今まで聴いてきたイヤホンは300本以上!ライターはやぽんです。今回は、DUNU-TOPSOUND様より新型モデルの「HAYABUSA ULTRA」を提供いただきましたので、サウンドを含めてチェックしてみよう。
- DUNUの新作ダイナミック型イヤホン。青いメタルシェルが美しい本体
- 音場が広く見晴らしの良いサウンド。ノズル交換などのギミックも面白く、EDMや打ち込み系サウンドに最適
- 1本で2度美味しい「王道ドンシャリ」なイヤホン
DUNUの新作ダイナミック型イヤホン。青いメタルシェルが美しい本体
DUNU-TOPSOUNDは中国のイヤホンメーカーとなり、10年以上にわたって意欲的な製品を展開している。コアなマニアなら「中華K3003」と評価され、高いコストパフォーマンスで話題となった「DN-1000」などを思い浮かべることだろう。
今回はドライバーユニットで第二世代ECLIPSEテック リチウム・マグネシウム合金ピュア メタリックダイアフラムを採用するなど、ダイナミックドライバー1発で高音質を目指したモデルだ。海外では「FALCON ULTRA」という名称で販売されているが、日本では名称を変更している。付属品に一部差異があるもののサウンドの変更はないとしている。
パッケージは「HAYABUSA ULTRA」文字が印象的だ
本体はミラーブルーのカラーに染まったステンレス製筐体となる。比較的小型なので耳への収まりは良い。
付属品は充実している。小分けの袋はイヤーピースだ
音場が広く見晴らしの良いサウンド。ノズル交換などのギミックも面白く、EDMや打ち込み系サウンドに最適
HAYABUSA ULTRAは、ダイナミックドライバーに第二世代ECLIPSEテック リチウム・マグネシウム合金ピュア メタリックダイアフラムを採用している。振動板の剛性を高めたことで、ゆがみの少ないサウンドの再生を可能にした。本体は共振を抑えるためにステンレス製の筐体を採用し、ポーラスエアフローマイクロコントロールと称する本体内部の空気の流れを最適化させる機構が備わっている。
本体背面は空気孔が見える
ケーブルのコネクタはMMCX規格となるが、特許取得済みの「膨張式MMCX」を採用している。既存のケーブルが利用できる反面、カッチリと固定されるため少々取り外しにくい印象を受けた。
付属するケーブルは銀コートOFC(無酸素銅)が採用されており、音質面でも優位な線材が採用されている。「Q-Lock Lite」と称するコネクタ部で端子を変更できる仕様となっており、3.5㎜ステレオのほか、4.4㎜バランスプラグも利用できる。利用しているプレイヤーに合わせて選べる点はありがたい。
ケーブル端子はプレイヤーに合わせて選べる
そんなイヤホンを早速聴いてみることにする。今回のレビューにて使用するプレイヤーはHiby R8SSだ。イヤホン側はバランス接続かつ、デフォルトのノズルを使用。基本的にロスレス音源を用いる。
試聴曲は以下の通りだ。
Holiday∞Holiday/スリーズブーケ
ジャングル☆パーティ/双海真美(CV.下田麻美)大神環(CV.稲川英里)
Dye the sky. -25 colors-/シャイニーカラーズ
私はマグネット/天王寺璃奈(CV.田中ちえ美)
スロウリグレット/田所あずさ
さて、HAYABUSA ULTRARのサウンドは音場(サウンドステージ)が広く、抜けが良いものだ。ここに加えて、ボーカルが一歩前に出てくるような感覚のサウンドというのが適切だ。ダイナミック型らしい音圧のある低域に加えて、適度な柔らかさのあるボーカル域、伸びのある高域いった形の構成となり、閉塞感などを感じさせないチューニングだ。
ノズルの交換についてはデフォルトの「青」は筐体と同じステンレス製、「金」は真鍮製となっており、後者は響きを重視したサウンドに変貌する。低域のスピーディーさ、解像感を求めるなら前者を、サウンドステージの広さや楽器の響きや温かみのある表現を求めるなら後者となる。
ノズル交換可能なギミックを備える
最初に聴いたのは「スロウリグレット」だったが、筋をしっかり捉えるボーカルの表現に納得させられる。艶やかと言った「聴かせるタイプ」ではないが、解像感は高いので複数人で歌唱する楽曲でも対象を聞き分けやすい印象だ。
