はやぽんログ!

使ったスマホは300台以上。スマホネイティブ世代のライターが独自の視点でレビューやニュース、コラムを発信中!

HIFIMAN Svanar Wireless レビュー 音にこだわりすぎた脳筋仕様!音質最強ワイヤレスイヤホン

 皆さんは8万円もするワイヤレスイヤホンがあることをご存知だろうか。今回は衝撃の価格と納得の音質で世に存在を知らしめたHIFIMANのSvanar Wirelessをレビューしたい

 

 
HIFIMANから登場した超弩級ワイヤレスイヤホンをチェック!

 

 市場競争が過熱する完全左右独立型イヤホンの市場。多くのメーカーから新商品が登場し、ますます注目度が高まっていくセグメントだ。そんな中、8万円という衝撃のプライスと「音質特化」にふさわしいサウンドクオリティで投入されたものがSvanar Wirelessだ。

 

f:id:hayaponlog:20240219101218j:image

箱はフラッグシップらしく高級感がある

 

f:id:hayaponlog:20240219101254j:image
ケースは多面体の構造だ。

f:id:hayaponlog:20240219101627j:image
f:id:hayaponlog:20240219101618j:image
本体はユニバーサルIEMのような形状だ。耳に触れる部分はアラミドファイバーが採用される

f:id:hayaponlog:20240219110119j:image
ケースは特段取り出しにくいといったこともなく使いやすい

 

ハイレゾ音源にも対応。HIMALAYA DACが小さい本体に

 

 Svanar Wirelessの対応コーデックとしてはSBC/AAC/LDACに対応している。コーデック面ではトレンディなところを押さえるが、核となるオーディオ面については自社開発の「HIMALAYA DAC」を採用した。

 

 このDACはR2Rラダー方式を採用し、PCM音源をネイティブとして扱う構成だ。一般にこの方式では分解能を上げるために多くの抵抗が必要なため、ハイレゾ音源などの再生に対応させることが難しいとされていた。
 同社ではこのHIMARAYA DACを小型IC化したことに加え、分解能の課題を克服したとしている。既存のモバイル向けDACよりも低消費電力で駆動できる点から、今回完全ワイヤレスイヤホンというパッケージに収めることができたとしている。


 アンプも独自構成のAB級アンプを採用し、左右独立のいわゆるフルバランスで駆動させる。歪み率もかなり抑えており、出力そのものも並の音楽プレイヤーに迫るものを採用した。

 ドライバーユニットは10mm経のトポロジーダイヤフラムを採用する。同じ名を冠するSvanarと同様の構成で不要な振動を抑制できるとしている。

 

 

完全ワイヤレスでもここまで来た。最高音質ここにあり

 

値段もさることながら、サウンドにも妥協はないとのことなので聴いてみることにする。今回の試聴曲はこちら

 

Dear my future/スリーズブーケ

Dear my future

Dear my future

  • スリーズブーケ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

サヨナラノツバサ〜the end of triangle/シェリル・ノーム starring May'n&ランカ・リー=中島 愛

サヨナラノツバサ ~ the end of triangle

サヨナラノツバサ ~ the end of triangle

  • シェリル・ノーム starring May'n & ランカ・リー=中島愛
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ハートビートシティ/内田真礼

ハートビートシティ

ハートビートシティ

  • 内田真礼
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

スロウリグレット/田所あずさ

スロウリグレット

スロウリグレット

  • 田所あずさ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

 今回の試聴環境はスマートフォンにソニーのXperia 1 Vを採用し、LDACの環境で使用する。ストリーミング環境でも単独で24bit/96kHz環境の再生が可能な機種だ。

 


 実際に聴いてみると、完全ワイヤレスイヤホンとは思えないパワフルな高品質サウンドに驚く。「ワイヤレスでもここまで来たか」と思わせる衝撃的なものだ。
 サウンド傾向はシルキーであるものの、抜けの良さはある。解像感の高いボーカル、量感のある低域、空間表現の巧さは特筆できるものがある。何より、ハイ上がりと言ったものを一切感じさせないパワフルな出音には驚くばかりだ。

 

 特段キラキラとした解像感が売りというわけではないが、音の立ち上がりから音圧、細部の表現に至るまでワイヤレスイヤホンの中では「別格」の仕上がりだ。これはソニーのWF-1000XM5やTechnics EAH-AZ80などの機種と比較してもひとつ、ふたつ上にいる。


 高域の伸びといった表現についてはコーデックに大きく依存する。伸びやかな高域を体験したいのであれば、LDACでの利用を強くオススメする。HIMARAYA DAC別付けする半ばチート構成なだけあり、ワイヤレスでここまで上手く鳴らせるのであれば上出来だ。

 

 

 最初に「スロウリグレット」を聴いてみる。透き通るヴォーカル、高域の広がりも感じ取れるサウンドであることがわかる。音の細さや解像感の高さから目が覚めるような感覚も味わえ、塞ぎ込まれたような窮屈さを感じさせない上に、シルキーで濃密なサウンドを体感できる。

 

 続いて「ハートビートシティ」を聴いてみる。サビの弾むビートもレスポンスよく鳴らし、EDMといったジャンルも苦手さは感じさせない。解像感が極度に高いわけではないので、BAのようなレスポンスではないものの、音圧もしっかり確保された上質な低音だ。

 

 曲を「サヨナラノツバサ〜the end of triangle」に変えてみる。低域のレスポンスの良さ、窮屈さを感じさせない空間表現に関しては高く評価したい。この解像感とレスポンスの良さは、出力の高いアンプ構成、ドライバーユニットにも強力なマグネットを採用した点が生きていると感じられる部分だ。

