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「新品が買えないなら中古を買えばいいじゃない」総務省が価格高騰するスマートフォンに対して見解を示す。

 総務省は7日 スマートフォンの値引き規制を含めた新たなガイドラインを公表し、今年中の施行を目指とした。転売ヤーなどが問題とされる中、高騰するスマートフォンについては「中古市場の活性化などを促す 」としている。


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総務省は中古市場の活性化を促すとした


 総務省としては過度に高騰するスマートフォンの価格について「消費者が手に取りにくいと」問題視している。これに対し、中古市場が活性化している点を理由に挙げ、さらなる市場活性化を掲げた。

 

 これについて筆者は異を唱えたい。そもそもスマートフォンの価格高騰については、ここ2から3年は円安の影響をかなり強く受けている。この部分だけは、メーカーの企業努力だけで何とかできるようなものではない。
 例えば、Google Pixel 8のように現地では100ドルの値上げとなっても、日本では円安の関係で2万円近い値上げとなるものもある。

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Pixel 8 Proは999ドルだが、日本では約16万円となった。

 

 もちろん、国内メーカーの機種に関しても各種パーツは海外から取り寄せたりする関係から、キャリア向け端末でも円安の影響は大きい。この部分については「単純に端末価格の高騰」でひとくくりにすることは難しい。

 

 これに加え、総務省が行った値引き規制も端末価格の値上げにかなり影響している。理由としては回線契約による値引き額を2万2000円としたことで、規制を掻い潜るように端末価格を極度に値引きして販売する事例が出てくるようになった。言わば、歪な形で1円端末が残った形となる。


 これに対し、スマートフォンを1円で売るには無理があるわけで、当然利益的にはマイナスとなる。そのマイナス分を10万円を超える高価な端末に上乗せして販売することが起こった。
 
 実際にiPhone や Pixel に関しては、公式ストアよりも約1万円ほど上乗せした価格で販売している状態だ。XperiaやAQUOSでは特に顕著で、ハイエンド端末は20万円に迫るものとなっている。もはや返却型プランが前提の価格だ。

 また、廉価な端末も返却型プラン前提の価格設定となり、従来なら5万円台だった機種も今では8万円に迫る価格になるなど、廉価帯でも価格は高騰している。

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Xperia 10 Vは返却施策を使うと安価だが、ソフトバンクでの定価は7万9920円と8万円に迫る価格だ

 
 さて、今回の総務省の方針はある意味「新品が買えなければ、中古を買えばいいではないか」と評価できるものだ。


 中古という選択肢を用意することは大切なものだと思うが 、中古市場は 新品市場があって成り立つものだ。国が中古端末の流通を推し進めることと、市場が求められて活性化することは意味が大きく異なる。

 

 また、この流れから大手キャリアも新商品の拡充よりも、iPhoneやPixelの自社認定中古などの展開で総務省に対しアピールすることになる。中古市場の活性化にはつながると思うが、それに伴って新商品の取り扱いが減ることなどが指摘される。
 
 中古市場でも市場流通数が少ない端末に関しては、価格が高止まりする可能性も考えられる。中古では安価だと思われるが、それが消費者の手に取りやすい価格になるかどうかはまた別問題なのだ。

 

 結果として中古を推した結果、相対的に最新の端末が売れなくなる可能性がある。返却型プランの関係で消費者が端末を中古販売店に持ち込む機会が減るため、キャリアからの回収を主とする業者に優位に働く可能性も指摘される。

 

 また、日本で展開するメーカーも積極的に端末を展開しなくなったり、売り上げ減で開発資金を得られなくなる可能性がある。当然、流通数が少なければ、中古市場に回ってくる端末も少なくなる。

 今のiPhoneやPixelの中古市場が潤沢な理由の裏には、「のりかえ1円」等で廉価販売された機種が多く中古市場に流れているという理由も指摘できる。ある意味「中古市場活性化」という目的では、まだ「投げ売り」されて市場に多く出た方がマシと思えてしまう。

 

 最後になるが、安くスマートフォンを手にできるという意味では、中古市場の活性化は重要だ。一方で、ここで生み出された利益はメーカーに還元されることはない。

 

 中古ということもあり、アップデート期間終了によるセキュリティ面での不安、修理期間の短さがという要素が常につきまとう。機種によっては通信バンドなどを見極める必要も出てくる。それらを適切に消費者が選べるかどうかも対応が必要となるはずだ。


 また、日本は世界的に見ても数少ないスマートフォンを製造できるメーカーが複数社存在する国だ。そのような強みも総務省の愚策によって、窮地に立たされる可能性がある。

 本来は国内産業の保護といった部分でも所轄省庁は動かなければならない思うが、これに関しては完全に見殺しにしてるようにしか思えない。

 

 正直なところ、過去に総務省の愚策によって京セラやFCNTは業績に大きな影響を受けた。このような策を取られれば、ソニーやシャープもかなり厳しい立ち位置になるのではないかと考えられる。

 

 場合によっては日本のスマートフォン市場が iPhone、Pixel、Galaxyの三つ巴だけになってしまう日が来てもおかしくないのではないかと感じる今日この頃だ。

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