ここでは「Holiday∞Holiday」「ジャングル☆パーティ」を続けて聴いてみる。解像感の高い心地の良い低域、ボリュームを上げてもボーカル域が低域に埋もれたり、高域がうるさくならない点は気持ちが良い。低域も量感で押してくるタイプではないため、低価格機にあるような芯のなさは感じられない。剛性のある振動板を採用したことによる「音色の硬さ」は感じるが、打ち込み系の楽曲であればこれを感じる場面は少ない。
「ジャングル☆パーティ」は打楽器のビートがとにかく気持ちよく、スピーディーな低域と表現できるHAYABUSA ULTRAのサウンドと相性抜群だ。あまりに気持ちよくてつい「ウンババウッホホ」と口ずさんでしまう。「Holiday∞Holiday」は抜けの良さが印象的でこれも危険なくらい相性が良い。月火水木金土日と毎日聴きたくなるくらい筆者としてもイチオシだ。
続いて「Dye the sky.」と「私はマグネット」を聴いてみる。複数人歌唱による被りもしっかり聴きとれる解像感の高さを感じる。楽器にトゲや刺さりの少ない聴きやすいチューニングではあるが、女性ボーカルについては少々刺さりを感じる場面もあった。この辺りは必要に応じて金のノズルに変えたほうが相性がよさそうだ。
これは「Dye the sky.」にて顕著に出てくるが、解像感の高いボーカルが定位的に少々前に出てきすぎて「うるささ」を感じる場面がある。プレイヤー側のイコライザーセッティングはもちろん、イヤホン側にも多くのイヤーピースが付属するので、これを用いて調整するのが適切と考える。
イヤーピースは4種類付属し、合計14ペアとなる。それぞれサウンド傾向が異なり、好みやフィッティングに合わせて選べる
ここまで聞いて感じたことは、低域のビートの表現が気持ちよく、サウンドステージも広く開放感のあるサウンドだと感じる製品だった。特に打ち込み系のジャンルや低域表現を得意とする楽曲との相性がいいように感じた。それゆえに苦手なジャンルは少なく、強いて言えば、楽器の音色や自然な空間表現を重視するクラシック音源などは苦手な部類になると思われる。それでも女性ボーカルが絡むコンテンツなら概ね対応できる製品だ。
1本で2度美味しい「王道ドンシャリ」なイヤホン
ここからまとめになるが、この機種に関しては日本では実売約4万円の設定だが、この機種はどちらかと言えば「高コスパ」という製品ではない。質のいいドンシャリでかつサウンドステージが広い「王道ドンシャリの発展形」なので、この価格帯で出てくる「音色で聴かせてくる」ようなものではない。
正直なところ「人を選ぶ」製品になっていると感じた。それでもサウンドクオリティが価格帯から劣るということは一切なく、楽しく音楽を聴くという意味では非常にいい選択肢となる。特に「打楽器をリズミカルに浴びたい」「EDMの深く沈む低域に揺られつつ、バチバチにうなる高域も捨てがたい」「とにかく高速なビートが命」というリスナーには相性がいいはずだ。
また、ノズルの交換要素やMMCX端子のリケーブルによって様々な応用が効く点がプラスになるはずだ。特にノズル交換でサウンドがガラッと変わる点は「1本で2度おいしい」なんて表現が適切だ。
そんなHAYABUSA ULTRAは約4万円の設定だ。一般的に見れば高価な製品だが、バランス接続対応のケーブルや多くのイヤーピース、ノズル交換ギミックなどを考えれば今後の再生環境のアップデートにも応えてくれる製品だ。もちろん、ワイヤレスイヤホンのサウンドに満足できなくなったユーザーが乗り換えるにはいい機種だと考える。日本ではe☆イヤホンなどの専門店で試聴機が用意されている。
今はイヤホンジャックのないスマートフォンが大半だ!という声に応えるBluetoothトランスミッターやMMCXコネクタ用のアダプタも存在する。著名なものとして前者は「Fiio BTR7」があり、後者は「Fiio UTWS5」がある。
これを使用するとリケーブル可能なイヤホンをワイヤレス化できるのだ。音質的にはバランス接続が可能なBTR7が有利だが、完全ワイヤレスイヤホン化できるUTWS5の利便性の高さも捨てがたいものがある。いずれの製品もLDACなどのハイレゾワイヤレス規格に対応し概ね2万円台で購入できる。HAYABUSA ULTRAと合わせると6万5000円ほどの構成だが、これは音質特化ワイヤレスイヤホンとしての選択肢としても十分になり得る構成なのだ。
せっかく買うならいい音で聴きたい。そのような意味ではこのようなものも合わせて準備するとHAYABUSA ULTRAの魅力をより引き出せるはずだ。そしてイヤホン側もそのような環境に対してしっかり応えてくれる製品だ。
提供:DUNU TOPSOUND様