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Google Pixel 8 Pro レビュー スペックが低い点は惜しいが、高いカメラ性能とGoogleらしいAIを生かした次世代のスマートフォン

 どうもこんにちは。これまで使ったスマホは300台以上。生まれはギリギリZ世代のライター はやぽんです。さて、今回は買わないとか言いつつ。結局買ってしまったGoogle Pixel 8 Proのレビューといきましょう。

 
Googleが本気で作ったスマートフォン。その第3世代がPixel 8 Pro

 

 昨年発売のPixel 7シリーズはスペックも強化されたことで、ある意味ハイエンドと肩を並べるスマートフォンになっていた。auやソフトバンクでの取り扱いもあり、市場でもかなり話題となったスマートフォンだ。直近ではPixel 7aが各キャリア売れ筋上位に食い込むなど、日本でも大きく注目されている。

 そんなPixelだが、10月に最新モデルのPixel 8シリーズが発売となった。日本市場では円安の影響をモロに受けてしまい、価格は大きく高騰してしまったが、魅力的な製品なのかチェックしていきたい。

 今回も標準モデルのPixel 8と上位モデルに当たるPixel 8 Proの2種類が展開される。これらの違いは基本的にメモリ搭載量、カメラ構成、画面性能、端末サイズだ。

 

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今回筆者はPixel 8 Proをチョイス。望遠カメラを備える上位モデルだ。スペックは以下の通り


SoC:Google Tensor G3

メモリ:12GB
ストレージ:128/256/512GB

画面:6.7インチ WQHD+ OLED
LTPO技術を用いた可変リフレッシュレート

カメラ

メイン:5000万画素 f1.85
超広角:4800万画素 f2.2
望遠:4800万画素 f3.5 5倍望遠

フロントカメラ 1080万画素

バッテリー:5050mAh
ワイヤレス充電、リバース充電に対応

 


 Pixel 8 Proは基本的に純粋なPixel 7 Proの後継機に当たる。機能が抑えられていることはなく、順当に進化したものと考えられる。

 特徴として後述する強化されたカメラ性能が挙げられる。Tensor G3という独自チップを使ったAI 処理をはじめ、高度な画像処理を駆使したまさに本気で作ったスマートフォンを感じる。

 上位モデルのPixel 8 Pro においては、6.7インチのOLEDパネルを採用。LTPO技術を用いた可変リフレッシュレートの有機EL ディスプレイとなっている。Pixel 7 Proにあったエッジのカーブが廃されたフラットディスプレイとなり、現行のトレンドに沿った形だ。

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Pixel 8 Proでは 6.7インチの大画面となっており、持った時のサイズはGalaxy S23 Ultraなどに近い。

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ディスプレイはフラットディスプレイになり、トレンドに沿った形だ

 OSにはAndroid 14を採用。ローンチデバイスという特成上、アプリによってはうまく動作しないものもあるが、この辺りは時間が経つに連れて改善されていくものだ。

 

望遠性能とマニュアル撮影がより強化。AI補正で綺麗に撮れるPixel 8 Pro

 

 今回も引き続き印象深い点はカメラ性能だ。筆者も近年のスマホを買うなら、まずカメラ性能からというくらいには注視している。Pixel 7 Proのカメラ性能は他社のハイエンドとも大差なくなったが、Pixel 8 Proにおいてもハードウェア的な進化は少ない。
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 Pixel 8 Proは前作同様の3眼構成となるが、イメージセンサーが新型のものとなり、レンズ構成など一部変更されている。また超広角カメラを含めた全カメラでオートフォーカスが利用できる。

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 何枚か撮ってみたが、AI処理が入るので必ずしも「見たまま」には映らないが、非常にきれいに撮影できる。

 もともとPixelは高度なAI処理を得意とすることもあり、Pixel 7aなどの安価な機種でもそこそこ写ることで知られている。今回のPixel 8 Proでは他社のハイエンドスマホでも採用される大型センサーを採用しているため、ハードウェアの基本性能の高さも関係しているようだ。


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Pixel 8 Proでは超広角カメラのスペックが向上している。これによって撮影できる幅が広がることはありがたい。


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Pixel 8 Proでは光学5倍相当のペリスコープ望遠レンズを搭載。最大30倍望遠まで可能だ


 ズーム性能が高いだけでも今までのスマホとはまた違った写真が撮れる。ここに関してはXiaomiやvivoが海外で販売しているような製品と比較しても高いレベルで追従している。日本では販路も広く、比較的高い知名度をもつPixelでこのような商品が展開されることは嬉しい限りだ。


