FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)は本日、ドコモ向けに発表していたarrows N F-51Cの価格を発表した。価格は9万8780円で1月24日より予約開始、2月以降の発売予定だ。
- ネットの評価は「スペックの割に高い」「ボッタクリ」の声が多いarrows N
- ここまで高額になった理由は供給ロット数とキャリアの販売方法か。
- ドコモのエゴを感じるarrows N。環境には優しくても、消費者の懐には優しくなかった
ネットの評価は「スペックの割に高い」「ボッタクリ」の声が多いarrows N
値段が公表されるや、即座に「ボッタクリ」などと言われてしまったarrows N。スペックは以下のようになっている。
SoC:Snapdragon 695G 5G
メモリ:8GB ストレージ:128GB
ディスプレイ:約6.24インチ Full HD+
有機EL、120Hzリフレッシュレート対応
カメラ
標準カメラ約5030万画素(1/1.56型センサー)超広角カメラ:約810万画素
インカメラ:約1240万画素
バッテリー容量:4600mAh(内蔵電池)
防水防塵、おサイフケータイ対応
お値段:9万8780円(ドコモでの一括価格)
重量、サイズは調整中
何より目がいく9万8780円の価格設定。下手なハイエンドスマートフォンよりも高価なものになっている。
確かにスペックだけを見たら、コストパフォーマンスという言葉とは真逆の位置にいるスマートフォンだ。そういう意味では、昨年に色々と話題になったBALMUDA Phoneを彷彿とさせるものだ。
ミッドレンジのスペックで10万円オーバーとなったBALMUDA Phoneは色々な意味で話題となった。
arrows Nに採用されているプロセッサはSnapdragon 695Gとなる。これは4万円台で販売されるXiaomi Redmi Note 11 Pro、5万円で販売されるAQUOS Sense 7でも採用されている。
カメラ性能や画面性能が比較的高めであっても、さすがにこのスペックで10万円近い価格は少々無理があるように感じる。近いサイズ感で日本でも売れているGoogle Pixel 7が8万2500円というのを考えると、より価格というものが際立って見えてしまう。
Pixel 7は8万2500円の価格設定だ。
近いスペックとなるAQUOS Sense 7のドコモ版は5万4230円になる。実に4万円以上の価格差があるのだ。
ここまで高額になった理由は供給ロット数とキャリアの販売方法か。
近年は物価高となっているが、何をしたらこの構成でここまで高価になるのか。
筆者としてはパーツ単価そのものの増加、生産ロット数が少ないことによる生産コスト上昇、加えてキャリアの要望的なところも大きいだろう。
arrows Nでは120Hzのリフレッシュレートに対応したディスプレイを採用している。過去のarrows NX9がGalaxy Note 10と同等のものを採用していたが、今回はGalaxy S21と同等の画面を採用してるのではないかという指摘がある。
確かにこのスペックのディスプレイであれば、視聴体験という点ではかなり良いところまで持っていけるはずだ。サムスン製のものが採用されている。
カメラについても大型のイメージセンサーを採用するなど、以前よりも力を入れている。
このように端末自体の高性能化が進んでいると、パーツの単価コストも上がっているはずだ。このあたりは近年のスマートフォンは全体的に高性能化しているので、パーツコストの増加だけは避けられない。
ただ、このスマートフォンの場合は、生産ロット数が他社のものに比べるとかなり少ないものになる。ソニーやシャープですら、グローバル展開する企業に比べると生産数はかなり少ないものだ。
FCNTではソニーやシャープよりも、さらに数が少ないものになると考えられる。そうなれば同じ部品を使っていても仕入れ価格が変わってくるので、製品単価は上がるはずだ。
arrows Nの場合は供給するキャリアがドコモのみとなるため、3キャリア供給のarrows Weのように量産コストで安くできるようなものではない。
今回の価格設定で、大きなウェイトを占めるものはキャリアの売り方だ。近年のドコモは残価型プランを前提とした価格設定になっており、iPhoneでも端末価格をかなり上乗せして販売する傾向がある。
ドコモとしてもお返しプログラムを利用することで、実質4万9940円という売り方をしている。確かに実質価格であれば妥当か、むしろ若干安いくらいのスマートフォンなのだ。
ただ、一括価格であれば人気となるPixel 7、もう少し足すと iPhone 14だって購入できてしまう。あえて選ぶにしてもかなり少ないはずだ。
ドコモのエゴを感じるarrows N。環境には優しくても、消費者の懐には優しくなかった
さて、そんなarrows Nの売りはエシカルでサステイナブルが特徴のスマートフォンだ。
3回のAndroid OSアップデートも売りとしては強いが、初期搭載がひとつ前のAndroid 12になっている点などパンチに欠ける印象がある。
そして他社のスマートフォンと異なり、環境配慮のアピールはすごいものだ。
再生プラスチックをはじめとした再生材の使用、国内の製造工程では再生エネルギーを使用し、パッケージにはバイオマスインキを採用するなど「スマートフォンのスペックからは見えない環境配慮」にかなり力を入れている。
加えてドコモオンラインショップで購入された機種代金の1%を、環境保護団体NGOの公益財団法人WWFジャパンに寄付するとしている。1台売れると988円が寄付されるという計算だろうか。
商品としてサスティナブルという言葉を使う以上、SDGsに配慮したものと思われる。何かにつけて"サステイナブル"や"環境配慮"だと言った点は、今の日本ではあまり受けないように感じる。
もちろん1つの商品に対して、環境配慮やサスティナビリティといった要素で選ぶという考えはある。ただ、スマートフォンという電子機器を「環境配慮」という考え方で購入する方はそう多くないはずだ。
仮にも全く同じ商品を再生プラスチック等を使用せず、従来の材料等で制作してみるとする。これで本体価格が1万円安かったのであれば、消費者はどちらを選ぶだろうか。どちらか選べと言われたら、1万円安い方になるのではないだろうか。
現時点でも「環境団体に寄付しなくていいから1%分安くしろ」なんて声も見かける。環境配慮よりも価格というのが、消費者のマインドだろう。
そうなると見えてくるのは「ドコモがサスティナビリティに配慮した商品展開をしている」という事実だ。
他のキャリアに比べて、ドコモでは環境にも配慮した商品を展開しているんだ。そんなキャッチーな売り文句が欲しいのではないだろうか。
言い方は悪いが、法人向けに「環境に配慮された商品」を売り込むことで、導入企業としても環境配慮をアピールできるのではないかと感じる。
法人向けであれば、一般市場向けとは異なり、多少コストがかかっても国内製造、環境配慮という点がメリットになる場面も少なからずある。
arrows Nは環境に配慮されたことで、地球環境にはとても優しいスマートフォンになっているはずだ。ただ、この価格では消費者のお財布事情には優しくない商品なのかもしれない。