シャープから発売されたカメ特化ラスマホ「AQUOS R8 pro」が7月に発売された。さらに進化したカメラと妥協のないエンタメ性能が売りというフラグシップをレビューといきましょう。
- 色表現がさらに進化!より簡単に綺麗な写真が撮れるAQUOS R8 pro
- カメラだけじゃない。シャープが送り出す渾身のプレミアムフラッグシップスマホがAQUOS R8 pro
- 5年間のアップデートやmicro SDカード対応!安心して長く使えるAQUOS R8 pro
- 最後に。AQUOS R8 proの価格は20万円の価値はあるのか?
色表現がさらに進化!より簡単に綺麗な写真が撮れるAQUOS R8 pro
このAQUOS R8 proのデザインを見て、まず目が行くのは大型の背面カメラだ。センサーサイズは1型を採用しており、大きさだけなら市場にあるスマホでは最大のもので、高級コンデジなどと同等のサイズだ。
大型カメラの存在感と本体の重厚感が圧倒的だ
AQUOS R8 proではAQUOS R7と同じ有効画素数が4720万画素のイメージセンサーを採用。これはソニー製のIMX989となっており、Xiaomiやvivo、OPPOのハイエンドスマートフォンでも採用されている。
カメラのチューニングはAQUOS R7に引き続き、独ライカカメラ社が監修している。スマホメーカーとの共同チューニングではXiaomiと並ぶ形だ。
センサーが1型と巨大なゆえに、近年のスマホによくある多眼化はAQUOS R7同様に見送られた。また、リアカメラには深度センサー(tofカメラ)も備える
レンズはAQUOS R7同様に35mm換算で19mmと一般に超広角に分類される画角だ。レンズはライカの「ズミクロン」を冠するものとなり、コーティングが一新されるなど着実に改善されている。新機能として、色の波長を捉えられる「スペクトルセンサー」を搭載。従来よりも見たものに近い色で撮影できるようになった。
カメラの右側にLEDフラッシュと共に備えられているものがスペクトルセンサーだ
そんなAQUOS R8 proの作例は以下の通り。デフォルトではデジタルクロップで24mm相当の撮影となり、作例は全て撮って出しの無編集の状態だ。
AQUOS R8 proではどちらかというと、ライカを冠するファーウェイのスマホに近い質感の絵が出るスマホの印象だ。スペクトルセンサーを採用したことで、より正確な色表現が可能になった。
特に黒の表現が非常に豊かになっており、黒つぶれしそうな場面でもしっかりとディテールを残せている。解像感なども昨年のAQUOS R7に比べ、大きく進化したのがうかがえる。
正直、「この写真をシャープのスマホで撮りました!」と言ったところで数年前の筆者はまず信じないことだろう。思った以上の出来で驚くばかりだ。
AQUOS R8 pro
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年7月21日
ファーストインプレッション
はじめに言っておきます。Xiaomiのライカよりこっちが好きという方もいるかと思います。使い分け…できそうです。
とにかくAQUOSは暗の雰囲気を出すのがうまい。そしてスペクトルセンサー別積みで色が暴れない。とても良い! pic.twitter.com/1TcQVeQCkd
AQUOS R8 proにて
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年7月22日
何も考えずにこれを吐き出すAQUOSさん。Xiaomiよりも楽しいかもしれない pic.twitter.com/ezTWp4D4pN
AQUOS R8 proの夜景モードは、手持ちモードではだいたいシャッタースピードが1秒ほど、三脚モードでは4〜32秒をシーンに応じてオートで切り替わる。また、三脚モードは自動で切り替わるものになっており、これはGoogle Pixelなどと同じ挙動だ。
その一方で、場面によっては過度に明るくするような挙動をすることがあった。この辺りは今後のアップデートにて改善してほしい。
AQUOS R8 proは夜景モードに「花火モード」が追加された。このモードでは夜景撮影時に連写が可能となっている
AQUOS R8 proの花火夜景モードで撮った写真たち
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年8月4日
これに関しては良さそうだ。 pic.twitter.com/R5QwlTUNQG
AQUOS R8 proでは、前作同様に単眼でペリスコープ望遠レンズを備えていないため、ズーム性能は最大6倍までと高くない。この辺りはテレ端(デジタルズームで144mm相当)となるが、さすがにディティールも潰れかかる。
AQUOS R8 pro 6倍望遠。補正は弱めなので3倍望遠くらいまでが実用域だ
カメラだけじゃない。シャープが送り出す渾身のプレミアムフラッグシップスマホがAQUOS R8 pro
AQUOS R8 proに関しては1型センサー搭載のカメラ性能に注目しがちだが、画面性能なども大きく評価したい。ざっとスペックを書くと以下の通り。
SoC:Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2
