様々な製品の登場で市場をにぎわすワイヤレスイヤホン。今回は最強のノイズキャンセリング性能を持つと評判のBose QuietComfort Ultra Earbudsを入手したのでレビューとする。
- 進化した「最強ノイキャン」イヤホン。Bose QuietComfort Ultra Earbudsをチェック
- ついにBoseもハイレゾ対応!低域が心地よいサウンドに空間オーディオがすごい
- まるで「デジタル耳栓」世界最強クラスのノイズキャンセリング性能
- 怖いくらいの最強ノイキャン。静寂を求める方はマストバイ
進化した「最強ノイキャン」イヤホン。Bose QuietComfort Ultra Earbudsをチェック
市場競争が過熱する完全左右独立型イヤホンの市場。3万円を超える製品も当たり前になる中、ノイズキャンセリング性能の高さをアピールするBoseのイヤホン。
ソニーのWF1000XシリーズやApple AirPods Proといった高音質かつ、高いノイズキャンセリング性能を持つカテゴリーで比較に上がる本機種だが、昨年9月に最上位の「Ultra」を冠するBose QuietComfort Ultra Earbudsが発売された。
箱は一般的なイヤホンでよく見かけるタイプのものだ
ケースは艶消し加工。過度な安っぽさを感じさせない仕上がりだ。
本体の収まりも悪くない。いわゆるAirPodsのようなもので、特段取り出しにくさもなく使いやすい
ついにBoseもハイレゾ対応!低域が心地よいサウンドに空間オーディオがすごい
Bose QuietComfort Ultra Earbudsの対応コーデックはSBC/AAC/aptX Adaptiveに対応している。aptX Adaptiveはハイレゾ相当となる24bit/96kHz再生も可能な高音質コーデックだ。
BoseのQuietComfort Earbudsシリーズは高いノイズキャンセリング性能が売りだったが、対応コーデックがSBC/AACのみで高音質な製品ではなかった。iPhoneで利用する上では問題ないが、Android端末で利用する場合は物足りないのだ。
そんな中で最新のQuietComfort Ultra EarbudsではaptX Adaptiveに対応。Snapdragon Soundにも準拠する高音質ハードウェアに進化した。これに加えて空間オーディオの「イマーシヴサウンド」をアピール。音響のパーソナライズによって自然な空気感を再現できるとした。そんなQuietComfort Ultra Earbudsを早速聴いてみることにする。今回の試聴曲はこちら
アイドルマスターミリオンライブ!よりClover Days
Spending All My Time/Perfume
ステテクレバー/夏川椎菜
スロウリグレット/田所あずさ
今回の試聴環境はスマートフォンにソニーのXperia 1 Vを採用し、aptX Adaptiveの環境で使用する。本機種はaptX Adaptiveに対応する他、ストリーミング環境でも単独で24bit/96kHz環境の再生が可能な機種だ。
今回のレビューではXperia 1 Vを使用した
QuietComfort Ultra Earbudsの感想として、従来製品に比べるとサウンドクオリティが2段階くらい上昇したように感じた。低域の再生にフォーカスを置いたチューニングで好みは分かれるが、低域を多用する現代音楽には向いていると考える。
高域の表現についてはコーデックに大きく依存するが、伸びやかな高域を体験したいのであれば、aptX Adaptive環境での利用を強くオススメする。正直なところ3万円台のイヤホンの中では得意とは言えず、やや低域にマスキングされる印象を受けた。その一方で低域再生は見事なもので、50Hz以下の低いところの音もしっかり出ている。後述のノイズキャンセリング性能にも絡む部分なので、ここは納得だ。
最初にスロウリグレットを聴いてみる。定位がやや遠いヴォーカルに対して、高域はややマスクされる形で若干の閉塞感はある。後述の空間オーディオをオンにした場合は一気に見晴らしが良くなるので、音数の少ない「聴かせる」ような楽曲は使い分けると良いはずだ。
ここで曲をステテクレバー、Spending All My Timeに変えてみる。低域のレスポンスの良さ、窮屈さを感じさせない空間表現に関しては高く評価したい。ロックやEDMといったジャンルであれば芯のある低域と共に気持ちよく聴ける。
ここで曲をClover Daysに変えてみる。冒頭の静けさの中のボーカル表現も悪くない。ビートの甘さなどは感じられず、量感はありながらもソリッドな低域を楽しめる点はプラスだ。惜しいところとして、ピアノが入ってからのパートでやや音の硬さを感じる部分があった。
ここまで聴いてきて、サウンドクオリティはかなり高くなったことが分かる。さすがに有線のイヤホンには劣るが、aptX Adaptive環境であれば有線環境に近いところまで来ていると感じられる。