 

 最後に「Dear my future」を聴いてみる。包みこまれるようなベースラインにどっしりとした芯がありながら、解像感もしっかり備えている。量感だけで鳴らすものではないので、妙なクセなどはほとんどない。分離感もよく、一歩前に出るようなヴォーカルの表現が気持ちいいものだ。

 

 ここまで聴いてきて、並みの有線イヤホンとUSB DACの組み合わせを軽く超えてくるサウンドには驚くばかりだ。8万円という価格が先行するが、音質と機能性に加え、完全ワイヤレスの自由度の高さを求めると右に出る機種はそういない。音楽プレイヤーやUSB DACを別途必要としなくてもこのサウンドが体験できることに驚くばかりだ。

 

ノイズキャンセリングや外音取り込み機能も備えるが、あくまでオマケ機能。電池持ちはなかなか絶望的

 

 さて、音質についてはこの辺りにして、ここからはマイクの品質や操作性について書いてみる。Svanar Wirelessは音質重視の構成ながらノイズキャンセリング機能も備える。感度は特段強いものではないが、イヤモニのような形状で遮音性に優れていることから効果は感じられる。 

 

 ただ、この機能はHIMARAYA DAC使用時はノイズキャンセリングは利用できないため、利用する場合は音を犠牲にする必要があるのだ。
 一般的なワイヤレスイヤホンでは高度な処理を必要とするノイズキャンセリング使用時はバッテリー消費が速くなるが、このSvanar WirelessではHIMARAYA DAC利用時のほうが消費電力が大きいため、「ノイズキャンセリング利用時のほうが電池持ちがよい」という不思議な構成となっている。

 

 通話音質は思ったよりも良好だ。ノイズリダイレクションによってノイズの少ない通話を可能にしている。

 一方で外音取り込み機能についてはかなり悪い。正直取り込めているのか不明で、当初は「外れを引いた」と思ったほどだ。同様の機種を保有しているフォロワーさんに聞いても「効果を感じにくい」としていたことから、おまけ的な機能と考えるべきだろう。

 

 音以外の部分もしっかり評価したい。この機種の特徴としてはIPX4相当の防滴対応に加え、ある程度使いやすくまとめている点だ。本体には近接センサーを備えており、本体を取り外せば音楽は止まる。

 音質特化としたのか、Svanar Wirelessには設定用のアプリは存在しない。そのため、ソフトウェアアップデートによる機能改善や、各種操作の割り当て変更はできない。


 フィット感は良好だ。本体形状がIEMのようなこともあるが、イヤーピースも6ペア付属するため、より精度の高いフィッティングも可能だ。また、ケースの容積にも余裕があるため、サードパーティのイヤーピースもしっかり利用できる。完全ワイヤレスイヤホンにありがちな「ワイヤレス用」を選ぶ必要がない点もプラスだ。また、ケースはワイヤレス充電にも対応する。


 バッテリーはお世辞にも良い部類ではない。HIMARAYA DACを使用時で公称4時間としているが、実際に使うとものの1時間半のフライトでバッテリーを消費するような形だった。単純計算でLDAC接続時の環境で実測3時間ちょっとといったところか。ここまでバッテリー持ちが悪い機種は知る限り「8K Sound」をオンにしたFinal ZE8000くらいなものだ。

 

 

ワイヤレスでも有線イヤホンに匹敵する高音質。8万に迫る価格も納得の商品

 

 さて、今回レビューのSvanar Wirelessというイヤホン。HIMARAYA DACを搭載し、アンプ部も大幅に強化。ワイヤレスというパッケージで最高音質を突き詰めた製品だ。今までのワイヤレスイヤホンの常識は軽く吹き飛ぶような高いサウンドクオリティには驚かされた。


 一方で音質以外は「脳筋」とも言える仕様だ。オーディオ機器的な考えで作った結果、機能性や拡張性では競合に比べてかなり劣り、本体アプリなどは一切備えない。収容ケースもバカでかく、ジーンズのポケットには収まらなそうな多面体だ。ガジェット感の強い完全ワイヤレスイヤホンにて、純然たるオーディオ機器として利用してほしいという強い意志を感じる。


 一方で価格の高さが注目されてしまうが、使っていくうちに納得できるように感じる。確かに、下手なUSB DACや数万円のイヤホンを別途購入し、音の沼をさまようのなら「これで終わらせる」ことができるくらいの魅力は備えている。色々冒険したりするコストを考えれば悪くないと思えてしまう。
 現にこれより上をワイヤレスで求めるとなれば、iFi Audio GO podにShure SE846等のIEMを組み合わせる以外の選択肢はなくなるものと考える。

 

 また、HIFIMANではワイヤレスイヤホンを矢継ぎに投入してきている。直近では下位モデルに当たるSvanar Wireless LEも展開した。LDACコーデックに対応しない点以外は概ね上位モデルと同構成で、価格を4万7000円に抑えたものだ。LDACに対応しないiPhoneなどで利用する場合はこちらを使用すると良さそうだ。

 

 またHIMALAYA DACをオミットしつつ、トポロジーダイヤフラム振動板、AB級アンプ採用ながら価格を2万円台とさらに抑えたSvanar Wireless Jrも発売されるなど、ある程度一貫したプラットフォームで生産した利点がバリエーションモデルのコストに現れている。


 価格や操作性などに欠点はありながらも、ここまでの高音質を体験できるワイヤレスイヤホンは現時点で他にない。ある意味唯一無二の孤高な存在だ。ワイヤレスイヤホンにとことん高音質を求める方はチェックしてみてはいかがだろうか。