先日ASUSから発売されたゲーミングUMPC「ROG Ally」が様々なところで話題だ。高性能を示すレビューなども多く行われており、世間にも高性能であることが知れ渡っている。
今回は「スマホライター」である筆者が自腹で購入したROG Allyの魅力について記してみることにする。
- ROG Allyを簡単に紹介。大きなSwitchを連想させるデザイン
- 一昔前のゲーミングPC並みの性能を手のひらに収める。ロマンがいっぱい詰まったUMPC
- ROG Allyは「令和のPSP」そう思わせてくれる魅力的なプロダクト
ROG Allyを簡単に紹介。大きなSwitchを連想させるデザイン
ROG Allyはゲームパッドを備える「ゲーミングUMPC」と呼ばれる製品だ。この手の製品はエポックメイキングなものが多く、大手メーカーから出ることは少なかったが、ここにノートPC大手のASUSが満を持して投入した製品だ。
開発には5年の歳月をかけ、高性能なプロセッサを採用したことで、重量級のコンテンツも快適に動かせるモンスターに仕上がった。
ROG Allyはゲームパッドを内包した本体となっており、外観はNintendo Switchなどに近い印象だ。キーパッドはXboxに準拠した設定となっている。
ゲームパッドはスティック周りが光る
本体インターフェイスは上部に集中している。USB端子、Micro SDカードスロット、イヤホンジャックを備えるほか、外付けGPUを接続できる専用端子も備える。
一昔前のゲーミングPC並みの性能を手のひらに収める。ロマンがいっぱい詰まったUMPC
まずは簡単にROG Allyのスペックを振り返ろう。このパソコンではCPUにAMDの「Ryzen Z1 Extreme」が採用される。第4世代Zenアーキテクチャを採用した8コア16スレッドの構成で最大クロックは5.1GHzと強烈な性能を持つ。
そしてGPUもRDNA3アーキテクチャを採用する最新世代となり、12個の実行ユニットを備えている。これによって、最大8.6TFLOPS(FP32)というモバイル向けオンボードでは高いグラフィック性能を持ち合わせている。
この数字はGTX1080(8.8TFLOPS)やRTX3050(9.0TFLOPS)に迫るものとなる。性能だけで見れば10年前のハイエンドゲーミングPCのほか、近年のエントリーグレードのゲーミングPCにも近いものになる。
ROG Allyでは16GBのメモリを備える。これはグラフィック用のVRAMと共用という形になるが、デフォルトでは4GBがグラフィック専用領域として割り当てられている。これを必要に応じて8GBに増やことや、逆に2GBへ減らすこともできる。
それだけ高性能ならフルHD解像度の原神も画質中で55fpsほどで動かせるわけだ。
もちろん高性能な分は消費電力などにも影響する。Ryzen Z1 Extremeは最大で30Wとなり、UMPCというサイズに入れるにはあまりにも大きいものだ。
そして、このクラスとなれば発熱の心配も出てくる。ROG Allyでは2つの空冷ファンとベイパーチャンバーによる冷却機構を採用している。特にベイパーチャンバーの設計には、ゲーミングスマートフォンを製造しているノウハウが反映されているとしている。
7インチの画面を持つUMPCでは発熱が気になるが、空冷ファンと独自開発したベイパーチャンバーの採用にて解決している。こんなところでROG Phoneのノウハウが生きてると考えるとアツくなるものだ。
ディスプレイは7インチのフルHD解像度。120Hzのリフレッシュレートにも対応し、10点のマルチタッチをサポートする。
本体スピーカーはステレオスピーカーとなっており、Zenfoneなど同様にDiracとの提携によって高音質再生を可能にしている。この辺りもスマートフォンでの設計ノウハウがいきているようだ。
本体ストレージは512GBとなる。高速なストレージを採用しており快適に遊ぶことができるが、近年の大容量なコンテンツでは少々容量不足を感じる場面もありそうだ。
ROG Allyは大容量のバッテリーを搭載しているが、モバイルPCとして性能をフルに出すと使えるのはせいぜい90分といったところで、公称値の2時間には届かないものであった。
一方、Ryzen Z1 ExtreamがベースとなるRyzen 7 7870Uと異なる点として、10Wの省電力でも動作させることが可能だ。これによって高性能とバッテリーライフを両立している。実際、Youtubeの視聴やクラウドゲーミングを中心にした利用方法では8時間以上利用することができた。
そのため、ROG Allyはあくまで「持ち出せるゲーミングPC」といったところで、高画質でのプレイングは電源が接続できる場面で利用することが想定されている。
