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arrows We レビュー FCNTのベストセラースマホは”あの頃のARROWS”とは別物!堅実な設計から感じた「売れる理由」

 富士通のarrowsブランドを展開していたFCNTが大手3キャリア向けに発売している「arrows We」。発売から1年半近く経過するが、国内メーカーの安心感と必要十分のスペックを兼ね備えた機種に仕上がったことで、150万台を超える出荷台数となるなど同社の誇る大ベストセラー機だ。前回は原価的に厳しい点をチェックしたが、今回は筆改めてレビューという形でチェックしていきたい。

 

 

2万円台だけどFeliCaと防水を載せて5Gにも対応!堅実な設計のarrows We

 

 arrows Weを一言で示すのであれば、日本向けの機能を押さえつつ、コストパフォーマンスの高く仕上がったスマートフォンだ。FCNTのスマートフォンとしては初の大手3キャリア展開となり、ドコモ、au、ソフトバンクで取り扱われている。スペックは以下の通り。

 

SoC:Qualcomm Snapdragon 480 5G
メモリ:4GB
ストレージ:64GB(SDカード利用可能)

 

画面:5.7インチ HD+解像度
液晶パネル

 

カメラ
標準:1310万画素 f2.2
深度:190万画素 f2.4

フロント:500万画素 f2.4

 

バッテリー:4000mAh

 

OS:Android 11(Android 13へのアップデートも実施済み)

 

価格:

2万2000円※(ドコモ)

2万6180円(au)

2万7360円(ソフトバンク)

 

※ドコモは2023年7月より2万8600円へ価格改定。値上げとなる

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arrows Weの本体カラーはブラック、ホワイトに加え各キャリアで専売カラーが存在する。ナイトタイムブルー、レイクブルーの3色展開だ。今回レビューするものはブラックだ。

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iPhone SEより若干大きいサイズ感は悪くないが、艶消しのプラスチック筐体のため価格相応の安っぽさは否めない。

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音量ボタンがやや本体下部に寄っているため、押しずらいこともあった。この辺りは好みもあるので、量販店等で実機を確認してほしい

 

”あの頃のARROWS”とは別物!安くても5Gにしっかり対応、欲しい機能を備えた堅実なスマートフォン

 

 さて、「アローズ」と聞くといいイメージを思い浮かべない読者の方も少なくないことだろう。前回のコラムでも「昔使っていた」「発熱するイメージしかない」「これもポンコツなんでしょ」という意見をいただき、10年以上前のイメージを払しょくすることは難しいものだと改めて実感した次第だ。

 

 そんな印象とは異なり、近年のarrowsは過度にハイスペックを突き詰めたり、技術的に未成熟なものを搭載して動作が不安定になることはなくなった。いい意味で「普通に使える無難なスマホ」なのだ。今回レビューのarrows Weはまさにその筆頭といえるスマートフォンだ。

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安くても5G通信に対応している

 

 画面については価格を考えれば標準的な品質だ。さすがにHD+の解像度にかつ、色彩の階調も広いとは言えないものなので「綺麗」とは言えないが、5.7インチと小型な画面なこともあって、画面の粗さはさほど感じなかった。以前に利用していた機種がハイエンド機だったりすると画面性能の差は感じてしまうので、店頭で見え方を確認しておくことを推奨する。なお、本体スピーカーはモノラル構成だ。

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画面サイズは5.7インチとコンパクトなものになる

 

 核となるプロセッサはQualcomm Snapdragon 480 5Gを採用。6nmプロセスを採用し、電力効率を向上させたSoCだ。安価ながらに5G通信にも対応している。基本性能としてはハイエンド機には大きく劣るが、体感的にはブラウジングや動画視聴などを中心に使う場合は問題にならないと感じた。

 その一方、ゲーム機能などではかなり厳しいように感じた。原神などの高いハードウェア要件を必要とするコンテンツでは、画質を最低にしても20fps前後しか出ず、快適に遊ぶにはかなり厳しい。

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原神を動かしてみたが、フレームレートは最低画質でも20fps前後と安定せず、元素爆発させようものならフリーズしたりもした。この辺りはスペック不足を感じる

 

リズムゲームは画質を少し落とせば意外と遊べそうだ。イヤホンジャックも備えているのでこのあたりは安心だ

 

 本体背面には指紋センサーも備える。独自機能として登録した指紋ごとに起動するアプリを設定できる「ファストフィンガーランチャー」も採用するなど、他社との差別化要素も備えている。

