多くのスマートフォンを利用される方は、この辺の法律を少し覚えておくと役に立つかもしれない。

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