メモリ:12GB
ストレージ:256GB画面:6.6インチ FHD+ Pro IGZO OLED
カメラ
リアカメラ:4720万画素 1型センサー
フロント:1300万画素
別途tofセンサーありバッテリー:5000mA/h
無接点充電対応防水防塵、おサイフケータイ
画面は近年のAQUOSらしく自社製造のOLEDパネルを採用。前作のAQUOS R7と比較して、自然な色が表現できるようになった点は評価したい。また画面の色温度を任意調整もできるので、自分好みの設定にすることも可能だ。
加えてAQUOS R8 proでは、色帯域をそのままにブルーライトをカットする仕組みが採用されており、目に優しいディスプレイとなった。
画面の解像度はFHD+で競合他社のトレンドを押さえつつ、Pro IGZO OLEDなる自社製OLEDを採用している。特徴は可変リフレッシュレート対応で、1~240Hzまでフレキシブルに可変させる点だ。
近年のハイエンドスマホはLTPO技術と呼ばれる、可変リフレッシュレート対応の画面を持つ機種が増えてきている。AQUOSではこの部分を自社設計として、より柔軟なチューニングや省電力化を可能にしている。これにはIGZO液晶で培った制御機構などが盛り込まれている。
画面は6.6インチと大型。発色もよい自社製のOLEDパネルを搭載。AQUOS R8 proではフラットディスプレイとなっている
画面輝度もピーク時2000nitと比較的明るく、直射日光下でも文字がしっかり読める。加えてAQUOS R8 proではフラットディスプレイを採用し、画面保護フィルムも選びやすくなった。
その一方で、従来機種と同じく低輝度時の安定性には欠け、画面の淵やカメラ部付近が緑がかる傾向がみられた。異常輝点(液晶でいうドット抜け)も多く、筆者の個体も一度交換してもらっている。廉価機種ならさておき、20万円に迫るハイエンドスマートフォンのディスプレイとしてはかなりお粗末に感じた。
指紋センサーは画面内蔵。AQUOS R7と同様にクアルコムが開発した2本の指で同時認証可能な「3D Sonic Max」を搭載している。
この機能は二本指での認証でセキュリティ面が高められるほか、認証範囲が広く認証時でもストレスも感じにくい。認証速度は爆速と表現できるもので、認証感度も良好だ。画面内指紋認証の感度の悪さで悩む方には朗報だ。
SonicMaxは大型の指紋センサーだ
プロセッサはSnapdragon 8 Gen 2を搭載。今年のハイエンド機らしいところはしっかり押さえ、メモリも12GB、ストレージは256GB+SDカードと必要十分だ。
冷却性能も比較的優秀で、フレームを使った放熱に加えて特許出願中のカメラ周りのリングから放熱する新しい仕組みを採用した。
高性能なプロセッサと新しいの冷却機構によって、長時間のゲームも遊ぶことができた。ゲーミングの側面を見ても、ハイエンドセグメントで採用が減っていくイヤホンジャックを引き続き備える点は評価したい。
カメラのリングを使ってプロセッサの発熱を逃す仕組みを採用する
イヤホンジャックを備える。
AQUOS R8 proを使ってみると、ハイエンド機というのもあって動作にストレスは感じない。Snapdragon 8 Gen 2は発熱も少なく、本体チューニングもあってよほどのことをしない限り発熱で「熱い」と感じることは少ない印象だ。
ゲームなどに関しては熱落ちという現象はほとんどない。原神の高画質/60fpsモードで15分ほど利用しても処理落ち等はなく、快適に遊ぶことができた。
一方で、カメラ周りが冷却のために熱くなりやすい傾向はみられた。炎天下の環境ではここから熱を拾って動作に制限がかかる場面があるなど、一概にプラス方面だけに働くわけではないようだ。
原神も快適に動作するハイエンド機だ
AQUOS R8 pro ミリシタ
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年8月7日
Snapdragon 8 Gen.2 メモリ12GB
3D高画質 ノーツスピード195 タイミング-2
AQUOSってタッチパネルの吸いつきが優秀で比較的リズムゲームは遊びやすい部類なんですよね。 pic.twitter.com/rBc9X3JNQ1
AQUOS R8 proの本体スピーカーはボックス構造を採用。音はかなり良くなっている。力を入れている中国メーカーのハイエンド機には劣るが、「鳴っていただけ」と評価された過去モデルからしっかり改善されている。
また、ワイヤレスのサウンドも充実しており、最新規格のaptX Losslessにも対応している。LDACに加えてSnapdragon Sound、LE Audioにも対応するため、ワイヤレスイヤホンなども柔軟に選ぶことができる。
バッテリーも5000mAhと大容量のものが採用されており、電池持ちもAQUOSらしく長持ちだ。軽く利用した限りではXperia 1 Vなどと同じくらいの電池持ちであり、これは概ね8時間は満足に利用することが可能だ。
これに加えて、バッテリーいたわり機能の「インテリジェントチャージ」も採用している。この他にも画面点灯時は給電しない、バッテリー満充電を90%に抑えると言ったバッテリーを劣化させにくい工夫がされている。
