はやぽんログ!

使ったスマホは300台以上。スマホネイティブ世代のライターが独自の視点でレビューやニュース、コラムを発信中!

10万円のiPhoneが一括1円に。スマホの値引き規制緩和によって予想される新たな仕組みとは

 携帯電話の値引き規制が4万円に緩和される中、SIM単体割引についても揺らいでいる。現行法では「廉価端末の特例」によって、2万円以下の端末を1円より値引くことはできない。このため、一部キャリアでは「SIM単体契約のほうが多く利益が供与されるため、潜脱行為に該当するのではないか」と指摘される。

 

 そのため、このSIM単体契約における割引には、共通の規制を設けるべきだとしているが、その金額については「廉価端末の定義と同じく4万円とする」「大手キャリアで販売される機種のうち、最も廉価な機種の中で高価な方に合わせる」と言った意見がある。

 

 今回は、仮にSIM単体契約における割引も「4万円になった」と仮定した場合、起こりうる問題について考えてみる。

 

値引き規制緩和で加速する「踏み台」「ブースター」としての利用

 

 以前に紹介したMVNOが端末やキャッシュバック等の特典目を的として「踏み台」のされること。高額な端末を購入する際の「ブースター」として利用されていたことが問題視されている件だが、これは値引き規制の緩和で加速しかねないものと考える。 

 

 踏み台については、総務省の資料によると「サービス利用意思を伴わない乗り換え行為」と定義しており、資料にも「踏み台行為」という文面がでている。総務省も問題視しており、健全な市場とするために抑止するべきだと意見がある。

 

 ただ、通常契約と「踏み台」を区別することは難しい。かと言っていわゆる”ブラックリスト”等で契約させない措置は予期せぬトラブルの要因となり、縛りを設けることは現行法の自由化にもそぐわないことから「好ましくない」という見解だ。


 また、割引による勧誘から行われる行為のため「踏み台にされる事業者にも原因がある」としている。このため、現時点では規制を設けず、踏み台行為についてはあくまで事業者の判断で対応するという形となっている。

 
規制緩和後に起こりうる「踏み台」や「ブースター」による高額なiPhoneなどの一括1円販売。子回線を踏み台とする新たな可能性も

 

 

 さて、筆者としては「踏み台」は規制が無く、対策は事業者任せとなるため、温床となったMVNO各社では2万円程度で据え置いた利益供与になると考えている。

 

 これとは別に1台の高額な端末を購入するにあたって、割引を目的として回線を契約することを「ブースター」と表記している。年度末にはMVNOをブースターに使ってiPhone 14 Proを「一括1円」に仕立てる手法があると紹介した。

 

 現時点では動きはないが、SIM単体契約の利益供与が改正後の廉価端末を基準(4万円)に設定された場合、適切な対策が行われなければ、再度不健全な市場に仕立てられる可能性がある。

 

 現にドコモが展開している「5Gデータプラス」は月額1000円で維持できることなどを理由に利用者も多い。既存回線に紐づくデータ用の子回線の扱いとなり、このプラン単独での契約はできない。
 実はこれも新規契約扱いとなり、契約時には2万円の割引が適用できる。規制緩和されればMNPにデータプラス契約で合計8万円の値引きが可能となる。これらを踏まえて、今後行われる可能性がある割引について例を挙げる。

 

例:ドコモ(子回線ブースター)

MNP2回線+データプラス2回線(子回線)の4回線。
4万円×4の計16万4000円※

 

例:ドコモ+MVNOブースター
MNP1回線+子回線+MVNO4回線=計6回線
4万円×6本の計24万4000円※

 

※1回線を端末購入に充てているため、端末は税込み4万4000円、それ以外は金券やポイント等になるため、税抜価格の利益供与とした。

 

 これは一例だが、このままいくとこのような事が可能になる。家族2名回線乗り換え+データSIM契約でも16万4000円分の実質割引が可能となる。

 高額なiPhone 14 Proはもちろん、iPhone SE(第三世代)やPixel 7aを2台買ってもおつりが出るくらいだ。

f:id:hayaponlog:20230602115850j:image

仕組み上、この2台を買っても2円だ


 MVNOをブースターに使用した例では最大24万4000円の実質割引が可能だ。ここまで値引きされればGalaxy Z Fold4などの高価なフォルダブル端末ですら一括1円となってしまう。

f:id:hayaponlog:20230602120130j:image

20万円を超える折りたたみスマホもやり方次第では1円になる

 

 この場合は端末値引きは適用されないが、「踏み台対策」と呼ばれるようなことをしなければ今以上に不健全な市場になりかねないのだ。

 

厳正な対処を行わないと、また1円端末が蔓延り不健全となるのではないか

 

 さて、現時点では制限緩和によってこのような実質的な値引きが行われるのではないかと考える。移動機を大幅に値引きすることが禁止となるため、いわゆる「移動機購入の転売ヤー」は対策されることになる。

 

 それでも、上記のようなデータ回線の契約に伴う実質値引きを逆手に取られると、規制前のような「一括1円場バブル」が起きるのではないかと考えられる。

 

 可能性のひとつに、キャリアがpovo 2.0のような「基本無料」、もしくはドコモの「データプラス」のような子回線を出す可能性がある。既存契約者向けに新設し、半年間ポイント還元等で実質無料などとしてくることは想像できる。

 表向きは本回線をeSIM、子回線を物理SIMにしてタブレット端末やモバイルルータ等で利用といった柔軟な運用が可能になることを売りとする。

 実態は1円端末等を餌に踏み台やブースターと言った使い方を勧め、子回線の契約にもっていく。MNPとこれの新規契約を合算して、緩和後は8万円の値引きが可能になるものだ。

 データ回線が「実質無料のオプション」と化した場合、端末を餌で釣って契約に含めてくることはもはや必然と考えられる。


 これについては、問題となった端末の値引きを行うことはないどころか、データSIMのため音声MVNOのシェアを直接奪うものでもない。また、この契約では原則MNP予約番号の発行ができない。
 これらの理由から一般的な「踏み台」として利用できない、音声契約とは別口となることから規制をすり抜けると考えられる。


 そのため、これらが大手キャリアで横並びとなれば、8万4000円以下の端末において一括1円が可能になる。iPhone SEやPixel 7aなどの人気機種はこの方法で確実に一括1円で販売してくることだろう。
 加えて、10万円前後のiPhone 14、Xperia 5 IV、Galaxy S23、AQUOS R8(予想価格)もグッと購入しやすくなる。規制緩和に合わせてどう出てくるかは見ものだ。

 

 ただ、この実質値引きは体力のあるキャリアだからこそできるもので、踏み台対策に追われるMVNOなどに行えるとは思えない。

 そのため、MVNOにユーザーが流れる見込みは少なく、従来通りの3社がシェアを寡占する状況が続くと考える。自由度の高い競争や市場の健全化とは反するものとなる。

 

 結局のところ、総務省も指摘した「端末を過度に値引きして集客する慣習」にキャリアが縛られている以上、どのような対策を行っても意地でも安く売るための“抜け道”を使ってくると考えられる。

 

 スマートフォンの値引き規制の緩和は、一見して消費者にとってプラスになる要素が多いと考えるが、適切な対策やガイドラインの策定が無ければ再び無法地帯となっていまう。

 法の見直し後も「一部のユーザーに過度な利益の供与」が行われる可能性がある点についても、しっかり検討していただきたい。

 

www.hayaponlog.site

www.hayaponlog.site

www.hayaponlog.site

www.hayaponlog.site