充電端子はUSB Type-Cなのはもちろん、65W PD規格に対応している点はありがたい。スマートフォンやタブレット端末等と充電器をひとまとめにできる利点がある。
65W充電器は付属する
ROG Allyは「令和のPSP」そう思わせてくれる魅力的なプロダクト
筆者はこの端末を「令和のPSP」と評価したい。約20年前に登場したPSPは当時の据え置きゲーム機のスペックをポータブルで持ち歩けるバケモノみたいな端末であった。加えて、高画質なディスプレイの存在やオンライン接続機能もあり、マルチメディアプレイヤーとしてもかなり注目された背景がある。
ROG Allyはそれを今に呼び起こす端末だ。単純なグラフィック性能ではPS4 Proを超えており、Steam等で配信されるPC向けコンテンツが難なく動く仕様だ。Switchよりも一回り大きい筐体でPS4 Proを超えるスペックをもつモバイルゲーム機と言われれば、PSPの衝撃に匹敵するロマンの塊と評することができる。
この小さな画面で初音ミク Project DIVAが遊べるのだからこれは令和のPSPである
ROG Allyという令和のPSPは意外にも最高設定の初音ミクProject DIVA MEGA 39's+が快適に動く pic.twitter.com/DlcbC1yoUk
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年6月28日
ROG ALLY
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年6月15日
Ryzen Z1 Extreme
Windows 11 WSA経由の起動
ミリシタ 3D標準(理由後述)
難易度MM ノーツスピード195
タイミング:-6
ミリシタできるUMPCの中ではかなり高性能…てか、この環境でここまで叩けるのかと感動している
なお、この設定以外ではテクスチャエラーを起こして画面がピンクになる pic.twitter.com/0AAFUhPbAJ
ちなみにOSがWindows 11となるため、WSA経由でAndroidアプリも一部動かすことが可能だ。
加えて、プラットフォームはWindowsなのでゲームのみならず、通常のパソコンとして使うことも可能だ。Bluetoothのキーボードやマウスを用いれば、モバイルPCとして利用することもできる。基本性能の高さもあって、オフィスワークはもちろん、3DCADくらいなら快適に動作する。
ここまで来たらROG Allyの「5Gモデム搭載版」でも出したらどうかと感じさせる。10年前に発売された「PlayStation VITA」には3G回線対応モデルがあり、屋外でも単体でオンラインゲームを楽しむことができた。
ROG AllyはこのようなゲーミングUMPC端末としても「クラウドゲーミング」を推している以上、場所に縛られないプレイングを可能にするモバイルネットワーク対応のバリエーションも欲しいところだ。
この手の製品で4G/5G通信に対応しているものはOneNetbookのGX1 Proなど少数となる。
3G通信に対応し、当時は確信的と言われたPlaystation Vita。カメラやGPSを備え、TwitterなどのSNSアプリもあったことから、当時のスマートフォン並みの機能もあった。
最後になるが、スマートフォンも大きく進化を遂げているが、このようなニッチなモバイルPCも筆者の思っている以上に大きく進化していると感じた。
Allyはこの手のPCでは随一の完成度を誇る商品だ。ASUSとしてもこの手の製品は初投入となったが、5年の開発期間を経ただけはあって、初めてとは思えない高い完成度となっている。
現時点で惜しい点は入出力インターフェースが充電コネクタを兼ねたUSB Type-Cコネクタが1つしかなく、周辺機器の接続に大きく難がある点だ。
ただ、デスクトップPCとして利用する場合はBluetoothキーボードやマウスを利用すれば解決し、Macbookなどで利用できる給電機能付きのUSB Type-Cハブを使用すれば画面出力も解決する。
純正のアクセサリーも用意されているため、必要に応じて購入するとより便利に利用できる。
このような構成なら大画面でもゲームを楽しめる。ミラーリングモードにして本体のキーパッドをコントローラーとして利用することもできる。
さて、そんなROG Allyの価格は10万9800円、プロセッサの異なる下位モデルも展開が予定される。この手の製品としてはかなり安価なものとなっている。正直、ROG Phone 6より安価な点は反則だ。
ゲーム機みたいなものと言われるとピンとこないかもしれないが、「GTX1080と同等クラスの性能を持つ7インチのUMPC」と書くと途端にロマンあふれる製品に感じられる。スマホと同じ「小さなボディにロマンが詰まった端末」には、筆者もどこか惹かれてしまうものがあるのだ。