そして、もうひとつのアピールポイントが空間オーディオだ。QuietComfort Ultra Earbudsでは空間オーディオ非対応の音源でも仮想的に対応させることができ、メーカーも「どんな音源でも対応できる」としている。
空間オーディオは「前面」と「ヘッドトラッキング」のふたつが備わっており、前者はライブ会場のような空間。後者は頭の向きによって音の方向が変わるなど、AirPods Proの空間オーディオのような感覚で利用できる。
この空間オーディオの機能は絶大で、特にライブ音源では大きな効果を発揮する。試しにApple Musicで配信されているPerfumeの東京ドーム公演のミュージッククリップを再生したところ、圧倒的な臨場感に驚かされた。空間オーディオ非対応の音源でも擬似的に楽しめる点は、リスニングを豊かにする意味でも差別化できるポイントだ。
まるで「デジタル耳栓」世界最強クラスのノイズキャンセリング性能
さて、音質についてはこの辺りにして、ここからはノイズキャンセリングや本体の質感について書いてみる。
QuietComfort Ultra Earbudsの特徴はアクティブノイズキャンセリングに対応している。Boseのイヤホンやヘッドホンは高いノイズキャンセリング性能が売りの製品が多く、特に航空機などの低周波の騒音をカットすることに優れる。
もちろん、本機種もそれに恥じぬどころかワイヤレスイヤホンでは「最強」のノイズキャンセリング性能を誇る機種だ。
イヤホンを着けてみてノイズキャンセリングをオンに。スッと周囲の音が消える体験に驚かせられる。正直、周りの音が聞こえくなる「怖い」レベルでノイズキャンセリングが効いているのだ。車のエンジン音や電車の走行音と言ったノイズはもちろん、雑踏の騒音といった比較的高い音もカットしてくれる。
今回筆者はエンジンをかけた車内で宿泊した際に利用したが、効果はまさに耳栓そのもの。どちらかと言えば、エンジン音などを効率的にかき消す「デジタル耳栓」と評価すべきだ。
今回は比較的騒音の大きいバン型の車両で利用したが、エンジン音は見事にかき消され、一般的な静かな屋内と大差ない感覚だった。この高性能なノイズキャンセリング性能のおかげで、筆者は連日安心して睡眠を取ることができた。
これは体感的にもApple AirPods Pro(第二世代)やソニーのWF-1000XM5が持つノイズキャンセリング性能を上回る。ノイズキャンセリング機能は音楽を再生しない状態でも利用できるので、耳栓として利用もできる。まさに最強のノイズキャンセリング性能だ。
マイクの通話音質は価格を考えれば良好だ。複数のマイクを用いて音声を取得していることから通話品質も良好だ。ノイズリダイレクションによってノイズの少ない通話を可能にしている。また、外音取り込み(ウェアネス)も進化している。従来より聞き取りやすくなったが、閉塞感からくる違和感は残る印象だ。
フィット感については、フィッティングようなパーツとイヤーピースで調整できる。形状としてはQuietComfort Earbuds IIと同様で、人間工学に基づいて研究されたものとしている。
縦長のイヤーピースはAirPods Proなどと同様だ
バッテリー持ちに関しては公称値で6時間となっている。実際に使ってみてもあまり悪いという印象を受けなかったが、aptX Adaptive接続では公称値よりも早めにバッテリーが無くなる形だ。
ケースを用いると最大40時間の再生が可能だ。ケースはワイヤレス充電にも対応する
アプリではイコライザなどの音響調整の他、操作ファンクションの変更、ノイズキャンセリングの感度設定が可能だ
怖いくらいの最強ノイキャン。静寂を求める方はマストバイ
さて、今回レビューしたというイヤホン。最強のノイズキャンセリング性能をアピールするBoseのニューフェイスはそれをより確固たるものにした。これに加えて音質面もaptX Adaptive対応でより強化。マルチポイント接続や専用アプリも備えるなど、使い勝手も良好に仕上げた製品だ。
QuietComfort Ultra Earbudsの価格は公式直販ストアで3万9600円とこの手の製品としては高価なものだ。それでも筆者としては最強のノイズキャンセリング性能のために購入する価値は十分にあると感じた。
筆者も数多くのワイヤレスイヤホンを利用してきたが、現時点でこれを超えるノイズキャンセリング性能を持つ製品には出会えていない。まさに最強と評価できる仕上がりだ。Bose QuietComfort Ultra Earbudsは、ワイヤレスイヤホンにノイズキャンセリング性能や空間オーディオ性能を求めるならば、マストバイと言える製品だ。
今回はaptX Adaptiveに対応したことで、Androidスマートフォンを持っている方にも比較的お勧めできる製品に仕上がった。AirPods Proを超えるノイズキャンセリング性能をAndroidスマートフォンで楽しみたい方。イヤホンの選択に「ノイキャン性能」を第一にする方はチェックしてみてはいかがだろうか。