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今になってAndroidタブレット端末が多くのメーカーから再び登場し始めた理由

 近年、復調の兆しを見せる「Android搭載タブレット」端末。一時期は廉価な商品群しかなかったものが、ここ1年ほどでハイエンド端末に並ぶ商品がXiaomiやOPPOなどの中国メーカーから現れた。

 

 その一方で、コロナ禍におけるリモートワーク等の法人需要、ICT教育に題される教育分野の需要が抑え込まれたことから、2022度はタブレット端末に関してはマイナス成長となっているメーカーが多いようだ。

 

 そのような事情ながら中国メーカーがこれだけの機種を出してこれる点は、少々不思議なものを感じる。今回は、各社がなぜこのような商品展開を行うのか、考えてみることにする。

 

 

Androidタブレット端末が数を減らした理由にある「Chrome OS」の存在

 

 この話をするにあたり、まずは「なぜ、Androidタブレットが売れなくなったのか?」と言うところをチェックする必要がある。

 

 実は2015年ごろまではAndroidタブレット端末も多く出ており、日本でも「Xperia Z4 tablet」などの商品が展開されていた。昨今のような廉価なものばかりでなく、ハイエンドと呼べる高いスペックを兼ね備えたものも多くあった。サムスンのほか、ソニーやシャープなどもこのような商品展開をしていたのだ。

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ソニーのXperia Z4 Tabletは10.1インチの画面に、防水機能を備えながらも300g台に抑える意欲的な端末だった

 

 このような端末が数を減らした背景にあるもののひとつとして、「Chrome OS端末」の存在がある。実は2016年にPlay Storeで配信される全てのAndroid向けアプリが、Chrome OS端末(厳密にはChomebook)にて動かせるようになったのだ。

 

 当初はノートパソコンのよつなラップトップを中心に展開してたChrome OS端末も「Androidアプリ」が動かせるとなれば話は変わってくる。この年以降はコンパーチブルや2in1といった「タブレットにもなる形状」のChrome OS端末が多く現れ、これらの端末はAndroidタブレットとも直接かち合うものとなったのだ。

 

 Android向けアプリケーションが動作することもあり、Chrome OS端末の性能も大幅に向上した。Intel Core i7を搭載したり、大容量のメモリを採用するなど、10万円を超えるWindows OS搭載ノートパソコンと同様まで性能を高めた機種も現れた。

 

 また、Chrome OSはARMプロセッサでも動作する。日本でもLenovo IdeaPad Duet 560 Chromebook(Snapdragon 7c Gen.2)と言ったものが販売されており、このような機種ではIntel CPU端末に見られる「Androidアプリの相性問題」もかなり少なくなっている。このような商品が出てくると、従来のAndroidタブレット端末とはバッティングする存在となってくるのだ。

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Googleも「Pixelbook」という名称でハイエンドラインの商品展開をしていた。

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2in1と呼ばれる取り外し可能なキーボードを備える例もある。

 

 

 一方で5万円以上の予算がある場合は、高性能で最適化の進んだiPadや、ソフト面も充実しているWindowsタブレット端末も選択肢に入ってくる。OSの長期サポートなどを考えるとAndroidタブレット端末よりはるかに優位であるのだ。

 

 加えて、高付加価値商品がChrome OS端末に移行したこともあり、2017〜21年ごろはハイエンドAndroidタブレット端末がほとんど存在しないという状況になった。

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数少ないハイエンドAndroidタブレット端末として長年展開し続けたGalaxy Tab Sシリーズ

 

 

 加えて、Androidタブレット端末の多くはスマートフォン向けに設計されたアプリを使う関係で、大画面に最適化されていないものが多かった。アプリ画面が引き延ばされたりする関係で、スマートフォンよりも使いにくいと感じるものも多かったくらいだ。せっかくの大画面を生かせるようなコンテンツもなく、Androidタブレットは「画面が大きいスマートフォン」と言った状態になっていたのだ。

 

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このような部分もマルチウィンドウ表示ができるChrome OS端末は、Androidタブレット端末よりも大画面をしっかり生かしたまま利用できた。

 

 結果としてAndroidタブレット端末で残ったものは、ウェブ閲覧や動画視聴といった「コンテンツの消費」に特化した安価な商品となった。スマートフォンよりも大きい画面で動画や書籍コンテンツを閲覧したいが、iPadのような高価なものは必要ないという需要となる。

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Googleの検索サジェストにもこのようなワードが並んでいることから、安価な2台目タブレットの需要は少なくないようだ。

 

 この手の商品で成功しているものは「Amazon Fireタブレット」だ。Amazon Prime Videoなどの自社コンテンツを消費してもらう端末として、安価に提供している。また、AIスピーカーの「Echo Show」と同様に利用できる機種もあり支持を集めている。

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FireタブレットはGoogle Playは利用できないが、Amazonアプリストアを利用できる。

