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HiBy R8SS レビュー 4G通信×Android OSの組み合わせで生まれた最強音質のデジタルオーディオプレイヤー

 どうもこんにちは。今回はSIMのささる鈍器こと、超高音質デジタルオーディオプレイヤー(DAP)では唯一のセルラー通信機能を備えるモデル「HiBy R8SS」を紹介したい。

 

 

Android搭載のフラグシップオーディオプレイヤー。DACはAK4497、アンプは独自設計を採用する超高音質仕様

 

 HiBy R8SSは2020年に発表された同社のフラグシップにあたるデジタルオーディオプレイヤーだ。当時20万円を超える価格だったが、中国でも注目度は高い存在だった。

 特徴として高品質かつ、音質に特化したサウンドハードウェア、大画面かつAndroid OS採用による操作性の向上、各種ストリーミングサービスを利用できる点をアピールした。各種音響チューニングはアプリ上に上書きで適応される。AndroidバージョンはAndroid 9を採用しており、今でも多くのアプリが問題なく使える。

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本体の質感は非常に良好だ。ステンレススチールの重厚感に金色のボリュームノブがデザインアクセントになっている。ボリュームは120段階のロータリーボリュームを採用する。

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本体画面は5.5インチ、画面解像度はフルHD解像度でスマホ並みに綺麗だ

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操作ボタン系は本体右側に備わる。インジケーターランプを備え、再生している音源のビットレートによって色が変化する。

 

 こんな鈍器のようなプレイヤーだが、そこは当時のフラグシップ。当然サウンドハードウェアに抜かりはない。

 DACには旭化成エレクトロニクスのAK4497を各チャンネルごとに採用し、32bit/768kHzまでのPCMとDSDに対応する。独自設計のオペアンプ「OP02」を採用し、クロックオシレーターも44.1系と48系のデュアルで搭載。構成パーツも高品質なものを採用している。


 電源部も専用の内部抵抗を抑えたバッテリーを採用、各処理部ごとに電源系統を分離させることで、性能を最大限に引き出せる環境を構築した。 アンプ部はバランスで5.9Vrms(32Ω THD+N≤0.00083%)アンバランスで3.1Vrms (32Ω THD+N≤0.00065%)と高出力でも歪みの少ないものとなっている。ターボモード時では最大16Wの出力を可能にするなど「余裕」を感じさせる構成だ。

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出力端子は3.5mmと4.4mmバランス。それぞれフォンアウトとラインアウトの2系統を持つ。端子部もメッキ加工が施され、高音質に寄与している。

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筐体はステンレス削り出しで共振などを抑え、発熱対策やノイズ対策も念入りに行われている。大容量バッテリーを採用した結果から、本体重量は520gと重量級。もはや鈍器である

 

 

パワフルかつ、余裕の鳴らしっぷりによる圧巻のサウンド。ストリーミングアプリとの相性もヨシ!

 

 サウンドに関しては納得の仕上がりだ。今まで使っていたウォークマンはややウォーム系のサウンドだったが、こちらは解像感重視でソリッドかつ生き生きとしたサウンドだ。

 そして何よりも出力レベルがウォークマンとは段違いだ。マルチBA構成はもちろん、トライブリット構成と言った「鳴らしにくい」イヤホンでも悠々と鳴らしてくれる頼もしさがある。

 中でもわかりやすいのは低域だ。WM1AM2でもかなりソリッドな低域を表現出来ていたが、R8SSでは歯切れの良い低域も沈み込むような低域も綺麗に表現してくれる。

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突き詰めたハードウェアによるサウンドはさすがと言わざるを得ない

 

 そして、バランス接続に切り替えるとサウンドステージがグッと広がり、低域がよりソリッドになる。バランスド・アーマチュア型のイヤホンやハイブリッド型と呼ばれるイヤホンであれば、こちらの方が相性の良い機種も多い。これについては、音源や使うイヤホンやヘッドホンに合わせて使い分けると良いだろう。


 操作性も悪くない。ディスプレイは5.5インチのフルHD解像度のものを採用し、OSにはAndroid 9.0を採用する。そのため、基本的な操作はスマートフォンの感覚で利用できる。Google Playストアからアプリをダウンロードできるため、アプリは容易に追加できる。


 プロセッサはQualcomm製のSnapdragon 660を採用。今となっては5~6年落ちくらいのミッドレンジスマートフォン向けのチップセットだが、今でもSnapdragon 665が主流の音楽プレイヤーの中では高性能に分類される。メモリは4GB、ストレージは64GBを採用する。ストレージはSDカードで増設することが前提のため、容量は控えめだ。

 一応、SNSなどはできたものの、動作はもっさりしているので、別途スマートフォンなどを使うとよさそうだ。 これでもNM-WM1AM2の倍くらいの性能があるため、ストリーミング再生アプリはスマホ比較でもっさりしているものの、動作自体に不満は少ない。


 バッテリーは専用設計で容量は10000mAhと大容量。実はAK4497はポータブル向けではなく、卓上オーディオなどをターゲットにした製品でもあるため、モバイル向けの製品と比較すると消費電力が大きい。そのため、この手のプレイヤーには大容量バッテリーが必須なのだ。

 

 惜しい点は、ターボモード時はやはり本体が熱くなる点だ。これは仕方がないと思うが、正直思った以上で冬はカイロいらずでポケットの中はぽかぽかだった。ちょっと内部基板がおかしくならないか心配になる。電池持ちが悪い点も気にはなるが、ハイゲインモードやターボモードを常時使用しなければ2日は余裕でもつ構成だ。

 

