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ソニーのモーションキャプチャ"mocopi"の推奨端末、動作確認端末が少なかったので、手元にあった35台のスマホで試してみた

 ソニーが販売しているモバイルモーションキャプチャーの「mocopi」

 購入を考えるユーザーの中には、メーカーが公表した動作確認端末があまりに少ないということで、購入を躊躇している方も多いはずだ。


 今回は手元に転がってた35台のスマホで実際にmocopiを動かしてみたので、動作確認のレポートとしてみた。

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mocopiはスマートフォンと組み合わせて使う"モバイルモーションキャプチャ"だ。

www.sony.jp

 


mocopiの動作要件は意外と高い


mocopiの動作要件は以下のようになっている

iOS:iOS15.7.1以降
Android :Android11以降

 

 確かにこの要件はここ数年で出たスマホに限られる。この環境以外の機種ではアプリがストア表示されず、Android 10の端末にapkインストールも試みたが、結果は起動不可だった。

 

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 ソニーの動作確認端末ではiPhone 12世代以降、Xperia 1以降のハイエンド機が動作確認端末としてリストアップされている。動作確認されている機種は少ないのだ。
 ちなみにソフトバンク版のXperia 1と5は、Android 11のアップデートが行われなかったのでmocopiは動作しない。選定基準はストア版のようだ。


 mocopiではモーションキャプチャしつつ、スマートフォン側でリアルタイムで処理を行う。簡単にフルトラッキングができるのはすごいものだ。

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デフォルトモデルは可愛い美少女のRAYNOSちゃんになっている。

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VRMを別途インポートして利用することも可能だ。キャプチャ精度は思ったより良好だ。詳細は別途まとめたい。

 

mocopiを試した35台のスマートフォンを一挙公開。結論から言えばハイエンドスマホ以外は厳しそう

 

 mocopiではモーションキャプチャしつつ、スマートフォン側でリアルタイムレンダリングを行うものだ。そのため、スマートフォンとしての基本スペックは高いものが求められる。

 加えて、Bluetooth接続で6個のトラッカーを全てスマートフォンに1個ずつ接続する仕様のため、接続性も含めて安定しているハイエンドスマートフォンが必須に近い状況だ。

 筆者の方で動作確認した35台については以下にまとめる。読者から提供いただいたLG VELVETの結果も合わせて記載する。

 

◎:快適に動作(推奨ライン)

○:問題なく動作

△:動作するが、挙動等に問題あり

×:起動不可、キャプチャ不可

赤字:メーカー動作確認端末

青字:日本未発売端末(特例制度を用いて検証)

 

iPhone
iPhone 14 Pro:◎(Apple A16)
iPhone 13 mini:◎(Apple A15)
iPhone 12 mini:◎(Apple A14)

iPhone SE(第2世代):○(Apple A13)

iPhone XR:△(Apple A12)
iPhone 8:△(Apple A11)

 

 

Androidスマートフォン

 

vivo X90 Pro+:◎※(Snapdragon 8 Gen 2)
Xiaomi 13 Pro:◎(Snapdragon 8 Gen 2)

 

Huawei Mate 50:◎(Snapdragon 8+ Gen 1)
Xiaomi 12S Ultra:◎(Snapdragon 8+ Gen 1)

HONOR Magic4 Ultimate:◎(Snapdragon 8 Gen 1)
SONY Xperia 1IV:◎(Snapdragon 8 Gen 1)

Galaxy S22 Ultra:◎(Snapdragon 8 Gen 1)

 

vivo X70 Pro+:◎(Snapdragon 888+)

HONOR Magic 3 Pro+:◎(Snapdragon 888+)
Lenovo REGION Phone Duel:◎(Snapdragon 888)
SONY Xperia 1III:◎(Snapdragon 888)
SHARP AQUOS R6:◎(Snapdragon 888)

nubia REDMAGIC 6:◎(Snapdragon 888)
Galaxy Z Flip3:○(Snapdragon 888)

Huawei P50 Pocket:△(Snapdragon 888)

 

LG V60 ThinQ:○(Snapdragon 865)
Galaxy Z Fold2:○(Snapdragon 865)
SHARP AQUOS R 5G:○(Snapdragon 865)

 