 

中国メーカーを中心にAndroidタブレット端末が復調。コロナ禍における需要拡大が要因か

 

 さて、日本でもXiaomiやOPPOなどがAndroidタブレット端末を展開し、市場に賑わいが戻ってきた。Lenovoの商品をNECブランドで展開していることや、GalaxyのハイエンドAndroidタブレットが実に8年ぶりに国内展開されたことも記憶に新しい。

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日本では豊富なラインナップを展開するNEC

 

 興味深い点は「ハイエンドのAndroidタブレット端末を展開しているメーカーは、ほぼ中国メーカー」という共通点がある。HuaweiがMatePadシリーズを展開していたが、近年ではXiaomi、OPPO、realme、VIVO、Lenovo、ZTEもこれに続く形で商品を展開し始めた。そして、「コンテンツ消費」だけにとどまらないクリエティブ需要も狙った高性能な商品を展開していることが、特徴的なものとなっている。

 

 さて、大画面の端末を求めるようになった背景には、コロナ禍におけるリモートワーク、行動制限によって動画コンテンツやゲームといったエンタメを楽しみたいという要望があるようだ。その上で、スマートフォンやWindows PCとのデータ共有をはじめ、高い連携性を持った「2台目の端末」という選択肢として再び注目されているのだ。

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Windows PCとの高い連携性をアピールするHuawei MatePad Pro

 

 

 さて、このような端末が発売されると、日本のようにChromeOS端末やiPadなどと競合するのではないか?と思われるが、中国ではそのようなことは少ないようだ。

 

 これは簡単なことで、中国ではGoogleアカウントを必須とするChrome OS端末が実質的に利用できないものになっているからだ。仮にも中国でChrome OS端末を利用するにはVPN接続がほぼ必須となるようで、かなり使いにくい商品となるようだ。

 

 また、廉価となるAppleの「iPad 第10世代」でも中国では3599元(7万円)からの価格設定となっており、これは日本よりも若干高価な設定だ。これを受けて中国メーカー各社は安価な価格設定としている機種が多いことも特徴だ。

 

 例えば、先日発表された「Xiaomi Pad6」はSnapdragon 870や144Hzのリフレッシュレートに対応した画面を備える機種だ。価格はで1999元(約4万円)からと、スペックの割には安価だ。キーボードとペンを合わせて購入しても5万円前半に収まるなど、iPadやWindows PCなどより安価に購入できる。

 

 昨日発表された「vivo Pad2」ではXiaomi Pad6よりも高性能なMediaTek Dimensity 9000をSoCに採用する。こちらもペンやキーボードなどのオプションも備えており、価格は2499元(約5万円)からと安価な設定となっている。

 

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Xiaomiのタブレット端末は安価な設定だ

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vivo Pad2も後発ながら安価に抑えた

 

大画面に最適化されたAndroid OSの登場もタブレットには追い風に。今後の商品展開にも注目

 

 

 さて、このような端末の登場を後押しした背景には「OSそのものの最適化」が進んだものもある。特にタブレット端末や折りたたみ端末向けに開発された「Android 12L」の存在はメーカーにとってかなり大きいもののはずだ。

 従来はメーカー側で大幅なカスタムが必要だったものから、大きな枠組みが提供されることで開発は容易になったと推察できる。Android 13をはじめとした以降のバージョンであれば、大画面向けの機能が内包されており、この枠組みの存在もタブレットの登場に大きく影響したと考えるべきだろう。

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大画面に最適化されたAndroid 12Lの登場は、タブレット端末の登場に大きな影響を与えた

 

 

 さて、最後になるが、ハイエンドAndroidタブレット端末の復調と言った意味では期待したいところではある。Chromebookなどの端末と被ると言われる日本市場でも、Galaxy tab S8+が販売された際、メーカーの担当者も予想以上のオーダーがあったという。10万円を超える価格の端末ではあったが、潜在需要は大きいものがあるようだ。

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Galaxy tab S8シリーズは大画面で高性能ながら、軽量な点やペンが付属する点も支持されている

 

 正直なところ、ここ数年はiPad一強の市場が多く、AndroidタブレットではGalaxy tabシリーズが大きな支持を集めるという構図だった。

 ここに中国メーカーが多く参入することで、価格だけでなく技術的な競争も起こってくることになるはずだ。端末に限らず、タブレットの利用方法といったイノベーションを促進させる上では、大きなきっかけとなるはずだ。

 

 既にタブレット端末をスマート家電を一元管理する「スマートハブ」や、「自動車の後部座席のモニター」と言った新たな利用方法も提案されている。Windows OSと異なりOSのライセンス料金がかからないことで、低コストに製造できるという魅力も備えている。

 

 Androidタブレット端末が再び市場に存在感を示す日も、そう遠くないのかもしれない。

 

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