キャリアが近年とても強くアピールしている乗り換え施策の1つに「いつでもカエドキプログラム」といった端末の乗り換え時に適用する施策がある。
スマートフォンを一定期間利用した後にキャリアに返却すると残りの支払いが免除になるものだが、どうやら端末によっては"得"をしないものもあるようだ。
今回はどのような端末が得をし、どのような端末では不利益になるのか考えてみることにする。
※便宜上、この記事では「お返しプログラム」と記す。
「実質価格」をアピールするキャリアの"お返しプログラム"とは
まずこのようなお返しプログラムは以下のものがある。
ドコモ:「いつでもカエドキプログラム」(旧:スマホおかえしプログラム)
au:「スマホとくするプログラム」(旧:かえトクプログラム)
ソフトバンク:「新トクするサポート」
楽天モバイル:「iPhoneアップグレードプログラム」
キャリアによっては毎年のようにサービス名が変わるものもあるため、消費者にとっては分かりづらいものだ。
細かい内容に差異はあるが、共通して言えることは「2年間スマートフォンを利用したのち、キャリアに返却すると残りの料金の支払いが不要になる」といったものだ。
キャリアとしてはこのような売り方をしている。定価ではなく、お返した際の実質価格で表示する例もあったりするようだ。
かつては「おかえし」という言葉がついてた通り、最終的にキャリアに返却しなければ、これらの割引を受けることはできない。そのため、実質的にキャリアからスマートフォンをレンタルしたと言った表現もできる。
もちろん、返却時に端末が破損していた場合は別途料金が請求される形となる。そういう意味では"借り物"という意識もあって、気兼ねなく使えないといった声もある。
機種によってはむしろ損をする「お返しプログラム」
お返しプログラムの仕組みとしては、端末2年間利用した後キャリアに返却することで、25ヶ月目以降の支払いを不要とするものだ。キャリアの返却を「売却した」と考えた場合、2年使っての残価が保証されているようなものになる。
そのような場合は利用後に中古市場等で売却するよりも、結果的にお得に端末を利用したことになるのだ。もちろん、返却せずに全額を分割で支払う利用方法もある。
一方で機種によっては得をしない場合もある。iPhone 12 Pro(128GB)の実例を挙げてみる。今でも中古市場では人気のあるスマートフォンだが、これを実際に2年後にお返しした場合の負担額を見てみよう。
ドコモ
12万9096円(実質負担額:8万6064円)
au
12万7495円(実質負担額:6万7735円)
ソフトバンク
13万7520円(実質負担額:6万8760円)
※Apple Storeは11万7480円
※楽天モバイルは同施策実施前
キャリアのiPhoneはストア版に比べてやや高価なため、この実質負担額を押し出す傾向がある。比べてみると実質負担額は概ね6万円台後半となる。
48分割を行うau やソフトバンクに対し、ドコモは36分割という形のため実質負担額がやや高めとなる。これを踏まえ、現在のiPhone 12 Proの中古買取価格を見てみよう。
イオシスでは目立つキズがある状態でも5万7000円の買取価格となっている。これをキャリア版の定価から差し引くと以下のようになる。
ドコモ
12万9096円-5万7000円=7万2096円
au
12万7495円-5万7000円=7万0495円
ソフトバンク
13万7520円-5万7000円=8万0520円
この場合、 au とソフトバンクではお返しプログラムを利用した方が実質負担額が抑えられる形となった。一方ドコモに関しては、一括購入した後に2年利用して売却した方が"お返しするよりも実質負担額が安くなる"という結果になった。
※Apple Store:11万7480円-5万7000円=6万0480円
今回参考までにApple Store版のiPhone 12 Proを、2年後に売却した場合の実質的な負担額となる。この場合はキャリアのお返しプログラムを利用するよりも、最終的な実質負担額が安くなる結果となった。
このようにお返しプログラムを利用した方が、最終的な実質負担額が高くなる機種というものが一定数存在する。過去の傾向を見ると、発売から2年経過しても中古の流通価格が高価な端末はおおむね該当する。
例に出したiPhoneの"Pro"がつく機種や、Galaxy Note 20 Ultraなどの値崩れが少ないAndroid端末が当てはまる。
最もこれらはあくまで通常の機種変更を基準に算出したものだ。乗り換え等の割引が利用できる場合は、この値段の限りではない点は注意していただきたい。
価格の変動が激しいAndroid端末にはおすすめのお返しプログラム
先述したiPhoneのように実質負担額が高くなるケースもあるが、これはかなり少数だ。多くの端末は2年後の買い取り価格はかなり落ち込んでしまう。
特にAndroid端末は2年落ちクラスの端末は値崩れがかなり大きい。このような機種については、お返しプログラムを利用した方が最終的な実質負担額を抑えることができる。
ソフトバンクから販売されていたライカのスマートフォンことLeitz Phone 1を例を挙げると以下のようになる。
Leitz Phone 1
18万9720円(実質負担額:9万4860円)
約19万円で販売されていたLeitz Phone 1だが、イオシスでの買取価格は状態が良くて5万円前後だ。(記事執筆時点)
発売から2年経っていない端末なので、この価格ではなんとも言えないところだ。今回は条件を揃えるため目立つキズのある4万円での買い取りとする。
Leitz Phone 1
18万9720円-4万円=14万9720円
改めて比べてみると、一括で購入した後に2年利用して売却するよりも、お返しプログラムを利用した方が実質価格を約5万円も抑えることができる。
このように利用する端末によっては、この施策を利用することで、最終的なジッ室を抑えてお得に利用できることが分かった。
お返しプログラムは値引き規制下で高価な端末を利用する方法のひとつ
最後にはなるが、これらのお返しプログラムは年々バージョンアップされており、近年では端末のみの購入でも利用できるようになっている。また、端末でキャリアを縛るようなことも、直近のプランではなくなっている。
様々な意見はあると思うが、筆者としては値引き規制の入った今の市場でも、高額な端末をお手軽に利用するための施策として成り立っているように感じる。
今回は2年利用の後、売却を含めた最終的な実質負担額を算出したが、利用し続けたり場合の負担額は上記で示した限りではない。
iPhone 12 Proのように実質負担額ではやや高くなる例もあるが、9割の端末はこのお返しプログラムを利用したほうが実質負担額を抑えることができる。そういう意味でもキャリアのこの施策は、実質的な買取価格保証といった考え方もできるのだ。
「2年後にお手持ちの端末を半額で買ってくれるか?」この問いに対して、定価の半額も出せるスマートフォンは振り返っても数少ないものだ。そういう意味でもキャリアの「お返しプログラム」を有効に使ってみてはいかがだろうか。
次回はこの施策を応用した"1円維持"や"実質24円"について軽く説明してみたいと思う。