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arrows Weでは本体背面に指紋センサーが採用されている。ワンテンポ待たされる感覚はあるが、感度は良好だ。

 

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筐体サイズを考えるとバッテリー持ちはかなり優秀だ。消費電力を抑えたSoCに4000mAhのバッテリー容量を備えるので、並の使い方であれば1日以上持つはずだ。

 

安くてもそこそこ撮れるカメラ。同価格のXiaomiやOPPOには劣る

 

 arrows Weは安価ながら1310万画素のメインカメラ、190万画素のマクロカメラを採用している。同価格帯のGalaxy A23やAQUOS wishはシングルカメラなのでここは差別化ポイントとなりそうだ。

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マクロカメラを含めた2眼カメラを採用

 


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いくつか撮影してみたが、思っていたよりも綺麗に撮れている。プロセッサは廉価グレードのSnapdragon 480となるが、写りそのものはあまり悪くない。夜景モードの写りなども悪くないようだ。

 惜しい点としては曇り空の場面で白飛びしたり、暗所でのノイズが目立つ点だ。また、光学式の手ぶれ補正は備えていないため、夜景などの暗い場面、動画撮影時では手ぶれしやすい傾向が見られた。また、近年では安価な機種でも備えつつある超広角カメラを備えていないため、撮影体験としては少し物足りなさを感じる。

 

 

使えば使うほどわかる堅実なスマホ!ハンドソープで洗える等の独自機能も

 arrows Weを評価するのであれば、日本のユーザーをリサーチして、安価ながらも「押さえるところは押さえた」機種だ。価格を問わず「arrows」と聞くとあまりいいイメージを持たない方にも、普通に使える機種としてオススメできる製品に仕上がった。

 

 防水防塵、おサイフケータイなどの日本でもニーズの強い機能を備えつつ安価に抑え、これに加えてMIL-SDT810規格の耐衝撃性やハンドソープで洗える独自性も備える。

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落としても大丈夫な耐衝撃性は安心感に繋がる要素だ

 

 これらの要素から大手キャリアでは日本ブランドを前面に押して販売していた。価格が安価なことからいわゆる1円販売や3G回線の巻取りなどでも多く取り扱われた機種だ。競合にあたるAQUOS wishと比較すると、arrows Weのほうがカメラ性能やファストフィンガーランチャー、ハンドソープで洗える等の独自機能で優位となる。また、AQUOS wishと同じくして防水防塵、おサイフケータイ、5G通信にも対応だ。

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 そんなarrows Weは防水防塵、おサイフケータイ、5G対応と言った必須トレンドを押さえつつ、安価に利用できるスマートフォンが欲しい方にお勧めだ。中古市場でも未使用品が1万円以下で販売されるなど、コストパフォーマンスも際立っている。

 

 さて、この機種の惜しいところは各キャリアによって仕様が異なるものになっていることだ。通信バンドはもちろん、ソフトバンク版ではeSIMに対応するといった部分で差がある。中古などで白ロムを検討している方は、キャリアごとの仕様の差についても頭に入れておくことが必要となる。


 最後になるが、arrows Weは本当に堅実な設計の機種と感じた。基本性能は価格の関係で横並びだが、MIL-SDT810規格の耐衝撃性に加えてハンドソープで洗えるといった「安心感」につながる独自機能を備えており、この辺りはスペック表だけで評価することが難しい使い勝手の良さに生きている。これ以外にも「Photoshop Camera」や各種ゲーミングモードなどもしっかり備え、ただ安くて無難なスマホにとどまらない付加価値も提供する。

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安い機種でもゲーミングモードを備える
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筆者としてはイジェクトピン不要でSIMカードスロットを取り出せる点はプラスだ。SDカードの交換なども容易だ。

 

 ただ、ロングラン製品ゆえに、為替相場の影響を他の製品に比べて受けやすいものだった。FCNTの赤字の要因のひとつにも急速な円安が挙げられており、海外で生産しているarrows Weも例に漏れなかった。円安が進めば、同じ製品を作り続けるだけでも実質的な利益が減少していく。このような廉価製品ならより顕著に現れる。

 

 メーカーとしては事実上の撤退となったが、キャリアでは可能な範囲でのサポートを行うとしており、安心して使うことはできそうだ。Android 13へのアップデートも行われているため、下手な廉価機種を購入するよりも失敗は少なく有意義だと感じる。興味がある方はぜひチェックしてみてほしい。

 

 

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