Galaxy S10:△(Snapdragon 855)
LG V50 ThinQ:△(Snapdragon 855)

 

LG WING:△(Snapdragon 765G)

LG VELVET:×(Snapdragon 765G)読者提供

Google Pixel 4a 5G:△(Snapdragon 765G)

AQUOS Sense 4 Basic:△(Snapdragon 720)

Google Pixel 3a:×(Snapdragon 675)

 

vivo X80:◎(Dimensity 9000)
Huawei Mate 40 Pro:○(Kirin 9000 5G)
Huawei P40 Pro+:△(Kirin 990 5G)

Google Pixel 7 Pro:〇(Tensor G2)
Google Pixel 6 Pro:〇(Tensor)

 

 今回、手元にあった端末で動かしてみたが、iOS、Android端末ともに要求スペックがかなり高めであることがわかった。これはモデルを大きく描画しないモーション配信時の挙動も同様となる。

 

 評価判定に「◎」がついている機種に関してはフレーム落ちも少なく、外部のVRM形式のモデルでも動作を確認できた。

 iOSでは掲載されている動作確認端末、Android端末では概ねSnapdragon 888クラスが求められるので、動作要件はかなり高そうだ。その他環境では、MediaTek Dimensity 9000を搭載するvivo X80は大きな問題はなかった。

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ただ、このような環境でも利用するモデルによっては「パフォーマンス低下」の警告が出ることがあった。本当のところはApple A16、Snapdragon 8 Gen 2くらいの性能は欲しいなと思うところだ。

 

 評価判定が「○」の機種は外部のVRMモデルを導入した際にフレーム落ちや、端末が極度に発熱することがあった機種だ。日常の動きであれば問題ないが、激しいダンスモーションなどでは追従処理が追いつかず、フレーム落ちしたかのような挙動となっていた。

 キャプチャで使用する場合はデフォルトモデルを「HUMAN」にすることで、ある程度負荷を低減することが可能だ。VRChatなどで利用する場合は、こちらのモデルを積極的に使うと良いだろう。それでも動作確認ラインに関しては、Apple A13並びにSnapdragon 865クラスが求められる。これでも要求スペックはかなり高いものだ。

その他環境では、Kirin 9000 5Gを搭載するHuawei Mate 40 Proで動作を確認できた。実はGoogle Mobile Serviceの有無は動作要件に入っていないのだ。

 

 評価判定「△」は現時点でなんらかの問題がある場合、もしくはスペックがギリギリでダンスモーションなどでは厳しいと言ったものだ。

 具体的には、iPhone XRやGalaxy S10では単純にスペック不足が目立ち、激しい動きのトラッキング処理には取得漏れがあるなど無理が生じていた。前者では処理落ちからの強制終了もあった。Snapdragon 7番台や6番台を採用するミッドレンジの機種については、 Bluetooth規格や基本性能の関係から厳しい形となる。

 iPhone 8やP50 Pocket、Tensorを採用する近年のPixelでは、動作中にトラッカーの接続が不安定になったり、切れたりすることがあった。前者はスペックの問題があるが、後者はアプリの相性問題によるものだろう。Pixel 7シリーズなどはスペック的には問題なく動作するので、最適化やOSのビルドの関係によるものだろう。

追記:

 Tensor系を搭載するPixel 7、6は手持ちの環境でも、トラッカーを初期化して再接続したら接続の不安定さについては改善されました。

 縦折タイプのフォルダブル端末は、筐体の冷却面積的に不利なので、この辺りも起因しているはずだ。

 

 ちなみにスペック上は動作に全く問題ないvivo X90 Pro+では、外部VRMモデルを動作させた場合に描画エラーが起こっていた。同じSnapdragon 8 Gen.2を搭載するXiaomi 13 Proでは確認できなかったので、vivo V2チップに由来するものと考えられる。

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vivo X90 Pro+で動かしたもの(mocopiの操作画面アリ)と本来の描画の比較。機種によっては明らかに異なるものもあるようだ。Twitterのフォロワーさんには検証した日時と色から「春節仕様なのでは」と言われる始末であった。なお、他の環境では問題なく動いたのでモデル起因する不具合ではない。

 