 このほか、ワイヤレスオーディオはAACやLDACコーデックのほか、HiBy独自のUATにも対応。UATは対応機種は少ないものの、最大1.2Mbpsで伝送可能なコーデックだ。このほか、本プレイヤーをUSB DACとして利用したり、Bluetoothトランスミッターとして利用することも可能だ。

 意外にもBluetoothトランスミッターは便利な機能で、ストリーミングのアプリの操作性が悪い場面ではスマートフォンに接続するという選択ができる。もちろん、LDACで接続が可能だ。

 

 HiBy R8SSはストリーミング対応の超高音質プレイヤーらしく、ハイレゾファイルもダウンコンバートなしのSRC回避に対応する。いわゆる「ビットパーフェクト再生」が可能だ。外で数十万の楽曲を、いつでも高音質で聴ける究極のストリーミングマシンなのだ。

 


超高音質プレイヤーでは唯一のセルラー通信対応。ハイレゾストリーミング全盛の今こそ本領発揮

 

 

 さて、筆者がHiBy R8SSに乗り換えた最大の理由がSIMカードが刺さること。すなわちセルラー通信を利用できることだ。

 もっとも、このような無線的な付加機能はピュアオーディオを求める高級音楽プレイヤーでは、ノイズ対策の観点から避けられる傾向にある。

 筐体も金属削り出しなどとするため、アンテナ設計はスマートフォン以上に難しいという意見もメーカーから伺ったことがある。
 
 確かに定価で20万円を超えるような設定の音楽プレイヤーでは、ストリーミングサービスよりもSDカード等に保存した音源を聴くニーズの方が多くなる。多機能よりも「音楽再生に特化」を求める声も多いのだ。
 そのような意味ではHiby R8SSがいかに異端かも理解できる。この機種が登場した当時は今ほどストリーミングサービスも活況ではなく、競合はFiioやソニーをはじめセルラー通信に対応させるものはなかった。Hiby自身も後継モデルではセルラー通信機能を廃止している。

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HiBy R8SSはこのジャンルの商品としては珍しくSIMスロットを備える

 

 SIMカードはnanoSIMでスロットはシングル公正だ。データ通信のみ対応で、通話機能は備えていない。対応バンドは4GのB1/B3/B5/B8/B11/B21/B28/B41で、3G通信には対応しない。

 意外にも各社の1.5GHz帯や700MHz帯をカバーしており、大手3キャリアの通信は快適だ。中でも相性が良いのは900MHz帯のB8も利用できるソフトバンク系になりそうだ。

 

 

 筆者としては、今こそセルラー通信のできる高音質プレイヤーという選択肢があっても良いと考えている。大容量の音楽ファイルで通信量を圧迫するという意見には、5G通信の普及によって容量無制限や100GBといった数年前には考えられなかったプランも登場した。5Gでは4G回線に比べて高速で通信できることもプラスに作用する。
 また、ストリーミングサービス側もハイレゾフォーマットに対応し、24bit/96kHz音源での配信も行っている。以前よりも高音質で聴ける環境が整いつつある。環境としては「SIMカードの利用できる音楽プレイヤー」という存在に味方していると感じている。

 

 筆者はR8SSにahamo大盛プランの子回線SIMを入れて運用している。月の使用量は外出の頻度にもよるが、概ね15~20GB前後だ。子回線なので月額1000円で使える点もありがたい。

 休日のみ外に持ち出すなら、povo 2.0のSIMカードを入れて必要に応じてチャージするといった柔軟な運用も可能だ。
 近年のAndroid搭載音楽プレイヤーなら、Wi-Fi通信機能を備えるので、スマートフォンのテザリングでも対応できる。それでも、DAP単独で通信できる点はプラスだ。これは、SIMカードの利用できるパソコンやタブレット端末に近い感覚だ。

DAPに4G通信機能はあるに越したことはないのだ

 

 

最強音質のストリーミングアプリ特化マシン。今こそ後継モデルが欲しい!

 

 HiBy R8SSは、フラグシップの高いサウンドクオリティに加えて「SIMカードが利用できる」という飛び道具的な側面も備えた音楽プレイヤーだ。ローカルだけでなく、ストリーミング再生まで幅広くこなせる柔軟さ、スマートフォンとの連携性も備えており、筆者としては「究極のモバイルストリーミングマシン」と評価したい。

 

 筆者としては後継機が欲しいところだが、鈍器と称されるレベルの高音質音楽プレイヤーに「SIMを入れる」という機種は今後現れる可能性は低いと考える。

 背景はDAPを提供するメーカーの多くが、スマートフォンに接続するスティック型のDACを販売しているからだ。DAPを強化するのではなく、スマホをDAPにするアクセサリーとして、スマートフォンとの共存を図る方針をとっている。

 

 確かに、いちから実質的なスマートフォンを設計するのは、ノウハウのないメーカーにとっては困難を極める。ましてや特殊設計のDAPなので、外部委託も高コストかつ難しくなる。それならばオーディオハードウェアに特化したDACなどで自社の強みを生かしつつ、スマートフォンでも高音質リスニングを楽しんでもらうほうが低リスクだ。


 むしろ、初手から「音質特化スマートフォン」を展開しようとしているMOONDROPがかなり異端な存在だ。音楽プレイヤーとしては後発だからこその差別化と考えることもできるが、かなりチャレンジングだ。

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MOONDROP(水月雨)は自社で展開するスティックDACと同等の機能を搭載したスマートフォンを販売している

 

 最後になるが、HiBy R8SSは発売当初は約27万円の高級プレイヤーだったが、今では生産も終了し、中古では10万円台前半で購入できる。値段は少々高額であるかもしれないが、今なお満足度はかなり高いと感じた1台だ。みなさまもこの音を手にとって、より良い音で生活の質をグッと上げてみるのはいかがだろうか。