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Huawei P50 ProのSnapdragon 888モデルを触って感じた"違い"とは

 5月のはじめ、筆者はファーウェイのハイエンドスマートフォンであるP50 Proを再び入手できる機会に遭遇した。そしてなんとプロセッサの異なるグローバル版だったこともあり、今回はこれについて軽く紹介する。

 

 

アメリカの制裁の関係でKirinとSnapdragon 2つのプロセッサが用意されたHuawei P50 Pro

 

 2021年にファーウェイから発売されたハイエンドスマートフォンとなる「Huawei P50 Pro」強まる米国制裁の中、5G対応機種すら販売できなくなった同社が起死回生で展開しだ。

 

 そんなP50 Proは中国向けモデルのみ自社展開のHiSlicon Kirin 9000 4Gが採用され、グローバルモデルではクアルコムのSnapdragon 888 4Gという異なるメーカーのプロセッサが採用されている。

 どちらも5G通信は利用できないが、このような同一機種でSoCが異なる機種は珍しい。多くの機種を出したファーウェイでも唯一となった製品だ。

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P50 Proのグローバル版はEMUIが採用されるため、lighthouseにてGoogleサービスが一部利用できる。また、兄弟機のP50にはKirin 9000版が存在しないものとなる。

 

 このようなことはサムスンのGalaxyが一部モデルにて、クアルコムのSnapdragonと自社製のExynosを出荷地域ごとに分けていたことがあった。それ以外ではLG Velvet(米 T-Mobile向けのDimensity 1000C搭載版)、Xiaomi 12 Pro/OPPO Find X5 Pro(いずれも中国向けにDimensity 9000版が存在)などかなり少数だ。

 

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 実は筆者としてもP50 Proを持つのは2回目で、最初に保有したものはKirin 9000を採用する中国版だった。今回はグローバル版となるので、奇しくもSoCが異なるものとなる。

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今回入手したものはSnapdragon 888 4Gを採用する

 

Snapdragonを選んだ理由はファーウェイの高いカメラ性能を維持できるからか

 

 さて、2021年のタイミングでSnapdragon 888に切り替えられた理由は、言うまでもなく米国制裁による半導体の生産規制並びに先端半導体の供給制限だ。Kirin 9000も十分な数が供給できないことから、クアルコム製SoCの採用となった。

 

 米国クアルコムとしても大手顧客になり得るファーウェイには水面下でアプローチしており、過去に少数だが、SoCを供給していた。

 そのような関係と、Intelなどをはじめとした米国企業が自国の制裁を課した企業への輸出規制の緩和が叫ばれたこともあり、同国は条件付きでの出荷を許可している。

 そのため、クアルコムも政府の許可を得て制裁対象となる5G向け機能を排除した専用設計のチップをファーウェイに展開している。

 

 

 そして、ファーウェイとしてもSnapdragon 888は"ちょうどいいチップセット"だったと考えられる。その理由として、Snapdragonでも同社のカメラ性能を担保できる保証の目処がたったことだ。

 当時ファーウェイがやろうとした「XD Fusion Pro」と呼ばれる画像融合処理には、高性能な画像処理能力はもちろん、「最大3つのカメラを同時に使用できること」が条件となっていた。

 

 Huawei P50 Proの場合、画角が切り替わる付近で望遠、超広角カメラをメインカメラと合わせて使用する。同時にモノクロカメラも使用するので、常時3つのカメラを起動できるISP性能が必要となる。

 

 ファーウェイのスマートフォンが行っていた高度な画像処理は、Kirinプロセッサの強力なISP性能、自由度の高いカメラインプットがあってこそ達成できたものだ。そのため、他社のプロセッサでこれを肩代わりすることは難しいと評価されていた。

 今回ハードウェア的な要件をSnapdragon 888がクリアしたことにより、シームレスズームや複数カメラを用いた合成処理などがスムーズにできるようになった。

 P50 Proのようなカメラ性能強化を図った機種を出せた背景にはKirinがなくてもsnapdragonで代替えできる。ファーウェイの画像処理に関して、ハードウェアでは「周りが追いついた」と評せる外的要因があるのだ。

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P50 Proのイメージングハードウェアは決して高性能なものではないが、高度な画像処理によって撮影できる写真は今でも高評価だ。

 

実際のところSnapdragon版はどう違ったのか?

 

 最後にプロセッサの異なるP50 Pro両者の差を見て行きたい。Kirin 9000とSnapdragon 888では体感的な基本性能としては大きく変わらないように感じた。

 そのように言ってもKirin 9000は2020年に供給されたのに対し、Snapdragon 888は2021年に入ってからの供給だ。前年に供給されたKirin 9000搭載端末がいかに高性能だったかを裏付けることができる。

 

 ただ、ゲームへの最適化はSnapdragonが優位で、多くのゲームを快適に遊ぶことができた。その一方で、ファーウェイらしい「厳しい電力制御」は現在で、低負荷時に画面のリフレッシュレートやタッチスキャンレートを落とす挙動は相変わらずであった。

 そのため、パフォーマンスモードに固定する以外の環境では、Snapdragon版でもリズムゲームなどは難しいと感じた。これは今日のMate 50シリーズやP60シリーズでも同様だ。

 

 

 カメラ性能については、細かいディテールの処理はSnapdragon版が良かった印象だ。P50 Proもアップデートを重ねて当初とはチューニングが少しづつ変わってきている。

 当初はナチュラルな色味が特徴の機種であったが、アップデートを重ねるたびにMate 50などに近い「XMAGE」のチューニングが色濃く出るようになった。

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今でも写りのクオリティは最新ハイエンド機に引けを取らない

 

 そのほか気になったこととして、カメラ使用時の発熱やバッテリーの消費が体感的に多かったものはSnapdragon版だ。これはISPの挙動や省電力機能に由来するものと考えられ、この辺の省電力性能については、Kirinプロセッサの方が1枚上手のように感じる。

 

 また、Wi-Fiの接続性の良さについてはKirin 9000版のほうが良かった。実際、香港にてKirin 9000 5G採用のMate 40 Proを利用した際にも実感できるレベルで快適に通信ができた。これは香港の中古市場価格にも現れており、P50 Proに関してはSnapdragon版よりKirin版の方が販売価格も高価となっている。

 

 

 正直こんなニッチな内容が誰の役に立つのか不明だが、P50 ProはKirinプロセッサとSnapdragonの2つのパターンが流通する唯一のスマートフォン。背景には米国制裁という大きな足かせがありながらも、Snapdragon側の進化でカメラ性能を担保できたところが大きいと考える。

 メーカーによってはチップの供給や通信事業者からの要望、SoCメーカーとの関係性の維持などで製品を発売している例がある。そんなプロセッサの違いによって「異なる部分」についてひとつ記録としてまとめておく。

 

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