5月追記:最新のバージョンへのアップデートで、X90 Pro+のテクスチャエラーは改善されました。

 

 判定「×」のものはそもそも動作しない、動作してもキャリブレーションの画面で処理落ちするものだ。これに関してはミッドレンジのSoCを積む機種で見られた。

 あくまで、筆者の環境になるので、この辺りは別途お手持ちの機種で試していただける方の情報が欲しいところだ。f:id:hayaponlog:20230122125437j:image

Snapdragon 765Gを採用したLG WINGは「キャリブレーション成功」の画面が出たままこの先のキャプチャ画面までたどり着かなった。フリーズはしてなかったが、センサーが一部ペアリング解除されていたりと言った挙動をしていた。

 

 動作不可やキャプチャがうまくいかないことに関しては、チップ側の帯域処理に問題があると思われる。基本的にミッドレンジSoCは通信周りもフラグシップより落とされているため、Snapdragon 700番台や600番台を採用する機種では厳しいのかもしれない。


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実際、Snapdragon 695Gを採用するXperia 10IVは動作確認端末に含まれていない。

 

 そのような結果から、ミッドレンジ以下のSoCを採用するスマートフォンでの動作は筆者としても保証できず、オススメできない。お手持ちのスマートフォンがこのラインであればスマホの買い替えか、HaritoraX等のモーションキャプチャを利用した方が賢明だ。

 

追記:

 ネット上ではSnapdragon 695のAQUOS Sense 6、Snapdragon 665のMotorola Moto G Pro 2020のといったミッドレンジスマートフォンでの動作報告がある。

 このことから、Android 11環境でBluetooth 5.0規格に最低でも準拠していれば起動すると思われる。ただ、動作安定性やモーションの追従性は期待できないものとなる。

 筆者もAQUOS Sense 4 BASIC動かしたが、「動く」というレベルで、道具としては精度や安定性に欠ける印象だった。

 

動作未確認機種でも動作はするが、安価なスマホは要注意。推奨は2021年以降のハイエンド機種

 

 さて、今回は動作の比較に先立って、使用することができたスマートフォンをリストアップしてみた。メーカーのことを考えると、他社の機種まで検証に回らないことは理解できるので、この辺りは仕方ないと言える。

 

 筆者としてもmocopiの動作要件は思った以上に高いものと感じた。端末の基本スペックだけではなく、Bluetoothの安定性なども求められ端末選びはかなりシビアなものとなっている。

 

 機種選びで一番間違いないものはiPhoneになる。iPhone 12以降の機種であれば、特段処理落ちは感じなかったがバッテリーの消費はかなり早い印象だった。長時間の利用は電源に接続することをオススメする。

 

 Android端末に関しては動作確認端末のXperiaが安定性含めて良かったが、それでも多くの環境ではスペック不足になることもわかった。基本的にハイエンド以外は受け付けないものと思ってもらった方が良い。また、現行のフラグシップであるSnapdragon 8 Gen.1でも、長時間の利用ではフレーム落ちを確認できた。モーション収録時や配信時は注意したほうが良いだろう。

 より性能の高いSnapdragon 8 Gen 2であればより快適に動作させることができたので、本気で相性問題含めていいものを求めるなら、Xperia 1Vになるであろうスマートフォンの登場を待った方が賢明かもしれない。

 

 他社のスマートフォンで特筆するのであれば、画面の大きいフォルダブル端末でもmocopiは楽しむことができた。

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大画面なのでよりモーションの確認は分かりやすい。画面比率に関しては、ある程度フレキシブルに対応してくれそうだ。

 

 mocopi自体は標準での画面分割には非対応のため、Galaxyのように強制的に分割できる機種ならYoutube等でトレス元のモーションを見ながら収録も可能だ。LG V60 ThinQのような物理2画面スマホを利用するのも面白いはずだ。

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画面分割で元動画を確認しながらキャプチャできる

 

 モーションキャプチャという存在ををより身近なものにするmocopi。お手持ちのスマートフォンで動くかどうか分かったところで、次回は実際に動かしてみた感想を中心にお伝えする。

 

www.hayaponlog.site

 

2023年5月追記:

動作確認したスマートフォン、タブレットが合計82台となりましたので、動作確認記事をまとめました。

 

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