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今回のPixel 8 Proはカメラモードにマニュアル撮影モードが追加され、より追い込んだ撮影も可能になった。Pixelが売りの「誰でも簡単に綺麗な写真が撮れる」という趣旨からは外れるが、iPhoneも一部マニュアル撮影機能を加えるなど、Google も指をくわえてみていることはできなかったのだろう。

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Pixel 8シリーズではカメラにマニュアルモードが追加された

 


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夜景モードもしっかりと備えている。三脚検知で自動的に切り替わる星空撮影モードもあるので、興味があるようなら使ってみると新たな発見もありそうだ。

 

独自SoCはTensor G3になって音声認識や画像処理が進化。肝心のパフォーマンスは微妙

 

 Pixel 8 Proに採用されるTensor G3ではAI処理の高さを売りにしており、恩恵として高精度な文字の書き起こしやリアルタイムで出力される翻訳機能、写真の画像処理エフェクトなどが挙げられている。
 リアルタイムの文字起こしや翻訳と言った機能は、取材や海外渡航時に大いに役立っている。精度も前作より向上しており、多少早口でしゃべった内容もうまく読み取れるようになっていた。

 新機能の「音声消しゴムマジック」は喧噪下でも特定の人間の声を強調し、それ以外をカットする機能だ。名前もさることながら、ボイスレコーダーとしてはとても有用すぎる機能だ。取材のお供にはもってこいだ。

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音声文字起こしの精度は比較的良好だ


 写真撮影についても、前述の通り高度なAI処理によって綺麗な写真を撮影できるようにしている。加えて画像編集についてもフィルターや簡単なエディターのみならず、通行人を削除したり、手ブレしてしまった写真の簡易補正、ポートレートにおける光量補正といった「失敗すらリカバーできる機能」が備わっている。

 

 Pixel 8 Proでは前作同様に手ぶれした写真を AI補正する機能が搭載されている。これはPhotoshopなどにも同様の機能が実装されているが、スマホで簡単にできるという点ではこちらの方が分かりやすさで有意だ。


 引き続き大きく話題に出してる消しゴムマジック、モーションフォトも非常に面白い機能だ。Pixelの消しゴムマジックはより直感的にわかりやすく人物検知を行い、簡単に編集できるという点では編集アプリを利用するより分かりやすいものだ。


「ベストテイク機能」「編集マジック機能」「動画ブースト機能」といった新機能も機能面のすごさ以上に「何ができるか」にフォーカスされて、利用者にとって分かりやすくなっている。

 ベストテイクはフェイスグルービング機能を利用し、横を向いてしまった顔を正面に向けたりすることができる。編集マジック機能は画像編集にて被写体を切り抜いたり、拡大縮小が可能だ。AI認識によって高い精度で対象の切り抜きが可能だ。

 動画ブースト機能は暗所で撮影した動画をクラウドベースで、再度ノイズリダイレクションや HDR 補正をかけるものだ。スマートフォン単独では負荷のかかるエンコード処理をサーバーに処理させることで、負荷を分散させるといった目的がある。まさにAI時代のスマートフォンだ。


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編集マジック機能はより踏み込んだ編集が簡単にできる

 

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Pixel 8 Proのみ放射温度計を備えており、簡易的ながら温度の測定が可能だ

 

 ただ、パフォーマンス不足であることに疑いはなかった。実際にいくつかゲームをプレイしてみたが、3D表現を多用するゲームは苦手と感じた。Pixel 8 ProにはGoogle が設計したTensor G3プロセッサが採用される。サムスンの4nmプロセスで製造されるこのチップにはGoogleの意向が強く反映されており、プロセッサのコア構成は以下の通りだ。

 

Cortex-X3コア×1 @2.97GHz
Cortex-A715コア×4 @2.37GHz
Cortex-A510Rコア×4@1.70GHz

 

 Tensor G3は近年のハイエンド向けプロセッサでよく見かける3クラスター構成となっているが、物理9コアというあまり見かけない構成だ。全体的に動作コアの周波数が低いことから、省電力を狙ったものと考える。
 GPUはARM Mali-G715を採用。前作のMali-G710から世代がひとつ新しいものになっている。ただ、Immotaris-G715ではないので、ハードウェアレイトレーシングには対応していない。


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Tensor G3は独特の物理9コア構成のプロセッサだ

 

 これらの構成もあってか、原神は最高画質だとせいぜい40fps。最高画質の最低要求が「Snapdragon 8 Gen 3」という超高負荷コンテンツの「シャニソン」では平均30fps前後とかなり厳しい様相を見せた。

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原神は画質を落とす等の対応が必要だ



 既出のベンチマークでは、Snapdragon 8 Gen 1より少し下程度の結果が出ている。最新ハイエンド機に対してベンチマークスコアが劣る理由をGoogleは「アンビエントコンピューティングに力を入れているため」としている。

