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スマホの値引き規制が2万円から4万円へ緩和。総務省も検討へ 高額なスマホも買いやすくなる方向へ

 総務省は昨日、競争ルールの検証に関するWG(第45回)を開催した。

 同会議にて配布された資料である「検討の方向性(案)について(電気通信事業法第27条の3に関する見直し)」を確認すると、スマートフォン等の値引き規制が、現在の上限2万円から4万円へ緩和することが検討されていることが明らかとなった。

 

数々の問題や不健全な市場環境の要因となった値引きの2万円規制


 この規制前は人気端末(iPhone等)をキャリアが通信収入を原資とし、0円やマイナス価格といった法外な価格で割引販売すること。あわせて「2年縛り」などによる過度な囲い込みを行うことで市場が不健全な状態となっていた。

 

 これを改善する目的として2019年に改正電気通信事業法が交付され、その中で回線に関わる値引き額の上限は2万円(税抜き)となった。
 
 当初は規制の効果があったものの、大手シャリア3社(ドコモ、au、ソフトバンク)は規制を掻い潜り、端末の購入等のみを条件とする「上限2万円規制の対象外となる端末値引き」を行った。

 

 これにより、再び「1円販売」等の大幅な端末値引きが行われるようになった。こうした状況を背景に、検討書面では以下のように具体例を示していた。

 

『総務省の覆面調査において7.7%の店舗で違反と判断される事案が確認されているなど、上限2万円規制を逸脱する事案も発生している。

また、端末の大幅な割引によりいわゆる「転売ヤー」や「サービス利用意思を伴わない乗換え」といった不健全な事象も発生している。』

 これを見ると、現行の規制に起因する不健全な状態も認識していたと考える。

 

 簡潔に言えば、総務省は2万円の値引き上限価格を設定したものの、キャリアは抜け道を使って回避した。結果として契約なしでも大幅な値引きされた状態で買えてしまい、「ストアで買うよりキャリアショップで買った方が数万円単位で安い」という状況となった。

 様々な事情により販売拒否とも言える違法行為が行われたり、転売を目的とした悪質なユーザー(いわゆる転売ヤー)が買い占めるなどの問題も起こり、従来よりも不健全な市場になってしまったのだ。

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このような割引が横行し、中古より安く新品が買える事も珍しくない不健全な状態となった

 

 過度な値引きが続いた理由として、大手キャリアは通信料金収入を原資とした端末の大幅な割引を行い、これに集客を依存するビジネスモデルが未だに主流となっていることだ。

 ある意味では「0円などの大きな値引き」というカンフル剤に依存しすぎた状況だ。人気端末には販売ノルマが存在するなど、身を切って値引きをしてまでも販売しなければならない背景もある。


 これらの問題点に加え、改正電気通信事業法の附則において、法律の施行後3年を経過した場合には、改正条項の施行状況について検討し、必要に応じて所要の措置を講ずることが定められている。今回の値引き規制や各種ルールの見直しはこの附則を根拠に行われる。タイミングもちょうど重なったのだ。

 

2万円の値引きから緩和して4万円へその値引き額の根拠とは

 

 さて、上限2万円の値引き根拠とは何だったのだろうか。この議題は何度か話題になるが、厳密な価格設定の根拠が示されていなかった。2万円の数値設定の根拠としては、検討資料にて以下のように記されている。

 

『具体的には、2018年度における、各社のARPU(1ユーザー辺りの売上)の平均✕ 各社の営業利益率の平均✕端末の平均使用年数で算出した額に、将来的なARPUの減少を考慮した額とすることで、2万円としたところである』


 算出方法はさておき、検討当時「将来的なARPU減少を考慮した1段階低い設定」が2万円という金額だったのだろう。これは検討当時の有識者会議でも物議をかもしたが、深く検討されることは無かった。

 

 今回、この算出方法にについては踏襲される見込みとし、各データは法改正後の最新のものを使用することになった。消費者の利用期間についても、回線と端末の分離化が進んだことで契約=端末購入とならないことから、「内閣府の消費者動向調査」の値を利用することが適当としている。

 

 また、一部事業者からARPUが増加したとの報告(有料化した楽天モバイルなど)もあったこと。スマートフォンを含む端末の平均使用年数は長くなっているが、背景にはMNO3社の「転売ヤー」対策等 による残債免除を含む端末購入サポートプログラムの加入率の上昇なども含まれる。

 

 これらの事象を考慮し、平均的な利用者1人の通信料収入から得られることが期待される利益を算出すると、約4.1万円になるとした。内訳は各社のARPUの直近3年平均(4,137円)✕各社の営業利益率の過去3年平均(18.9%)✕端末の過去3年平均使用年数(53.2ヵ月)=41,597円となる。

 これを根拠に値引き上限額については、算出した額に収まる4万円とすることが適当というものだ。以前は予測という"あいまい"だった値引き上限額の設定が、今回はある程度明確な数字を基に算出されている。これをもとに法改正で見直しが図られる見込みのようだ。

 
値引き規制が4万円に緩和されることで、市場では何が変わるのか

 

 従来から2万円の設定では規制が厳しすぎる。このような指摘はメーカーを中心に有識者会議等でも意見が寄せられていた。「最新のイノベーションを提供する障壁になる」(A社)、「ミリ波等の次世代通信規格普及が遅くなる」(Q社)と言った意見のほか、「自社の商品展開に影響を与えかねない」(複数社)という指摘もあった。基本的にメーカーのポジショントーク的なところもあるが、規制を緩和することを望んでいたメーカーが多いように感じた。

 

 さて、このように規制緩和が行われれば、展開される端末のラインナップも変わるはずだ。あわせて「廉価な端末」の定義も2万円から4万円に変わる。4万円であれば回線値引きで1円にできる廉価端末のラインがOPPO Reno7 A辺りのラインまで上昇する。これによる単純な性能向上のほか、製造コスト面で不利な国内メーカー、調達数の少ない新興、新規参入メーカーへの助け船的な側面でも効果がある。

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キャリアが取り扱う廉価帯の端末も、性能の底上げも行われると考える。

 

 高額なハイエンド端末についても、割引が大きい分購入しやすくなる。基本的な物価高によって本体価格が高価になりつつあるので、効果は薄いかもしれないがないよりマシだ。

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高価なXperiaのハイエンドモデルも多少なりは買いやすくなる


 国内メーカーへの助け船としてはもう手遅れかもしれないが、今回の規制緩和は消費者にとってプラスになると考えられる。まだ確定となったわけではないが、概ねこの方向のまま法改正が行われる方向となるはずだ。今後の動向もチェックしていきたい。

 

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