昨日、中国で発表されたvivo X Fold3シリーズには度肝を抜かれた。性能はもちろん、圧倒的な軽量化は識者を中心に衝撃が走った。
そして、複数モデル展開が2社目になったことで、いよいよ「折りたたみスマホ元年」がやってきたかもしれない。
世界最軽量の折りたたみスマホ「vivo X Fold3」
vivo X Fold3シリーズは同社としては4世代目の製品で、世界最軽量のX Fold3と全部載せフラグシップのX Fold3 Proの2機種展開だ。
注目したいのは世界最軽量のX Fold3だ。閉じて6.56インチ、展開時に8.03インチの大画面ながら、本体重量は驚異の219gだ。
vivo X Fold3は驚異の219gだ
昨年の今頃はファーウェイのMate X3が239gの重量で「ついに一般的なスマホに近い重量!」「折りたたみスマホ2.0の新時代」と評した。夏には229gのHONOR Magic V2やV2sの登場で220g台に突入した。
これらの機種の存在から新時代を予感させたが、これはわずか1年足らずで大いに塗り替えられてしまった。vivo X Fold3シリーズは折りたたみスマホ2.5の時代を感じさせるのだ。
HONOR Magic V2を初めて触った時は思わず声が出てしまうくらいの軽さだった
この219gという重量は多くのフラグシップスマホよりも軽量だ。例えばiPhone 15 Pro Maxが221g、Galaxy S24 Ultraが232gなので、これらの機種よりも軽いのだ。
また、上位モデルのX Fold3 Proは最新のSnapdragon 8 Gen 3プロセッサ、IPX8防水、より高性能なカメラを採用。それでも競合より軽量な236gの重量に抑えている。
本体剛性の強化と高密度バッテリーの存在が軽量化のカギに
これを可能にしたのは本体の薄型化はもちろん、バッテリーサプライヤーと共同開発した高密度バッテリーによるものが大きい。
vivo X Fold3の厚みは実に最薄部4.65mm。かつて世界最薄を競ったメーカーが限界としていた4.7mmよりも薄く仕上げた。これは閉じた状態でも9.3mmと並みのスマホよりも薄く、9.9mmのHONOR Magic V2よりも薄く感じることだ。
この薄型化を形にできた理由は過去の積み重ねだ。vivoは「x5 Max」という機種で4.75mmまで最薄を突き詰めた過去がある。そこからの設計ノウハウの蓄積や、剛性を高める筐体設計といった10年分の進化を感じる。
10年前に世界最薄を競ったX5 Maxよりもさらに薄い。これは驚異的な薄さだ
そして薄型化のカギが高密度バッテリーだ。vivo X Fold3は軽量ボディながら5500mAhのバッテリーを採用する。圧倒的な軽量化を達成しながらバッテリー容量も増加させるのは控えめに見てもすごいのだ。
軽量なのはもちろん、大容量なバッテリーもアピールポイントだ
高密度バッテリーでは従来よりもエネルギー密度を高めることで、同じ容量でも薄型、小型化できる。薄くても高密度なバッテリーは、設計上の制約が大きいフォルダブルスマホで軽量化とバッテリー容量の両立を果たした。
高密度バッテリーはHONORやXiaomiも研究開発を進めており、近いうちに採用される見込みだ。バッテリー技術の進歩で、折りたたみスマホは今よりもっと軽くなるかもしれない。
思い返せば、10年前の世界最薄競争が廃れた理由は薄型化による強度不足、バッテリー容量が少なかったことで消費者が薄型化の恩恵を受けられなかったことが挙げられる。
薄さ4mm台を攻めたメーカーは様々な方法で薄型化を達成したが、強度の確保に苦戦を強いられた。薄くするためにパーツ配置を考慮した結果、5インチ後半のミッドレンジな大画面端末が多かった。一方で、技術的課題から軒並みバッテリー容量が2500mAh前後と少なかったのだ。
そんな意味では、かつて世界最薄スマホを作ったvivoが10年後に、別の形で再び世界最薄を取り戻すのは胸が熱くなる。
進む低価格化と軽量化。2024年は折りたたみスマホ元年になるか
今回はvivo X Fold3の薄さや軽さにフォーカスしたが、価格や構成についてもかなり攻めている。X Fold3の価格は6999RMB(約14万7000円)からだ。そして、上位モデルのX Fold3 Proは9999RMB(約21万円)となった。
vivo X Fold3はこの手のスマホとしては廉価だ
世界的に見てもフォルダブル端末の複数モデル構成は珍しい。現状ではHONOR Magic V2とVs2(Vs2が下位モデル)という扱いしかなく、vivoのX Fold3シリーズはこれに続く形だ。
上位モデルは20万円クラスと高価だが、下位モデルは中国向けでいずれも6999RMB(14万円台)とハイエンドスマートフォンにプラス2万円で買えるところまで来た。日本でいうところのiPhone 15 ProやPixel 8 Proの価格帯に折りたたみスマホが存在するのだ。
そしてどちらも売りはスペックよりも「薄型、軽量」であることだ。HONOR Magic Vs2は畳んだ状態で9.9mmで重量は229g、vivo X Fold3は同9.3mmで219gと一般的なスマホ並みの薄さや重量感だ。
7000RMBクラスの横折りタイプの折りたたみスマホは、従来の「重い」「厚い」「高価」という価値観をぶち壊すゲームチェンジャーだ。本体重量や 価格面を考えても「初めての折りたたみスマホ」には最適なのだ。
この辺りは、今後Xiaomiやファーウェイなども流れに続くと考えられ、サムスンも周囲の動き次第では「廉価版Fold」を投入する形と考える。
フリップタイプでも廉価化が進んだ。昨年のモトローラ razr 40はミッドレンジに抑えて価格を10万円以下に抑えた。
それこそ先日発表されたZTEのnubia Flip 5Gはさらなる廉価化に口火を切った存在で、直販価格は7万9800円。ワイモバイル向けのLibero Flipに至っては容量を抑えたとはいえ、6万3000円という攻めた設定だ。
Libero Flipは現状では世界最安の折りたたみスマホとなっている
既に「折りたたみスマホ」は20万円を優に超える特別な機種ではなく、横折りタイプは日本でいうiPhone 15 Proなどと同じライン、フリップタイプはXperia 10 Vなどと同じラインで競合する存在になりつつある。
正直、ここまで価格が下がれば「折りたたみ」という要素を除いても十分選択肢に入ってくる。2019年のGalaxy Foldやrazr 2019の発売から5年。いよいよ折りたたみスマホが「当たり前にある選択肢のひとつ」となる時代が来たのかもしれない。