本体はフロストガラスを採用。質感は歴代AQUOSでもトップレベル
5年間のアップデートやmicro SDカード対応!安心して長く使えるAQUOS R8 pro
AQUOS R8 proではシャープでは初の3回のOSアップデートと最長5年の長期アップデートを保証する機種となった。近年のスマートフォンは長期利用するユーザーも多く、このような部分は安心して利用できる要素だ。
また、綺麗な写真を撮れることを売りにしている機種でもmicro SDカードに対応している機種は極めて少ない。たくさんの思い出を保存しても簡単に容量を増やしたり、ストレージを切り替えることができる点は大きな差別化ポイントだ。
AQUOS R8 proは前作のAQUOS R7で感じた惜しいところを潰して、着実に進化を遂げた機種と評価できる。カメラに関しては、プロセッサレベルで最適化が行われた1型センサーに加え、色表現向上を目的としたスペクトルセンサーを採用。
これに加えて最新プロセッサによって高速オートフォーカスや夜景モードでの連写などを実現している。加えて、レンズ設計などを見直すことで、クセありだった最短撮影距離によるバーコードの読取などについてもテコ入れされている。
そのため、AQUOS R8 proでは撮影の幅が大きく広がった。夜景や星空などの三脚を用いるような撮影でも、以前より富んだ表現が可能だ。マニュアル設定のプリセットも可能になったので、再度同じ設定で撮影する時にも、数値を調整する必要もない。
モノクロ撮影もより質感が出るようになった
多種多様なスマホが登場しても、AQUOS R8 proが「カメラ」で存在感を湿していることは間違いない。シャープが以前から主張していた「なんとなくハイエンドスマホを買う時代は終わった」という言葉は、このAQUOS R8 proにて大成したように感じる。
また、キャリア版ながら他社の電波もしっかり使える仕様となっており、物理とeSIMのデュアルSIM運用(DSDV)にも対応している。これによってeSIM側にはサブ回線で楽天モバイルやpovo 2.0などを使用することも可能になった。
気になるパッケージはシンプルなものだ
最後に。AQUOS R8 proの価格は20万円の価値はあるのか?
世界的に評価の高いカメラスマホが相手でも、対等レベルで比較対象にできる性能をAQUOS R8 proは手にしたと評価できる。日本で販売されているスマホで、このクラスのカメラ性能を持っている機種は少数だ。
さて、AQUOS R8 proの難点は価格だ。近年ではキャリアの取り扱い方法の変化によって価格が高騰する傾向もあるが、シャープの機種も例に漏れずAQUOS R8 proはドコモ版は20万9000円、ソフトバンク版が19万1520円と高額になってしまった。
この設定はサムスンのフラグシップ「Galaxy S23 Ultra」よりも高額で、完全にキャリアの分割払い、お返しプログラム等の残価型プランと呼べる買い方前提の価格設定だ。
ここで気になるのはAQUOS R8 proに「20万円の価値があるのか?」という疑問だ。実際に使って正直に言わせてもらうと、この機種に20万円の価値はないと筆者は考える。
カメラ構成、端末の品質やソフトウェアの完成度を考慮してもせいぜい16万円くらいが妥当、それでも高価と考える。本来ならメーカーもこのくらいの価格を想定していたと考えるが、キャリアの分割購入施策を前提とした高価な価格で評価されてしまうのは惜しいと言わざるを得ない。
特にディスプレイの品質は相も変わらず悪く、AQUOS R7向けのものを小手先チューニングでごまかした感が否めない。色表現こそ以前よりよくなったものの、クセともいえる焼き付き、低輝度時の発色の不安定さが目立ち、肝心の品質が中国メーカーの廉価機種に採用されるOLED並みに低い。次世代機では「価格なり」と言われるレベルには仕上げてほしいところだ。
それでもなお、シャープがこんな尖ったスマホを出せるのはある意味好調の証拠である。senseシリーズをはじめ同社のスマートフォンはカメラ性能重視のブランディングを強く押し出しており、その集大成がAQUOS R8 proなのだ。
筆者としては、AQUOS R8 proは満を持して「カメラスマホ」と呼べる機種であることに揺らぎはない。簡単にキレイに撮れるカメラと、普段使いのバランスにこだわる。そんなこだわりのある層にむけたフラッグシップスマホだと感じた次第だ。
今作ではケースメーカーとタッグを組んで、レンズフィルターを装着できるケースも発売された。Xiaomiなども公式でこの手のケースを販売するなど、外付けで手軽に表現力を拡張することがトレンドになりそうだ。そう言う意味ではカメラスマホの最先端を行く製品だ。
エレコムからレンズフィルターを装着できるケースも発売される
そんなAQUOS R8 proというスマートフォンはAQUOS R3やR5Gをお持ちの方はもちろん、AQUOS R6を使っている方や他社のカメラ特化のスマホをお持ちの方が乗り換えても納得できる商品だ。日本では「カメラスマホ」としての地位を確立しつつあるシャープのハイエンドスマホ。ライカとコラボして3機種目となったこの機種以降も今後も目が離せない。