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Pixelシリーズで頻発する「通話できない不具合」に遭遇。改善方法は初期化か。「キャリアにソフトウェアを管理させろ」という意見も

 GoogleのPixelシリーズにて「通信ができない」といった不具合が報告されていることをいくつかのメディアが報じている。

 実のところ、筆者が保有しているPixel 8 Proも3月のアップデートを適用して以降、通信ができない不具合が断続的に発生している。さすがに電話機として求められる安定性を損ねているため、筆者も我慢がならなかった。

 

Pixelで発生する「通話できない」不具合。筆者の手持ちでも確認。改善方法は初期化か

 

 筆者の保有しているPixel 8 Proにて発生している不具合は、物理SIMカードスロットのSIMを読み込まない、 読み込んでいても正常に通信ができないことがある状態だ。
 もちろん、この状況に陥ると電話の発着信もできなくなる。筆者のように複数のスマートフォンを持っているなら話は別だが、仕事等では使い物にならなくなる。
 参考までにX(旧Twitter)にて同じような症状の方がいないか問いかけてみたところ、発生状況は不明なものの、正常に発着信できない不具合を複数のユーザーが遭遇していることを確認できた。

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筆者のPixel 8 Proでも不具合を確認できた


 筆者の場合eSIMにて利用している場合は問題無く利用できている。eSIMをオフにしたり、DSDV運用で利用したりと試したが、3日に一度ほど物理スロットのSIMを読み込まなくなる状態だった

 またゲーム以外の一般利用するようなアプリでの発熱が目立った。 例えばブラウザや各種 SNS を動かしてる時でも本体の発熱が目立つような印象だ。
 これ以外にも、突然本体が強制再起動する。突然フリーズしたり各種操作が正常に行われないといった不具合も報告されている。最新のPixel 8シリーズに限らず、Android 14にアップデートしたPixel 7シリーズ やPixel 6シリーズといった旧機種でも、このような不具合が見られる場合があるそうだ。

 状況だけをみれば10年ほど前の国内メーカーから発売されたAndroidスマートフォンのようだ。軽度な動作での発熱、突然通信ができなくなる、突然再起動する。不具合の症状を並べたら、今のPixelはREGZA Phoneや黎明期のARROWSと変わらないのだ


 正直なところ、これらの不具合に対して消費者の我々ができることは少ない。最も手っ取り早いのは本体の初期化だが、クラウドにデータのバックアップを取ったり、再セットアップに手間がかかることを考えれば、あまり推奨できる方法ではない。
 Pixelの場合は不具合の少ない旧バージョンに戻すこともできるが、この場合もデータは一度全消去される。それができない場合は、不具合が改善されたバージョンのソフトウェアが公開されることを待つしかない。


 あまりに気になった筆者はPixelを工場出荷状態に戻してみた。初期化して1日ほど利用しているが、今のところ目立った問題は見られない。続報があれば追加しよう。

 

Pixelの不具合の理由は最新OS特有の不安定さ。日本での出荷台数増加で母数も増えた


 Pixelでこのような不具合が目立つ理由として「世界最速で最新のAndroid OSが利用できる」 という、開発用リファレンスデバイス的な立ち位置がある。
 PixelはGoogleの提供するスマホという特性上、Android OSの最新バージョンが最も早く提供される 。それゆえに不具合や「使いにくさ」などが残ったままの状態で配信されることもある。
 OSのメジャーアップデート(末尾の数字が変わるもの)では、最新の環境にアプリ側が対応していないといった不便さもある。iPhone以上にAndroidスマートフォンでは、必ずしもOSアップデートが速い=ユーザー体験の向上とはならないのだ。

 他メーカーのAndroidスマートフォンがOSアップデートに時間のかかる理由には、各種最適化はもちろんのこと、ある程度安定したバージョンを使用したり、使いにくいところを改善した状態で配信している背景もある。時間がかかる理由にも納得だ。


 もうひとつはユーザーとのミスマッチだ。近年のPixelではブランド一新を図って「Googleのスマートフォン」とアピールされていることから、出自からこのスマホが開発者向け、ギーク向けであることを認識している方は少ない。
 最新のOSは動作が不安定だったり、普段利用するアプリが満足に動作しないリスクがあるが、それを認識してまで利用しているユーザーなどほとんどいないだろう。
 

 特に日本ではキャリアの戦略として、PixelはiPhoneと並ぶスマートフォンとして販売されている。昨年の国内出荷台数も100万台を超えており、世界的に見ても特に売れている地域となっている。
 かつてのNexusならさておき、大衆化しているPixelで前述のような不具合が散見されると、一般消費者からは低品質、使い物にならない、ポンコツといった評価をされかねない。

 キャリアとしても、ソフトウェア関連の対応がGoogleに丸投げになる関係で、「対応が悪い」とマイナスイメージを与えかねないのだ。

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日本でのPixelは「開発者向け」よりも「消しゴムマジック」「フワちゃん」といったイメージを持つ方の方が多いだろう。


キャリア向けPixelは思い切ってOSアップデートを遅らせるのもアリという意見も


 筆者としては日本での入手性も良く、アクセサリーも豊富。カメラ性能や各種便利機能からPixelを推したいところではあるが、前述のような不具合が多く発生するようではお勧めできない。特に「SIMを読み込まない」は電話機として使えないことと同義だ。


 今回の不具合は、概ねソフトウェアアップデートしたことによって発生している。日本ではOSのアップデートにキャリアを間に挟んで「アップデートを遅らせるべきでは」という意見をみかけた。筆者としてもアリだと考える。


 これを行うと最新のAndroid OSをいち早く利用できるPixelの強みは失われるが、キャリアのチェックが入ることによって、致命的な不具合を抱えたままでの配信はなくなるはずだ。
 

 かつての「開発者向け」が強かったNexusシリーズなら、最新バージョンのソフトウェアを求められた。一方で、大衆向けに開発し、日本では特に大きく支持されるPixelには「最新のAndroid OSを最も早く 利用できる。」「ブートローダーをアンロックできる。」といったギークな要素を求めてないユーザーも少なくない。


 ソフトウェアの安定化したバージョンの配信、周囲の環境が整った時点で、キャリアがアップデートを提供した方が利用者の利便は損なわないはずだ。毎月でなくても3ヶ月に1度程度、セキュリティ面や機能の安定性が向上したソフトウェアを提供してくれればいいのだ。


 今回の「携帯電話として利用できなくなる不具合」は電話機という「道具」としては致命的な不具合だ。自社で販売した端末が安心して利用できるような環境を構築するのはキャリアの責務ではないかと考える。

 もっとも、これはキャリアで販売する端末や特定のSIMで管理した端末にだけ行えばよい。最新OSの恩恵を最も早く受けたい。ブートローダーをアンロックして利用したいユーザーは、Google直販で購入するという選択肢を残しておくと納得できるだろう。

 理想はAppleのように最新バージョンのOSでの動作安定性が高いことを求めたいが、なかなかそうは行かない。筆者としては、現状のPixelや最新のAndroid OSに対する認識を深めることも大切だと感じる。


 ユーザーフレンドリーになったPixelだが、出自ゆえのミスマッチも多いと考える。周囲のイメージだけに流されるのでなく、じっくりスマートフォンを選んでほしい。