 これは、単なるベンチマークスコアだけではなく、写真撮影の体験をより良いものにしたり、動画視聴やウェブ閲覧時の快適な動作やバッテリー消費を抑えるといった、日常的な動作を快適にするものを指している。同社としてはベンチマークアプリのスコアだけでは数値化できない体験も、より良いものにしていく考え方だ。
 確かにこのような体験は「ベンチマークアプリ」では数値化しにくいものであり、Google のアピールする「アンビエントコンピューティング」も理解できなくはない。



 ただ、スペック不足な点は廉価な機種であれば多少目をつぶるが、このスマートフォンは16万円に迫る機種であることを忘れてはいけない。この価格であればGalaxy S23 UltraやiPhone 15 Pro Maxも視野に入ってくる。これらの機種からするとPixel 8 Proは大きくパフォーマンスが劣ることになってしまう。

 

使い勝手はよし!スペック微妙!サポート長し!為替のせいで16万円のPixel 8 Pro

 

 最後になるが、Pixel 8 Proは、単独でみれば非常によくまとまったスマートフォンだ。カメラ性能や高度な画像処理、リアルタイム翻訳や文字起こしをはじめとした強みを持ちながら、分かりやすさを重視した構成となっている点は評価できる。


 これ以外に強みと呼べる部分は、7年間というOSアップデート期間の長さだ。Pixel 8 Proでは7年間のOS アップデート、セキュリティパッチ提供を明言しており、製品寿命はさておき7年間は安心して利用できるものになっている。これは中古市場での価値向上などにも影響してくる。
 日本向けにもiCreackedが正規代理店としてバッテリー交換等の修理サービスを展開するなど、長く安心して利用できるような仕組みを整えている。このような意味で選ぶ価値は大いにある。

 IP68の防水防塵にもしっかり対応し、日本で需要の高いFeliCaにも対応する。加えて販路についても、直販以外にauとソフトバンクに加えて、今年からはドコモでも取り扱いがある。家電量販店やキャリアショップで実機を触って検討しやすい環境になっている。
 Pixelシリーズは日本でのマーケティングに特に注力しており、テレビコマーシャルにおいても「消しゴムマジック」をかなりアピールしている。機能面から消費者に対してアピールし「この機能が使えるスマホ」での知名度アップを狙っている。 
 写真を綺麗に撮るだけではなく、失敗した写真も手軽に綺麗にできる。そんな新しい魅力を与えてくれるスマートフォンなだけに、ここまでの部分は筆者としても非常に高く評価したい部分だ。

 
 ただ、価格上昇はセンシティブな話題となった。北米では100ドル値上げの999ドルとなったが、日本市場における価格はPixel 8 Pro で15万9800円〜と前作に+3万円のかなり高価なものとなった。
 安価なイメージが付いていたところに現実を突きつける形だが、こればかりはメーカーの企業努力でどうにかできるものではない。公式ストアでは購入特典で5万円分のストアクレジットを付与するため、実質的に11万円となるが、これで納得のいく方は少数だろう。

 

 これに加えて、前述のスペック不足な点が挙げられる。確かに16万円ほどするスマートフォンを購入するとなれば、ある程度のスペックを求めてくる方も少なくない。Pixel 8 Proは実際競合他社の製品に比べると体感性能で明らかに劣ることが分かり、スマートフォンに対して基本的な性能の高さを求めるのであれば、 Pixelはあまり選ばない方がいいという結論に至る。

 よく有識者は「最適化されていない。」「最新OS だからアプリ相性は仕方がない」と評価することもあるが、消費者からしたらそんなことは関係ない。特に前項の最適化について、Googleはハードウェア、ソフトウェア共に荒削り感ある状態で製品を出していることは否めない。この辺りの品質向上や荒削り感を抑え、全体的な完成度を高めていけば、より多くの消費者にとってプラスの方向に進化していくはずだ。


 最後になるが価格に目をつぶれば、Pixel 8 Proは長期のOSサポートと高度なAI 処理を売りにした体験重視の「Google にしかできないスマートフォン」という仕上がりだ。筆者も過去に色々なスマートフォンを使ってきたが、Pixel はかつての「アプリ開発者向けのリファレンスデバイス」から「AI性能を駆使した新たな体験を提供するGoogle のスマートフォン」に変わってきている。

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 単純な基本性能では他社のハイエンドスマートフォンに劣るところも多いが、それを超える音声文字起こしの精度や「音声消しゴムマジック」といった付加価値がある。動画ブースト機能も場面によっては魅力的だ。これらの機能に価値を見出せるのであれば、買いだと思えるスマートフォンだ。長く愛着を持って使いたいスマートフォン。その1台としてPixel 8 Proを検討してみてはいかがだろうか。