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XperiaやAQUOSのハイエンドスマホで、なぜ今も「SDカード」が利用できるのか考える

 本日発売のシャープのAQUOS R8。今年発売のハイエンド機種でありながらイヤホンジャックやSDカードスロットを備える商品だ。その一方世界的に見れば採用は減りつつある。今回はソニーやシャープのスマートフォンにてSDカードスロットとイヤホンジャックが採用される理由を考えてみよう。

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本日発売のAQUOS R8はSDカードが利用できる

 

もはや日本だけ。SDカードが利用できるハイエンドスマートフォンはかなり少ない


 まず、今年発売されたハイエンドスマートフォンにおいて、SDカードスロットを備える機種を見ていこう。今年発売されたハイエンド機種のイヤホンジャックの有無とSDカードスロットの有無をまとめてみたが、イヤホンジャックとSDカードスロットの両方を備える機種はシャープとソニーしか出していない。

 イヤホンジャックに関してもゲーミングをアピールする機種以外ではZenfone 10のみとなっていることから、かなり少数であることが分かる。

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AQUOSとXperiaのみがSDカードを利用できる。他の機種では利用できないことから、ハイエンドスマートフォンにおいてSDカードスロットの存在は希少なものとなっている。Huaweiの機種では独自規格の「NMカード」によって容量の拡張ができる。


 そもそもこのようなハイエンドスマートフォンでSDカードが採用されない理由とは何なのか?様々な理由があるが、ひとつはユーザー体験を損ねる原因になっていると考えられる。

 近年のスマートフォンに採用されているストレージの性能はかなり高性能なものとなっており、UFS4.0規格のストレージはパソコン向けのSSDと大きな差がないくらいの性能を持っている。

 これに対してSDカードはその1/30程度の速度しか出ない。これでは写真を連写したり、4K解像度で動画撮影する際にフリーズ等を理由にうまく保存できない要因となる。
 その他の要因として、本体の設計による制約。大容量ストレージやクラウドストレージの登場による利用頻度の低下といった理由があげられる。

 

長期の利用が進むスマートフォン。容量不足についてメーカーはクラウドストレージとの併用をアピール

 


 Galaxy Sシリーズをはじめ、高価な端末はサスティナビリティの観点から長期利用できるようなアプローチをしている。長期のOSアップデートや修理サポートもその一環となるが、だからこそ簡単に容量を増やせるSDカードが必要なのではないか?という意見も少なからずある。

 確かにスマートフォンを4年ないし5年と使っていけば、当初購入した容量では足らなくなることも容易に想像できる。そのような場合のつなぎとしてSDカードが利用できれば便利なのは間違いない。 

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発売から年数が経つと容量不足にもなる

 

 ただ、そのような場面に対してはクラウドストレージを併用してくれというのがメーカーの考えだ。自社でサービスを提供している例もあれば、Googleドライブなどと提携している例もある。

 メーカーとしては提携しているクラウドサービスを利用することで、囲い込みもできることからこれを推していくのは頷ける。納得いただけなければ、より大きい容量で購入していただければよいという考えだ。

 

 ただ、クラウドストレージは運営会社の規模縮小やサービス終了などによって、保存したデータのアクセスに制限等がかかる可能性がある。加えて小容量であれば無料で利用できても数百GBとなれば有料プランを使わざるを得なくなる。
 その有料プランも月に2000円程度のものが多く、年間で考えれば約2万4000円、3年使えば6万円のランニングコストがかかる。このような場面で、数万円払ってより大容量の機種を買うか否かといったところで悩ましくなる問題だ。

 確かにこのような場面で数千円で256GB などの容量を増やせるSDカードは、リーズナブルな容量増設手段に感じる。手元にデータが残る安心感があることや、カードを挿入すればデータがそのまま利用できる点も「乗り換え」の障壁をひとつ下げるものと考える。


 日本では2021年にIT総研が調査した結果、一般利用で有料プランのクラウドストレージを利用しているユーザーは全体の14.6% に過ぎなかった。ただ、検討しているユーザーも少なくないことから、今後有料プランの利用率自体は多少なり増えると予測している。

 クラウドストレージを利用してないユーザーの意見として「月額料金が高い」「ダウンロードする際にインターネット接続が必要になる」「手元にデータがないのは嫌だ」「SD カードが利用できる機種なので不要だ」といったものがあった。

 この他にもゲームのセーブデータやアプリのデータなどはクラウドサービス上に保存できないものもある。このようなコンテンツを多く利用される方には、クラウドサービスを使った容量拡張よりも、大容量のスマートフォンを購入した方が満足度が高いはずだ。

 

日本でSDカードが利用できるスマートフォンが求められる理由。日本独自のガラパゴスな理由だった


 最後になるが、なぜ日本ではSDカードを搭載するスマートフォンが求められているのか?これに対する答えは、キャリアが複数の容量でスマートフォンを展開しないからだ。
 諸外国を見ると、GalaxyやXiaomiのスマートフォンは複数の容量をユーザーが選べるようになっている。ストレージの種類を1種類しか選べないものが多く、ユーザーはもっと多くの容量を求めていても選ぶことができない状態だ。
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今年に入ってからサムスンのGalaxyは、キャリアでも複数容量を展開した機種が現れたが、それでも販路や色は限られていた。


 そして、日本ではキャリアからスマートフォンを購入する方が実にユーザーの9割近くを占める国であり、キャリアで取り扱っていないスマートフォンはそもそも選択肢に入らないという方も少なくないのだ。もちろんメーカーもキャリアの意向に合わせて商品展開をしてくるので、必然的に複数容量の展開が難しくなるのだ。
 結果としてユーザーはより大容量の機種を選ぶことができないため、保険としてストレージが増やせる端末を求めるようになる。結果としてSDカードが利用できる端末が求められるのだ。


 これに対してシャープやソニーもなぜこの要望に応えられるのか?という声についても、2社の特徴から考察できる。どちらのメーカーも特徴として、日本市場に大きなシェアを持っていることが挙げられる。両社とも海外展開しているものの、ハイエンド機に関しては割合で見るとかなり少ない。実質的な日本国内専売メーカーと考えてもいいくらいだ。

 日本ではキャリアに向けて販売しなければ市場シェアを取ることはできない歪んだ場所だ。結果として日本キャリアの要望に応える形で商品開発を行うこととなり、この時代には希少なSD カードとイヤホンジャックどちらも採用した機種が生まれているのだ。


 キャリアが複数容量を展開しない特殊な市場に加え、大きなシェアを持つiPhoneに対する差別化として、今もなおSD カードが利用できるスマートフォンの需要がある日本市場。ハイエンドでSDカードスロットやイヤホンジャックを備えたスマートフォンが今もなお残るというものは、キャリアの製品展開に起因したある種のガラパゴスな環境だからこそあるのかもしれない。

 

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